JPH0347833B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は飲食品粕類の保存方法に関するもので
ある。

飲食品工場においては、副産物として飲食品粕
が多量生成される。このような飲食品粕は、家畜
等に対する飼料として利用されているが、飲食品
粕は多量の水分を含むために、カビや腐敗を生じ
るという取扱い上の問題を含む。一方、このよう
な飲食品粕を取扱いや保存性を良くするために、
乾燥処理しようとすると、多額の費用を要し、経
済的ではない。従つて、現在のところ、飲食品粕
は、工場に近い酪農業者や家畜業者等に利用され
ている程度であり、未だ充分に有効利用されては
いない。

本発明者らは、飲食品粕に見られる保存性の問
題を解決し、その一層の有効利用を図るべく種々
研究を重ねた結果、本発明を完成するに到つた。

即ち、本発明によれば、密閉性袋又は容器内に
おいて、乳酸菌及び糖を加えた飲食品粕を、脱酸
素剤及び炭酸ガス除去剤の存在下で乳酸発酵させ
ることを特徴とする飲食品粕類の保存方法が提供
される。

本発明においては、密閉性袋又は容器内におい
て、乳酸菌及び糖を加えた飲食品粕を、脱酸素剤
及び炭酸ガス除去剤の存在下で乳酸発酵させるこ
とを特徴とする。乳酸発酵処理は、青刈植物から
サイレージ（silage）を製造する方法として利用
されているが、飲食品粕には乳酸菌の存在が少な
い上、糖分も不足することから、本発明の場合、
乳酸菌及び糖分を添加して、乳酸発酵が生起する
条件を形成させる。また、飲食品粕は、単に乳酸
発酵処理しても、得られる処理物は未だ保存性に
劣り、本発明の場合は、この点の改良のために、
処理物を脱酸素剤の存在下で保持し、乳酸発酵終
了後においても実質的に無酸素状態に保持する。
本発明で用いる飲食品粕としては、種々の飲食品
工場から排出されるものが適用され、例えば、ビ
ール粕、ジユース粕、シヨウ油粕、ミソ粕、各種
のジユース粕、豆腐粕、各種酒（日本酒、洋酒、
ワイン等）粕及びその他の各種発酵粕等が挙げら
れる。

本発明の方法を実施するには、このような飲食
品粕に対し、乳酸菌及び糖分を加える。乳酸菌と
しては市販の各種のものを使用することができ
る。糖分は、グリコース、糖密、亜硫酸パルプ廃
液及び各種のデン粉等の糖分（発酵性糖）を含む
ものであれば、任意であり、また、この糖分は必
ずしも単味の形である必要はなく、糖分を含む植
物又はその一部、例えば、グルコースを含む葉、
茎、根等を利用することができる。このようなグ
ルコースを含む葉、茎、根等を利用する場合、こ
れらのものは細かく切断して用いるのがよい。乳
酸菌及び糖分は、飲食品粕の種類や量に応じて適
当に選定され、その使用量は特に制約されない。
乳酸菌は、水溶液、培養液等の液状の他、多孔質
担体に担持させた粉末状で使用することができ
る。実用的には、乳酸菌を糖分、その他の微量栄
養素等と共に溶解させた水溶液の形で用いるのが
よい。糖分の添加量は、一般的には、グルコース
換算で、飲食品粕中の全糖濃度が0.1〜10重量％、
好ましくは1.0〜5.0重量％になるようにするのが
よい。また、飲食品粕の水分含量は55〜75重量
％、好ましくは60〜70重量％に調節するのがよ
い。

本発明においては、前記のようにして得られる
乳酸菌及び糖の加えられた飲食品粕を密閉性の袋
又は容器内において、脱酸素剤及び炭酸ガス除去
剤の存在下で乳酸発酵させる。この場合、雰囲気
中の酸素濃度は、５％以下、殊に2.5〜０％程度
にまで低下させるのが好ましい。発酵雰囲気をあ
らかじめこのような嫌気状態に保持することによ
り、飲食品粕の円滑な発酵処理を行うことができ
る。また、本発明の場合、飲食品粕には、固形飼
料を加えるのが有利である。飲食品粕は、一般
に、水分が多く（80％以上）、取扱いが不便であ
るが、これに水分量の少ない固形飼料を加える
と、その取扱が容易になる上、乳酸発酵処理もし
やすくなり、さらに、その固形飼料の添加によ
り、飼料価値をさらに高めることもできる。この
場合の固形飼料として、牧草ペレツト、ビート粕
や、ケーントツプの乾燥ペレツト、米ぬか、等の
他、ワラ、乾燥牧草等と乾燥飼料等の種々のもの
があり、さらに、前記した飲食品粕を乾燥したも
のを用いることができる。この固形飼料を使用量
は特に制約されないが、固形飼料を加えた飲食品
粕中の水分含量が60〜70重量％程度になるように
加えるのが好ましい。

