JPH027390B2 - - Google Patents
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- JPH027390B2 JPH027390B2 JP60016089A JP1608985A JPH027390B2 JP H027390 B2 JPH027390 B2 JP H027390B2 JP 60016089 A JP60016089 A JP 60016089A JP 1608985 A JP1608985 A JP 1608985A JP H027390 B2 JPH027390 B2 JP H027390B2
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Landscapes
- Braking Arrangements (AREA)
Description
(イ) 産業上の利用分野
本発明は、オートバイデイスクブレーキ用など
焼き入れ硬化と耐食性が要求されるマルテンサイ
ト系ステンレス鋼に関するもので、焼入れ性と耐
銹性の改善を目的としたものである。 (ロ) 従来の技術 マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ硬化
が可能であることから、耐食性が必要な強度部品
に広く使用されている。特に、オートバイデイス
クブレーキには十分な耐銹性と耐摩耗性が要求さ
れることから、主としてSUS420J1鋼や
SUS420J2鋼を焼入れ焼戻しして使用している。
しかし近年、低炭素マルテンサイト系ステンレス
鋼を用いて焼戻し処理をすることなく使用可能な
材料が特開昭57−198249号公報や特開昭59−
70748号公報に提案されている。即ち、鋼中の
Mnを増量してオーステナイト相を確保した上で
CおよびNの含有量を制御して所定の硬さを得る
方法であり、製造工程が簡略化される上に焼戻し
によるCr炭化物の析出がないことからCr欠乏相
が生成せず耐食性の劣化がないという利点があ
る。 しかし、これらの方法においてはオーステナイ
ト相を確保するためにCrはせいぜい13%程度ま
でしか上げられないため、他のオートバイ部品に
比べて耐銹性のレベルは低くせざるを得なかつ
た。また、硬さをCとNの含有量の和で制御する
ために焼き入れ時にCとNの析出物(炭化物、窒
化物)を全て固溶させる必要があり、硬さを確保
するためには溶体化時間を十分に確保するか溶体
化温度を必要以上に上げざるを得なかつた。 (ハ) 発明が解決しようとする問題点 本発明は、低炭素全面マルテンサイト相を活用
した鋼において以上の欠点即ち耐銹性のレベルが
低い点および比較的長時間の焼入れ溶体化時間を
確保せざるを得ない点を解決すべくなされたもの
である。 (ニ) 問題点を解決するための手段 まず、本発明者らは低炭素マルテンサイト系ス
テンレス鋼において耐銹性に及ぼす合金元素の影
響を検討し、耐銹性向上のためにはMnの低下が
必要であることを見いだした。この理由を詳細に
検討したところ、Mnは耐銹性を著しく劣化させ
るMnSを生成し易いためであることが判明した。
MnSの悪影響を除くためには、例えば直接Sを
低減することや(特開昭57−198249号公報)、Ti
を添加してSを化学的に固定する方法(特開昭57
−198249号公報)が提案されている。しかしこれ
らの方法は、著しくコストがかかつたり、本発明
の必須条件である全面をオーステナイト相にする
合金設計に反するなど、本発明には適用できない
ものである。本発明者らはこれに対して、他の合
金元素によつてSを安定化する方法を検討したと
ころ、Cuが有効であることを見いだした。即ち、
CuはMnに先だつてSと反応しなおかつ反応生成
物のCuSはMnSとは異なり化学的に安定で発銹
の起点とならないのである。 次に、本発明者らは焼入れ性、特に焼入れ溶体
化時間に及ぼす炭化物、窒化物のサイズや形状の
影響を検討した結果、溶体化に最も時間の要する
析出物の形状は、0.5μm以上の球状を呈したもの
であり、次いでそれより小さい球状析出物が溶体
化しにくく針状の析出物は最も容易に短時間で固
溶することを見いだした。 以下に調査結果に基づいて詳細に説明する。第
1図Aは、第1表のNo.1に示した鋼の焼入れ処理
