JPH0321844Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は各刃先端部のすくい面にほぼ垂直方向
へ伸長するようダイヤモンド工具素材のチツプを
取付けた切削刃物に関し特にダイヤモンド刃物の
刃先部分の構造に関する。

第１〜３図に示す様に従来よりダイヤモンド焼
結a₀を具備するダイヤモンド工具素材A₀をチツ
プとして刃先に用いた切削刃物は知られている。
ダイヤモンド工具素材A₀は、ダイヤモンド層が
高温高圧下でその面と同表面積を持つ超硬合金に
より裏打ちされており、これを切刃として用いる
為には、第４図に示すような矩形形状に切断しこ
れを第５図に示すように先端部を研磨し又は研磨
するためにそれを刃物本体にロウ付もしくはネジ
止めすることにより固着している。ロウ付にて固
着する場合にはダイヤモンド層にはロウが乗らな
いのでその裏打ちした超硬合金層b₀と刃物本体Ｂ
とを接合するようにする（第３図）。

この場合、ダイヤモンド層a₀が非常にもろいと
いう理由により常に超硬合金層b₀がダイヤモンド
層a₀の補強となるようにして各刃先へ接合されて
いる。回転切削刃物を例に挙げてみると、ダイヤ
モンド工具素材A₀はそのすくい面の部分にロウ
付される。従つて、ダイヤモンド層a₀は刃物本体
Ｂのすくい面と平行に即ち刃物の半径方向へ伸長
するように固着されていることになる（第３図）。

しかしながらこのような方法にて製作すると、
すくい面すべてがダイヤモンド層になるように接
合されることとなり、ダイヤモンド焼結体層が広
範囲にわたるダイヤモンド工具素材を使用せねば
ならない。

その結果価格面で非常に高価なものになる欠点
があつた。その上また、ダイヤモンド刃先の寿命
が超硬合金のそれと比べて約100倍と非常に長い
にも拘らず刃物本体部及びロウ付層が使用による
疲労の為にそのダイヤモンド刃先の寿命を完全に
償却する以前に破壊してしまうという欠点があ
り、そのためせつかく高価なダイヤモンドを使用
したにも拘らずダイヤモンドの寿命を残したま
ま、その刃物を捨てねばならなかつた。

本考案はそれらの欠点を解消することを目的と
する。即ち本考案は疲労による刃物本体部及びロ
ウ付層の破壊がダイヤモンド刃先を数回再研磨し
て使用出来る期間に概ね一致することに鑑みダイ
ヤモンド刃先が数回の再研磨に必要なダイヤモン
ド量のみを用いるダイヤモンド刃物を考案した。

本考案は非常に高価なダイヤモンド工具素材を
必要最少量使うことにより、切削性能は従来品と
変りなく、より安価なダイヤモンド刃先を持つ切
削工具を提供出来るものである。

以下本考案の具体例について述べる。

本考案の切削刃物の外観は第１図に示す公知の
ダイヤモンド刃物と同様である。前述の通り本考
案は各刃先の半径方向に伸長するすくい面全面に
わたりダイヤモンド焼結体を配置する第３図に示
すような構成では、ダイヤモンド焼結体が切削作
業上本質的に必要とされない部分にも配設されそ
の結果余分なダイヤモンド焼結体を必要とし、そ
の上これまでの構成の刃物では刃物本体部分や該
本体部へ対する超硬合金部分のロウ付層がダイヤ
モンド刃先が未だ使用可能な間に疲労破壊してし
まうことによるダイヤモンド焼結体の損失をなく
すことをその主眼としたものである。そのため本
考案では出来るだけダイヤモンド焼結体の使用を
制限した形態としたものである。即ち、本考案で
は第６図に示すように、ダイヤモンド焼結体ａが
超硬合金ｂの先端部において刃物の接線方向に伸
長するように配置している。このためダイヤモン
ド焼結体ａの使用量が従来のものa₀に比し著るし
く減少しているものである。

本考案が従来のものに比し特に異なる点は、ダ
イヤモンド焼結体ａが切削方向において超硬合金
ｂによつて裏打ちされていないことにある。これ
までの考え方によれば、本考案のような超硬合金
による裏打ちのない取付け方は、該チツプの取付
強度面において大きい問題があると考えられてい
た。しかし本件考案者は、第３図の様な超硬合金
で裏打ちされた従来の場合でもそれを拡大して考
えた場合、実際に直接切削力が作用する刃先先端
部分即ち第３図の破線ｃの上方部分はダイヤモン
ド層a₀のみであり、裏打されている部分はそれ以
外の実際には切削力が作用しない部分であること
を発見したものである。この発見により裏打ちの
ない本件考案がこれまでの取付強度面での懸念を
完全に一掃したことを確信するに至つたのであ
る。

