JPH0254377B2 - - Google Patents

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JPH0254377B2
JPH0254377B2 JP9040083A JP9040083A JPH0254377B2 JP H0254377 B2 JPH0254377 B2 JP H0254377B2 JP 9040083 A JP9040083 A JP 9040083A JP 9040083 A JP9040083 A JP 9040083A JP H0254377 B2 JPH0254377 B2 JP H0254377B2
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JP
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membrane
film
heterogeneous
stretching
manufacturing
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JP9040083A
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JPS59229320A (ja
Inventor
Takanori Anazawa
Yoshuki Ono
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DIC Corp
Original Assignee
Dainippon Ink and Chemicals Co Ltd
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Publication date
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  • Separation Using Semi-Permeable Membranes (AREA)
  • Manufacture Of Porous Articles, And Recovery And Treatment Of Waste Products (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
本発明は、溶融成形法により形成した、気体隔
膜分離に供するに適する新規な不均質膜の製造方
法に関するものであり、その目的は、気体分離
能、気体透過速度ならびに力学的特性に優れた不
均質膜を従来の煩雑で非能率な製造方法とは全く
異なつた方法により、能率良く生産する方法を提
供することにある。 気体、水、溶液等の分離・精製・回収に気体選
択透過膜や逆浸透膜、限外過膜を用いる、所
謂、隔膜分離法は、省エネルギー効果が大きく、
熱による物質の変性が生じない等の理由から、近
年益々、各分野で使用されるようになつてきた。
気体の隔膜分離法の原理は、特定気体を先ず膜表
面で選択的に吸着・収着・溶解させた後に、膜の
反対側表面まで膜中を拡散し、反対側表面で脱
着・脱溶解させることである。(例えば仲川勤:
高圧ガス、18(9)、471(1981)に記載されている。)
従つて、分離の能率を向上するには、膜中の拡散
に要する時間を短縮させること即ち、分離膜を薄
くする事が、高性能な気体分離膜を製造する上で
の課題となる。これを目的として、これまでにも
多くの提案がなされてきた。特に、ローブ
(Loeb)らが、アセチルセルローズを膜素材とし
た送浸透膜として、緻密層(スキン層)と多孔質
層(スポンジ層)から成る不均質膜、所謂ローブ
膜を提案(米国特許第3133132号)したことは、
薄い分離層(活性層)と高い機械的強度(自己保
持能)を持つた膜の実現としてその後の隔膜分離
法の発展に大きく貢献した。その後、膜素材とし
て、セルロース、セルロースアセテート、芳香族
ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリメチル
メタクリレート、ポルサルホン、その他多くの素
材が提案され、他方、膜形態もフイルム状以外
に、膜面積を多くするためにチユーブ状、中空糸
状にする提案がなされており枚挙にいとまがな
い。 しかし、ここで、従来の不均質膜の製造法を省
みるに、これらに共通する方法は、いづれも、溶
媒を用いて湿式成膜するか、半乾式湿式成膜する
かのいづれかであつた。これらの製造方法の基本
的な特徴は、重合体の溶液(ドープ)をフイルム
又は中空糸状に押出し、非溶媒中に浸漬して溶媒
交換に伴う重合体の相分離(凝固)によつて、多
孔質膜を形成するところにあり、相分離の手段と
して、今日ではこの他に温度を下げる方法や、ド
ープ液に予め高沸点の非溶媒を混入しておき、溶
媒の蒸発散去により重合体が相分離する方法等
様々なバリエーシヨンが報告されている。また多
孔質層の表面に緻密層を作る方法としては、相分
離を生ぜしめる前に表面のみ乾燥させて緻密層や
非多孔質層を作る事により不均質膜とする方法等
が知られている。このように、これらの方法は、
有機又は無機の溶媒を用いるために、(1)工程、装
置が煩雑である、(2)溶媒を回収、精製する必要が
ある、(3)膜中の残留溶媒を除去しなければならな
い、(4)防爆、健康管理等の公害対策が必要であ
る、(5)生産性が低い(生産速度が遅い)、(6)表面
緻密層の厚さを0.1μm以下にするのは相当困難で
ある、等の共通の欠点を持つていた。 また、最近、不均質膜と同じ発想から、例え
ば、特開昭53−86684号公報に開示されているよ
うに、連通孔の多孔質膜を支持体として、その上
に厚さ0.01〜0.1μm程度の非多孔性の超薄膜をコ
ーテイングした、所謂複合膜が提案されている。
しかしながらこの方法は、多孔性支持体膜の製造
