JPH032757Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 技術分野 本考案はベルト式無段変速機の改良に関するも
のである。

従来技術 有効径が可変の一対の可変プーリに伝動ベルト
が巻き掛けられ、かつその一対の可変プーリの内
の少なくとも一方の可変プーリが、回転軸に固定
された固定回転体と、その回転軸に軸方向の移動
可能に設けられて固定回転体との間にＶ溝を形成
する可動回転体と、その可動回転体との間に油圧
室を形成し、その可動回転体に推力を付与する油
圧シリンダとを、有する形式のベルト式無段変速
機が知られている。通常、上記油圧シリンダは前
記可動回転体が前記回転軸に固定された外壁と摺
動可能に嵌合されて構成され、それら外壁と可動
回転体との間に前記油圧室が形成される。このよ
うなベルト式無段変速機は、変速比を無段階に変
化させることができるため、車両などにおいて、
エンジンの動力を伝達するトランスミツシヨンと
して好適に用いられる。

考案が解決すべき問題点 しかしながら、一般に、油圧シリンダ内には回
転に伴つて遠心油圧が発生するが、この遠心油圧
に起因して生じる推力を相殺するために、前記可
動回転体の前記外壁を嵌め入れた穴の外周部を液
密に覆うシユラウドを可動回転体に設ける一方、
そのシユラウド内に作動油を供給するための細孔
を設けた形式のベルト式無段変速機（たとえば、
本出願人が先に出願した特願昭59−108216号）が
案出されており、特にこのような形式のベルト式
無段変速機においては、回転停止時に油圧回路の
一部が大気に開放されて、オリフイスの位置によ
つては上記細孔を通して作動油の流出量が多く空
気が侵入し、オリフイスが上方に位置する場合に
比較して作動直後の応答性に差が生じていた。

問題点を解決するための手段 本考案は以上の事情を背景として為されたもの
であり、その要旨とするところは、有効径が可変
の一対の可変プーリに伝動ベルトが巻き掛けら
れ、かつその一対の可変プーリの内の少なくとも
一方の可変プーリが、回転軸に固定された固定回
体と、その回転軸に軸方向の移動可能に設けられ
て該固定回転体との間にＶ溝を形成する可動回転
体と、その可動回転体との間に油圧室を形成し、
その可動回転体に推力を付与する油圧シリンダと
を有する形式のベルト式無段変速機において、前
記油圧室またはこれと連通する油路の回転中心付
近に、その油圧室内またはこれと連通する油路内
の空気を排出する空気排出弁を設けたことにあ
る。

作 用 このようにすれば、ベルト式無段変速機の停止
時に油圧シリンダの油圧室内に侵入した空気は、
その油圧室内においてベルト式無段変速機の再作
動時に伴う遠心力により回転中心付近に集合する
が、ベルト式無段変速機の再起動に伴う油圧回路
の作動により油圧シリンダの油圧室内には比較的
高い作動油圧が供給されるので、油圧室内の空気
は空気排出弁を通して外部へ排出され、作動油が
通過しようとすると閉じられる。

考案の効果 したがつて、ベルト式無段変速機の停止時に油
圧シリンダの油圧室内に侵入した空気は、そのベ
ルト式無段変速機の再作動により前記空気排出弁
を通して速やかに排出されるので、空気の圧縮性
に起因する応答性の低下が抑制されるのである。

実施例 以下、本考案の一実施例を示す図面に基づいて
詳細に説明する。

第１図は、たとえば特願昭59−108216号に記載
されたものと同様に構成された車両用ベルト式無
段変速機の出力側の回転部分を示すものである。
図示しないミツシヨンハウジング内には出力側回
転軸１０がその両端において一対の軸受１２（他
端側は図示せず）により回転可能に支持されてお
り、その出力側回転軸１０には円錐面１４が形成
された固定回転体１６が一体に固設されている。
また、その出力側回転軸１０には、上記円錐面１
４と対向する円錐面１８が形成された可動回転体
２０が軸方向の移動可能に設けられ、上記円錐面
１４と円錐面１８との間に図示しない伝動ベルト
を巻き掛けるためのＶ溝が形成される。したがつ
て、上記固定回転体１６および可動回転体２０に
より有効径（伝動ベルトの掛り径）の変更可能な
可変プーリが構成されている。なお、上記可動回
転体２０および出力側回転軸１０にはキー溝２４
および２６がそれぞれ形成されており、それらキ
ー溝２４，２６の間にキーとして機能する転動ボ
ール２２が収容されている。これにより可動回転
体２０が出力側回転軸１０に対して軸まわりの相
対回転不能とされている。

上記出力側回転軸１０の一端部には円形の外壁
２８が固定されており、その外壁２８が前記可動
回転体２０の一面に形成された嵌合穴３０内に摺
動可能に嵌め入れられている。これにより外壁２
８と可動回転体２０との間に油密の油圧室３２が
形成され、この油圧室３２内に供給される油圧に
応じた推力が可動回転体２０に付与されるように
なつている。すなわち、外壁２８および可動回転
体２０などにより油圧シリンダが構成され、可動
回転体２０が油圧シリンダのピストンとして機能
する。なお、上記油圧室３２内には、前記Ｖ溝を
狭める方向に可動回転体２０を常時付勢するスプ
リング３４が設けられている。