直前の抽出レプリカによる析出物の電子顕微鏡写
真である。焼き入れ処理前の試料には、粗大な球
状析出物と針状の析出物が多数認められる。電子
線回折の結果、粗大な球状析出物はM25C6タイプ
の結晶であり、針状の析出物はβ−Cr2Nタイプ
の構造であつた。そして、それぞれの結晶中には
CあるいはNだけでなく、いずれもC、Nの両者
が固溶しており、どちらの析出物も結晶構造は異
なつても炭窒化物であると言うことができる。 第1図Bは、同じ鋼の950℃−1minの焼入れ処
理直後の抽出レプリカによる析出物の電子顕微鏡
写真である。焼入れ溶体化処理を実施しているが
焼入れ前の析出物は完全には溶けきつておらず、
一部に未固溶のままで残留していることが認めら
れる。そして、特徴的なのは未固溶の析出物は全
て球状析出物である点である。このように球状析
出物は針状の析出物に比べて溶体化しにくいこと
が確認された。 さらに、この知見に基づき鋼中のCやNの含有
量と析出する炭窒化物の結晶系との関係を検討し
た結果、Cが0.10%以下の場合、Nが0.03%以上
含有していると主として針状のβ−Cr2Nタイプ
の炭窒化物が析出することが判明した。 本発明は、以上の知見に基づいてなされたもの
である。 次に、本発明の限定理由を示す。 Cは、焼入れ後所定の硬度を得るためには必須
の元素であり、要求される硬度レベルに応じてN
と組み合わせて添加する。しかし、0.10%を超え
て添加するといわゆる焼戻し材で得られる硬度レ
ベル以上の硬度となり、本発明の目的とする焼戻
し不要型のマルテンサイト系ステンレス鋼の範疇
をはずれることから上限とした。また0.04%未満
では、焼入れ後の硬度が低すぎるので下限とし
た。 Nは、Cと同様に焼入れ後所定の硬度を得るた
めには必須の元素であり、要求される硬度レベル
に応じてCと組み合わせて添加する。この場合、
0.03%未満では固溶しやすい針状のβ−Cr2Nタ
イプの炭窒化物が主として析出せず固溶しにくい
M23C6タイプの球状炭窒化物が主として析出する
ことから、0.03%を下限とした。また、0.07%を
超える添加は製造技術的に困難であるだけでな
く、溶接などが著しく困難となるので上限とし
た。 Mnは、多量に添加すると耐銹性を劣化させる
ので1.2%を上限とし、0.5%未満では焼入れ溶体
化処理により全面オーステナイト相とすることが
困難となるので0.5%を下限とした。 Sは、多量に含まれるとたとえ前述したような
Cuの効果が得られても耐食性の劣化につながる
ので、上限を0.01%とした。 Crは、10%未満ではステンレス鋼としての基
本的な耐食性に欠けるので下限とし、15%を超え
て添加すると焼入れ溶体化処理により全面オース
テナイト相とすることが困難となるばかりでな
く、Cu添加による耐銹性向上の効果が無駄とな
り生かされないので15%を上限とした。 Niは、焼入れ溶体化処理により全面オーステ
ナイト相とする点からは有利な添加元素であるの
で、技術的には添加量は限定されないが、コスト
的に不利であるので上限を0.6%とした。 Cuは、本発明における主要な元素の一つであ
るが、SをCuSとして固定するためには0.3%以
上の添加が必要であるので下限とした。また、
Cuも焼入れ溶体化処理により全面オーステナイ
ト相とする点からは有利な添加元素であるので、
技術的には添加量の上限は限定されないが、1.0
%を超えて添加するとコスト的に不利な上に熱間
加工性が低下するので1,0%を上限とした。 (ホ) 作用 以上示したように本発明においては、Mnを低
減しCuを添加することによつてSの耐銹性に及
ぼす悪影響を防止すると同時に、焼入れ溶体化処
理により全面をオーステナイト相とし完全焼入れ
を可能ならしめたものであり、それに加えてCの
代わりにNを積極的に添加して焼入れ溶体化を促
進したものである。この結果、全面をオーステナ
イト相とするためのMn多量添加によつて犠性に
せざるを得なかつた耐銹性の劣化を防止すること
が可能となり、なおかつ焼入れ溶体化が容易にな
ることから焼入れ処理のバラツキに起因する焼き
入れ硬度の精度不良は解消するととなつた。 (ヘ) 実施例 第1表のNo.1〜4および6に示した化学組成の
鋼を、溶解後6mm厚に熱間圧延し次いで軟化焼鈍
した後、種々の条件で焼入れ処理を行なつた。但
