JPH036349B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔技術分野〕 本発明は回転軸と、該回転軸と平行に設けられ
た複数個のシリンダボアをもつシリンダブロツク
と、該回転軸により回転される斜板と、該シリン
ダボア内に摺動自在に嵌合されたピストンと、該
ピストンと該斜板との間に介在し、該斜板の回転
により該ピストンを往復運動させるシユーとで構
成される斜板式コンプレツサに関するものであ
る。

〔従来技術〕

この種斜板式コンプレツサにおいて、斜板とシ
ユーとの相互の摺動面はいずれも平坦面であり、
しかもこの摺動面には大きな荷重及び滑り速度が
作用することから油膜が形成されにくく、特に、
起動時には静止摩擦力と無潤滑に等しい摺動条件
とが重なつて焼付きを起しやすいという問題があ
る。

その対策として従来は、斜板やシユーの材料、
特に摺動する表面部の材料特性に工夫がみられた
り、シユーの摺動面形状に改良がみられる。

〔発明が解決しようとする問題点〕

本発明は斜板のシユーとの摺動面を、起動時の
みならず稼動中においても油膜をすみやかに形成
可能とする形状と成すことを解決しようとする問
題点とするものである。

〔問題を解決するための手段〕

本発明の斜板式コンプレツサは、シユーと摺動
する斜板の環状の摺動面が、該シユーの摺動方向
と直交する面内で中央部分が膨出した曲面状に形
成されている。

本発明の斜板式コンプレツサは斜板、シユー、
ピストン、回転軸、シリンダブロツク等の構成部
品からなり、それら構成部品の形状等は斜板の摺
動面の形状を除き従来の斜板式コンプレツサと同
一でもよい。

本発明の斜板式コンプレツサにおいて斜板と
は、シリンダブロツクのボアーに対向して回転軸
により回転されて摺動するものを意味する。

シユーとは、該斜板の摺動面と摺動し、該斜板
の回転によりピストンを往復運動させるものを意
味する。従つてシユーは半球状シユー又は平板状
シユーその他の形状でもよい。

第１図の斜視図に示すように、斜板１は、回転
軸に固定されるボス穴１１ａをもつボス部１１と
該ボス穴１１ａに対して斜めに一体的に形成され
た斜板部１２とで構成されている。この斜板部１
２の環状に形成された両面１２ａが摺動面とな
る。ここで、シユーの摺動方向とは楕円Ａで示す
ように、斜板１の回転軸心の向きの投影面内で同
軸心を中心とする円と一致する。そして、摺動方
向と直交する面とは、第１図上で矢印Ｂ、Ｃで示
す前記円の半径方向に延びる面である。この摺動
方向と直交する面の一部を断面図として拡大誇張
して示したのが第２図であり、同図から理解でき
るように摺動面１２ａは中央部分Ｐが膨出した曲
面状を呈している。このような曲面としては、第
３−ａ図に実線で示すドーナツ状の形状をもつ物
体の側周面の一部（破線部）を取出した符号Ｔで
示す一部の面、又は第４−ａ図に実線で示す球体
表面の一部（破線部）を取出した符号Ｓで示す一
部の面を例示することができる。そしてこれらの
曲面は単一の曲率半径からなるものに限定され
ず、これが変形したものであつても差支えない。
なお、第３−ａ図のＴ表面を摺動面１２ａとする
斜板１の断面を誇張して第３−ｂ図に、第４−ａ
図のＳ表面を摺動面１２ａとする斜板１の断面を
誇張して第４−ｂ図に示す。この場合、シユーと
の衝接形態は前者が線接触、後者が点接触とな
る。

摺動面１２ａの湾曲程度は、第２図に一点鎖線
で示したシユーの中央部が摺動面１２ａと接触し
た状態でシユーの周縁部と摺動面１２ａとの隙間
Ｘが１〜25μ、好ましくは５〜8μ程度がよい。

該摺動面１２ａには、さらに完壁に焼付を防止
するための表面処理を施してもよい。たとえば、
斜板１をAl−Si合金で形成し、摺動面１２ａに
初晶シリコンの硬い巨大結晶を表出させるとか、
表面を陽極酸化してアルマイト層を形成させるの
が好適である。他の方法としては、二硫化モリブ
デンを含む潤滑剤層を摺動面１２ａに形成させる
ことも好ましい。なお、斜板１の摺動面１２ａに
摺接するシユーとしては、摺動面が平坦な従来の
シユーをそのまま使用できる。

