JPH06279955A - 極軟質オーステナイト系ステンレス鋼 - Google Patents

極軟質オーステナイト系ステンレス鋼

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JPH06279955A
JPH06279955A JP8797293A JP8797293A JPH06279955A JP H06279955 A JPH06279955 A JP H06279955A JP 8797293 A JP8797293 A JP 8797293A JP 8797293 A JP8797293 A JP 8797293A JP H06279955 A JPH06279955 A JP H06279955A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 普通鋼と同程度にまで硬さを低減させて普通
鋼用のプレス成形装置等でも容易に加工ができる極軟質
なステンレス鋼を開発し,普通鋼板や表面処理鋼板分野
においてこれらに代わる耐食性と意匠性に優れたステン
レス鋼材料を提供する。 【構成】 質量%で,C:0.04%以下, Si:1.0%以
下, Mn:7.0%以下, Cr:10%以上15%未満, Ni:5.
0%以上17%以下, N:0.03%以下, Cu:5.0%以下を
含有し,且つ (Ni+0.3Mn+1.3Cu)≧(20−0.8Cr) の関係を満足するようにこれらの成分の含有量が調整さ
れ,残部がFeおよび不可避的不純物からなる硬さ (H
V) が130以下の極軟質オーステナイト系ステンレス
鋼。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は, 普通鋼および表面処理
鋼板が使用されている分野や,ステンレス鋼が硬質であ
るために使用が制限されていた内外装建材などの用途に
適用可能な極めて軟質で加工性に優れたオーステナイト
系ステンレス鋼に関する。また本発明に係るステンレス
鋼は, 各種めっきや塗装などの表面処理を行なう下地鋼
にも適用できる。
【0002】
【従来の技術】従来より,自動車部材や器物ならびに建
築材料用内外板などの薄板成形用素材には,加工性およ
び経済性の観点から普通鋼もしくは表面処理鋼板が多用
されている。最近これらに用いられる材料の意匠性や耐
食性の向上の要求から,これら普通鋼もしくは表面処理
鋼板が使用されている分野において,これら素材のステ
ンレス鋼化が指向されている用途も多い。だが,ステン
レス鋼は普通鋼のように一般には軟質ではない。このた
め,普通鋼の加工用に使用されていた設備では加工に難
が生じて適用が困難である。
【0003】一般に,CrとNiを含有するステンレス鋼
(オーステナイト系)の金属組織は冷延焼鈍後にはオー
ステナイト相,フェライト相またはマルテンサイト相の
単独のもしくはこれらの混合相を呈する。
【0004】通常のオーステナイト系ステンレス鋼冷延
鋼帯を製造する場合には,CrおよびNiなどの合金元素
の含有量によってこの金属組織が決まる。このため例え
ばCr含有量が低い場合には,オーステナイト相の安定
性が低くなり,焼鈍後に焼入れマルテンサイトを生成す
るので,Ni,Si,Cなどの合金元素の含有量を増加させ
てオーステナイト相を安定化する必要がある。また,C
r含有量が高い場合にはフェライト相を生成するように
なるので,Ni,C,Nなどのオーステナイト生成元素の
含有量を増加させる必要がある。
【0005】そこで,従来のオーステナイト系ステンレ
ス鋼の合金元素含有量はどのように考慮されていたかを
見ると,まず代表鋼種としてのSUS304ではJIS G 4305
(冷延ステンレス鋼板) およびJIS G 4307 (冷延ステン
レス鋼帯) において, C:0.08%以下, Si:1.00%以
下, Mn:2.00%以下, P:0.045%以下,S:0.030%
以下, Ni:8.00%〜10.50%, Cr:18%〜20%と規定
されている。
【0006】また,Cr含有量の高いオーステナイト系
ステンレス鋼としては, JIS G 4305およびJIS G 4307に
耐酸用並びに耐酸化用とされているSUS309S 並びにSUS3
10Sがある。SUS309S はC:0.08%以下, Si:1.00%以
下, Mn:2.00%以下, P:0.045%以下,S:0.030%
以下, Ni:12.00 %〜15.00%, Cr:22.00 %〜24.00
%と規定されており, SUS310SではC:0.08%以下, S
i:1.50%以下,Mn:2.00%以下, P:0.045%以下,
S:0.030%以下, Ni:19.00 %〜22.00%, Cr:24.0
0%〜26.00%と規定されている。このSUS309SおよびSUS
310Sは共にフェライト相の生成を抑制すべく,SUS304に
比べるとNi含有量を増加させている。
【0007】一方, Cr含有量の低いオーステナイト系
ステンレス鋼としては, JIS G5122の耐熱鋼鋳鋼品とし
て,C:0.2%〜0.35%, Si:2.50%以下, Mn:2.00
%以下, P:0.040%以下,S:0.040%以下, Ni:33.
