JP4223752B2 - 消失模型による鋳造方法及び鋳造品の鋳造方法及び回転機械の製造方法 - Google Patents

消失模型による鋳造方法及び鋳造品の鋳造方法及び回転機械の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、消失模型を用いて所望の鋳造品を鋳造する消失模型による鋳造方法及び鋳造品の鋳造方法及び回転機械の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、消失模型を用いて鋳造品を鋳造するには、まず消失模型製作用の金型を製作し、この金型を用いて発泡ポリスチレンや発泡ポリウレタン製の消失模型を製作する。次に製作した消失模型に塗がたを塗り、この消失模型を枠内に設置し、湯道となる発泡材湯口と発泡材堰と発泡材揚がりをつけた後、砂を枠内に充填する。砂を充填した後、場合によっては振動させることにより、砂込めを行う。大型の模型の場合は砂としてフラン樹脂砂やフェノール樹脂砂を使用することもある。
【0003】
して溶融金属を注湯すると、溶融金属は消失模型と置換しながら内部空間に充填される。そしてできた鋳造品を取り出す。砂は樹脂粉を使用した場合は再使用できないが、樹脂が入っていなければ直ちに次の鋳造に使用可能となる。
【0004】
ところで上記消失模型による鋳造方法は、発泡剤を消失模型として使用しているので、溶融金属との置換の際に浸炭がおこり、鋳鉄では問題ないが、鋳鋼には向かない。
【0005】
しかしながら大型ポンプ部品、例えば大型縦型ポンプのガイドケーシング等の鋳造品は水中に没している状態で使用するため、これに求められる材料として、鋳鉄ではなく、鋳鋼の場合が少なくなく、また海水用ポンプ部品等の場合、高級材料であるステンレス鋳鋼等を求められることが多い。従ってこれらの部品の製造に上記鋳造方法が用いられないという問題点があった。また鋳造品が多品種少量生産の場合、発泡模型を金型を用いて製作していたのでは金型コストがかかりすぎるという問題点もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上述の点に鑑みてなされたものでありその目的は、浸炭がおこらず鋳鋼製の鋳造品を製造でき、また金型を用いないで消失模型を製造できる消失模型による鋳造方法及び鋳造品の鋳造方法及び回転機械の製造方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記問題点を解決するため本発明にかかる消失模型による鋳造方法は、重ね合わせることで一つの消失模型が形成される発泡ポリスチレン製又は発泡ポリメタクリル酸メチル製の複数のスライス部品をそれぞれ製造する工程と、前記各スライス部品を貼り合わせることで消失模型を製作する工程と、前記消失模型を耐火材であるSiO 2 を骨材とするコロイダルシリカのセラミックスラリー、或いはAl 2 3 を骨材とするアルミナのセラミックスラリー、或いはジルコンを骨材とするジルコンのセラミックスラリーでスタッコイングした後に乾燥させてセラミック鋳型を形成する工程と、前記セラミック鋳型を高温焼成炉に入れて高温で一気にヒートショック処理を行うことでセラミック鋳型を焼成すると同時に内部の消失模型を溶かし出す工程と、鋳枠の中ヘ前記セラミック鋳型を入れて砂込めを行う工程と、砂込めした砂の表面をシートで覆って真空引きして減圧することによって型強度を上げながら前記セラミック鋳型内部に注湯する工程と、セラミック鋳型内から鋳造品を取り出す工程とを具備することを特徴とする。前記鋳枠の下部に金網を張り、前記真空引きは金網の下部から行うことが好ましい。
【0008】
消失模型としては、切削加工により、各スライス部品を製作し、これを貼り付けることで消失模型を製作する。各スライス部品を貼り合わせて製作した消失模型の表面には、表面仕上げ用のワックスペーストを塗布することによってその表面を滑らかにすることが好ましい。
【0009】
また本発明にかかる鋳造品の鋳造方法は、前記消失模型による鋳造方法によって、ポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械を構成する部品となる三次元形状を有する羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品を鋳造することを特徴とする。
【0010】
また本発明にかかる回転機械の製造方法は、前記鋳造品の鋳造方法によって三次元形状を有する羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品を鋳造する工程と、前記鋳造した羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品をポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械に組み込む工程と、を具備することを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳細に説明する。
