JPH032459Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 考案の分野 この考案は、手押車のハンドル高さを調整する
ための機構に関する。

考案の背景 乳母車や荷物運搬車などの手押車には、手押用
のハンドルが設けられている。一般には、このハ
ンドルは手押車本体に固定されていて、その高さ
の調整は不可能である。そのために種々の不便を
来たしていた。すなわち、手押車を押す人の中に
は、背の高い人もいれば、低い人もいる。そのよ
うな人にとつてみれば、ハンドルの高さを変える
ことができないのは、甚だ不便に感ずるものであ
る。

本願考案にとつて興味ある先行技術として、実
公昭35−923号公報に開示された乳母車がある。
この公報に開示された乳母車では、手押枠の高さ
を調整し得るようにしている。具体的には、手押
枠の脚部を摺動自在に受入れている支柱に、複数
個のロツク穴を設け、手押枠の脚部に上記ロツク
穴に係合し得るロツクピンを取付けている。ロツ
クピンとロツク穴との係合を解除すれば、手押枠
は上下方向に移動させることができる。

ところが、上記公報に開示された乳母車には、
以下のような問題点がある。

まず、ロツクピンとロツク穴との係合状態を解
除するには、支柱上に突出しているロツクピンの
先端部分を直接手または棒などによつて押込まな
ければならない。そのような操作は面倒であり、
また危険でもある。

さらに、ロツクピンとロツク穴とによつて構成
されるロツク機構は、乳母車の左右側部にそれぞ
れ別個に設けられているので、ロツク解除のため
の操作が一層面倒なものになつている。

考案の目的 それゆえに、この考案の目的は、手押車のハン
ドルの高さを容易かつ迅速に、しかも安全性をも
つて調整することのできる手押車のハンドル高さ
の調整機構を提供することである。

考案の構成および効果 この考案によれば、手押用のハンドルは、左右
方向に延びる把手部分を有する上棒と、この上棒
を上下方向に摺動可能に支持する筒状の左下棒お
よび右下棒とからなる。上棒は、把手部分の左端
および右端からそれぞれ下方に延びる筒状の左上
棒部分および右上棒部分を有している。左下棒お
よび右下棒はそれぞれ左上棒部分および右上棒部
分の内壁面内に受入れられる。

左下棒および右下棒の壁にはそれぞれ、所定の
間隔で上下方向に整列した複数個のロツク穴が形
成される。このに対応して、左下棒および右下棒
にオーバラツプする上棒の壁に該壁面に対して直
交する方向にスライドし得る左ロツクピンおよび
右ロツクピンとが設けられる左ロツクピンおよび
右ロツクピンはそれぞれ、左下棒および右下棒に
形成されているロツク穴を挿通して左下棒および
右下棒の内壁面上にまで突出し得る軸部を有して
いる。また、左ロツクピンおよび右ロツクピン
は、それぞれ左ロツクばねおよび右ロツクばねに
よつて左下棒および右下棒に向かつて移動するよ
うに付勢されている。

左下棒および右下棒のそれぞれの内壁面内に
は、左スライド棒および右スライド棒がスライド
可能に配置される。この左スライド棒および右ス
ライド棒は、上棒に沿つて配置される連結棒を介
して連結される。この連結棒は、所定の範囲だけ
上下動できるようにされている。また、連結棒、
左スライド棒および右スライド棒は、調整ばねに
よつて、一体となつて下方へ向かつて移動するよ
うに付勢されている。

左スライド棒および右スライド棒には、それぞ
れ、上方への移動に際して左ロツクピンおよび右
ロツクピンの突出部分に当接してこの突出部分を
引つ込ませる傾斜面と、傾斜面の下縁から下方に
連なつて延び左下棒および右下棒の内壁面に当接
する当接面とが形成されている。