00 %〜37.00%, Cr:13.00 %〜17.00%を含有するSU
H16がある。またJIS G4311の耐熱鋼棒として,C:0.15
%以下, Si:1.50%以下, Mn:2.00%以下, P:0.04
0%以下,S:0.030%以下, Ni:33.00 %〜37.00%,
Cr:14.00 %〜17.00%を含有するSCH330がある。これ
らSUH16,SCH330はいずれの鋼ともに焼入れマルテンサイ
ト生成を防止すべく, Niを高めるかCを高めることに
より, オーステナイト相を安定化している。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】上記のオーステナイト
系ステンレス鋼を普通鋼もしくは表面処理鋼板が使用さ
れている建材等の用途に適用する場合には,加工のしや
すさが重要となり,ステンレス鋼の軟質化を図る必要が
ある。すなわち, JIG3141に参考として示されている普
通鋼冷間圧延鋼板および鋼帯の硬さは標準調質状態でHV
115以下であり,普通鋼もしくは表面処理鋼板の加工を目
的とするプレス機械などの加工装置を用いて加工する場
合には,ステンレス鋼の硬さの上限は少なくともHV 130
以下にしておくことが必要と考えられる。
【0009】しかし,オーステナイト系ステンレス鋼の
代表的な鋼であるSUS304は,JIS G4305およびJIS G4307
では, 固溶化熱処理状態で硬さ(HV)200以下, 引張強さ5
20 N/mm2とされており,一般的に使用されている低炭素
普通鋼に比べると, 硬質で加工硬化も大きいため,普通
鋼もしくは表面処理鋼板の加工を目的とするプレス機械
などの加工装置を用いてオーステナイト系ステンレス鋼
を加工した場合, 所望した形状が得られなかったり, 加
工装置の金型やロールを傷めるといった問題がある。
【0010】また, 高Cr化を図ったSUS309SおよびSUS3
10Sについてみると, SUS304と同様にJIS G4305およびJI
S G4307では, 固溶化熱処理状態で硬さ(HV)200以下, 引
張強さ520N/mm2 以上とされており,普通鋼に比べると
硬質になっている。
【0011】次に, 低Cr化を図ったSUH16およびSCH330
についてみると,耐熱鋼鋳鋼品のSUH16は先にも述べた
がオーステナイト相を安定化するため, 高Ni, 高C化
している。特に高C化により素材が硬質になっている。
耐熱鋼棒のSCH330は, 特別にC量は高くなく, 硬さはオ
ーステナイト系ステンレス鋼の代表鋼種であるSUS304と
同程度のビッカース硬さHV170 レベルであり, 普通鋼に
比べると硬質になっている。したがって, 低Cr化を図
ったいずれの鋼ともに, 軟質さが要求される普通鋼およ
び表面処理鋼板が使用されていた分野には適用不可能で
ある。
【0012】なお,JIS G4305およびJIS G4307にはSUS40
5, SUS410LおよびSUS429の低Crのフェライト系ステン
レス鋼もあるが, 伸びが30%程度とオーステナイト系ス
テンレス鋼に比べると低く, 延性に劣るという欠点があ
る。
【0013】さらに, 低Cr化を図ったSUH16およびSCH3
30ならびに高Cr化を図ったSUS309SおよびSUS310Sのコ
ストをSUS304のものと比較してみると, SUH16およびSCH
330ではCr含有量は低いもののNi含有量が33〜37%と
高く, コスト高となっている。また, SUS309S およびSU
S310SではCr含有量およびNi含有量ともに高く, コス
ト高になっている。
【0014】したがって, これまで,Cr含有量を低減
し,さらにNi含有量も低くした軟質で低コスト化を図
ったオーステナイト系ステンレス鋼はなかった。なお,
同一出願人に係る特開平4-72038号公報や特開平4-66651
号公報には,HVが 130以下の極軟質オーステナイト系
ステンレス鋼を提案しているがCr含有量が高く,より
低Cr化した場合に意図する軟質化が図れるか否かは教
示するところはない。
【0015】そこで本発明は,普通鋼もしくは表面処理