〔発明の効果〕

本発明の斜板式コンプレツサにおいては、その
斜板の摺動面が膨出曲面状を呈している。従つ
て、斜板とシユーとは面接触することがなく、両
者間には楔状の隙間が形成される。これにより、
シユーの揺動が摺動時に前記楔状の隙間を介して
摺動面への潤滑油の引き込みを助勢するので、き
わめて良好な液体潤滑を伴つて焼付きの発生が防
止され、しかもこの液体潤滑の確保によつて摩擦
係数が極端に低下するので、駆動トルク延いては
供給動力の低減に著効がある。

実施例 １ 本発明を具体化した斜板式コンプレツサの断面
図を第５図に示す。同図において３はシリンダブ
ロツクであり、このシリンダブロツク３内には回
転軸４が軸受４１，４２を介して回転自在に支承
され、この回転軸４に、斜板１が連結固定されて
いる。そして前記シリンダブロツク３には放射状
等間隔位置にシリンダボア３１がそれぞれ形成さ
れ、各シリンダボア３１内には、ピストン３２が
摺動自在に嵌合されている。このシリンダブロツ
ク３の前端開口部は、バルブプレート３３及びフ
ロントハウジング３４により閉塞され、後端開口
部はバルブプレート３５及びリヤウジング３６に
より閉塞されている。

前記ピストン３２の中央部分には斜板１の外周
部分を誇ぐ凹陥部３２ａが形成され、この凹陥部
３２ａの軸方向対向面には、それぞれ球状凹陥部
３２ｂが形成されている。そして斜板１の摺動面
とピストン３２の凹陥部３２ａとの間には、半球
状のシユー２が摺動自在に配置され、前記斜板１
の回転をピストン３２に往復動として伝達するよ
うになつている。なお以上の構成は斜板１の摺動
面の形状を除き、基本的には従来の斜板式コンプ
レツサの構造と同一である。

本実施例では、斜板１の摺動面の形状が従来の
ものと異なつている。即ち、本実施例にかかる斜
板の摺動面は、第２図に示すように、シユーの摺
動方向と直交する面内で中央部分が膨出した曲面
状に形成されている。

そして第１実施例の斜板をAl−Si系合金で製
作し、第４−ｂ図に示す形状に形成した摺動面を
滑らかに仕上げて、第２図に示した隙間Ｘの値を
約8μとした。

第２実施例の斜板は上記第１実験例の斜板と同
じ材料寸法のもので、第３−ｂ図に示す形状の摺
動面をもつように形成したものである。この場合
の前記隙間Ｘの値は約5μとした。

摺動の相手材であるシユーとしてはその母材と
してSUJ−２を用い、浸炭処理等の硬化処理を施
したものを用いた。

斜板式コンプレツサに上記２種類の実験例斜板
と上記シユーとの組合せを採用し、さらに、比較
例として、従来の平坦な摺動面を有する斜板と上
記シユーとの組合せを採用した。

次に、これら３種類の斜板式コンプレツサを回
転試験装置に組込み、コンプレツサの回転数で約
4000から6500回転となるようにエンジンを回転し
て高速焼付実験を実施した。

結果として比較例の斜板を用いたものは3500回
転で焼付きを生じたが実験例のそれにはいずれも
焼付きはみられず、良好な性能が確認された。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る斜板の斜視図、第２図は
第１図のＢ方向に切断した拡大断面図、第３−ａ
図は楕円リングの斜視図、第３−ｂは第３−ａ図
に示す表面と同一の一部表面をもつ斜板の断面略
図、第４−ａ図は球の斜視図、第４−ｂ図は第４
−ａ図と同一の一部表面をもつ斜板の断面略図、
第５図は実施例の斜板式コンプレツサの断面図で
ある。 図中、１は斜板、２はシユー、３はシリンダブ
ロツク、３２はピストン。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 回転軸と、該回転軸と平行に設けられた複数
   個のシリンダボアをもつシリンダブロツクと、該
   回転軸により回転される斜板と、該シリンダボア
   内に摺動自在に嵌合されたピストンと、該ピスト
   ンと該斜板との間に摺動自在に介在し、該斜板の
   回転により該ピストンを往復運動させるシユーと
   で構成されるコンプレツサにおいて、 前記シユーと摺動する前記斜板の環状の摺動面
   は、該シユーの摺動方向と直交する面内で中央部
   分が膨出した曲面状に形成されていることを特徴
   とする斜板式コンプレツサ。