工程と、それへの薄膜のコーテイング工程は別の
ものであるため、両工程を連続化しにくく、前記
の湿式法が半乾式湿式法よりもさらに工程的に煩
雑である。また中空糸膜の場合は、多数本のマル
チフイラメントを同時にコーテイングして、各中
空糸に均一厚さの薄膜を形成することは、相当困
難である。 以上の如く、従来の不均質膜又は複合膜とその
製造方法には多くの欠点があつた。本発明者ら
は、透過性能と、力学的特性にすぐれた不均質膜
を能率よく製造する方法として、溶媒を使用せ
ず、生産性の高い溶融成形法で不均質膜が形成で
きれば、多くのメリツトが得られると考え、膜素
材として、熱可塑性の結晶化能を有する重合体を
溶融成形、熱処理、延伸等を組み合わせて処理
し、所謂、ラメラ構造の高次構造物を形成し、そ
れを延伸する事によつて膜内部に気体透過抵抗の
少ない空隙を持つた不均質膜を形成するという、
これまでとは全く異なる方法について検討した
(以後、断わらない限り、このような方法を溶
融・延伸法と称することにする。) 上述に類似の原理に基づく溶融・延伸法による
連通孔の不均質膜と、その製造法に関しては、既
に、ポリプロピレン、ポリエチレンの多孔質フイ
ルムについては特公昭46−40119号、特公昭50−
2176号等の明細書に開示され、ポリプロピレンの
多孔質中空糸については、特開昭52−15627号、
特開昭53−38715号に開示され、ポリエチレンの
多孔質中空糸については、特開昭57−42919号、
特開昭57−66114号に開示され、ポリアミドの多
孔質フイルムについては特開昭53−143671号に、
ポリアミド及びポリエステルの多孔質中空糸は
USP3513110に開示されている。 以上に例示した溶融・延伸法による多孔質膜の
共通の特徴は、いづれの膜も、細孔が膜を貫通し
ている、所謂連通孔の多孔質膜であるという点で
ある。さらに、これらの膜はいづれも、膜の厚み
方向に一様に細孔が分布している、所謂等方性膜
であるという点で共通している。 また、これらの膜の製造方法の共通の特徴は、
膜を貫通する連通孔を生成させる事を目的とし、
そのために欠陥の少ない積層ラメラ結晶を発達さ
せるために(これは弾性回復率で規定している。
例えば特公昭46−40119号)いづれも、全て、熱
可塑性結晶性重合体を比較的低温、高ドラフト、
急冷気味に溶融成形(紡糸、押出、インフレーシ
ヨン)した後、必要ならば熱処理して積層ラメラ
結晶を一層完全に発達させ、然る後に、冷延伸気
味に延伸して連通孔を発生させ、熱固定する事で
ある。 本発明者らは、溶融・延伸法について各工程で
生成する高分子重合体の微細構造と、各工程での
加工因子との関係について詳細に検討したところ
驚くべき事に、急冷条件による溶融成膜の後、わ
づかの非晶延伸を加え、熱処理をほどこした後、
冷延伸気味に延伸し、熱固定する事によつて単な
る等方性多孔質膜ではなく、多孔質層の表面に実
質的に細孔を有しない非多孔質の薄膜層を形成し
た、所謂不均質膜を製造する事が可能である事を
見出した。 従来、ローブ膜のように、湿式法又は半乾式湿
式法でしか得られなかつた不均質膜を、溶融延伸
法で一挙に形成できる事は画期的なことであり、
本発明者らは各工程についてさらに鋭気検討を進
めた結果、気体分離に優れた性能を持つ不均質膜
の製造方法に関し結論に至つたので、ここに提案
するものである。即ち本発明は、先ず第1に、熱
可塑性の結晶性重合体から、(イ)膜断面が、直径
0.01〜50μmの細孔から成る多孔質層と、直径30
Å(オングストローム)以上の細孔が実質的に存
在しない、厚さ0.01〜1μmの非多孔質層とから成
る不均質構造を有し、(ロ)該膜の室温におけるみか
けの酸素透過係数が、同じ素材の均質膜の酸素透
過係数の5倍以上であり、かつ(ハ)室温における酸
素と窒素の分離係数が1.2以上である不均質膜を
製造する方法であつて、重合体を(1)溶融温度が
Tm〜Tm+200℃(但しTmは結晶溶解温度)、
ドラフトDfが50≦Df≦10000の条件にて溶融押出
し製膜して得た中空糸又はフイルムを(2)Tg−20
〜Tg+50℃(但しTgはガラス転移温度)にて3
〜200%延伸した後、(3)Tg〜Tm−10℃で熱処理
を行ない、その後、(4)Tg−50〜Tm−10℃の温
度、延伸倍率1.1〜5.0で延伸し、次いで(5)Tg〜
Tmの温度で熱固定する事を特徴とする、不均質
膜の製造方法を提供するものである。 ここで云う「みかけの透過係数」とは、一般に
不均質膜における非多孔薄膜層の厚さの確認が困
難であるため、不均質膜全体(非多孔質層+多孔
質層)の厚みを膜厚とみなして算出した透過係数
の事である。 以下本発明をさらに詳しく説明する。 先ず、本発明の製造方法によつて製造される不
均質膜について説明すると、本発明により得られ
る不均質膜の構造は旧来云われている所の半連通
孔膜あるいは独立気泡膜に分類されるものであ
り、製造条件によりその構造を作り分ける事がで
きる。即ち、典型的な例を挙げると(A)連通孔であ
る多孔質層の両側表面に、細孔を有しない薄膜層
が形成された不均質膜、(B)連通孔である多孔質層
の片側表面(膜が中空糸膜の場合には外側表面又
は内側表面)に細孔を有しない薄膜層が形成され
た不均質膜、(C)連通孔の多孔質層における個々の
細孔が、膜のどちらか一方の表面に開いていて、
反対側表面は緻密な薄膜で蔽われている半連通孔
であるため、該膜を透過する気体は、一回以上非
多孔薄膜を透過するような構造を持つ不均質膜、
等である。膜の不均質構造や表面薄膜の存在は走
査型電子顕微鏡(SEM)による膜表面及び膜断
面の観察により、直接確認する事ができる。 本発明による不均質膜のさらに微細なモルホロ
ジー的構造や不均質構造の生成の理由については
確たる事は不明であるが、以下のように推定され
る。本不均質膜に於ける内部の多孔質層について
は例えば特公昭46−40119号において述べられて