鋼板が使用されている分野で適用可能な軟質化したオー
ステナイト系ステンレス鋼において,コスト上昇につな
がるCr量を一層低減しても普通鋼や表面処理鋼板と同
程度に軟質で加工性に優れ且つ耐食性に優れたオーステ
ナイト系ステンレス鋼を得ることを目的とする。
【0016】
【課題を解決するための手段】本発明によれば,質量%
でC:0.04%以下,Si:1.0%以下,Mn:7.0%以下,C
r:10%以上15%未満,Ni:5.0%以上17%以下,N:0.0
3%以下,Cu:5.0%以下,を含有し,且つ (Ni+0.3Mn+1.3Cu)≧(20−0.8Cr) の関係を満足するようにこれらの成分の含有量が調整さ
れ,残部がFeおよび不可避的不純物からなる硬さ (H
V) が130以下の加工性に優れた極軟質オーステナイ
ト系ステンレス鋼を提供する。
【0017】
【作用】本発明者らは,前記の目的を達成すべくオース
テナイト系ステンレス鋼のオーステナイト相の安定性,
機械的性質ならびに耐食性に及ぼす各種合金元素の影響
を総合的に研究した結果,該目的が達成できる最適成分
系を見出した。本発明鋼の特徴と作用を,以下に代表的
な試験結果を参照しながら説明する。
【0018】表1に示す各種合金元素含有量を変化させ
た鋼No.1〜25の鋼を溶製し,各鋼を1250℃で鍛造後,
抽出温度1220℃で熱間圧延を施して3.8mmの熱延鋼板を
得た。この熱延鋼板に1150℃, 均熱1分の熱延板焼鈍・
酸洗を施し,その後1.5mm厚まで冷間圧延し,1050℃,
均熱1分の中間焼鈍・酸洗を施し,その後0.6mmまで仕
上圧延したうえ,1050℃, 均熱1分の仕上焼鈍・酸洗を
施した。
【0019】得られた仕上冷延焼鈍板からサンプルを採
取し,ビッカース硬さを測定し,またX線回折によって
生成相を調べた。その結果を表1に併記した。また図1
および図2に硬さと成分量との関係を表示した。さらに
耐食性試験も行いその代表的な結果を図3に示した。
【0020】耐食性評価はJISZ2371の塩水噴霧試験で行
った。塩水噴霧試験は5%NaCl溶液を35℃で噴霧し, 試
験時間は比較に用いた普通鋼の低炭素アルミキルド鋼の
赤錆発銹面積が試験片の100%となるまでとした。試験
片寸法は100mm×150mmであり,評価は端部を除く表面か
らの発銹を,サンプル面積(150mm×100mm) に対する赤
錆発銹面積の百分率(発銹率%) で評価した。
【0021】
【表1】
【0022】表1の硬さ試験結果について,鋼1〜18の
ビッカーズ硬さに及ぼすCr含有量と(Ni+0.3Mn+1.
3Cu) 量(%)の関係で整理したのが図1である。
【0023】図1は軟質化に及ぼす成分相互の極めて興
味深い関係を示している。図中の破線で示す直線は(N
i+0.3Mn+1.3Cu) =(20−0.8Cr) の関係式を示した
ものであるが,この直線を境にして硬さはドラステイッ
クに変化している。すなわち,(Ni+0.3Mn+1.3Cu)
≧(20−0.8Cr) を満足する領域においては, 0.045%
Cを含有する鋼No.5と, 0.035%Nを含有する鋼No.11
は, それぞれHV135, HV138で若干硬質になっているが,
それ以外の鋼においては, いずれのCr含有量において
も硬さがHV128以下となっており,これは低炭素アルミ
キルド鋼の約HV110とほぼ同程度である。そしてこれら
の軟質鋼はいずれもオーステナイト相を呈している。
【0024】一方, (Ni+0.3Mn+1.3Cu)<(20−
0.8Cr) ではオーステナイト相が不安定になり, 焼入れ
マルテンサイトを生じるようになり, 仕上げ焼鈍後に表
1にも示したように硬さがHV190 以上まで上昇する。し
たがって, 普通鋼もしくは表面処理鋼板が使用されてい
る用途に適用する場合, Cr量が15%未満でも,少なく
とも (Ni+0.3Mn+1.3Cu) ≧(20−0.8Cr) を満足
するようにこれらの成分量を調整すれば,十分に軟質化
できることを見出した。この点が本発明の基本的な特徴
の一つである。
【0025】一方, 鋼5や11のように (Ni+0.3Mn+
1.3Cu) ≧(20−0.8Cr) を満足する場合であってもC