傾斜面の下縁は、左スライド棒および右スライ
ド棒が下方位置にあるときには、ロツク穴よりも
下方に位置するものである。

以上のように、この考案によれば、手押用のハ
ンドルが上棒と、この上棒を上下方向に摺動可能
に支持する左下棒および右下棒とからなり、さら
に左下棒および右下棒の壁に形成されたロツク穴
と上棒の壁に設けられた左ロツクピンおよび右ロ
ツクピンとが係合し得る構成とされ、しかもこの
係合は左スライド棒および右スライド棒をスライ
ドさせれば解除され得る構成となつているので、
左スライド棒および右スライド棒を連結している
連結棒を移動操作すれば容易に上棒の摺動を禁止
したり許容したりすることができる。それゆえ
に、この考案によれば、手押車を押す人の背の高
さに応じて、ハンドルの高さを容易かつ迅速に、
しかも安全性をもつて調整することが可能とな
る。

実施例の説明 第１図はこの考案に従つた一実施例を適用した
乳母車の斜視図である。乳母車１は、手摺２，２
と、前輪３，３を有する前脚４，４と、後輪５，
５を有する後脚６，６と、座席を支持するための
座席支持棒７，７と、左右の部材を連結する連結
部材８，９，１０と、下端部が後脚６，６に連結
される押棒すなわちハンドル１１と、を備える。
ハンドル１１は、乳母車１を移動させるときに使
用されるものである。この考案は、このハンドル
１１の高さを調整するための機構に関する。

ハンドル１１は、全体として逆Ｕ字形状をなし
ており、左右方向に延びる把手部分１２を有する
上棒１３と、この上棒１３を上下方向に摺動可能
に支持する筒状の左下棒１４および右下棒１５と
からなる。上棒１３は、把手部分１２の左端およ
び右端からそれぞれ下方に延びる筒状の左上棒部
分１６および右上棒部分１７を有している。左下
棒１４および右下棒１５はそれぞれ、この左上棒
部分１６および右上棒部分１７の内壁面内に受入
れられている。

第２図は、上棒１３と右下棒１５とが重なり合
つた部分を示す断面図であり、第３図は第２図の
線−に沿つて見た断面図である。なお、上棒
１３と右下棒１５とが重なり合つた部分と、上棒
１３と左下棒１４とが重なり合つた部分との構成
は実質的に同一であるので、以下には右下棒１５
に関連した構成についてのみ説明し、左下棒１４
に関連した構成についての説明を省略する。

第２図に示すように、把手部分１２の右端から
下方に延びる右上棒部分１７は筒状をなし、この
筒の内壁面１８によつて規定される受入開口１９
内に、筒状の右下棒１５が受入れられている。右
下棒１５の壁には、所定の間隔で上下方向に整列
した複数個のロツク穴２０，２１，２２が形成さ
れている。

これに関連して、右下棒１５にオーバラツプす
る右上棒部分１７の壁には、第２図および第３図
に示すように、該壁面に対して直交する方向に延
びた開口２３が形成される。この開口２３内には
右ロツクピン２４が開口２３の長さ方向に沿つて
スライドし得るように配置される。そして、右ロ
ツクピン２４は、右下棒１５に形成されているロ
ツク穴２０，２１，２２を挿通して右下棒１５の
内壁面２５上にまで突出し得る軸部２６を有して
いる。また、右上棒部分１７の外壁面上には開口
２３を覆う蓋２７が取付けられ、この蓋２７と右
ロツクピン２４との間に右ロツクばね２８が配置
される。したがつて、右ロツクピン２４は、この
右ロツクばね２８によつて、右下棒１５に向かつ
て移動するように付勢されていることなる。

第２図および第３図に示すように、右ロツクピ
ン２４の軸部２６が右下棒１５のロツク穴２０，
２１，２２内を挿通しているときには、右上棒部
分１７すなわち上棒１３の摺動が禁止される。こ
の摺動を禁止している状態は、右ロツクばね２８
の働きにつて、確実に保持される。

右下棒１５の内壁面２５内には、上下方向にス
ライド可能とされた右スライド棒２９が配置され
る。右スライド棒２９の下端部３０は、ロツク穴
２０，２１，２２が形成されている右下棒１５の
内壁面２５に当接し得るような大きさとされる。
一方、この下端部３０の上方に位置する上方部３
１は、ロツク穴２０，２１，２２が形成されてい
る内壁面２５との間に隙間３２が形成され得るよ
うな大きさとされる。そして、下端部３０と上方
部３１との間に傾斜面３３が形成される。下端部
３０は、傾斜面３３の下縁から下方に連なつて延
び右下棒１５の内壁面２５に当接する当接面を有
している。