いるような、連通孔の多孔質膜を成形するための
原理と類似の原理に基くものと思われる。 即ち、熱可塑性の結晶性重合体を適度の応力下
で適度の温度勾配を持たせて溶融押出し製膜する
事により、膜の引取方向とは直角に積層ラメラ結
晶の核が生成する。得られた膜を非晶延伸によつ
て配向度を上げ、熱処理することによつて、積層
ラメラ結晶を発達させ、その後延伸すると積層ラ
メラ結晶間に該層を貫通するような空隙が生じ
る。これを熱固定すると、応力を解いても生成し
た細孔が再び閉じる事なく固定される、というも
のである。一方、表面非多孔質・薄膜層について
も分子論的、モルホロジー的な構造については、
現在のところ明らかでは無いが、製造上の特徴等
から推定するに、膜内部よりも高い配向状態から
結晶化させる事により生成した繊維構造を持つた
微細な配向結晶を形成しているものと考えられ
る。 勿論、本発明は、これらの生成機構の理論的推
定によつて限定されるもので無い事は云うまでも
ない。 本発明の不均質膜の構造の典型的な例を先に述
べたが、本発明による製造方法で実際に製造され
る場合には、上記(A)、(B)、(C)構造の混合体、ある
いは、上記の構造が大部分を占めるものの、他の
種々の構造との混合体となる場合が多い。例えば
多孔質層が完全な連通孔とならず、独立気泡部分
が生成する場合や、非多孔質表面薄膜にピンホー
ルが生じる場合等である。これらの、構造上の欠
陥は走査型電子顕微鏡の観察のみによつては見出
し難い場合があるが気体透過の実験により透過速
度(又はみかけの透過係数)と分離係数を測定す
る事によつて、不均質膜の構造上の欠陥の有無と
程度を明確に判定する事ができる。 ところで、高分子重合体の非晶もしくは球晶の
発達したフイルム等をTg以下で延伸すると、条
件により内部に微少な空隙(ボイド)が発生する
事は周知の事実である。そして、このボイドは所
謂独立気泡である事が知られている。しかしなが
らフイルム又は中空糸に、従来知られている様な
方法でボイドを発生させ、気体を透過させると、
気体透過速度はむしろ減少する場合が多く、増加
してもせいぜい3倍程度に向上するに止まる。こ
れは、ボイドが発生する様な条件では、結晶の微
結晶化と再配列が生じ、気体の透過が妨げられる
為と考えられる。 本発明の不均質膜は、上記のような所謂ボイド
の生成した独立気泡膜とは結晶構造等のモルホロ
ジー的にも、気体透過性能の面でも全く異なるも
のである。 高分子(重合体)膜による気体分離(濃縮も含
む)は、膜に存在する細孔の大きさの違いによつ
て、次の様な異なる原理に基づくと考えられてい
る。即ち、(1)膜に約30Å以上の細孔が存在しない
場合には「溶解・拡散流れ」により透過し、気体
の透過係数Po(単位はcm3(STP)・cm/cm2・sec・
cmHg)は各々の気体について、重合体に個有の
値となり、透過速度R≡Po/L(単位は、cm3
(STP)/cm2・sec・cmHg、Lは膜厚;単位はcm)
は膜を薄くするほど大となる。また例えば酸素と
窒素に関する分離係数α(O2/N2)≡Po(O2)/
Po(N2)(Po(O2),Po(N2)はそれぞれ酸素、窒
素の透過係数)も又、重合体の個有の値となり、
膜厚にかかわらず一定となる。また、α(O2
N2)は現在知られている全ての汎用高分子につ
いて1以上であり、通常は2〜15の値を持つ。即
ち、細孔の無い高分子重合体膜に空気を透過させ
れば酸素が富化される。(2)気体が、膜に存在する
直径約30Å〜平均自由行程(通常約0.1μm)の細
孔を通つて透過する場合は「クヌーセン流れ」が
主体となり、分離係数(みかけの透過係数の比)
は気体の分子量の比の平方根に逆比例する。即ち
α(O2/N2)=√2832=0.935となり、透過空気
は酸素貧化空気となる。(3)膜を貫通する細孔の直
径が平均自由行程より大の場合には「ポアズイユ
流れ」と呼ばれ、α(O2/N2)=1となつて透過
空気の組成には変化が無い。 膜厚方向に多孔質層と非多孔質層とから成る不
均質膜を気体が透過する場合には、非多孔薄膜層
の透過が律速段階となり、透過速度や分離係数
は、実際上非多孔薄膜層による「溶解・拡散流
れ」によつて決定される。 不均質膜の気体透過性能を決定する非多孔薄膜
層の膜厚Lは直接測定する事は通常困難であるの
で、透過速度R又は、Rに不均質膜の見かけの膜
厚(非多孔質層+多孔質層)を掛けて得た「みか
けの透過係数」P(単位は透過係数と同じ。以下
この単位で統一する)の大小で膜の透過性能が比
較される。みかけの透過係数もまた非多孔薄膜層
が薄いほど大きな値になる。 非多孔薄膜層の厚さは、次に述べるようなピン
ホールが存在する場合であつても、酸素及び窒素
の透過係数及びみかけの透過係数の測定値を用
い、次式により見積る事ができる。 L=α′(α−β)/α(α′−β)×Po(O2)/P
(O2)×Lt×A/N 但し α=Po(O2)/Po(N2):均質膜の分離係数 α′=P(O2)/P(N2):不均質膜の分離係数(測
定値) β=0.935:クヌーセン流れの分離係数 Po(O2):酸素透過係数 P(O2):みかけの酸素透過係数(測定値) Lt:不均質膜のみかけの膜厚(単位は任意) A:不均質膜の(みかけの)表面積に占める非
多孔薄膜部分の存在割合 N:気体が透過する非多孔層の数 L:不均質膜における非多孔層の厚み (層が複数層ある場合には一層あたり) (単位はLtと同じ) 本発明により製造される膜はみかけの酸素の透
過係数が均質膜の酸素透過係数の5倍以上のもの
である。即ち非多孔薄膜層にピンホールが無いと
すれば、その厚さはみかけの膜厚の1/5以下のも
のであり、最も薄い場合には約100Åにする事が
できる(但、この場合ピンホールが多少発生す
る)。 ピンホールが生じると、ピンホールをクヌーセ
ン流れ又はポアズイマ流れで通過する部分が加わ
り、みかけの透過係数は向上するものの、同時に