本考案のチツプを構成するには初めにダイヤモ
ンド工具素材を第７図に示すように切断する。こ
こでＡはダイヤモンド工具素材を所定の大きさに
切断したチツプであり、ａはダイヤモンド焼結体
層、ｂは超硬金層である。一例としてａの厚みは
0.5mm、ｂの厚みは2.7mmである。次いでこのチツ
プを刃物の切削刃へロウ付けなどの公知の手段で
固着した後このチツプのダイヤモンド層ａの上面
を斜めにスカイビングし、第６図及び第８図に示
すような断面が３角形をなすようなダイヤモンド
の三角柱ａを形成し、研磨する。

本考案によればこれまでのダイヤモンド刃物と
同等の強度を有すると同時に使用するダイヤモン
ド層が第３図に示すような公知のものに比し著る
しく減少する上に、該ダイヤモンド層の再研磨が
効かなくなつたころに丁度刃物本体部及びロウ付
層が疲労破壊するのでダイヤモンド層に無駄がな
くなるなどの種々の利点がある。

ダイヤモンド刃物は工具寿命が従来の超硬刃物
に比べ約100倍と非常に長寿命である為に、刃先
の摩耗による後退量が少さく工具補正をする率が
減少する。さらに工具交換の回数も減ることか
ら、切削時間の延びと、段取り時間の減少という
二重のメリツトがある。

特に、本考案によるダイヤモンド刃物は再研磨
回数が２〜３回をねらう設計であるので、外径寸
法、切断幅等の許容範囲が狭い場合にも、ダイヤ
モンド刃先がまだ残つているのに寸法の制約があ
つて使うことが出来ないというようなことがなく
有効かつ経済的に使用できる。また最大のメリツ
トは従来品に比べ価格を大幅に下げることができ
ることである。

さらに本考案によるダイヤモンド工具素材の使
用方法は、丸鋸カツター、ルーター、バイトにと
どまらずあらゆる用途の種々の刃物にも適用する
ことが出来非常に有用な方法と言える。以上述べ
たように本考案は従来の方法とは異にし、ダイヤ
モンド工具素材を節約して用いることができ、そ
の切削性能は従来の設計に依つて造られた刃物と
全く同様であり、かつその寿命が長いので再研磨
回数が少くても充分にその加工数に用を足すこと
が出来る勝れた効果を持つ有用な考案と言える。

【図面の簡単な説明】

第１図は公知の回転切削刃物の平面、第２図は
第１図の線２−２矢視図、第３図は公知のダイヤ
モンド刃物の切削端部の拡大図、第４図はダイヤ
モンド工具素材から切取つた公知のチツプの形状
を示す図、第５図は第４図のチツプを研磨した状
態を示す図、第６図は本考案を第１図に示す回転
切削刃物へ応用した場合の第３図と同様の図、第
７図は本考案における第４図と同様の図、第８図
は第７図のチツプを研磨した第５図と同様の図で
ある。 符号の説明、Ａ……ダイヤモンド工具素材から
成るチツプ、ａ……ダイヤモンド焼結体、ｂ……
超硬合金。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 刃物本体Ｂと、該本体Ｂの外周辺刃部に装着し
   た複数のダイヤモンド工具素材チツプＡと、から
   成る回転刃物であつて、 各チツプＡが、ダイヤモンド焼結体層ａと、超
   硬合金層ｂと、から成り、 ダイヤモンド焼結体層ａが、前記超硬合金層ｂ
   の先端部において刃物のすくい面方向及び該すく
   い面にほぼ垂直方向に伸長する断面を有しかつ刃
   幅方向に伸長し、これにより該ダイヤモンド焼結
   体層ａが超硬合金層ｂを介して刃物本体Ｂへ固着
   したチツプＡの先端部にのみ配置され、 これにより当該ダイヤモンド焼結体層ａが、刃
   物のすくい面から、当該すくい面にほぼ垂直な方
   向にはなれるに従いうすくなる、断面が概ね三角
   形状を有するとともに、前記刃幅方向に全体にわ
   たつて伸長する、全体形状が概ね三角柱を有して
   いることを特徴とする回転切削刃物。