JPH0328561Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本考案は、マイクロ波等の高周波帯域で用いら
れる一体構造の誘電体フイルタに関し、更に詳し
くは、誘電体ブロツクの開放面の結合子穴の部分
に、両側面のメタライズ層間を接続するような帯
状の導体膜を形成した誘電体フイルタに関するも
のである。

［従来の技術］ チタン酸バリウム等の誘電体セラミツクを用い
た多段共振子型のフイルタは、損失が少なく従つ
て所謂Ｑも高く、誘電率が大きいので小型化でき
るといつた特徴があり、自動車電話等のマイクロ
波帯用として広く使用されている。

誘電体フイルタに関する従来技術としては、直
方体状をなす誘電体ブロツクの長手方向に所定の
間隔を介して複数の共振子穴と結合子穴とを交互
に設け、該誘電体ブロツクの上面を除く外表面と
共振子穴の内面をメタライズした一体型多段構造
のものが知られている。この場合、共振子穴が開
口している面の一方のメタライズが施されていな
い上面が開放面となり、他方のメタライズされて
いる底面が短絡面となる。

このようなフイルタでは各共振子穴がそれぞれ
一個一個の共振素子に対応し、共振子穴同士の中
間に位置する結合子穴によつて適当な結合度をも
つように結合されて所望のフイルタ特性を発現さ
せるようになつている。

［考案が解決しようとする問題点］ ところが従来構造の多段誘電体フイルタでは、
必ずしも十分満足しうる減衰特性を示さず、また
高調波領域において大きなスプリアスが現れる等
の問題がある。

フイルタの帯域幅は主として穴間隔によつて決
まり、穴間隔が狭まれば帯域幅が広がり、逆に穴
間隔が広がれば帯域幅が狭まる。そこで広帯域フ
イルタを設計する場合、従来技術では共振子穴と
結合子穴の間隔を狭くしなければならず、帯域を
広げようとすればするほど穴間隔が狭くなり加工
が難しくなる。また寸法精度を非常に高くしなけ
れば特性のばらつきが大きくなる。このため量産
化が難しく、穴間隔を狭くする従来方式では広帯
域化の点では自ずから限界があつた。

本考案の目的は、上記のような従来技術におけ
るフイルタ特性を改善し、挿入損失が小さく広帯
域化できるとともに、減衰特性並びにスプリアス
特性を大幅に改善できるような誘電体フイルタを
提供することにある。

［問題点を解決するための手段］ 上記のような目的を達成することのできる本考
案は、直方体状をなす誘電体ブロツクの長手方向
に複数の共振子穴と結合子穴とを交互に設け、該
誘電体ブロツクの前記共振子穴が開口している面
の一方を開放面としてそれ以外の外表面と前記共
振子穴の内面にメタライズ層を形成したものにお
いて、前記誘電体ブロツクの開放面の結合子穴の
部分に、両側面のメタライズ層間を接続するよう
な帯状の導体膜を形成した誘電体フイルタであ
る。

この導体膜は、例えばスクリーン印刷法等の技
術を用いれば容易に高い精度で形成できる。勿
論、他のメタライズ層の形成と全く同じ工程で同
時に形成してもよい。

［作用］ 誘電体ブロツクの開放面の結合子穴の部分に、
両側面のメタライズ層間を接続するような帯状の
導体膜を形成すると、詳細な理由については未だ
十分解明されている訳ではないが、極めて良好な
特性をもつフイルタを製作することができる。

つまり上記のような構成とすると、挿入損失が
小さくなるとともにフイルタの帯域幅が広がり、
更に帯域外周波数における減衰量が極めて大き
く、スプリアスもほとんど生じない。このことは
実験の結果、確認されている。

