JPH0351473B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は、外界の温度変化に応じて色彩が可逆
的に変化する処理物を得るための、新規な植毛処
理方法に関する。 従来、各種の感温変色性材料を配合せる組成物
にて布、紙等に所望の形状を直接印刷又は捺染す
ることにより、あるいは該印刷物裏面に粘着剤を
施こし対象物に貼りつけることによつて、示温性
処理物を形成することは、良く知られている。然
しながら、該示温性処理物の変色性色彩は、常に
平面的であり、単純で、立体感に乏しく、加うる
に、変色材料たる水銀塩、コバルト塩等は、色
彩、温度に選択性がなく、また高温でのみ変色性
を示し、更に耐久性に乏しいという欠点があり、
これらの諸点よりして、示温性処理物は、工業的
に一部の狭い用途、例えば発熱部分の感知目的に
供される程度にすぎなかつた。 本発明者は、斯かる従来の変色性処理物の欠点
に鑑みて、その変色性色彩が任意の温度選択性を
有し、且つ周囲と画然たる差異ある立体感を示
し、更に諸耐久性にすぐれるものにせんと種々検
討した結果、変色対象物たる合成樹脂あるいは繊
維からなる成型物に対し、その全面又は部分に、
電子供与呈色性物質、該電子供与呈色性物質に対
応する電子受容性物質並びに沸点150℃以上のア
ルコール類、アマイド類、エステル類及びアゾメ
チン類から選ばれる溶媒の３成分を高分子化合物
中に内包せる熱変色性粒状物を混入してなる接着
剤を塗布し、次いで有色又は無着色の短繊維を静
電植設することにより、該成型物に著るしい立体
感をもつて変色性色彩を施こすことができ、而も
該処理物の熱変色性粒状物が植毛層にて保護され
ている点よりして堅牢であり、該処理物をして極
めて広範囲の用途に適用し得ることを見出し、茲
に本発明を完成したのである。 次に本発明方法の構成について詳述する。 本発明方法は、合成樹脂又は繊維からなる成型
物の全面又は部分に、電子供与呈色性物質、該電
子供与呈色性物質に対応する電子受容性物質並び
に沸点150℃以上のアルコール類、アマイド類、
エステル類及びアゾメチン類から選ばれる溶媒の
３成分を高分子化合物中に内包せる熱変色性粒状
物を混入してなる接着剤を塗布し、次いで、該接
着剤層上に有色又は無着色の短繊維を静電植設す
ることを特徴とするものである。 本発明に係る植毛処理方法の対象の１たる合成
樹脂成型物としては、ポリオレフイン樹脂、塩化
ビニル樹脂、醋酸ビニル樹脂、ポリブチラール樹
脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリアマイド
樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹
脂、ポリフエニルエーテル樹脂、ポリサルフオン
樹脂、ポリウレタン樹脂等の如き熱可塑性樹脂及
びこれらの共重合物、並びに、メラミン樹脂、尿
素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂
等の如き熱硬化性樹脂からなる、シート、発泡
体、立体形状物及びこれらの表面加工物等が挙げ
られる。また一方、本発明方法のいま１つの対象
たる繊維成型物としては、ポリエステル、ナイロ
ン、ポリアクリル、ビニロン、アセテート、人
絹、絹、羊毛、木綿、麻、ベンベルグ等の繊維か
らなる織物、編物、糸及びそれらの混紡・交織・
交編物、あるいはこれら繊維と金銀糸との混用物
等が挙げられ、更にまた、前記合成樹脂成型物と
繊維成型物との併用物や繊維の表面処理物、例え
ば防撥水布等を挙げることができ、本発明方法
は、これら成型物に熱可逆変色性を示す植毛処理
を施こすものである。 次に、本発明方法に使用する熱変色性粒状物に
含まれる３成分の物質のうち電子供与呈色性物質
としては、クリスタルバイオレツトラクトン青、
ローダミンラクタム赤、３・3′ジメトキシフルオ
ラン黄、マラカイトグリンラクトン縁等の如きが
あり、また該電子供与呈色性物質を受容して発色
に至らしめる電子受容性物質としては、フエノー
ル類、トリアゾール類、カルボン酸類及びこれら
のエステル、アマイド、金属塩等から広く選択す
ることができ、一般に上記２成分は所謂感圧・感
熱複写剤として容易に入手し得る。而して残る１
成分たる溶媒、即ち、沸点150℃以上のアルコー
ル類、アマイド類、エステル類及びアゾメチン類
としては、ステアリルアルコール、パルミチルア
