JPH0219314B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

（発明の分野） 本発明は、ハウジング内にロータが偏心して配
置されこのロータにベーンが支持された形式の容
積型回転圧縮機に関する。特に本発明は、ハウジ
ング内に円筒状の回転スリーブが回転自在に配置
され、ロータ上のベーンはこの回転スリーブの内
面に摺動接触するようになつた回転圧縮機に関す
る。 （従来の技術） ハウジング内にベーンを支持するロータが偏心
配置された容積型回転圧縮機は、ベーン型ポンプ
またはベーン型圧縮機として古くから知られてい
る。この種の圧縮機においては、ベーンの端縁が
ハウジング内周面に摺動接触するため、ベーン端
縁およびハウジング内周面の摩耗および焼きつき
が問題になる。したがつて、従来は、ハウジング
内周面とベーンの材質または表面仕上げに種々の
改良を加えて、摩耗および焼きつきの問題を軽減
する試みがなされて来たが、十分に満足できる解
決策は見出されていない。 ベーン型回転圧縮機において、ベーン先端縁の
摺動を減少させるようにした構造も知られてい
る。たとえば、実公昭26−13667号公報には、円
筒状内周面を有する固定ハウジング内にスリーブ
状の外回転子を回転自在に配置し、この外回転子
の内部にベーンを支持する内回転子を偏心配置し
て、ベーン端縁を外回転子の内周面に圧接するよ
うにした構造の回転圧縮機が示されている。ま
た、特公昭49−23322号には、スリーブ状の外回
転子を有する形式のベーン型回転圧縮機をさらに
改良するものとして、外回転子に相当する回転円
筒の両端に側板を取付けて回転ハウジングを構成
することにより、ベーン側端および内回転子側面
とハウジング内面との間の摺動の問題を解決する
ようにした構造が示されている。このような構造
の回転圧縮機においては、ベーンの先端部におけ
る摺動は大幅に小さくできるが、外回転子または
回転ハウジングと固定ハウジングとの間に摺動が
生じるため、この摺動面の潤滑が問題になる。ス
リーブ状の外回転子と固定ハウジングとの間に空
隙をもたせ、この空隙に潤滑油を導入すること
も、たとえば産業図書発行の「容積型圧縮機」の
第15章可動翼回転圧縮機の項に教示されている。
しかし、固定ハウジングの内面と外回転子外面と
の間に潤滑油を封入する普通の潤滑方法では、潤
滑油のひきずり低抗が動力損失を招くので不利で
あり、また油もれなどが生じたばあいには、漏洩
油が吐出空気に混入する恐れがあるので、この回
転圧縮機を内燃機関の過給機として用いることが
できなくなる。 普通に使用される鉄系材料およびアルミニウム
合金では、固定ハウジングと外回転子との間の摺
動抵抗が大きく、焼きつきを生じる。また、摺動
面に軟窒化処理や陽極酸化処理を施すとかなり改
善されるが十分にはこの問題は解決できない。 （発明の目的） 本発明は、内周面にベーン端縁が圧接され、ベ
ーンの回転に伴なつて回転するようにハウジング
内に配置された外回転子または回転スリーブを有
する回転圧縮機において、回転スリーブとハウジ
ングとの間の摺動抵抗を極力減少させることを目
的とする。 （発明の構成） 本発明は、円筒状内周面を有するハウジング
と、該ハウジング内に回転自在に配置された回転
スリーブと、回転スリーブ内に偏心配置されたロ
ータと、ロータに支持されたベーンとからなり、
該ベーンが回転スリーブの内周面に摺動接触する
ようになつた形式の容積型回転圧縮機において、
ハウジングと回転スリーブとの間に圧縮空気を導
入する手段を設けて、回転スリーブが空気軸受に
より支持されるようにするとともに、回転スリー
ブの外周面とハウジングの内周面の少くとも一方
に、表面に多数の凹部を有する硬質化合物層を形
成し、この硬質化合物層の凹部に固体潤滑剤を充
填したことを特徴とする。このとき、固体潤滑剤
は、樹脂系接合材と混合して充填し、その割合
は、接合材100容量部に対して固体潤滑剤10ない
し120容量部とする。ハウジングと回転スリーブ
との間に圧縮空気を導入する手段としては、回転