ならびにN含有量が高いと,固溶硬化により硬質になる
ことが予想される。そこで, (Ni+0.3Mn+1.3Cu)
≧(20−0.8Cr) を満足し,仕上焼鈍後に焼入れマルテ
ンサイト相が生成しない鋼において,硬さに及ぼすCお
よびN含有量の影響を調査し, 図2の関係を得た。
【0026】図2には14.5%Cr−11.5%Niをベースと
し, C含有量を0.005%から0.045%まで変化させた鋼N
o.19〜22およびN含有量を0.005%から0.055%まで変化
させた鋼No.19および鋼No.23〜25の硬さとCおよびN含
有量の関係を示したものである。CおよびN含有量をそ
れぞれ増加させると硬さは上昇し,HV130以下とするに
はC含有量を0.04%以下にする必要があり,またN量に
ついては0.03%以下にする必要があることがわかる。
【0027】つぎに, 耐食性についてみると,図3に示
した鋼No.18, 6, 11, 17 および低炭素アルミキルド鋼
の塩水噴霧試験後の発銹率とCr含有量との関係に見ら
れるように,低炭素アルミキルド鋼は塩水噴霧24時間後
には赤錆面積発銹率は100%となっているのに対し, 9.1
%Cr鋼のNo.18の発銹率は60%, 10.5%Cr鋼のNo.6は
それは8%, 12.5%Cr鋼のNo.11のそれも8%,14.6%
Cr鋼のNo.17は発銹していない。この結果から耐食性を
安定して維持するためにはCr含有量を少なくとも10%
は必要である。
【0028】以上の試験結果から明らかなように,Cr
を15%未満としても (Ni+0.3Mn+1.3Cu) ≧(20−
0.8Cr) の関係を満足するようにこれらの成分含有量を
調整し,且つC含有量を0.04%以下, N含有量を0.03%
以下とすれば,ビッカース硬さが130以下の極軟質オー
ステナイト系ステンレス鋼が得られる。また耐食性の点
からはCr含有量は10%以上必要である。
【0029】本発明で規定するC:0.04%以下, N:0.
03%以下, Cr:10%以上15%未満の限定理由は以上の
理由によるものである。その他の成分については,HV
130以下が保持される限り含有させることができるが,
その主な成分についての含有量範囲の限定理由の概要を
述べると次のとおりである。
【0030】Siは鋼の溶製時の脱酸剤として有効な元
素であるが,軟質さの点からは低い方が望ましいので
1.0%以下, 好ましくは0.50%以下とする。
【0031】Mnはオーステナイトバランスを保つため
に有効に作用し,また脱酸剤としても有益であり,多量
に含まれる程硬さが低下するが,7.0%を越えて含有さ
せてもその効果はそれほど大きくはないので7.0%以下
とする。
【0032】Niはオーステナイト系ステンレス鋼には
不可欠な元素であり,多量に含まれる程硬さが低くな
り,少なくとも6%は必要とする。しかし,Niは高価
な元素であり,本発明成分系では17%以下のNi量で十
分に意図する軟質化が図れる。このため,Ni量は6〜1
7%, 好ましくは7〜15%の範囲で含有させる。
【0033】Cuはオーステナイトバランスを保つため
に有効に作用し,多量に含まれる程硬さが低下するが,
5.0%を越えて含有させてもその効果はそれほど大きく
はないので5.0%以下とする。
【0034】Moは耐食性を向上させるが,多量に添加
すると硬さを上昇させるので3.0 %以下とする。
【0035】Ti,Nb,V,Zrはいずれも結晶粒の細粒化
作用を有し, 本発明鋼において加工後の肌荒れを防止す
るという共通の効果を奏し,これらは固溶CおよびNを
低減する効果がある。しかし,これらはいずれも0.50%
を越えて添加しても,その効果は飽和するので添加する
場合には,0.50%以下とする。
【0036】Alは製鋼時の脱酸に有効な元素であり,
特にTi,Nb,V,Zrを添加するさいには,その直前に添
加することによって溶鋼中の酸素濃度を低下させ, これ
ら元素の歩留りを高めるうえで有効に作用する。しかし
Alは固溶硬化によって硬さを上昇させるので,1.5 %
以下, 好ましくは1.0 %以下とする。
【0037】BとREM(希土類元素) はいずれも熱間加工