分離係数が低下するから、分離係数の測定によ
り、ピンホールの有無を知る事ができる。本発明
では分離係数が1.2以上で、その素材の本来的な
分離係数の値(ピンホールが無い場合の値)まで
の分離能を持つ膜を提供する事ができる。 酸素/窒素の分離係数α(O2/N2)が1.2に満
たない場合は、多数のピンホール(連通細孔等)
が非多孔層に生成し、ここを通つて膜を透過する
割合が、非多孔薄膜層を溶解・拡散によつて透過
する部分に対して無視できない量に達している事
を示しており、分離係数1.2以下では性能的にも
実用に供し得ない。 以上から判る様に、高い分離係数を実現しよう
とすれば、膜を貫通した直径約30Å以上の細孔
(ピンホール)の発生は極力抑制すべきである。
この意味で溶融・延伸法による連通孔多孔質膜の
製造とは、その目的が全く異なる。又気体分離装
置を低廉、コンパクトにする為、透過速度を上げ
ようとすれば分離に寄与する非多孔薄膜層(気体
分離の活性層)を薄くし、かつ内部の多孔質層を
できるだけ完全な連通孔として、独立気泡の発生
を抑える事が必要となる。即ち溶融延伸法によつ
て、良好な気体分離性能を持つた不均質膜を製造
する。本発明の技術的なポイントの第一点は、各
工程の条件を最適にする事によつて、非多孔層の
ピンホールを抑制しつつ非多孔層を薄くする事で
ある。 ポイントの第二点は、多孔質層に、気体透過抵
抗の小さな連通細孔を形成させる事である。 本発明の不均質膜において多孔質層(スポンジ
層)における細孔の孔径は0.01〜50μmが適当で
あり、0.1〜1μmがさらに好ましい。孔径が
0.01μm以下では多孔質層の空孔率を大きくする
事が困難であり、また細孔を通過する気体透過抵
抗が大となり、高い透過速度を持つ不均質膜が得
られない。孔径が50μm以上になると、スポンジ
層の表面に形成された非多孔質の薄膜が破れ易く
なり、不均質膜にピンホールが多発し、分離能の
優れた不均質膜を得る事が困難となる。 また本発明の不均質膜において、非多孔薄膜層
の厚さは0.01〜1μmが適当である。厚さ0.01μm以
下にすると薄膜にピンホールが多発し、分離能の
優れた不均質膜が得られないし、厚さが1μm以上
では透過速度(又はみかけの透過速度係数)が低
くなり気体分離膜の用に供するには、性能的に不
十分となる。 本発明の不均質膜の形状は、使用目的に応じて
任意に選ぶ事ができる。例えば中空糸、チユーブ
ラー、平膜の形態にする事が可能である。中空糸
(チユーブラーも含む)の外径は5μm〜1mmが適
当であり、30〜200μmがより好ましい。外径5μm
以下あるいは1mm以上の中空糸状の不均質膜を製
造する事も可能であるが、製造コスト、膜性能等
に於て劣つたものとなり、メリツトが無い。膜厚
は1〜300μmが適当である。1μm以下では力学的
強度が得にくく、300μm以上ではみかけの透過係
数の低下を招く。膜厚に関して、平膜(フイル
ム)の場合も同様である。 本発明で用いうる膜素材は、到達結晶化度30%
以上の熱可塑性の結晶性重合体であり、例えば、
ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−3−メチ
ル−ブテン−1、ポリ−4−メチル−ペンテン−
1等のポリオレフイン、ポリスチレン、ポリ−メ
チルメタクリレートなどのビニル重合体、ポリ弗
化ビニリデン、ポリ弗化ビニルエチレン/四弗化
エチレン共重合体などの弗素系重合体、ナイロン
6、ナイロン66、ナイロン12などのポリアミド、
ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレ
フタレート、ポリエチレン−2,6−ナフタレー
トなどのポリエステル、ポリ−4,4′−ジオキシ
ジフエニル−2,2−プロパンカーボネートなど
のポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリ
メチレンスルフイドなどのポリエーテル、ポリチ
オエーテル、ポリフエニレンオキシド、ポリフエ
ニレンスルフイドなどのポリフエニレンカルコゲ
ナイド、 の構造をもつポリエーテルエーテルケトン
(PEEK)等である。 また、これらの重合体相互のブレンド、共重合
体で、到達結晶化度が30%以上のものや、上記重
合体を70%以上含有する組成物も本発明に用いる
事ができる。 膜素材は、目的とする分離気体の種類や、耐熱
性等の要求性能に応じて、適当なもものを選ぶ事
ができるが酸素富化空気の製造を目的とする場合
には、優れた酸素透過係数と分離係数、高い到達
結晶化度と結晶化速度に基づく製造の容易さ等の
特徴を持つ、ポリ−4−メチルペンテン−1が最
も好ましい重合体である。 次に本発明の製造方法について述べると、溶融
成形(中空糸の溶融紡糸、フイルムの溶融押出し
等)の温度は、重合体の融点Tmより高く、融点
を200℃以上越えない事が好ましい。好適な成形
温度は、重合体の分子量、結晶化速度、冷却条
件、紡糸速度やドラフトによつて異なり、一般的
に言つて、結晶化速度の遅い重合体や低分子量の
重合体を用いる場合、紡糸速度やドラフトが比較
的小さい場合等には低い温度が好ましい。融点よ
り200℃以上高い温度では、気体の透過速度の大
きな膜を得る事は困難である。 押出速度、引取速度比、即ちドラフトは20〜
10000が好ましい。高分子量の重合体の場合には、
20〜200の比較的低いドラフトが適当であるが、
一般的には100以上が好ましい。ドラフトが10000
以上では気体透過速度の大きな不均一膜を得る事
は困難である。 押出し速度は、比較的任意に選択できる。遅過
ぎ、あるいは速過ぎる条件では糸切れが生じ易く
なるが、装置的な要求に合わせて決定できる。 中空糸紡糸用ノズルは、円環型、馬蹄型、ブリ
ツジ型等の通常の中空糸紡糸用ノズルを用いる事
ができる。フイルム押出用ダイはTダイやインフ