右スライド棒２９に関連して、右上棒部分１７
にはその上端部から受入開口１９にまで通ずる挿
通穴３４が形成される。また、第２図および第４
図に示すように、把手部分１２の中央付近から右
端部にかけて、その底面に上方に向く凹部３５が
形成されている。この凹部３５および挿通穴３４
内には連結棒３６が通過して延びている。連結棒
３６の一方端は右スライド棒２９の上端部に連結
される。図示されていないが、左下棒１４の内壁
面内には右スライド棒２９と実質的に同一な左ス
ライド棒が配置されており、連結棒３６の他方端
はこの左スライド棒の上端部に連結される。第１
図および第２図に示すように、連結棒３６の中央
部分３７は、凹部３５から出て把手部分１２の下
方に突出するようにされている。さらに、連結棒
３６は、所定の範囲だけ上下動できるようにされ
ている。図示された実施例では、連結棒３６の下
方への移動の終端は、連結棒３６と右上棒部分１
７の上端部にある当り面３８とが当接することに
よつて規定される。一方、連結棒３６の上方への
移動の終端は、連結棒３６と凹部３５の底部３９
とが当接することによつて規定される。

第２図に示すように、右スライド棒２９の上端
部にはばね受け４０が固着されており、このばね
受け４０と受入開口１９の上端面４１との間に調
整ばね４２が配置される。したがつて、連結棒３
６、右スライド棒２９および左スライド棒は、こ
の調整ばね４２によつて、ともに下方へ向かつて
移動するように付勢されていることになる。右ス
ライド棒２９および左スライド棒のスライド操作
は、連結棒３６の中央部分３７を上下動させるこ
とによつて行なわれる。すなわち、乳母車を押す
人が把手部分１２と連結棒３６の中央部分３７と
を同時に握つて中央部分３７を上方へ移動させれ
ば、右スライド棒２９および左スライド棒は上方
へスライドする。そして、握つていた手を離せ
ば、右スライド棒２９および左スライド棒は、調
整ばね４２の働きによつて下方へスライドする。

連結棒３６を操作してていないとき、すなわち
右スライド棒２９が相対的に下方の位置にあると
きには、右スライド棒２９に形成されている傾斜
面３３の下縁は、右ロツクピン２４が嵌まり込ん
でいるロツク穴（たとえば２２）よりも下方に位
置している。言い換えれば、右ロツクピン２４の
軸部２６は、傾斜面３３の下縁よりも上方に位置
している。

連結棒３６を操作することによつて右スライド
棒２９を上方に移動させると、右スライド棒２９
の傾斜面３３が、右下棒１５の内壁面２５上に突
出している右ロツクピン２４の軸部２６に当操し
て、この突出部分を引つ込ませる。

連結棒３６の操作によつて右スライド棒２９が
最も上方に位置しているときには、傾斜面３３の
下縁は、右ロツクピン２４が嵌まり込でいるロツ
ク穴よりも上方に位置している。その状態では、
右スライド棒２９の当接面が右ロツクピン２４の
軸部２６の先端に当接している。

傾斜面３３、ロツク穴２０，２１，２２および
右ロツクピン２４の軸部２６は、第５図および第
６図に示す状態が得られるように、その形状が選
ばれる。すなわち、連結棒３６を上方へ移動操作
すると傾斜面３３が軸部２６を右ロツクばね２８
の力に抗して押上げて第５図に示す状態となる。
その後、右上棒部分１７すなわち上棒１３をスラ
イド操作すると軸部２６がロツク穴２２から外れ
て右下棒１５の外壁面上に移動し、第６図に示す
状態となる。上記動作を達成するための形状の一
例として、ロツク穴２０，２１，２２は、右下棒
１５の外壁面から内壁面に向かつてその径が次第
に小さくなるようなテーパ形状とされ、軸部２６
の先端は丸面形状とされ、傾斜面３３の傾斜角度
は適当に選ばれる。