ルコール、ミリスチルアルコール、ラウリルアル
コール、オレイルアマイド、ステアリルアマイ
ド、Ｎメチルラウリルアマイド、アセトアニリ
ド、ベンズアマイド、ステアリン酸オクチル、フ
タル酸ジブチル、安息酸ベンジル、サリチル酸フ
エニル、ベンジリデンアニリン、ベンジリデンス
テアリルアミン、ｐメトキシベンジリデンｐアニ
シジン等の如きが挙げられ、これらの単独又は複
数が用いられる。 如上の溶媒は、一般に減感剤と称せられ、温度
変化に伴うところの、これら溶媒の前記２成分に
対する溶解能の変異が可逆変色性顕現の基本原理
であり、即ち、これら溶媒は、高温では前記２成
分を専ら溶解して発色を妨害し、低温になれば該
溶解能を減じ、前記２成分を析出して発色を復活
させるものである。従つて本発明方法における溶
媒は、常に前記２成分と共存していなければ、斯
かる効果を発揮し得ないので、本発明方法では、
かかる条件を確実且つ効果的に充足するため、こ
れら３成分を高分子化合物にて内包化、以つて熱
変色性粒状物とするのである。 この場合において、溶媒の沸点を150℃以上に
限定した理由は、一般に沸点150℃以下の溶媒は、
水可溶性のものが多くて内包化し難く、而も変色
温度が低温に過ぎ、例えばブチルアルコールは、
−80℃以下でなければ変色現象を示さず、従つ
て、変色温度設定上、実用性を欠落する。 之に対して沸点150℃以上の前記溶媒は、実質
的に−40℃以上200℃程度の範囲に及ぶ広い変色
温度設定が可能である。 上記３成分を内包化せしめる高分子化合物とし
ては、後述の実施例において具体的に記述した如
く、エポキシ樹脂及びメラミン樹脂の混合物を使
用し、之により、残留末反応エポキシ基を、メラ
ンミン樹脂にて完全に架橋し、以て連続被膜化し
た強固なカプセル被膜を得ることができる如くな
すものとする。而してこれら高分子化合物にて前
記３成分を内包化する方法としては、所謂マイク
ロカプセル化法、例えば界面重合法、相分離析出
法、オリフイス法、in−situ法などと称する公知
のいかなる方法を用いてもよく、得られる粒状物
の性能として、耐溶媒性、耐水性、耐熱性等にす
ぐれ、且つ加圧にて破壊し難い均斉度の揃つたも
のが要求される。 因みに、本発明方法に用いうる熱変色性粒状物
の製法の１例の概略を示せば、以下の如くであ
る。 先ず乳化剤を含む水中に、前記電子供与呈色性
物質１重量部、電子受容性物質１〜５重量部及び
溶媒５〜25重量部からなる混合物を均一に乳化
し、次いで撹拌下にブチル化メラミン樹脂溶液及
びエポキシ樹脂プレポリマー溶液の混合物５〜10
重量部を投入して前記３成分を内包せる油状物と
なし、つづいてエポキシ樹脂硬化剤を必要量添加
後、PHを酸性とし除々に昇温させ、90〜98℃にて
約２時間加熱し、油状物を硬化する。次に該硬化
物を取した乾燥機にて105℃、５時間の熱処理
ののち冷却すれば、所謂界面重合法に属する方法
に係る堅牢な熱変色性粒状物が得られる。 この場合において、得られる熱変色性粒状物の
粒子径の調節は、撹拌状況あるいは乳化剤量等に
て任意に変化させうるものである。 本発明方法における熱変色性粒状物の変色温度
は、溶媒の融点又は沸点に依存し、一般に低融点
のものは高融点のものに比較して低温度で変色挙
動を示す。茲に、本発明方法における溶媒類と変
色温度の関係の一部を例示すれば、表１の通りで
ある。

【表】 本発明方法は、斯かる熱変色性粒状物を接着剤
に混合して各種成型物に塗布する。該接着剤とし
ては、酢酸ビニル樹脂、アクリル酸エステル樹
脂、塩化ビニル樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合
樹脂、合成ゴム、ウレタン樹脂等が挙げられ、ま
たこれらと併用する接着剤としては、尿素樹脂、
メラミン樹脂、エポキシ樹脂等も用いうる。尚本
発明方法では、これら接着剤の溶媒溶液あるいは
乳化物に熱変色性粒状物を混合せる塗料を用いる
が、該塗料中には通常の塗料用薬剤たる粘度調節
剤、界面活性剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、可
塑剤、滑剤、酸、アルカリ、螢光増白剤、顔料、
増量剤、触媒、溶媒、乾燥調節剤等を配合する場
合もあるが、斯かる場合も本発明の要旨は逸脱す
るものではない。 次に本発明方法においては、成型物上に任意に
塗付せる前記熱変色性粒状物を含む接着剤層上
に、その湿潤時、すみやかに有色又は無着色の短