本発明で用いる密閉性容器としては、サイロや
ドラム缶、あるいは密閉貯蔵用の蔵槽やタンク等
があり、また、密閉性袋としては、プラスチツク
の材質で形成されたもの、例えば、ポリエチレン
や、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ナイロ
ン、ポリエステル等で形成された袋を用いること
ができる。

本発明において、飲食品粕を乳酸発酵処理する
場合、大型のタンク等を用いて乳酸発酵を中間の
段階まで行い、この中間乳酸発酵処理物を密閉性
容器又は袋に入れ、さらにこの容器又は袋内に脱
酸素剤と炭酸ガス除去剤を入れ、全体を密閉し、
そして、この密閉性容器又は袋内において乳酸発
酵処理を完結させることもできる。このような処
理においては、大型のタンク等における発酵処理
時間を短かくし得るので、そのタンクの使用効率
を高めることができる。

この発明においては、飲食品粕の発酵処理及び
その発酵処理物の保存の両段階を、密閉性の容器
又は袋内において、脱酸素剤と炭酸ガス除去剤の
存在下で実施することから、先ず、その容器又は
袋内を完全に嫌気状態（酸素農度１％以下）に保
持することができ、その結果、乳酸発酵処理は著
しく促進され、しかも、得られる発酵処理物は酸
素から完全に遮断されるので、その品質劣化は防
止される。また、乳酸発酵で生成する炭酸ガスは
炭酸ガス除去剤により除去され、袋や容器の膨張
破裂が防止される。さらに、この方法の場合、密
閉性の容器又は袋として、運搬性のよいものを用
いることにより、前記した乳酸発酵は、処理現場
から消費者への運搬途中でその容器又は袋内にお
いて行うことができるので、発酵処理や処理物の
貯蔵に格別の場所を必要としないという大きな利
点が得られる。

本発明で用いる脱酸素剤や炭酸ガス除去剤とし
ては、市販のものを用いることができるが、本発
明の場合、殊に、第１図〜第３図に示したような
脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填袋の連結体
を用いるのが有利である。

即ち、第１図〜第３図は、本発明に好ましく用
いられる脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填袋
の説明図を示し、第１図ａはその平面説明図、第
１図ｂはその断面説明図である。この第１図にお
いて、１は脱酸素剤Ａの充填された袋１０と炭酸
ガス除去剤Ｂの充填された袋２０とが連結された
連結体を示し、３はその連結部を示す。また、第
１図において示された斜線部分２はシール部分
（接着部分）を示す。

このような脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充
填袋との連結体において、その袋の材質は、紙
や、有孔ポリフイルムと紙との積層体、あるいは
特公昭56−31257号公報に示された２種の多孔プ
ラスチツクフイルムを紙を介して積層接着した構
造の包装材料が用いられる。また、脱酸素剤Ａと
しては、従来公知の種々のもの、例えば、鉄粉と
金属ハロゲン化物とからなるもの、表面に金属ハ
ロゲン化物を被覆した鉄粉の他、カテコールや、
アスコルビン酸、ハイドロサルフアイト等の酸素
吸収性有機物を主剤としたもの等が適用される。
本発明で用いる特に好ましい酸素吸収剤は、鉄粉
又は鉄紛に金属ハロゲン化物を加えたもの１容量
部に対し、粗粒充填剤と微粉充填剤との混合物１
〜10容量部、好ましくは３〜５容量部との混合物
からなるものである。この場合、充填剤として
は、ゼオライト、活性炭、パーライト、タルク、
カオリン、シリカ、アルミナ、セピオライト等の
天然又は合成のものが適用され、また粗粒充填剤
の粒径は0.5〜５mm、好ましくは１〜３mmであり、
一方、微粉末充填剤の粒度は、100メツシユ以下、
通常100〜200メツシユ程度である。この粗粒充填
剤と微粉末充填剤との混合物の水分は、10重量％
以下、好ましくは８重量％以下程度とし、空気中
においては酸素吸収剤の反応が起りにくくする。
このような鉄粉と充填剤とからなる酸素吸収剤
は、次のような利点を有している。

(1) 鉄粉単独が水分の存在下で空気中酸素と反応
すると、塊状に固形化し、内部への通気が悪化
し、酸素吸収能が阻害されるようになるが、前
記脱酸素剤の場合には多量の充填剤が添加され
ているため、鉄粉相互の結合による固形化が防
止される。

(2) 鉄粉による酸素吸収反応は適量の水分の存在
によつて促進さるが、前記脱酸素剤の場合には
水分が不足しているため、大気中ではその酸素
吸収反応は極めて遅く、一方、飲食品粕又は発
酵処理物と共に密封空間に置かれた場合には、
それらからの水分によつてその酸素吸収反応は
著しく促進される。

本発明において用いる炭酸ガス除去剤として
は、ソーダライム又は金属水酸化物や金属酸化物
等のアルカリ性固形物質が一般に使用されるが、
本発明の場合、粗粒状（粒径１〜10mm、好ましく
は２〜５mm程度）の生石灰（CaO）が良好な結果
を与えることが判明した。炭酸ガス除去剤として
一般に用いられる微粉状の水酸化カルシウムは、
湿度の高い密閉空間中では、水分を取込んで全体
が塊状の固形物になつてしまい、内部への通気性
が悪化し、炭酸ガス吸収能が著しく阻害される。
これに対し、粗粒状生石灰の場合には、このよう
な炭酸ガス吸収反応に対する阻害は起りにくく、
高湿度下で良好な炭酸ガス吸収能を示す。