し、No.6の鋼のみ焼き戻し処理を加えた。この材
料の硬度および耐銹性を、ロツクウエル硬度と
24HRの加速型塩水噴霧試験で評価した。加速型
塩水噴霧試験は、JIS−Z2371に規定された塩水
噴霧試験方法において噴霧溶液中に過酸化水素を
添加した塩水噴霧試験である。この結果を、焼入
れ条件とともに第2表に示した。本発明鋼は、
900〜1100℃の広い範囲でHRCのバラツキが±1
以下と非常に安定した焼入れ硬度を示し、耐銹性
も良好であることがわかる。 第1表のNo.1およびNo.5に示した化学組成の鋼
を同じく溶解、熱間圧延、軟化焼鈍後、950℃に
て焼入れ、溶体化時間を変えて焼入れ処理を行な
つた。これらの材料のクロツクウエル硬度の測定
結果を、第2図に示した。No.1の本発明鋼は、保
定時間10sec以上でほぼ完全焼入れとなり安定し
た硬さを示すことがわかる。これに対して、比較
に用いたNo.5の鋼は保定時間が60secまででは十
分な硬度が得られず、不完全焼入れで固溶が不十
分であつたことが推定される。
焼き入れ硬化と耐食性が要求されるマルテンサイ
ト系ステンレス鋼に関するもので、焼入れ性と耐
銹性の改善を目的としたものである。 (ロ) 従来の技術 マルテンサイト系ステンレス鋼は、焼入れ硬化
が可能であることから、耐食性が必要な強度部品
に広く使用されている。特に、オートバイデイス
クブレーキには十分な耐銹性と耐摩耗性が要求さ
れることから、主としてSUS420J1鋼や
SUS420J2鋼を焼入れ焼戻しして使用している。
しかし近年、低炭素マルテンサイト系ステンレス
鋼を用いて焼戻し処理をすることなく使用可能な
材料が特開昭57−198249号公報や特開昭59−
70748号公報に提案されている。即ち、鋼中の
Mnを増量してオーステナイト相を確保した上で
CおよびNの含有量を制御して所定の硬さを得る
方法であり、製造工程が簡略化される上に焼戻し
によるCr炭化物の析出がないことからCr欠乏相
が生成せず耐食性の劣化がないという利点があ
る。 しかし、これらの方法においてはオーステナイ
ト相を確保するためにCrはせいぜい13%程度ま
でしか上げられないため、他のオートバイ部品に
比べて耐銹性のレベルは低くせざるを得なかつ
た。また、硬さをCとNの含有量の和で制御する
ために焼き入れ時にCとNの析出物(炭化物、窒
化物)を全て固溶させる必要があり、硬さを確保
するためには溶体化時間を十分に確保するか溶体
化温度を必要以上に上げざるを得なかつた。 (ハ) 発明が解決しようとする問題点 本発明は、低炭素全面マルテンサイト相を活用
した鋼において以上の欠点即ち耐銹性のレベルが
低い点および比較的長時間の焼入れ溶体化時間を
確保せざるを得ない点を解決すべくなされたもの
である。 (ニ) 問題点を解決するための手段 まず、本発明者らは低炭素マルテンサイト系ス
テンレス鋼において耐銹性に及ぼす合金元素の影
響を検討し、耐銹性向上のためにはMnの低下が
必要であることを見いだした。この理由を詳細に
検討したところ、Mnは耐銹性を著しく劣化させ
るMnSを生成し易いためであることが判明した。
MnSの悪影響を除くためには、例えば直接Sを
低減することや(特開昭57−198249号公報)、Ti
を添加してSを化学的に固定する方法(特開昭57
−198249号公報)が提案されている。しかしこれ
らの方法は、著しくコストがかかつたり、本発明
の必須条件である全面をオーステナイト相にする
合金設計に反するなど、本発明には適用できない
ものである。本発明者らはこれに対して、他の合
金元素によつてSを安定化する方法を検討したと
ころ、Cuが有効であることを見いだした。即ち、
CuはMnに先だつてSと反応しなおかつ反応生成
物のCuSはMnSとは異なり化学的に安定で発銹
の起点とならないのである。 次に、本発明者らは焼入れ性、特に焼入れ溶体
化時間に及ぼす炭化物、窒化物のサイズや形状の
影響を検討した結果、溶体化に最も時間の要する
析出物の形状は、0.5μm以上の球状を呈したもの
であり、次いでそれより小さい球状析出物が溶体
化しにくく針状の析出物は最も容易に短時間で固
溶することを見いだした。 以下に調査結果に基づいて詳細に説明する。第
1図Aは、第1表のNo.1に示した鋼の焼入れ処理