図1乃至図7は本発明を用いて大型縦型ポンプのガイドケーシングを鋳造する鋳造方法を示す図である。即ち本実施形態においてはまず図1に示すように、大型縦型ポンプのガイドケーシングと同形状の消失模型10を薄い板状の複数の部分にスライスしてなる各スライス部品10−1,2,…8をそれぞれ製造する。各スライス部品10−1,2,…8は発泡ポリスチレン材又は発泡ポリメタクリル酸メチル材を切削加工することにより製作する。具体的には、消失模型10の三次元CAD(Computer Aided Design)データを作成し、これを適当な見切り位置で輪切り(スライス)にしたデータを作成する。次にこのデータを、CAM(Computer Aided Manufacturing)データに変換して、CNC(Computerlized Numerical Control)工作機械で発泡ポリスチレン材又は発泡ポリメタクリル酸メチル材から各スライス部品10−1,2,…8を切削加工する。
【0012】
次に図2に示すように、各スライス部品10−1,2,…8を積層して接着剤で貼り付け、1つの消失模型10を製作する。製作した消失模型10の表面にワックスペーストを塗りつけてその表面が滑らかになるように仕上げる。
【0013】
次に図3に示すように消失模型10を、耐火材であるSiO2を骨材とするコロイダルシリカのセラミックスラリー(或いはAl23を骨材とするアルミナのセラミックスラリー或いはジルコンを骨材とするジルコンのセラミックスラリー等)中に浸漬して付着させ、さらにスラリー乾燥前にその周囲に粉末状の酸化物耐火材料(SiO2又はAl23又はジルコン等)を付着させて乾燥させるというスタッコイング処理をし、その後乾燥させることで、消失模型10の周囲にセラミック鋳型20を形成する。スタッコイングの回数は、以下の工程でセラミック鋳型20が砂33によって補強されるため、6層程度とし、それほど多層にする必要はない。
【0014】
次にこれを高温焼成炉に入れて高温(例えば1000℃)で一気にヒートショック処理をして、セラミック鋳型20を焼成すると同時に、内部の消失模型10を溶かし出す(図4)。消失模型10の一部を部分的にワックス模型によって形成していた場合は、まずオートクレーブ(脱蝋)処理をしてワックスを溶かし出し、発泡ポリスチレン材又は発泡ポリメタクリル酸メチル材を収縮させてから高温焼成炉に入れ、ヒートショック処理を行う。また図3に示すセラミック鋳型20内部の消失模型10を有機溶剤によって溶かし出し、その後セラミック鋳型20を焼成して図4に示すセラミック鋳型20を製造しても良い。
【0015】
次に図5に示すように、このセラミック鋳型20に陶製の管等により湯道25をつけ、これを鋳枠30内に収め、鋳枠30内に乾燥した砂33を充填する。砂33は、流動砂のみで樹脂(フラン樹脂砂やフェノール樹脂砂等)を入れない場合と、樹脂を入れる場合とがあるが、樹脂を入れたほうが流動性は若干悪くなるものの、型強度が高まる。鋳枠30の下部には金網31が張ってある。砂込め後、鋳枠30ごと振動をかけて砂がしっかりつまるようにするとともに、型強度を上げる。
【0016】
次に図6に示すように、充填した砂33の表面をシート35で覆い、鋳枠30全体を真空引きして減圧することによって型強度を上げながら、同時に湯道25を用いてセラミック鋳型20内に溶融金属を注湯し、満たす。
【0017】
そして溶融金属の冷却硬化後、砂33を取り除き、セラミック鋳型20の型バラシを行うと、図7に示す所望の鋳造品37が得られる。
【0018】
製造される鋳造品は三次元形状を有するものであればどのようなものでも良いが、例えばポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械を構成する羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル(ノズルはタービンやコンプレッサーで使用する場合がある)等の鋳造品の製造に使用できる。
【0019】
鋳造品の他の具体例として、図8は前記鋳造方法によって鋳造された大型ポンプ(オープン型)の羽根車310を示している。また図9は前記鋳造方法によって鋳造された高圧ポンプ(クローズド型)の羽根車360を示している。本発明を用いればこのような鋳造の必要な各種部品を容易に製造することができる。そして図8に示す羽根車310は図10に示すように、大型ポンプ300内に設置したシャフト320の下端に取り付けられ使用される。また図9に示す羽根車360は図11に示すように、高圧ポンプ350内に設置したシャフト370に多数枚取り付けられ使用される。
【0020】
以上本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変形が可能である。なお直接明細書及び図面に記載がない何れの形状や構造や材質であっても、本願発明の作用・効果を奏する以上、本願発明の技術的思想の範囲内である。
【0021】
【発明の効果】