性を向上させる元素であり,熱間割れの防止に同効に作
用する。しかしBについては0.10%を越えて添加して
も, まり REMについては0.02%を越えて添加してもその
効果は飽和するので,Bについては0.10%以下, 好まし
くは0.05%以下, REMについては0.02%以下とする。
【0038】
【実施例】表2に本発明鋼および比較鋼の化学成分値
(質量%)を示した。表中の本発明鋼A〜IのうちA〜
Cは, Cr含有量が14.5%のもとでC, Ni,Mn,Cu含有
量を変化させた鋼である。なお鋼AはTiを0.2%添加し
ている。鋼D〜Fは,Cr含有量が12.0%のもとでNi,
Mn,Cu含有量を変化させた鋼である。鋼Dは耐食性向
上の目的からMoを2.1%添加している。鋼G〜Iは,C
r含有量が10.5%のもとでNi,Mn,Cu含有量を変化させ
た鋼である。
【0039】比較鋼Jは,JIS G5122の耐熱鋼鋳鋼品で1
8%〜20%Cr, 33%〜37%Ni, 0.2%〜0.35%Cを含有
するSUH16相当鋼であり,比較鋼Kは,JIS G4311の耐熱
鋼棒として14%〜17%Cr, 33%〜37%Ni, 0.15%以下
のCを含有するSCH330相当鋼であり,比較鋼LはSUS304
の鋼L,また比較鋼Mは一般の低炭素アルミキルド鋼で
ある。
【0040】これらの鋼A〜Lを溶製して,1250℃で鍛
造後,抽出温度1220℃で熱間圧延を施して3.8mmの熱延
鋼板を得た。この熱延鋼板に1150℃, 均熱1分の熱延板
焼鈍・酸洗を施し,その後1.5mm厚まで冷間圧延し,105
0℃, 均熱1分の中間焼鈍・酸洗を施し,その後0.6mm厚
まで仕上圧延し,1050℃, 均熱1分の仕上焼鈍・酸洗を
施した。
【0041】得られた各鋼の仕上焼鈍材についてビッカ
ース硬さを測定し,生成相をX線回折で同定し,また耐
食性評価を行った。これらの結果を表2に併記した。耐
食性評価はJISZ2371の塩水噴霧試験を実施した。塩水噴
霧試験は5%NaCl溶液を35℃で噴霧し, 試験時間は比較
に用いた普通鋼の低炭素アルミキルド鋼の赤錆発銹面積
が試験片の100%となるまでとした。試験片寸法は100mm
×150mmであり,端部を除く表面からの発銹を, サンプ
ル面積(150mm×100mm) に対する赤錆発銹面積の百分率
(%) で評価した。
【0042】
【表2】
【0043】表2の結果から次のことがわかる。14.8%
のCr含有量を有する本発明鋼Aでは,Ni含有量が7%
でも仕上焼鈍後に焼入れマルテンサイト相が生成せず,
硬さもHV 128と軟質になっている。また塩水噴霧試験に
おいても発銹率は0.5%と低く, 耐食性は低炭素アルミ
キルド鋼以上である。14.8%のCr含有量を有し, 13.5
%のNiを含有する鋼Bおよび鋼Cも,それぞれ硬さがH
V 110, HV 103と軟質で発銹率も低い。
【0044】12.0%のCrを含有する鋼Dでは,Ni含有
量が9.5%でも仕上焼鈍後には焼入れマルテンサイト相
を生成しておらず, 硬さもHV 125と軟質になっている。
また塩水噴霧試験においても発銹率は2.0%と低く, 耐
食性は低炭素アルミキルド鋼以上である。12.5%のCr
含有量を有し, 12.5%のNiを有する鋼Eおよび鋼Fに
ついても,それぞれHV 116, HV 99 と軟質で発銹率も低
い。
【0045】10.5%のCr含有量を有する鋼Gでは,Ni
含有量が10.8%でも仕上焼鈍後に焼入れマルテンサイト
相を生成しておらず,硬さもHV 120と軟質になってい
る。また塩水噴霧試験においても発銹率は7.5%と低く,
耐食性は低炭素アルミキルド鋼以上である。10.5%の
Cr含有量を有し, 15%のNiを含有する鋼Hおよび鋼I
についても,それぞれHV 105, HV 95 と軟質で発銹率も
低い。
【0046】また, 鋼A,D,EおよびIのように本発
明に係る基本成分以外に,Mo,Ti,Al,Bを添加した場
合でも,軟質化の妨げにはなっていない。したがって上
記添加元素以外にもTiと同効的にCやNを固定する作
用のあるNb,V,Zrや, Bと同効的に熱間加工性を向上