前記出力側回転軸１０の回転中心には、その一
軸端に開口する従通孔３６が形成されており、油
圧室３２は、その出力側回転軸１０に形成された
連通孔３８を介してその縦通孔３６と連通させら
れているとともに、可動回転体２０に形成された
連通孔４０および出力側回転軸１０に形成された
連通孔４２を介して縦通孔３６と連通させられて
いる。また、縦通孔３６の非開口側端部は出力側
回転軸１０に軸心と直角に形成された貫通孔４４
と連通させられている。これにより、油圧室３２
は、連通孔３８，４０，４２、縦通孔３６、貫通
孔４４の外側に設けられた図示しないカツプリン
グを介して外部の油圧回路に設けられた図示しな
い調圧弁と接続される。通常、この調圧弁は、専
ら、ベルト式無段変速機の伝動ベルトの張力、換
言すれば伝動ベルトに対する挟圧力を必要かつ充
分に調節するための油圧を油圧室３２に供給する
ものである。

前記出力側回転軸１０に形成された縦通孔３６
の開口部内には、空気排出弁４６が嵌合され、止
め輪４８にて固定されている。空気排出弁４６
は、段付状の弁座５０および絞り状の空気放出口
５２を有する貫通穴５４が形成されたバルブハウ
ジング５６と、その貫通穴５４内において弁座５
０に着座可能に収容された球状弁子５８と、その
球状弁子５８を開弁方向へ常時付勢するバルブス
プリング６０と、このバルブスプリング６０によ
る付勢により球状弁子５８の貫通穴５４からの飛
び出しを防止するために貫通穴５４の開口に径方
向に固定されたストツパピン６２とを、備えてい
る。

また、本実施例の可動回転体２０には、遠心力
によつて生じる遠心油圧に起因して発生する推力
を補償するためのシユラウド６４が嵌合穴３０の
開口を覆うように設けられているとともに、この
シユラウド６４内の空間に作動油を油圧室３２内
から供給するための細孔６６が外壁２８の外周部
に設けられている。

以下、本実施例の作用効果を説明する。

車両の停止時などにおいてエンジンの作動が停
止すると、通常、エンジンによつて油圧源が駆動
されるため、油圧回路に設けられた調圧弁を通し
て作動油圧が油圧室３２に供給されず、或いはそ
れに加えて油圧室３２が大気に開放される場合が
ある。そして、このような状態が比較的長時間持
続すると、油圧室３２内の作動油が細孔６６の位
置によつては外部に排出される量が変化し、油圧
室３２内に空気が侵入し充満することがある。こ
のような場合には、エンジンの再始動にともなつ
てベルト式無段変速機が作動させられると、油圧
室３２内あるいはこれと連通する縦通孔３６内に
おいては比重の小さい空気が遠心力によつて回転
中心付近に集まるため、細孔６６から速やかに放
出され難く、従来では、比較的長期にわたつて油
圧室３２内に残留することがあつた。このため、
空気の圧縮性に起因して比較的長時間にわたつて
油圧制御の応答性にばらつきが生じることがあつ
た。

しかし、本実施例では、油圧室３２内あるいは
これと連通する縦通孔３６内の回転中心付近に集
まつた空気は、再起動時に油圧回路から所定の油
圧が供給されると、縦通孔３６の一端部に設けら
れた空気排出弁４６を通して外部に速やかに排出
される。しかし、空気排出弁４６は空気と同様に
作動油をも排出するのではなく、作動油が通過し
ようとすると、その作動油の粘性により球状弁子
５８がバルブスプリング６０の付勢力に抗して移
動させられて弁座５０に着座させられ、作動油の
放出が防止される。バルブスプリング６０の付勢
力はこのように設定されているのである。

したがつて、本実施例によれば、ベルト式無段
変速機の停止中にたとえ油圧室３２内に空気が侵
入しても、再作動時にはその空気が空気排出弁４
６を通して速やかに排出されるので、応答性が得
られるのである。

なお、前述の実施例においては、空気排出弁４
６が出力側回転軸１０の回転中心に形成された縦
通孔３６に嵌合されて設けられているが、外壁２
８の内周部に設けられても空気を速やかに排出す
る一応の効果が得られる。要するに、空気排出弁
４６は油圧室３２またはこれと連通する油路の回
転中心付近に設けられておればよいのである。

なお、上述したのはあくまでも本考案の一実施
例であり、本考案はその精神を逸脱しない範囲に
おいて種々変更が加えられ得るものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例のベルト式無段変速
機の出力側回転部を示す断面図である。 １６……固定回転体、２０……可動回転体、３
２……油圧室、４６……空気排出弁。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 有効径が可変の一対の可変プーリに伝動ベルト
   が巻き掛けられ、かつ該一対の可変プーリの内の
   少なくとも一方の可変プーリが、回転軸に固定さ
   れた固定回転体と、該回転軸に軸方向の移動可能
   に設けられて該固定回転体との間にＶ溝を形成す
   る可動回転体と、該可動回転体との間に油圧室を
   形成し、該可動回転体に推力を付与する油圧シリ
   ンダとを有する形式のベルト式無段変速機におい
   て、 前記油圧室またはこれと連通する油路の回転中
   心付近に、該油圧室内またはこれと連通する油路
   内の空気を排出する空気排出弁を設けたことを特
   徴とするベルト式無段変速機。