JPH0326295Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 （産業上の利用分野） 本考案は内燃機関用油かきリングにおいて、シ
ール性を高め潤滑油消費量を低減させることを目
的とした油かきリングに関する。

（従来の技術） 内燃機関用油かきリングは、そのシール性の向
上について種々の改善がなされている。

内燃機関における潤滑油のもつ役割は、リン
グ、ピストンおよびシリンダの摺動を円滑に行わ
せるだけでなく、リングのシール作用や冷却作用
などがある。しかし、潤滑油の供給が過剰になる
と、燃焼室にまで燃えにくい潤滑油が入り、不完
全燃焼を起すばかりでなく、カーボンなどの残渣
を生じリングのステイツクなどの原因になる。

一般に、潤滑油がリングの隙間を通つて燃焼室
に達するいわゆるオイル上がりの原因は、リング
とシリンダの隙間によるもの、リングとピストン
溝の隙間によるもの、それにリングの合口の隙間
によるものなどがある。

潤滑油の消費量は、エンジンの回転数を高くし
たり、エンジンブレーキなどのようにブースト圧
の低い状態や、加速減速を激しく繰り返すような
運転条件では急激に増加する。

（考案が解決しようとする問題点） 従来の内燃機関用オイルリングの合口はストレ
ートに切断されたものが使用されている。ピスト
ンが下降するとき、油かきリングはシリンダ壁の
潤滑油をかき落としながら下降する。このときシ
リンダ壁の潤滑油はリングの合口隙間を通つて燃
焼室へ抜けようとする。従つて、この合口の隙間
は、狭いほどシール性はよくなる。しかし、リン
グは燃焼ガスとピストンからの熱伝導によつて加
熱され膨張する。このため、合口の隙間はある程
度広くとつておかないと、運転中に合口がぶつか
つてしまう。また、加鉛ガソリンを使用するエン
ジンやデイーゼルエンジンなど摩耗の激しいエン
ジンに使用した場合、外周摺動面の摩耗が進むに
つれて合口は広がつてしまう。

このようなことから、合口がストレートの油か
きリングは、シール性を高めるには困難がある。
本考案は、合口部のシール性を高め潤滑油消費量
の低減を目的としてなされたものである。

（問題を解決するための手段） 本考案は、鋼製組合せ油かきリング、または、
鋳鉄製の上下２本の摺動面を有する油かきリング
の上部摺動面１に第１図、第２図に示すような、
合口を形成している。一方の合口端部の上方角部
には、周方向の突き出し部３を形成し、他方の合
口端部には、シリンダに装着した状態で、前記突
き出し部３を受け入れる凹部４を形成しておく。
この状態で突き出し部３と凹部４とは互いに内周
側より外周側に向かつて下方に傾斜している面で
接触している。

（作用） 本考案リングは、上部摺動面の上方合口部と下
部合口部とが互いに重なりあつた状態になるの
で、上下方向にまつすぐ貫通する合口隙間は形成
されていない。第３図、第４図に示すように、シ
リンダ壁の潤滑油は互いに重なり合つた傾斜面の
非常に狭い隙間Ｃ２を通つて燃焼室へ抜けるた
め、その消費量は著しく低減される。

また、合口部は、熱による膨張や外周摩耗の影
響によつて寸法が変化するが、周方向に接して重
なつているので、合口がぶつかりあうことも、合
口の隙間にも変化はない。

（実施例） 呼び径83mm、幅４mm、厚さ3.3mmの２本のサイ
ドレールとスペースエキスパンダとからなる鋼製
組合せリングの上方サイドレールに本考案構造の
合口部を形成した。このピストンリングを水冷４
気筒のガソリンエンジンに装着し、次に述べる試
験方法によつて潤滑油の消費量を測定してシール
性を評価した。

尚、本考案オイルリングの他に比較のため、従
来の合口部に突き出し部の無い鋼製組合せリング
についても同様の試験を行つた。

潤滑油の消費量は、エンジンの種類や運転条件
によつて大きく変わる。ここでは運転条件を変え
て、１時間あたりの平均消費量を測定した。

(イ) 全負荷試験 エンジンの回転数を高くすると、潤滑油の消費
量は増加する傾向にある。全負荷、5500rpmでの
消費量を測定した。

(ロ) ハイブースト試験 エンジンブレーキのようにブースト圧の低い状
態では、負圧により潤滑油は燃焼室に吸い込まれ
るため、消費量は急増する。ブースト圧−650mm
Hgでの消費量を測定した。

(ハ) サイクリツク試験 運転条件のうち特に重要なのは、運転パターン
による影響である。加速、減速の繰り返しの多い
運転条件の場合、消費量は増加する。高速回転と
アイドリングを数十秒づつ繰り返し、消費量を測
定した。

（効果） 第５図に試験結果を示す。従来のストレートに
切断された合口の潤滑油消費量を100として比較
してある。本考案油かきリングの潤滑油消費量
は、従来のストレートに切断された合口の油かき
リングに比べて、潤滑油の消費量が10〜30％減少
し、優れたシール性を有することがわかり、内燃
機関用油かきリングとして好適であることが理解
される。

【図面の簡単な説明】

第１図は鋼製油かきリングの斜視図、第２図は
鋳鉄製油かきリングの斜視図、第３図は油かきリ
ングの中を潤滑油が通る様子を矢印であらわした
図、第４図は本考案油かきリングをピストンに装
着した断面の一部を示す図、図中１：上部摺動
面、２：下部摺動面、３：突き出し部、４：突き
出し部を受入れる凹部、５：スペーサエキスパン
ダ、６：ピストン、７：シリンダ、第５図は実機
試験機による潤滑油の消費量を比較した図、図中
Ａ：従来の油かきリング、Ｂ：本考案の油かきリ
ング。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 上下２本のシリンダと接触する摺動面を有する
   油かきリングにおいて、上部摺動面の一方の合口
   端部の上方角部には、周方向の突き出し部を設
   け、他方の合口端部には、シリンダに装着状態で
   前記突き出し部を受け入れる凹部を設けた合口部
   を備え、突き出し部と凹部とは互いに内周側から
   外周側に向かつて下方に傾斜している面で接触し
   ていることを特徴とする内燃機関用油かきリン
   グ。