レーシヨン用の円環状ダイ等、通常用いられるフ
イルム、シート用ダイを用いる事ができる。 中空糸の外径は、ノズル寸法やドラフト等によ
つて5μm〜1mmに設定する事が好ましい。5μm以
下および1mm以上では透過速度の大きな不均質膜
を得る事が困難となる。中空糸又はフイルムの膜
厚も、同様にして1〜300μmに設定する事が好ま
しい。この範囲外では良好な不均質膜が生成しに
くく、気体透過速度が小さくなる。 本発明により製造された不均質膜を気体分離膜
として用いる場合には、フイルム(平膜)状よ
り、表面積の大きくとれる中空糸が有利であり、
その外径は20〜100μm、内径は5〜70μmがより
好ましい。 押出された中空糸又はフイルムは送風等によつ
て急冷する事が好ましい。急冷を行なわなくと
も、気体分離能を有する不均質膜を得る事が出来
るが、気体透過速度及び分離係数において劣つた
ものとなる。勿論、冷却条件は用いる重合体によ
つて異なり、ポリエチレンテレフタレート等の結
晶化速度の遅い重合体の場合には、紡糸の周囲温
度も約100℃に保温し、冷却風の無い条件であつ
ても、結晶が発達するには十分急冷されていると
云える。急冷の方法としては送風の他、チルロー
ルや水(又は湯)による冷却等通常の冷却方法を
用いる事ができる。冷却温度は、重合体の結晶化
速度にもよるが、一般的にはTg−50〜Tm−50
℃が好ましい。 不均質膜の多孔質層における細孔の孔径は、主
として溶融成膜条件によつて決定される。即ち中
空糸の溶融紡糸又はフイルムの溶融押出し時に、
押出された中空糸やフイルムにかかる応力が大き
いほど小さな孔径の細孔となる。大きな応力は、
大きなドラフト、低い溶融温度、高分子量の重合
体、急速な冷却、そして速い紡糸(又はフイルム
押出し)速度によつてもたらされる。多孔質層の
孔径はまた後の工程における非晶延伸倍率及び冷
延伸倍率によつても影響される。 溶融紡糸又は溶融押出しによつて得られた中空
糸又はフイルムは、Tg−20〜Tg+50℃にて3〜
200%延伸を行なう(この処理を非晶延伸と呼ぶ
事にする。)この工程は溶融・延伸法による連通
多孔質膜の製造に於ては実施されない。本発明に
特徴的な操作である。前記の溶融製膜条件では非
晶延伸を行なわないと非多孔質層にピンホールが
多発し、溶解・拡散原理に基づく気体分離能は発
現しにくい。また非晶延伸の延伸倍率が過大であ
れば、多孔質層に、気体透過抵抗の小さな連通細
孔が生じにくくなる。延伸温度がTg−20℃以下
だと均一な延伸が困難であると共に、良好な多孔
質層が発現しにくく、Tg+50℃以上だと本工程
において結晶化が進行し、これまた良好な多孔質
層が得にくくなる、延伸倍率は延伸温度や重合体
の分子量によつて最適値が異なり、緩和の速い低
分子量重合体を高温で延伸する場合には延伸倍率
を大きくとるのが好ましい。 本発明においては、一見したところ、例えば湿
式法による不均質膜の製造におけるような、不均
質構造を形成するための積極的な工程を導入して
いないにもかかわらず、多孔質層の表面に非多孔
薄膜層が形成された不均質膜を製造し得る事は驚
くべき事である。その理由については、現在のと
ころ明らかではないが、次の様に考えられる。即
ち、熱処理によつて重合体を結晶化させる場合、
熱処理前の配向の程度によつて、生成する結晶の
形態が異なり、配向の程度が小さければ球晶が、
中程度の配向状態であれば積層ラメラ結晶が、そ
して高配向状態からは繊維にみられるような高配
向の微結晶が生長する事が知られている。中空糸
の溶融紡糸又はフイルムの溶融押出しを高ドラフ
ト条件で行なうと、冷却され低温となつた膜表面
は、緩和しにくい分だけ膜内部に比べて高い配向
状態になつていると考えられる。これに非晶延伸
を加えてさらに配向させる事によつて、表面の
み、積層ラメラ結晶と高配向微結晶とを振り分け
る配向度のしきい値を越えさせる事によつて、非
多孔層と多孔質層からなる不均質構造が形成され
るものと推定される。また、溶融押出し製膜を高
ドラフト、弱冷却の条件で行なうと、適当な条件
においては、非晶延伸を加えなくても上記の不均
質構造が発現する。これは、積極的には非晶延伸
操作を行なつてはいないものの、押出し製膜工程
において実際上、非晶延伸されているからである
と説明される。即ち、弱い冷却によつては、押出
された膜はTg以下にまで冷却されないため、高
ドラフトに基く応力によつて引続き延伸されるか
らである。これは急冷操作によつて一挙にTg付
近にまで冷却すると、非晶延伸無しでは不均質構
造が発見しにくい事によつても支持される。 勿論以上の説明は、不均質構造が形成される理
由についての現時点での理論的考察であつて、本
発明はこれに拘束されるもので無い事は云うまで
も無い。 非晶延伸処理を行なう本発明の製造方法は、上
記の非晶延伸を加えないで、溶融製膜時の冷却状
態をコントロールする事によつて不均質膜を製造
する方法に比べて次の点で有利である。即ち、第
一に、気体透過速度や分離係数において、より優
れた不均質膜を製造する事ができる。これは溶融
紡糸又は溶融フイルム押出し等の製膜工程と非晶
延伸工程を分ける事によつて、各々の工程の加工
条件を、目的に最も適した条件に設定できるため
である。 第二に製品の均一性、再現性が増し、工業的に
有利である。これは、製膜工程において微妙な冷
却条件の差や溶融温度のゆらぎの影響を受けにく
い条件に設定できるためである。また製膜条件の
誤差を、続く非晶延伸工程で補正する事も可能と
なる。 非晶延伸された中空糸又はフイルムは、緊張を
解かずに引続いて熱処理を行なう。熱処理温度は
Tg〜Tm−10℃が好ましい。また熱処理は定長
条件下で行なうのが望ましいが、弛緩率(又は緊
張率)0.7〜1.5にて、連続的に熱処理しても良
い。無緊張下での熱処理は、透過速度の大きな膜
を得るには好ましくない。熱処理を高温・長時間
の条件で十分行ない過ぎると、非多孔質層にピン