直前の抽出レプリカによる析出物の電子顕微鏡写
真である。焼き入れ処理前の試料には、粗大な球
状析出物と針状の析出物が多数認められる。電子
線回折の結果、粗大な球状析出物はM25C6タイプ
の結晶であり、針状の析出物はβ−Cr2Nタイプ
の構造であつた。そして、それぞれの結晶中には
CあるいはNだけでなく、いずれもC、Nの両者
が固溶しており、どちらの析出物も結晶構造は異
なつても炭窒化物であると言うことができる。 第1図Bは、同じ鋼の950℃−1minの焼入れ処
理直後の抽出レプリカによる析出物の電子顕微鏡
写真である。焼入れ溶体化処理を実施しているが
焼入れ前の析出物は完全には溶けきつておらず、
一部に未固溶のままで残留していることが認めら
れる。そして、特徴的なのは未固溶の析出物は全
て球状析出物である点である。このように球状析
出物は針状の析出物に比べて溶体化しにくいこと
が確認された。 さらに、この知見に基づき鋼中のCやNの含有
量と析出する炭窒化物の結晶系との関係を検討し
た結果、Cが0.10%以下の場合、Nが0.03%以上
含有していると主として針状のβ−Cr2Nタイプ
の炭窒化物が析出することが判明した。 本発明は、以上の知見に基づいてなされたもの
である。 次に、本発明の限定理由を示す。 Cは、焼入れ後所定の硬度を得るためには必須
の元素であり、要求される硬度レベルに応じてN
と組み合わせて添加する。しかし、0.10%を超え
て添加するといわゆる焼戻し材で得られる硬度レ
ベル以上の硬度となり、本発明の目的とする焼戻
し不要型のマルテンサイト系ステンレス鋼の範疇
をはずれることから上限とした。また0.04%未満
では、焼入れ後の硬度が低すぎるので下限とし
た。 Nは、Cと同様に焼入れ後所定の硬度を得るた
めには必須の元素であり、要求される硬度レベル
に応じてCと組み合わせて添加する。この場合、
0.03%未満では固溶しやすい針状のβ−Cr2Nタ
イプの炭窒化物が主として析出せず固溶しにくい
M23C6タイプの球状炭窒化物が主として析出する
ことから、0.03%を下限とした。また、0.07%を
超える添加は製造技術的に困難であるだけでな
く、溶接などが著しく困難となるので上限とし
た。 Mnは、多量に添加すると耐銹性を劣化させる
ので1.2%を上限とし、0.5%未満では焼入れ溶体
化処理により全面オーステナイト相とすることが
困難となるので0.5%を下限とした。 Sは、多量に含まれるとたとえ前述したような
Cuの効果が得られても耐食性の劣化につながる
ので、上限を0.01%とした。 Crは、10%未満ではステンレス鋼としての基
本的な耐食性に欠けるので下限とし、15%を超え
て添加すると焼入れ溶体化処理により全面オース
テナイト相とすることが困難となるばかりでな
く、Cu添加による耐銹性向上の効果が無駄とな
り生かされないので15%を上限とした。 Niは、焼入れ溶体化処理により全面オーステ
ナイト相とする点からは有利な添加元素であるの
で、技術的には添加量は限定されないが、コスト
的に不利であるので上限を0.6%とした。 Cuは、本発明における主要な元素の一つであ
るが、SをCuSとして固定するためには0.3%以
上の添加が必要であるので下限とした。また、
Cuも焼入れ溶体化処理により全面オーステナイ
ト相とする点からは有利な添加元素であるので、
技術的には添加量の上限は限定されないが、1.0
%を超えて添加するとコスト的に不利な上に熱間
加工性が低下するので1,0%を上限とした。 (ホ) 作用 以上示したように本発明においては、Mnを低
減しCuを添加することによつてSの耐銹性に及
ぼす悪影響を防止すると同時に、焼入れ溶体化処
理により全面をオーステナイト相とし完全焼入れ
を可能ならしめたものであり、それに加えてCの
代わりにNを積極的に添加して焼入れ溶体化を促
進したものである。この結果、全面をオーステナ
イト相とするためのMn多量添加によつて犠性に
せざるを得なかつた耐銹性の劣化を防止すること
が可能となり、なおかつ焼入れ溶体化が容易にな
ることから焼入れ処理のバラツキに起因する焼き
入れ硬度の精度不良は解消するととなつた。 (ヘ) 実施例 第1表のNo.1〜4および6に示した化学組成の
鋼を、溶解後6mm厚に熱間圧延し次いで軟化焼鈍
した後、種々の条件で焼入れ処理を行なつた。但