［実施例］ 第１図は本考案に係る誘電体フイルタの一実施
例を示す斜視図であり、３段構成の場合の一例で
ある。

誘電体フイルタは、チタン酸バリウム等の高誘
電率セラミツク材料の焼結体からなる直方体状の
誘電体ブロツク１０の長手方向に、間隔をおいて
３個の共振子穴１２を形成するとともに、それら
共振子穴１２の間に結合子穴１４を設け、更に前
記誘電体ブロツク１０の全側面と底面、および各
共振子穴１２の内面にメタライズ層１６を形成し
た構造をなす。従つてこの場合には、誘電体ブロ
ツク１０の上面が開放面となる。誘電体ブロツク
１０の両端部には入出力結合用の穴が形成され、
それにアンテナ棒と呼ばれる結合ピン１８が挿入
固定されて外部回路と接続される。

なお第１図において、メタライズが施されてお
らずに誘電体の素地がそのまま露出している部分
には細かな点々を付して表してある。またメタラ
イズ層１６は判り易くするためかなりの厚みを持
つように描いてあるが、実際は銀ペースト等の焼
き付け等で形成される極く薄いものである。

さて第１図から明らかなように、本考案が従来
技術と顕著に相違する点は、誘電体ブロツク１０
の開放面の各結合子穴１４の部分に、両側面のメ
タライズ層１６間を接続するように帯状の導体膜
２０を形成した点にある。

この導体膜２０は、例えばスクリーン印刷法等
により比較的簡単に高精度で作成することができ
る。勿論、予め所定の形状にマスキングを施し、
周囲にメタライズ層を形成するのと同じ工程で同
時に上面に導体膜を形成することも可能である。

第２図は本考案に係る誘電体フイルタと従来構
造の誘電体フイルタの特性曲線の比較説明図であ
る。同図において実線で示す特性曲線は本考案品
についての測定結果であり、破線で示す特性曲線
は従来品（即ち誘電体フイルタの開放面に導体膜
を形成していないもの）についての測定結果であ
る。第２図からも明らかなように、本考案品では
従来品よりも挿入損失（帯域内周波数での減衰
量）が少なく、また帯域幅が広くなつている。更
に本考案品において顕著なことは、帯域外周波数
において減衰が非常に大きく、また共振周波数₀
の２倍の高調波領域におるスプリアスも非常に小
さくなることである。この測定結果の比較から明
らかなように、本考案によれば従来技術に比して
はるかに好ましいフイルタ特性を発現させ得るこ
とが判る。

なお誘電体ブロツク１０の外表面および共振子
穴１２の内面に形成するメタライズ層１６は、例
えば銀ペーストを塗布し焼き付ける等、従来公知
の技術を適用したものでよい。

入出力結合部の構造も任意である。上記の各実
施例では誘電体ブロツクの両端部に結合ピンを取
り付けて外部回路と結合するようになつている
が、誘電体ブロツクの両端に位置する共振子穴の
開放面側に入出力結合用コンデンサを載置して外
部回路と接続してもよい。勿論、誘電体フイルタ
の段数、即ち誘電体ブロツクに形成する共振子穴
の個数も任意である。

［考案の効果］ 本考案は上記のように、誘電体ブロツクの開放
面の結合子穴の部分に、両側面のメタライズ層間
を接続するような帯状の導体膜を形成したから、
帯域幅が広くなるとともに挿入損失が小さくな
る。更に上記のような導体膜を形成することによ
つて、帯域外周波数における減衰量が非常に大き
くなり、またスプリアスも小さく抑えることがで
きる。

従つて本考案によれば、全体として極めて良好
なフイルタ特性を発現させることができる点で甚
だ優れた効果を奏しうるものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に係る誘電体フイルタの一実施
例を示す斜視図、第２図は本考案と従来技術との
フイルタ特性の差異をを示す比較説明図である。 １０……誘電体ブロツク、１２……共振子穴、
１４……結合子穴、１６……メタライズ層、１８
……結合ピン、２０……導体膜。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 直方体状をなす誘電体ブロツクの長手方向に複
   数の共振子穴と結合子穴とを交互に設け、該誘電
   体ブロツクの共振子穴が開口している面の一方を
   開放面としてそれ以外の外表面と前記共振子穴の
   内面にメタライズ層を形成した一体構造の誘電体
   フイルタにおいて、前記誘電体ブロツクの開放面
   の結合子穴の部分に、両側面のメタライズ層間を
   接続するような帯状の導体膜を形成したことを特
   徴とする誘電体フイルタ。