ホール(連通細孔)が多く発生するので好ましく
ない。これは膜表面の高配向部分から膜内部の積
層ラメラ結晶へ分子鎖が取込まれる事により、表
面薄膜が消失するためと考えられる。 熱処理の方法としては加熱ローラー、熱風炉、
赤外線炉等、通常用いられる加熱方式を採用でき
る。また乾熱方式だけでなく、スチームや湿式加
熱であつてもさしつかえない。熱処理を行なつた
中空糸(又はフイルム)はかなり大きな弾性回復
率(≡100×回復量/変形量)を示す。本発明の
不均質膜製造条件では、この値は通常20〜70%
(室温、50%延伸時)である。 熱処理した中空糸もしくはフイルムは、延伸す
ることによつて、膜内部に空隙を発生させ、スポ
ンジ層を形成させる(この工程を冷延伸工程と呼
ぶことにする)。冷延伸温度は低過ぎると表面薄
膜層が破れ、ピンホールが生じるからTg−50℃
〜Tm−10℃が好ましい。さらに、気体透過速度
を増す為に、冷延伸に引続いて、緊張を緩める事
なく、冷延伸温度より高くTm−10℃以下の温度
で延伸を行つても良い(この工程を熱延伸工程と
呼ぶことにする)。延伸倍率DRは冷延伸と熱延
伸を合わせて1.1〜5.0が適当である。小さ過ぎる
と内部スポンジ層の空隙が十分開かず、また大き
過ぎると表面薄膜が破断し、ピンホールになると
供に、内部スポンジ層も構造の破壊により気体透
過しにくくなり気体分離性能の劣る膜となる。 冷・熱延伸は自由巾一軸延伸でも、一定巾一軸
延伸であつても良いし、中空糸又はフイルムをロ
ーラーにより連続的に延伸ても良い。延伸温度が
Tg付近以下の低温においては、延伸速度が速過
ぎると、非多孔層にピンホールが多く発生する。
一般には延伸速度は0.1〜300%/秒が好ましい。
また連続延伸に於ては延伸区間を短かくする、直
径の小さなローラーを用いる延伸バーを使用する
等の方法によりり、延伸点を固定、または延伸範
囲を狭くする事が、製品の均一化の点で有利であ
る。 内部スポンジ層(多孔質層)における細孔の孔
径は、膜表面をイオンエツチングする事により表
面薄膜を除去した後、走査型電子顕微鏡(SEM)
にて観察するか、試料を液体窒素温度で延伸方向
に平行又は斜めに切断し、その断面をSEM観察
する事によつて判定する事ができる。本発明の製
造方法では細孔の短孔径が0.01〜50μmになる様
に設定する事が好ましい。孔径の調節は紡糸(又
は押出し)時の応力条件の他、非晶延伸の延伸倍
率及び冷及び熱延伸倍率によつて、コントロール
する事ができる。非晶延伸倍率は大きいほど、
冷・熱延伸倍率は小さいほど、多孔質の孔径は小
さくなる。 冷・熱延伸によつては、中空糸又はフイルムの
断面積はほとんど低下しない。従つて見かけ密度
が低下する事になる。これは膜内部に空隙が生
じ、多孔質が形成された事を示している。また、
同時に冷・熱延伸により、試料が白色化する事が
肉眼で観察される事実も、SEMによる表面観察
によつては細孔が観察されなくても、膜内部には
サブミクロン〜ミクロンオーダーの空隙が生成し
ている事を示している。 冷・熱延伸により生じた細孔が、応力を解いて
も固定されるように、熱固定を行なう事が好まし
い。熱固定温度は冷−及び熱延伸の温度以上であ
る事が必要である。熱固定時間は1秒以上緊張下
で行なう事が望ましい。熱延伸を行なつた場合に
は、熱固定は必ずしも必要でないし、この場合は
無緊張下で熱固定を行なつても性能上の劣下は僅
少である。また冷延伸のみ行ない、熱延伸を行な
わない場合でも、中空糸又はフイルムを緊張状態
で用に供する場合には熱固定を省略する事ができ
る。 以上の様な工程によつて、気体分離性能に優れ
た不均質膜を得る事ができる。上に述べた製造方
法の説明は中空糸及びフイルムについて行なつた
が、これはそれらが代表的な膜形態であるからで
あり、本発明の製造方法がこれによつて限定的に
解釈されるべきもので無い事は明白である。例え
ば、フイルムがインフレーシヨンによる環状平膜
であつても(この場合はフイルムを二枚一度に処
理する事になる)、中空糸が円環以外の異形断面
糸であつても本発明の工程は全く同様である。 また本発明の不均一膜製造方法は、工業的には
連続法で製造するのが有利である事は論をまたな
い。 本発明により製造される不均質膜は、次の様な
用途に用いる事ができる。 二種以上の気体の混合物から、隔膜分離法によ
つて、選ばれた気体を分離(濃縮も含む)しよう
とする場合、分離装置の性能として、好ましい気
体選択法、良好な濃縮率、高い透過速度等が要求
されるが、これらの性能は大部分、分離膜の性能
によつて決定される。本発明の不均質膜は、気体
の分離膜として良好な性能を持つものである。気
体分離の選択性は分離係数αで表わす事ができ
(三種以上の混合ガスから一種類以上の気体を選
択分離する場合も同じである)、この値は非多孔
薄膜透過による溶解・拡散流れのメカニズムに従
う限り、即ち細孔透過による分離で無い限り、基
本的に膜厚には影響されず、素材の高分子重合体
に個有の値となる。但し、素材の重合体の立体規
則性(タクテイシテイー)や、結晶化度、それに
結晶の種類・寸法・配列の様子といつたモルホロ
ジー的な違いによつても多少変化するようであ
る。 従つて、本発明の不均質膜は、使用目的の系
(混合気体の種類や混合比と分離(濃縮もしくは
除去)対象となる気体の種類等)に適する素材
(重合体)を選んで製造する事ができる。 本発明の不均質膜を用いる事のできる気体分離
の系としては、例えば空気から酸素富化空気の製
造、燃焼廃ガスからのCo、H2の回収、廃ガスか
らのアンモニアの回収、廃ガス涙らのNO2、SO2
の除去、CO/O2の分離、H2/COの分離、H2
O2の分離、He等の不活性気体の分離回収、メタ
ン/エタンの分離等が挙げられるが、これらに限
定されるものでは無い。 本発明の膜はまた、液体に溶解した気体の選択
的除去、混合気体中の、選ばれた気体の液体への
