JPH0365727B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

イ 発明の目的 〔産業上の利用分野〕 本発明は植物栽培用の人工培地に関し、詳しく
は人工培地となる鉱物繊維集積体の少くとも上表
層に、水不溶性金属水酸化物を付着せしめること
により、栽培条件下において、培地表面に有害な
藻類が生育しない栽培床の目的とするものであ
る。 〔従来の技術〕 ロツクウール、スラグウール、ガラスウール等
の鉱物繊維集積体を植物特に蔬菜類の水耕栽培床
とすることは既に広く実施されている。 鉱物繊維集積体は、岩石、鉱滓などの鉱物無機
原料を熔融し、遠心力や憤気を利用して吹飛ばし
て繊維化し、噴霧接着剤とともにネツトコンベア
上に堆積積層集綿し、乾燥硬化することによつて
マツト状に製造され、これを適宜の寸法に切断す
ることにより、シート状、ブロツク状の人工栽培
床としている。 この人工栽培床とするさいに、親水性化剤処理
によつて吸水性を向上したり、肥料成分を添加混
合することなどの改質処理を行うことも行われて
いる。 〔発明が解決しようとする問題点〕 人工栽培床による養液栽培において、供給され
る養液が栽培床に常に適量保持されるようにする
ことが望ましいが、このようにすると床上表面は
養液湿潤状態が維持され、緑藻類の発生育成を生
じ、比較的短時日で床表面全体を覆うように繁茂
し、さらにはこれらが枯死、腐敗して、通気通液
性を阻害する表面層を形成し、病害、虫害なども
生ずるなど栽培条件を低下する問題点があつた。 従来、この藻類の発生防止、生長抑制のために
栽培床表面を遮光フイルムでカバーしたり、養液
中に殺藻剤を添加したりする手段が試みられてい
るが、効果が不充分であり、殺藻剤の場合は栽培
植物自体に問題を生ずるなど、実用的に欠けるも
のであつた。 ロ 発明の構成 〔問題点を解決するための手段〕 本発明は栽培床の上表層に水不溶性金属水酸化
物を存在せしめることにより、極めて有効な防藻
性が得られるとの知見に基づき完成されたもので
ある。 即ち、本発明は鉱物繊維集積体の少なくとも上
表層に分布して水不溶性金属水酸化物を付着せし
めたことを特徴とする防藻性鉱物繊維製栽培床を
要旨とし、該要旨において水不溶性金属水酸化物
が、鉱物繊維集積体に付与含侵された金属塩水溶
液の中和処理により構成繊維表面に析出付着され
たものであること並びに前記における水不溶性金
属水酸化物が水酸化銅であることを実施の態様と
するものである。 本発明に用いる金属水酸化物は水不溶性であれ
ばよく、通常Cu，Al，Fe，Zn，Sn，の水酸化物
が有効な防藻性を有し栽培植物に無害であるの
で、利用可能であるが、特に水酸化銅は殺菌性も
あり且つ比較的少量の使用で、良好な効果が得ら
れるので好ましく、Alその他の金属水酸化物も
使用量を増やすことによつて略同等の防藻効果を
得ることができる。 これらの金属水酸化物は微粉末として単に鉱物
繊維集積体表面に散布付着せしめてもよいが、親
水性接着剤と併用して、構成繊維表面に固着する
ようにすれば、より好ましい栽培床が得られる。
しかし、最も効果的な付着方法は、鉱物繊維集積
体の全体もしくは少なくとも上表層に金属塩水溶
液を付与含侵せしめた後、中和処理して、析出す
る金属水酸化物を構成繊維表面に付着せしめる方
法であり、この方法によれば鉱物繊維集積体の通
気通液性を低下することなく、均一で強固な分布
付着状態が得られる。 〔作用〕 本発明の鉱物繊維栽培床における上表層に付着
した水不溶性金属水酸化物による緑藻等の藻類の
生長阻止の作用機構については、その根拠を説明
することができないが、金属の殺菌性や、水酸化
物粒子層による被覆遮光作用などが藻類の生長抑
制効果を生ずるのではないかと考えられる。 したがつて、その付着量は実験的に決定する
が、鉱物繊維集積体の上表面から少なくとも１mm
の範囲に、表面100cm²当り約10mg以上の付着量で
あることが必要であつた。もちろんこの程度の付
着濃度で鉱物繊維集積体全体に分布付着していて
もよい。 〔実施例〕 ロツクウール（嵩比重80Kg／m³）を切断して得
た一辺10cmの立方体のブロツクを12個準備し、硫
酸銅、硫酸アルミニウム、硫酸鉄のそれぞれ１，
３，５％の濃度の水溶液を、エアースプレーガン
にてブロツク上表面に噴霧含侵せしめ、次いで水
酸化カルシウム５％水溶液を噴霧して、それぞれ
の金属水酸化物をブロツクの上表面の約１〜３mm
の層内に析出付着せしめた後水洗乾燥し、12個の
試験ブロツクを得た。 この各ブロツクを培養液（窒素100ppm，リン
30ppm，カリウム30ppm）中に浸漬した後、液深
20mmの培養液バツトに下部を浸して載置し、ブロ
ツク表面に細断した緑藻0.05ｇ（生重量）を散布
し、培養液温23±３℃，室温28±10℃の温室中で
昭和61年６月10日から21日間培養し、下表の結果
を得た。 比較例として、実施例と同様のロツクウールブ
ロツクを用いて実施例と同様の条件で培養した場
合（比較例１）、比較例１において緑藻片散布後
その表面を黒色合成樹脂不織布で被覆遮光し、同
様の培養試験した場合（比較例２）の結果も下表
に示す。

【表】

【表】 なお、さらに培養期間を約30日間延ばした50日
後においても、水酸化銅付着量が上表の32mg以上
のものは、全く藻の発生は見られず、また水酸化
アルミニウム、水酸化鉄では上表の126mgのもの
では藻類繁茂面積は50％以下でそのSPAD値も20
以下であり、有効な防藻性を示した。 以上の培養試験結果から、水不溶性金属水酸化
物付着表面層を有する本発明の培養床は緑藻の生
育防止抑制効果が優れていることは明らかであ
り、特に水酸化銅の場合は完全に緑藻の生育を阻
止し得る顕著な効果が得られた。 ハ 発明の効果 本発明の防藻性鉱物繊維製栽培床は、前述のよ
うに、鉱物繊維集積体の通気通液性、保形性、耐
蝕性などの栽培適性とともに、栽培植物に対する
悪影響を生ずることなく有効な藻類発生防止、生
長抑制作用の下に、良好な栽培条件を長期にわた
り維持できるので、蔬菜類のみならず、花卉、観
葉植物などの播種育苗、移植本耕の水耕用人工培
地として極めて優れたものであり、また水不溶性
金属水酸化物の付着導入処理も至つて簡単容易で
あつて、栽培床の製造コストの増加も僅かであ
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 鉱物繊維集積体の少なくとも上表層に分布し
   て、水不溶性金属水酸化物を付着せしめたことを
   特徴とする防藻性鉱物繊維製栽培床。 ２ 水不溶性金属水酸化物が、鉱物繊維集積体に
   付与含侵された金属塩水溶液の中和処理により構
   成繊維表面に析出付着されたものである特許請求
   の範囲第１項記載の防藻性鉱物繊維製栽培床。 ３ 水不溶性金属水酸化物が水酸化銅である特許
   請求の範囲第１項または第２項記載の防藻性鉱物
   繊維製栽培床。