JPH0343210Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、医師その他医療業務に従事する者が
着衣の上に装着する布製（不織布を含む）のガウ
ンに関するものである。

〔従来技術〕

医療用ガウンは、医療業務従事者の着衣から生
じる塵埃等を患者に付着させない為、及び、患者
から発生する有機物や医薬類が着衣に付着しない
為に着用する布製の医療補助具である。

上記の目的を果たすため、医療用ガウンは一般
に清潔な布で縫製（接着を含む）され、消毒して
使用に供される。

単に、着衣と患者とを隔離・遮断するという機
能のみに着目するならば、該ガウンをゴム引布，
若しくはビニールシートで構成すれば良いのであ
るが、このような通気性の無い材料でガウンを構
成すると、着用者の身体が蒸れてしまい、著しい
苦痛を受けるので適当でない。

高度の精神的緊張を伴う医療業務従事者は、就
業が長時間に及ぶこともあり、しかも些細なミス
も許されないので、その肉体的苦痛を出来るだけ
軽減することが必要だからである。

このように、通気性が必要である為、医療用ガ
ウンは布（不織布，紡織布）を主要材料とし、か
つ、通気性を損わない範囲で防水処理を施してあ
る。

（第１図参照）ガウン１の前胸部１ａは、血液
や洗浄液，消毒液などの飛沫を受け易いので、こ
の部分については第２図のように２重構造とした
ものが公知である。

第２図は前胸部１ａの断面を模式的に拡大して
描いてあり、図の左上が表側、右下が裏側であ
る。表層１ｃは撥水性を与えるように加工した繊
維製の布であり、その内側に、吸水性を有する内
層１ｄが設けられている。

矢印Ａの如く、流体（血液，洗浄液，消毒液な
ど）が注ぎかけられたとき、撥水加工した表層１
ｃでその大半を阻止するという考え方である。

〔考案が解決しようとする問題点〕

医療用ガウン着用者が前方に倚り懸つたとき、
ガウンの前胸部１ａは圧迫を受ける。また着用者
が肘を突いたとき肘部１ｂは圧迫を受ける。この
圧迫は、往々にして繰り返されたり、強弱の変化
を伴つたりする。

而して、ガウン表面に比較的多量の血液が付着
しているとき圧迫が繰り返されると、布を形成し
ている繊維同志が接近，離間を繰り返し、毛細管
現象によるポンピング作用で血液が滲透する。こ
の滲透は撥水加工だけでは防ぎ切れない。

このため、医療従事者の胸部や肘部については
着衣が血液で汚れることがあり、また医療従事者
の身体に血液が付着する虞れ無しとしない。

このような不具合について、従来技術において
は、通気性を保持する為には巳むを得ない……と
して忍んできた。

ところが最近、血液中の病源ウイルス（例えば
エイズ・ウイルス）による感染防止が社会的問題
となるに及んで、前記従来技術に係るガウンの血
液滲透が放置できなくなつてきた。

即ち、通気性を失わず、しかも血液の滲透を阻
止し得る医療用ガウンの開発が要請されている。

本考案は上記の要請に応えるべく、通気性と、
血液滲透阻止とを両立せしめた医療用ガウンを提
供するものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記の目的を達成するため、本考案の医療用ガ
ウンは、これを構成している布の繊維の間に、血
液凝固剤を分散・付着させる。

血液凝固作用を有する薬剤としては、アルギン
酸カルシウムやグルコン酸カルシウム等が公知で
ある。これらの薬剤の水溶液で布を濡らして乾燥
させると、布の繊維の表面に薬剤が付着した状態
となり、これに触れた血液を凝固させる。

従来、これらの薬剤で包帯や絆創膏を処理して
止血効果を発揮させようという試みは為されてい
るが、患者の身体から流出して身体から離れてし
まつた後の血液に対して、滲透阻止を目的として
血液凝固剤を用いることは未だ何人も着想しなか
つたところである。

〔作用〕

上記のように、布の繊維の間に血液凝固剤を分
散付着させたガウンは、これに付着した血液を凝
固させる。従つて、血液がガウンに滲透して通過
する虞れが無い。

〔実施例〕

次に、本考案の１実施例について説明する。従
来例の医療用ガウンに本考案を適用して改良した
場合、巨視的な外見に変化は無いので、前掲の第
１図を援用して説明する。

本実施例は、血液凝固剤としてアルギン酸カル
シウムを用いた。

本考案を実施する場合、グルコン酸カルシウム
其他の公知の血液凝固剤を適用することも可能で
あるが、揮発性溶剤に可溶の血液凝固剤を選定す
る必要がある。

本例においては、アルギン酸カルシウム水溶液
を、ガウン１の前胸部１ａにスプレーして該部を
濡らした後通風乾燥した。

これにより、ガウン１の前胸部１ａを構成して
いる布の繊維の表面に固形アルギン酸カルシウム
が析出して付着する。

上記アルギン酸カルシウム微粒子は、前胸部１
ａ全域にわたつて繊維間に散在して一様に分布さ
れている。従つて、血液が該部の表面から裏面に
向けて滲透しようとすると、直ちにアルギン酸カ
ルシウムに接触して凝固する。また、血液凝固剤
は分散しているので通気性を妨げない。

上記のように凝固した血液は、繊維の間隙を埋
める形に固化しているので、後続の血液の滲透を
阻止する。

本実施例によれば、ガウンを着用した医療業務
従事者が、血液に濡れた物体に対向して前方へ倚
り懸つて、胸部を押しつけたり離したりする動作
を繰り返しても、血液がガウンの前胸部１ａを滲
透通過して着衣に付着したり、皮膚に付着したり
する虞れが無い。

また、前記と異なる実施例として、肘部１にも
同様な血液凝固剤処理（溶液スプレー→乾燥）を
行うことも有効である。本例によれば、血液で濡
れた個所に肘を突いても血液が滲透しない。本実
施例において、スプレーに代えて刷毛塗り，その
他の手段を用いることは任意である。

更に異なる実施例として、ガウン全体を血液凝
固剤溶液に浸した後、軽く絞つて通風乾燥しても
良い。本実施例によれば、前記実施例に比して血
液凝固剤の消費量は大きいが、ガウン全部につい
て血液の滲透防止効果が得られる。

〔考案の効果〕

本考案を適用すると、医療用ガウンの通気性を
妨げることなく、血液の滲透を完全に防止するこ
とが出来る。特に、血液が付着した状態で繰返し
圧迫されたり、血液が付着した状態で圧迫力が繰
返し変化したりしても血液が滲透して通過する虞
れが無いという優れた実用的効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は医療用ガウンの斜視図である。第２図
は従来例のガウンの断面を拡大して模式的に描い
た説明図である。 １……医療用ガウン、１ａ……前胸部、１ｂ…
…肘部、１ｃ……表層、１ｄ……内層。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 布製の医療用ガウンにおいて、該ガウンの構
   成材料である布の少なくとも１部分を、血液凝
   固剤溶液で濡らした後にこれを乾燥し、布の繊
   維の表面に血液凝固剤を付着させたことを特徴
   とする医療用ガウン。 ２ 前記の１部分は、前胸部を含むものであるこ
   とを特徴とする実用新案登録請求の範囲第１項
   記載の医療用ガウン。 ３ 前記の一部分は、前胸部及び肘部を含むもの
   であることを特徴とする実用新案登録請求の範
   囲第１項に記載の医療用ガウン。