選択的溶解、混合液体からの、選ばれた液体の分
離(所謂、液−液分離)等、非多孔薄膜の透過に
よつて実現される分離、濃縮に用いる事ができ
る。 中でもO2/N2分離による空気からの酸素富化
空気の製造に対して、本発明の膜は特に有用であ
る。酸素富化空気は医療用や、燃焼用空気として
利用価値の高いものであるが、これらの目的に用
いるためには、富化空気の酸素濃度と共に、酸素
富化空気の発生速度が高い事が非常に重要であ
る。即ち酸素透過速度の大きな膜が求められる。
本発明により得られる不均質膜はこれらの要求に
対し、以下の様な非常に優れた特徴を備えてい
る。即ち酸素透過係数Po(O2)、及び分離係数
α(O2/N2)に優れた素材を用いる事ができるた
め高濃度酸素が得られる(例えばポリー4−メチ
ルペンテン−1:P(O2)=1.3×10-9,α(O2
N2)=3.6)、気体分離の活性層である非多孔薄
膜の厚さを非常に薄く(例えば約500Å)する事
ができ膜表面積当りの透過速度を大きくできる、
膜表面積の大きな、細い中空糸膜を形成する事
が可能である(例えば中空糸の外径30μmの場合、
1m3当りの表面積≒1×105m2となり平膜の約100
倍)、細い中空糸に於ても機械的強度が高い。
即ち膜にかける圧力(一次圧)を大きくする事が
できる。製造工程が単純で、生産性が高いため
安価である。等である。特に、上記特徴の〜
は湿式法、半乾式湿式法に無い特徴であり、透過
速度、酸素富化濃度等の総合的な膜性能に於てこ
れまで知られている、湿式法、半乾式湿式法によ
り製造された不均質膜やその他の複合膜を凌駕す
る性能を持つ分離膜である事を示すものである。
上記の特徴は、酸素富化膜として使用される場合
に止まらず、他の気体の分離等に於ても発揮され
る事は云うまでもない。 本発明により製造される膜は、その表面への
Ni、Ag、Pd等の金属の蒸着、ポリビニルピリジ
ン、ポリエチレングリコール等の重合体のコーテ
イング、あるいはまたスポンジ層への液状ポリエ
チレングリコール等の液体の含浸等の処理を施
し、さらに高い分離係数を持つ気体分離膜として
用いる事ができる。 次に、本発明を実施例を用いてさらに詳しく説
明する。 実施例 1 メルトインデツクス(ASTM D1238による)
26のポリ−4−メチルペンテン−1を直径5cmの
ブリツジタイプの中空糸紡糸用ノズルを用いて、
紡糸温度290℃、引取速度580m/分、ドラフト
420で溶融紡糸を行ない、外径53μm、膜厚9.3μm
の中空糸を得た。この時、ノズル口下3〜33cmの
範囲を、温度20℃、周速3m/秒の横風でもつて
急冷した。得られた中空糸を、温度35℃にて延伸
倍率DR=1.3になるよう、ローラー系を用いて連
続的に非晶延伸を行ない、次いで、糸の緊張を解
く事無く、190℃の熱風循環恒温槽中に導入し、
5秒間滞留させる事により熱処理を行なつた。熱
処理した中空糸は続いて、温度35℃、ローラー間
10cmにてDR1.4だけ冷延伸し、その長さを保つた
まま190℃にて3分間熱固定を行なつて、外径
46μm、みかけの膜厚8.2μmの中空糸を得た。得
られた中空糸は、白色化しており、細孔の生成が
推定されたが、走査型電子顕微鏡(SEM)によ
る中空糸の内、外表面の観察では30Å以上の細孔
はほとんど観測されなかつた。この中空糸にイオ
ンエツチング処理を施こして、表面をSEM観察
したところ、平均孔径約0.3μmの細孔が高密度に
存在する事が認められた。製造した中空糸の酸素
および窒素の透過係数を測定した。測定は、1.0
Kg/cm2の圧力で、中空糸内部を加圧し、外側へ透
過して来るガスの流量を測定する事により行なつ
た。膜厚および膜面積は、中空糸の断面写真から
求めた。結果は、みかけの酸素透過係数P(O2
=8.2×10-8(cm3(STP)・cm/cm2・sec・cmHg)、
みかけの窒素透過係数P(N2)=2.3×10-8分離係
数α=3.5であつた。非多孔均質膜の値、Po(O2
=1.34×10-9、Po(N2)=3.7×10-10、α=3.6と比
較すると分離係数はほとんど低下せずに酸素透過
速度は61倍も向上している。これらの値を用い、
非多孔層が膜の両面に形成されていて、非多孔薄
膜部分の有効面積(薄膜が細孔の上に形成された
部分の割合)を50%と仮定すると、非多孔層の厚
さは約340Åであると計算される。 比較例 1 本例では、溶融・延伸法による既知の方法によ
つて製造された、連通孔の多孔質膜は酸素分離能
を有しない事を示す。紡糸工程に続く非晶延伸を
全く行なわない事、熱処理条件が200℃、30分で
ある事、および熱固定条件が200℃、30分である
事以外は実施例1と同様の方法によつて得た中空
糸は外径53μm、膜厚9.3μmで、白色を程してい
た。SEMによる表面の観察では、内・外表面共
高密度に生成した孔径約0.8μmの細孔が見られ、
気体透過試験の結果はP(O2)=1.6×10-4、P
(N2)=1.7×10-4(単位は実施例1に同じ)、α=
0.93であつた。酸素の透過速度は非多孔均質膜の
約12万倍にも上るが、分離係数はクヌーセン流れ
による酸素/窒素分離係数の理論値0.935と実験
誤差内で一致し、酸素富化能を全く持つていない
事が判る。またこの例から、不均質膜において僅
かのピンホール(連通細孔)の存在により、気体
分離能が大巾に低下する事が推察される。 比較例 2 本例では、溶融・延伸法による、既知の方法に
よつて製造された連通孔の多孔質膜において、小
さな気体透過速度を示す膜の場合にもやかり酸
素/窒素分離能を示さない事を述べる。紡糸工程
において、引取速度170m/分、ドラフト120であ
る事以外は比較例1と同様の方法によつて得た中
空糸は白色を程しており、断面形状は外径
105μm、膜厚16μmであつた。SEMで内・外表面
を観察すると孔径約1μmの細孔が約107個/cm2