本発明で用いる図面に示した如き脱酸素剤充填
袋と炭酸ガス除去剤充填袋との連結体において、
炭酸ガス除去剤の充填容量は、通常、脱酸素剤と
同容量又はそれ以上であり、従つて、同量以上の
炭酸ガス除去剤を用いる場合には、さらに炭酸ガ
ス充填袋を連結されることができる。この場合の
例を第２図に示す。また、この連結体は、あらか
じめ脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填袋とが
多数連続的に連結されたものを作成しておき、こ
れを現場において、必要個数ずつ切断分離して使
用することもできる。このような多数個の脱酸素
剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填袋の連続連結体の
例を第３図に示す。第３図において、鎖線は切断
用ミシン目を示す。

本発明で用いる前記のような脱酸素剤充填袋と
炭酸ガス除去剤充填袋の連結体は、乳酸発酵処理
及び処理物の貯蔵に対して必要な酸素吸収能と炭
酸ガス吸収能とをあらかじめ適当な範囲に調節す
ることが容易である上、このような連結体として
用いる時には１回の充填あるいは１個の充填機に
より、脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填袋と
を同時に密閉性の容器又は袋に充填し得るので、
非常に効率的である。

本発明の脱酸素剤充填袋と炭酸ガス除去剤充填
袋は、前記したように、連結体を形成しているこ
とが好ましいが、必らずしも連結体にする必要は
なく、両者をそれぞれ単独の形で容器又は袋内に
投入することもできる。

前記のようにして乳酸発酵処理された飲食品粕
は、密閉性の容器又は袋に脱酸素剤と共に密封充
填した状態で保持する限り、長期間にわたつて極
めて高品質に保持される。即ち、本発明の場合、
密封空間内は、脱酸素剤の作用によりその酸素濃
度は１％以下に保持され、しかも発酵処理物は生
成された乳酸より酸性（約４以下のPH）に保持さ
れるため、処理物には、その酸化劣化やカビの発
生は見られない。本発明者らの研究によれば、６
カ月以上の保存によつてもその品質が劣化しない
ことが確認された。

次に本発明を実施例によりさらに詳細に説明す
る。

実施例 ビール粕10Kgに、長さ２cmに細断した稲ワラ
2.5Kgを添加混合し、この混合物に対し、さらに、
粉末状乳酸菌15ｇと白糖150ｇと米ヌカ100ｇとを
あらかじめ混合したものを添加し、よく混合し
た。この混合物をビニール袋に入れた後、さら
に、石灰からなる炭酸ガス吸収剤充填袋と、鉄粉
を主体とする脱酸素剤充填袋とを入れ、開口部を
密封して袋体Ａを得た。なお、24時間後、その袋
内の酸素濃度を測定したところ、酸素濃度は１％
以下であることが確認された。

一方、比較のために、乳酸菌と砂糖と米ヌカの
混合物を添加しない以外は同様にしてビール粕と
稲ワラ混合物を収容させた袋体Ｂを得た。また、
脱酸素剤充填袋を封入しない以外は同様にして袋
体Ｃを得た。

以上のようにして得られた各袋体を50日間室温
で放置した後、開封して内容物の状況を観察し
た。その結果、袋体Ａの場合には、良好な乳酸発
酵が起り、良好な発酵臭が感じられ、内容物は高
い飼料価値に富むことが確認された。一方、袋体
Ｂの場合には、内容物にはカビの発生は見られな
いが、腐敗臭が感じられ、飼料としては不適当で
あつた。また袋体Ｃの場合には、内容物にはカビ
の発生が多い上、完全に腐敗していることが確認
された。

【図面の簡単な説明】

第１図は酸素吸収剤充填袋と炭酸ガス吸収剤充
填袋の連結体の説明図であり、第１図ａはその平
面説明図、第１図ｂはその断面説明図である。第
２図は１個の酸素吸収剤充填袋と、２個の炭酸ガ
ス吸収剤充填袋との連結体の平面説明図である。
第３図は、多数の酸素吸収剤充填袋と多数の炭酸
ガス吸収剤充填袋との連続した連結体の平面図で
ある。 １……酸素吸収剤充填袋と炭酸ガス吸収剤充填
袋の連結体、２……シール部分（接着部分）、３
……連結部、１０……酸素吸収剤充填袋部、２０
……炭酸ガス吸収剤充填袋部、Ａ……酸素吸収
剤、Ｂ……炭酸ガス吸収剤。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 密閉性袋又は容器内において、乳酸菌及び糖
   を加えた飲食品粕を脱酸素剤及び炭酸ガス除去剤
   の存在下において乳酸発酵処理させることを特徴
   とする飲食品粕類の保存方法。