こうして、連結棒３６を移動操作し、その後適
当なハンドル高さとなるように上棒１３を所定位
置にまで摺動させた後連結棒３６をつかんでいた
手を離せば、右ロツクピン２４は右ロツクばね２
８の働きによつて右下棒１５に向かつて移動し、
ロツク穴２０，２１，２２と係合する。その結
果、上棒１３の摺動が禁止される。このように、
ハンドルの高さは容易に調整される。

以上の説明では、この考案が適用される手押車
の例として乳母車が示された。しかしながら、手
押車の例としては、乳母車に限られず、たとえば
シヨツピングカーや荷物運搬車などの手押車であ
つてもよい。

【図面の簡単な説明】

第１図は、この考案の一実施例を適用した乳母
車の斜視図である。第２図は、第１図に示されて
いる上棒１３と右下棒１５とが重なり合つた部分
を示す断面図である。第３図は、第２図の線−
に沿つて見た断面図である。第４図は、第２図
の線−に沿つて見た断面図である。第５図
は、第２図に示されている右ロツクピン２４と右
スライド棒２９とロツク穴２２とを拡大して示し
た断面図であり、第５図に示す状態は、第２図の
状態から、右スライド棒２９を上方へスライドさ
せた後の状態である。第６図は、第５図の状態か
ら、右上棒部分１７を上方へスライドさせた後の
状態を示している。 図において、１は乳母車、１１はハンドル、１
２は把手部分、１３は上棒、１４は左下棒、１５
は右下棒、１６は左上棒部分、１７は右上棒部
分、１８は右上棒部分の内壁面、２０，２１，２
２はロツク穴、２４は右ロツクピン、２５は右下
棒の内壁面、２６は右ロツクピンの軸部、２８は
右ロツクばね、２９は右スライド棒、３３は右ス
ライド棒の傾斜面、３６は連結棒、４２は調整ば
ねを示す。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 左右方向に延びる把手部分と、該把手部分の左
   端および右端からそれぞれ下方に延びる筒状の左
   上棒部分および右上棒部分とを有する上棒、およ
   び 前記左上棒部分および右上棒部分のそれぞれの
   内壁面内に受入れられ、前記上棒を上下方向に摺
   動可能に支持する筒状の左下棒および右下棒、 からなる手押車のハンドルの高さを調整するため
   の機構であつて、 前記左下棒および右下棒の壁にそれぞれ所定の
   間隔で上下方向に整列して形成された複数個のロ
   ツク穴と、 前記左下棒および右下棒にオーバラツプする前
   記上棒の壁に該壁面に対して直交する方向にスラ
   イドし得るように設けられ、かつ前記ロツク穴を
   挿通して前記左下棒および右下棒の内壁面上にま
   で突出し得る軸部を有する左ロツクピンおよび右
   ロツクピンと、 前記左ロツクピンおよび右ロツクピンがそれぞ
   れ前記左下棒および右下棒に向かつて移動するよ
   うに付勢する左ロツクばねおよび右ロツクばね
   と、 前記左下棒および右下棒のそれぞれの内壁面内
   にスライド可能に配置される左スライド棒および
   右スライド棒と、 前記上棒に沿つて配置され、かつ、その両端が
   前記左スライド棒および右スライド棒に連結さ
   れ、さらに所定の範囲だけ上下動できるようにさ
   れている連結棒と、 前記連結棒、左スライド棒および右スライド棒
   がともに下方へ向かつて移動するように付勢する
   調整ばねと、 を備え、 前記左スライド棒および右スライド棒には、そ
   れぞれ、上方への移動に際して前記左ロツクピン
   および右ロツクピンの前記突出部分に当接してこ
   の突出部分を引つ込ませる傾斜面と、前記傾斜面
   の下縁から下方に連なつて延び前記左下棒および
   右下棒の内壁面に当接する当接面とが形成されて
   おり、 前記傾斜面の下縁は、前記左スライド棒および
   右スライド棒が下方位置にあるときには、前記ロ
   ツク穴よりも下方に位置するものである、手押車
   のハンドル高さ調整機構。