し、No.6の鋼のみ焼き戻し処理を加えた。この材
料の硬度および耐銹性を、ロツクウエル硬度と
24HRの加速型塩水噴霧試験で評価した。加速型
塩水噴霧試験は、JIS−Z2371に規定された塩水
噴霧試験方法において噴霧溶液中に過酸化水素を
添加した塩水噴霧試験である。この結果を、焼入
れ条件とともに第2表に示した。本発明鋼は、
900〜1100℃の広い範囲でHRCのバラツキが±1
以下と非常に安定した焼入れ硬度を示し、耐銹性
も良好であることがわかる。 第1表のNo.1およびNo.5に示した化学組成の鋼
を同じく溶解、熱間圧延、軟化焼鈍後、950℃に
て焼入れ、溶体化時間を変えて焼入れ処理を行な
つた。これらの材料のクロツクウエル硬度の測定
結果を、第2図に示した。No.1の本発明鋼は、保
定時間10sec以上でほぼ完全焼入れとなり安定し
た硬さを示すことがわかる。これに対して、比較
に用いたNo.5の鋼は保定時間が60secまででは十
分な硬度が得られず、不完全焼入れで固溶が不十
分であつたことが推定される。
【表】
【表】
【表】
(ト) 発明の効果
以上示したとおり、本発明鋼は耐銹性を劣化さ
せることなく、かつ広い温度範囲でまた短時間の
溶体化によつて完全焼入れが可能であり、所定の
硬度を得ることができる。その結果工業規模での
焼入れ処理では必然的に存在する条件のバラツキ
に起因する焼入れ硬度の精度不良は解消するな
ど、工業的な利点は大きい。
せることなく、かつ広い温度範囲でまた短時間の
溶体化によつて完全焼入れが可能であり、所定の
硬度を得ることができる。その結果工業規模での
焼入れ処理では必然的に存在する条件のバラツキ
に起因する焼入れ硬度の精度不良は解消するな
ど、工業的な利点は大きい。
第1図Aは、第1表に示した鋼の焼入れ処理直
前の、またBは、同じ鋼の950℃−1minの焼入れ
処理直後の抽出レプリカによる析出物の金属組織
電子顕微鏡写真である。第2図は、本発明鋼およ
び比較鋼の焼入れ硬度に及ぼす焼入れ溶体化時間
の影響を示す図である。
前の、またBは、同じ鋼の950℃−1minの焼入れ
処理直後の抽出レプリカによる析出物の金属組織
電子顕微鏡写真である。第2図は、本発明鋼およ
び比較鋼の焼入れ硬度に及ぼす焼入れ溶体化時間
の影響を示す図である。
Claims (1)
- 1 C:0.04〜0.10%、N:0.03〜0.07%、Si:
0.5%以下、Mn:0.5〜1.2%、S:0.01%以下、
Cr:10〜15%、Ni:0.6%以下、Cu:0.3〜1.0%
を含み、残部Feおよび不可避不純物からなるこ
とを特徴とする焼入れ性と耐銹性の優れた低炭素
マルテンサイト系ステンレス鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1608985A JPS61174361A (ja) | 1985-01-30 | 1985-01-30 | 焼入れ性と耐銹性の優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP1608985A JPS61174361A (ja) | 1985-01-30 | 1985-01-30 | 焼入れ性と耐銹性の優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS61174361A JPS61174361A (ja) | 1986-08-06 |
JPH027390B2 true JPH027390B2 (ja) | 1990-02-16 |
Family
ID=11906797
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP1608985A Granted JPS61174361A (ja) | 1985-01-30 | 1985-01-30 | 焼入れ性と耐銹性の優れた低炭素マルテンサイト系ステンレス鋼 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JPS61174361A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
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