繊維を植毛するが、該短繊維としては、レーヨ
ン、ナイロン、ポリエステル、ポリアクリル繊維
等のモノフイラメント束のカツト物等の0.3〜2.0
mm長、0.5〜2.0デニル直径のもの等を用いられ、
目的とする用途により、これらの中から適宜に選
択されると共に、またこれらのみに限定されるも
のではない。 植毛方法としては、種々の方法があるが、静電
植毛法が最適であり、該植毛の後、被植設物は乾
燥し、必要に応じて熱処理がなされる。 斯くして、本発明方法では、合成樹脂あるいは
繊維からなる成型物の全面又は部分に、立体感が
あふれる熱可逆変色性の植毛処理が極めて効果的
に施こされる。 加うるに、本発明方法によつて形成される熱変
色性植毛成型物は、熱変色層たる接着剤層上に有
色又は無着色の短繊維を静電植毛して成るもので
あるから、熱変色層上に植設される無数の短繊維
の集積によつて生ずる強力な復元弾性により、当
該熱変色層を極めて効果的に保護し得ることとな
り、かかる熱変色層保護効果と前述の立体感顕出
効果との相乗効果を招来し得る点に、本発明方法
の特段の効果が存する。 実施例 １ 綿ブロード布上に水玉模様のスクリン版（70メ
ツシユ）を用い、マツミンゾールF23C（商品名、
ポリアクリル酸エステル共重合樹脂乳化物）80
部、アンモニア水２部、スミテツクスレジンＭ−
３（商品名、メラミン樹脂）５部、塩化アンモン
１部及び可逆熱変色性粒状物（クリスタルバイオ
レツトラクトン３部、ベンゾトリアゾール10部、
ミリスチルアルコール60部をエポキシ樹脂、メラ
ミン樹脂27部にて内包せる平均粒径0.03mmの球状
体）10部並びにグローエローMF2G（商品名、螢
光顔料水性分散物）２部からなる接着剤インキを
0.5mmの厚さに印捺し、引つづいて白色ブライト
レーヨン短繊維（1.0d、0.3mm）を静電植毛して
乾燥の後、150℃、３分間の熱処理を施こした。
斯くして該処理布は、温度25℃以下では鮮縁色を
呈し、35℃以上では鮮黄色に可逆変色する。尚、
該処理布の一般染色物堅牢度、殊に耐洗濯性、耐
熱性は良好であつた。また該処理布にて製する衣
料品は、植毛としての立体感に加えて、模様色彩
が、体温、外気にて部分変色する点、従来と異な
り著るしく商品価値が高い。 なお、比較のため、本実施例における可逆熱変
色性粒状物に代え、内包化せざる前記３成分のみ
を直接点に接着剤と混入した場合には、先ず色彩
が甚だ淡く、且つ耐洗濯性が欠落していた。 実施例 ２ ポリウレタン発泡体／ポリエステル織物のラミ
ネートシートのスポンジ上の全面に、ナクリリツ
ク2260J（商品名、ポリアクリル酸エステル共重合
樹脂乳化物）75部、ヨドゾールKA−10（商品名、
ポリアクリル酸系増粘剤）３部、アンモニア水２
部、マツミンフイクサ−Ｆ（商品名、ウレタン系
架橋剤）５部、及び可逆熱変色性粒状物〔レツド
＃40（商品名、山本化学合成、感圧複写紙用イン
ドリルフタリド系色素）３部、ビスフエノール
A5部、安息香酸亜鉛２部、ｐクミルベンジリデ
ンｐメトキシアニリン30部、オレイルアマイド10
部、パルミチルアルコール20部をエポキシ樹脂、
メラミン樹脂30部にて内包せる平均粒子径0.015
mmの球状体〕15部からなる接着剤塗料をナイフコ
ーターを用いて150ｇ／m²塗付し、次いで淡ター
キスブルー着色のナイロン短繊維（1.5d、1.5mm）
を静電植毛ののち、150℃、５分間の熱処理を施
こした。斯くして該処理成型物は室温で青紫色
（植毛が青色で内部が赤色）でありながら40℃以
上に昇温すれば、ターキスブルーに変色すること
を何度でも可逆的に繰りかえし、且つ耐光性、耐
洗濯性、耐熱性等も良好であつた。尚、該シート
は、ぬいぐるみに縫製せる動物等となし、幼児用
玩具として浴槽での変色を楽しむことができる。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 合成樹脂又は繊維からなる成型物の全面又は
   部分に、電子供与呈色性物質、該電子供与呈色性
   物質に対応する電子受容性物質並びに沸点150℃
   以上のアルコール類、アマイド類、エステル類及
   びアゾメチン類から選ばれる溶媒の３成分をエポ
   キシ樹脂及びメラミン樹脂の混合物よりなる高分
   子化合物中に内包せる熱変色性粒状物を混入して
   なる接着剤を塗布し、次いで、該接着剤層上に有
   色又は無着色の短繊維を静電植設することを特徴
   とする、植毛処理方法。