させる作用があるREMを添加してもなんらさしつかえな
い。
【0047】一方,比較鋼であるSUH16相当の鋼Jは35
%Niを含有しさらにCを0.3%程度含有しており焼入れ
マルテンサイトの生成は認められず, 発銹率も0.5%と
低いが, 硬さがHV 186と高い。
【0048】SCH330相当鋼の鋼KはC含有量は0.06%と
低いものの, Ni含有量が35%と高く SUH16と同様に焼
入れマルテンサイトの生成は認められず,耐食性も良好
である。だが硬さはHV 165と高い。
【0049】鋼MのSUS304は18%のCrと8%のNiを含
有しており, 仕上焼鈍後には焼入れマルテンサイトの生
成は認められない。耐食性については良好であるが,硬
さはHV 170と硬質である。
【0050】このように比較鋼は耐食性に優れているも
のの, いずれも硬質であり, 普通鋼もしくは表面処理鋼
板が使用されている用途への適用は困難であり,また鋼
Jと鋼KはNi含有量が多いので素材コストも高い。
【0051】
【発明の効果】以上説明したように,本発明によれば,
普通鋼もしくは表面処理鋼板を加工するためのプレス機
械などの加工装置をそのまま用いても加工ができる極軟
質オーステナイト系ステンレス鋼が提供される。したが
って,硬質であるが故に普通鋼分野の用途に進出できな
かった原因が解消し,この分野に対して耐食性並びに意
匠性に優れるというステンレス鋼の特徴を生かした新た
な用途の拡大が達成される。
【図面の簡単な説明】
【図1】ビッカース硬さに及ぼすCr含有量と (Ni+0.
3Mn+1.3Cu) 量 (%) の関係を示した図である。
【図2】ビッカース硬さに及ぼすCおよびN含有量の影
響を示した図である。
【図3】発銹率に及ぼすCr含有量の影響を示した図で
ある。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量%で C:0.04%以下,Si:1.0%以下,Mn:7.0%以下,Cr:
    10%以上15%未満,Ni:5.0%以上17%以下,N:0.03%
    以下,Cu:5.0%以下,を含有し,且つ (Ni+0.3Mn+1.3Cu)≧(20−0.8Cr) の関係を満足するようにこれらの成分の含有量が調整さ
    れ,残部がFeおよび不可避的不純物からなる硬さ (H
    V) が130以下の極軟質オーステナイト系ステンレス
    鋼。
  2. 【請求項2】 質量%で C:0.04%以下,Si:1.0%以下,Mn:7.0%以下,Cr:
    10%以上15%未満,Ni:5.0%以上17%以下,N:0.03%
    以下,Cu:5.0%以下,を含有し,さらに下記の元素, す
    なわち,Mo:3.0 %以下,Al:1.5 %以下,Ti,Nb,V
    またはZrの1種または2種以上:0.50%以下,B:0.10
    %以下,REM :0.02%以下のうちいずれか1種または2
    種以上を含有し,且つ (Ni+0.3Mn+1.3Cu)≧(20−0.8Cr) の関係を満足するようにこれらの成分の含有量が調整さ
    れ,残部がFeおよび不可避的不純物からなる硬さ (H
    V) が130以下の極軟質オーステナイト系ステンレス
    鋼。
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JP2006518007A (ja) * 2003-01-13 2006-08-03 サンドビック インテレクチュアル プロパティー ハンデルスボラーグ 表面改質した析出硬化型ステンレス鋼
JP2009299171A (ja) * 2008-06-17 2009-12-24 Nippon Steel & Sumikin Stainless Steel Corp 微細粒組織を有するプレス成形用オーステナイト系ステンレス鋼板およびその製造方法
CN111910122A (zh) * 2020-06-17 2020-11-10 宁波宝新不锈钢有限公司 一种奥氏体抗菌不锈钢及其制造方法

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