スリーブの適当な個処に半径方向に貫通孔を設
け、スリーブ内で圧縮された空気の一部がスリー
ブとハウジングとの間の環状空間に送られて空気
軸受を構成するようにすればよい。 硬質化合物層は、基地材料が鉄系であるばあい
には軟窒化処理により形成される窒化層でよく、
この窒化層はFe−Ｃ−Ｎ系三元化合物を含むよ
うになる。軟窒化処理ののち軽いラツピング処理
を行なうことにより黒鉛との間の粒界に生じた突
起部をくずし、多数の小孔を有する粗肌の表面を
得る。この表面に、二硫化モリブデン、窒化ホウ
素、あるいはグラフアイトのような炭素質潤滑
剤、弗素樹脂粉末などの固形潤滑剤をエポキシ樹
脂、弗素樹脂、ポリイミド樹脂、グリスなどの接
合材に上述した割合で混合した混合物を塗布し、
必要に応じて加熱等の硬化処理を行なう。この塗
布表面は、そのまま使用してもよいし必要に応じ
てロールにより圧しつけてもよい。いずれにして
も、圧縮機の作動の初期に、突起部の被膜は削ら
れて凹部にのみ固形潤滑剤が残在するようにな
る。 基地材料がアルミニウム合金であるばあいに
は、硬質化合物層は陽極酸化処理により形成され
る陽極酸化被膜であり、この陽極酸化被膜には
100ミクロン程度の粗さの凹凸が形成され、その
凹部に前述と同様にして固形潤滑剤が充填され
る。 （発明の効果） 本発明においては、回転スリーブとハウジング
との間に圧縮空気が導入され、回転スリーブが空
気軸受により支持されるので、潤滑油を使用する
ばあいに比べて摺動抵抗を大幅に低減できる。ま
た、ハウジングの内周面と回転スリーブの外周面
の少くとも一方に多数の凹部を有する硬質化合物
層が形成され、この硬質化合物層の凹部に固形潤
滑剤が充填されているので、回転スリーブの回転
に伴なう摺動抵抗は一層低下し、動力損失を軽減
できるとともに、摺動面の摩耗および焼きつきを
防止できる。 （実施例の説明） 圧縮機の構造 第１図は、本発明が適用される回転圧縮機の一
例を示す横断面図であり、図示された圧縮機は、
円筒状内周面１ａを有するハウジング１と、該ハ
ウジング１内に回転自在に配置された円筒状回転
スリーブ２と、該回転スリーブ２内に偏心して配
置されたロータ３とからなる。ロータ３は十字形
に配置された４個の放射状スリツト４を有し、
各々のスリツト４内にベーン５が放射方向摺動自
在に配置されている。図には示していないが、ロ
ータ３は駆動軸を有し、この駆動軸を介して適当
な動力源により矢印の方向に駆動される。ベーン
５はロータ３の回転に伴なつて回転し、遠心力に
よつてその先端が回転スリーブ２の内周面に押し
つけられる。 ハウジング１の両側には側板６が取付けられて
おり、一方または両方の側板６に吸入ポート７お
よび吐出ポート８が形成される。回転スリーブ２
には適当な周方向間隔で半径方向に貫通孔９が形
成され、この貫通孔９を介して圧縮空気が回転ス
リーブ２とハウジング１との間に導入され、空気
軸受を構成する。前述のように、ロータ３の回転
に伴なつてベーン５も回転し、該ベーン５は遠心
力により回転スリーブ２の内周面に押しつけられ
る。したがつて、ベーン５と回転スリーブ２との
間に摩擦力を生じ、回転スリーブ２はこの摩擦力
に相当する回転力をベーン５から受けて回転す
る。ハウジング１と回転スリーブとの間には圧縮
空気が導入されて空気軸受を構成するので、回転
スリーブ２の回転に対する抵抗はきわめて小さ
く、該スリーブ２はベーン５の回転速度にほぼ対
応した速度で回転することができる。 このように、回転スリーブ２を空気軸受で支持
しても回転スリーブ２とハウジング１との接触を
完全に防止することはできない。したがつて、ハ
ウジング１の内周面１ａまたは回転ハウジング２
の外周面のいずれか一方、あるいは必要に応じて
両方に特別の表面処理を施す。 摺動面の表面処理 摺動面の基地が鉄系材料のばあい、表面処理は
軟窒化処理により行なう。このばあい、軟窒化処
理に先立つてシヨツトブラストなどにより表面を
粗くすることが好ましい。第２図は軟窒化処理の
後の表面付近の状態を示す。図に示すように、基