以上詳細に説明したように本発明によれば、以下のような優れた効果を有する。
▲1▼浸炭がおこらないので、容易にステンレス鋳鋼製の鋳造品が製造できる。
【0022】
▲2▼消失模型を複数の部分にスライスしてなるスライス部品を切削加工等によって製作したものを貼り合わせることで消失模型を製作するので、どんな複雑な形状の消失模型でも金型を用いないで容易にその製造が行えるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図2】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図3】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図4】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図5】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図6】消失模型による鋳造方法を示す図である。
【図7】鋳造品37を示す図である。
【図8】大型ポンプの羽根車310を示す斜視図である。
【図9】高圧ポンプの羽根車360を示す斜視図である。
【図10】大型ポンプ300を示す概略断面図である。
【図11】高圧ポンプ350を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10 消失模型
10−1,2,…8 スライス部品
20 セラミック鋳型
25 湯道
30 鋳枠
33 砂
35 シート
37 鋳造品
300 大型ポンプ
310 羽根車
320 シャフト
350 高圧ポンプ
360 羽根車
370 シャフト

Claims (7)

  1. 重ね合わせることで一つの消失模型が形成される発泡ポリスチレン製又は発泡ポリメタクリル酸メチル製の複数のスライス部品をそれぞれ製造する工程と、
    前記各スライス部品を貼り合わせることで消失模型を製作する工程と、
    前記消失模型を耐火材であるSiO 2 を骨材とするコロイダルシリカのセラミックスラリー、或いはAl 2 3 を骨材とするアルミナのセラミックスラリー、或いはジルコンを骨材とするジルコンのセラミックスラリーでスタッコイングした後に乾燥させてセラミック鋳型を形成する工程と、
    前記セラミック鋳型を高温焼成炉に入れて高温で一気にヒートショック処理を行うことでセラミック鋳型を焼成すると同時に内部の消失模型を溶かし出す工程と、
    鋳枠の中ヘ前記セラミック鋳型を入れて砂込めを行う工程と、
    砂込めした砂の表面をシートで覆って真空引きして減圧することによって型強度を上げながら前記セラミック鋳型内部に注湯する工程と、
    セラミック鋳型内から鋳造品を取り出す工程とを具備することを特徴とする消失模型による鋳造方法。
  2. 前記消失模型の一部を部分的にワックス模型によって形成しておき、
    前記セラミック鋳型を高温焼成炉に入れてヒートショック処理を行う工程の前に、このセラミック鋳型をオートクレーブ(脱蝋)処理して前記ワックスを溶かし出すと同時に前記スライス部品を構成する発泡ポリスチレン材又は発泡ポリメタクリル酸メチル材を収縮させる工程を行うことを特徴とする請求項1に記載の消失模型による鋳造方法。
  3. 前記スタッコイングは、前記セラミックスラリー中に消失模型を浸漬して付着させ、さらにこのセラミックスラリー乾燥前にその周囲に粉末状の酸化物耐火材料であるSiO 2 又はAl 2 3 又はジルコンを付着させて乾燥することで行われることを特徴とする請求項1又は2に記載の消失模型による鋳造方法。
  4. 前記鋳枠の下部には金網が張ってあり、前記真空引きは金網の下部から行うことを特徴とする請求項1乃至3の内の何れかに記載の消失模型による鋳造方法。
  5. 各スライス部品を貼り合わせて製作した消失模型の表面に、表面仕上げ用のワックスペーストを塗布することを特徴とする請求項1乃至4の内の何れかに記載の消失模型による鋳造方法。
  6. 請求項1乃至5の内の何れかに記載の消失模型による鋳造方法によって、ポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械を構成する部品となる三次元形状を有する羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品を鋳造することを特徴とする鋳造品の鋳造方法。
  7. 請求項6に記載の鋳造品の鋳造方法によって三次元形状を有する羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品を鋳造する工程と、前記鋳造した羽根車、ガイドベーン、ガイドケーシング、ノズル等の鋳造品をポンプ、タービン、コンプレッサー、ブロワ等の回転機械に組み込む工程と、を具備することを特徴とする回転機械の製造方法。
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