地材料１０の表面にはFe−Ｃ−Ｎ系三元化合物
からなる窒化層１１が形成され、この窒化層１１
は、基地材料に含まれる黒鉛１２との間の粒界で
盛り上つた突出部１１ａを有する。この窒化層１
１を有する表面に軽いラツピング処理を施して、
突出部１１ａの欠けやすいもろい部分を落したの
ち、第３図に示すように固形潤滑剤を含む被膜１
４を形成する。被膜の形成は、たとえばエポキシ
樹脂に固形潤滑剤を混合した混合物を該表面に塗
布することにより行なう。塗布後、そのまま、あ
るいはローラにより押しかためたのち、加熱して
樹脂を硬化させる。加熱は、エポキシ樹脂のばあ
い、160〜250℃で約30分間行なうことが好まし
い。 摺動面の基地がアルミニウム合金のばあい、表
面に陽極酸化を施して陽極酸化被膜を形成し、前
述と同様にして固形潤滑剤の塗布を行なう。 表面処理の効果 第１図に示す構造で、作動容積400c.c.の圧縮機
において、ハウジングをアルミニウム合金製と
し、回転スリーブの外周面に上述の表面処理を施
し、回転数5000rpmで１時間運転し、測定を行な
つた。被膜厚さは軟窒化層は12ミクロン、陽極酸
化被膜は100ミクロンであつた。種々の固形潤滑
剤についての測定値を表に示す。

【表】 この表から知られるように、潤滑剤の種類によ
る顕著な差異はみられない。 第４図は、エポキシ樹脂に対する固形潤滑剤の
量を変えたばあいの駆動トルクの変化を、第５図
は摩耗量の変化をそれぞれ示す。第４図から知り
得るように、潤滑剤の量が10部から120部の間で
は駆動トルクが低く、十分な効果が認められる。
潤滑剤が10部以下のときは、潤滑不足を生じて焼
きつきが起る恐れがあり、120部以上では潤滑剤
の保持が悪くなり潤滑剤が脱落して無潤滑の接触
となるため駆動トルクが大きくなる。また、被膜
が形成されているスリーブでは固形潤滑剤の量が
10部から120部までの間でほとんど摩耗はなく、
ハウジングの摩耗も非常に少い。 第６図および第７図は、回転スリーブでなくハ
ウジング内周面に被膜を形成して同様な試験を行
なつた結果を示す第４図および第５図と同様な図
である。このばあい、ハウジングの摩耗はほとん
どなくなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の適用される回転圧縮機の一例
を示す横断面図、第２図および第３図は本発明に
よる表面処理の一例を示す拡大断面図、第４図か
ら第７図までは固形潤滑剤の量の影響を示す図表
である。 １……ハウジング、２……回転スリーブ、３…
…ロータ、５……ベーン、１１……軟窒化層。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 円筒状内周面を有するハウジングと、前記ハ
   ウジング内に回転自在に配置された回転スリーブ
   と、前記回転スリーブ内に偏心配置されたロータ
   と、前記ロータに支持され前記回転スリーブの内
   周面に摺動接触するベーンとからなる容積型回転
   圧縮機において、前記ハウジングと回転スリーブ
   との間に圧縮空気を導入する手段が設けられて前
   記回転スリーブが空気軸受により支持されるよう
   になつており、前記回転スリーブの外周面と前記
   ハウジングの内周面の少くとも一方に、表面に多
   数の凹部を有する硬質化合物層が形成され、この
   硬質化合物層の凹部に、樹脂系接合材と、この接
   合材中に分散された固体潤滑剤とが、樹脂製接合
   材100容量部に対して固体潤滑剤が10〜120容量部
   の割合で配合され、充填されたことを特徴とする
   回転圧縮機。 ２ 前記第１項において、固体潤滑剤は二硫化モ
   リブデン、窒化ホウ素、グラフアイト等の炭素質
   潤滑剤、および弗素樹脂粉末の少くとも一種であ
   ることを特徴とする回転圧縮機。 ３ 前記第１項または第２項において、樹脂製結
   合材は、エポキシ樹脂、弗素樹脂、ポリイミド樹
   脂の少くとも一種からなることを特徴とする回転
   圧縮機。