低い密度で存在する事が観察された。この膜のみ
かけの酸素透過係数はP(O2)=2.4×10-7と非多
孔均質膜の約180倍程度であり、本発明の不均質
膜と同程度の値であるが、酸素/窒素の分離系数
はα=0.94と、実験誤差内でクヌーセン流れによ
る分離係数と一致し、本発明の不均質膜とは全く
異なるものである事を示している。 実施例 2 冷延伸倍率が1.2である事、および冷延伸に引
続いて、180℃にて、DR1.5(冷延伸と合わせると
80%延伸)の熱延伸を行なう事以外は実施例1と
同じ方法で製造した中空糸膜はP(O2)=2.2×
10-7、α(O2/N2)=1.7の透気性能を有してい
た。この値を用いて、実施例1と同じ仮定の基に
非多孔薄膜層の厚さを計算すると、約230Åと非
常に薄いものである事が判る。この中空糸膜を
SEMにて観察したところ、内・外表面共に長径
約0.7μm、短径約0.2μmの細孔が約107個/cm2の密
度で存在する事が観察された。比較例2に示した
連通孔多孔質膜と同程度の密度で、表面に細孔が
開いているにもかかわらず、比較例2と異なり、
酸素/窒素の分離能を有する事から、表面に観察
される細孔の大部分は反対側表面にまで貫通して
いない、所謂半連通孔である事がわかる。 実施例 3 紡糸工程において、引取速度120m/分、ドラ
フト30である事、冷却範囲がノズル口下1〜31cm
である事、および非晶延伸倍率が1.1、1.5、2.0、
および3.5ある事、以外は実施例1と同じ方法に
より中空糸膜を製造した。得られた中空糸の断面
寸法および気体透過試験の結果を第1表にまとめ
た。実施例3−3で得た膜をSEM観察したとこ
ろ、中空糸の外表面にはほとんど細孔は見られな
いが、内表面には直径約0.2μmの細孔が認められ
た。第1表より、非常に低いドラフトの紡糸条件
であつても、適当な延伸倍率の非晶延伸を行なう
事によつて、十分な透過速度と分離能を持つた不
均質膜を製造できる事が判る。さらに、非晶延伸
倍率が過小では連通多孔質膜となる事、非晶延伸
倍率が過大であれば内部の多孔質層が形成されな
い事が読みとれる。
【表】 実施例 4 紡糸工程において、紡出糸の冷却条件を、全く
冷却操作を行なわない(実施例4−1)か、ノズ
ル口下3〜8cmの範囲を風速1m/秒で弱く冷却
する(実施例4−2)以外は実施例1と全く同じ
操作によつて中空糸膜を製造した。得られた膜の
断面寸法および気体透過試験結果を実施例1と共
に第2表に示す。冷却条件は急冷が好ましいが、
冷却操作を行なわなくても、分離能を有する膜が
得られる事が判る。
【表】 実施例 5 メルトインデツクス0.9、密度0.96のポリエチ
レンを直径5mmのブリツジタイプのスリツトダイ
を用いて、紡糸温度およびドラフトをそれぞれ
180℃;Df120、250℃;Df950、320℃;Df5600お
よび320℃;Df950で、いづれも急冷条件で紡糸
を行なつた。得られた中空糸を20℃にて延伸倍率
DR1.1だけ非晶延伸を行なつた後、その長さを保
つたまま80℃の熱風恒温槽に通して10秒間滞留さ
せて熱処理を行なつた。続いて20℃において
DR2.0の冷延伸を行なつた後、やはりその長さを
保つたまま100℃の熱風恒温槽中に10秒間滞留さ
せて熱固定を行なつた。得られた中空糸膜の性状
を第3表に示す。溶融成形温度が高すぎると十分
な透過速度が得られない事、および溶融温度が高
い場合には、ドラフトも大きくする事が好ましい
事が判る。
【表】 注2:同一素材の非多孔均質膜
実施例 6 メルトインデツクス3.5、密度0.91のポリプロ
ピレンを温度240℃にて、巾20cmのTダイより溶
融押出しし、スリツト出口から5cmの位置をエア
ナイフを用いて急冷し、引取速度15m/min、ド
ラフト140で巻取る事により、厚さ25μmのフイル
ムを得た。このフイルムを35℃にて、連続的に
DR1.5だけ非晶延伸し、緊張を保つたまま100℃
の熱ロールに接触させると同時に同温度の熱風恒
温槽中に10秒間通して熱処理した後、23℃;
DR1.4の条件で冷延伸を行ない、その長さを変化
させずに120℃の熱風恒温槽中に10秒間滞留させ
て熱固定を行なつた。得られたフイルムは、みか
けの酸素透過係数P(O2)=9.6×10-9、分離係数
α(O2/N2)=1.6なる透過性能を有していた。こ
れは、同一素材の均質膜の値Po(O2)=1.0×
10-10、α=3.0と比較すると、分離係数におい
て、低下が見られるものの、透過速度が96倍にも
向上した不均質膜が得られることがわかる。 実施例 7 メルトインデツクス0.8、密度0.91のポリプロ
ピレンを温度240℃にて、直径4インチの円環状
ダイから溶融押出しし、押出された管状溶融フイ
ルムを円環状ダイの内周から吹出した空気によつ
て直径を1.2倍に広げると同時に、ダイの内及び
外周から吹出した空気により、フイルムを冷却固
化させる。押出した管状フイルムを、ローラーに
よつてつぶしつつドラフト150で引取り、二枚重
ねになつた、各々の厚さ28μmのフイルムを得た。
このフイルムを二枚重ねのまま実施例6と同じ条
件で非晶延伸、熱処理、冷延伸および熱固定する
事によつて厚さ25μmの白色フイルムを得た。こ
のフイルムの透気性能はP(O2)=1.1×10-8(均質
膜の110倍)、α(O2/N2)=1.3であり、気体分離
能を持つ不均質膜が形成されることが判る。ま
た、このフイルムをSEMで観測すると、二枚重
ねで処理した外側にあたる表面には、内側にあた
る表面に比べて、約5倍の密度の細孔が認められ
た。

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1 熱可塑性の結晶性重合体から、(イ)膜断面が、
    直径0.01〜50μmの細孔から成る多孔質層と、直
    径30Å(オングストローム)以上の細孔が実質的
    に存在しない、厚さ0.01〜1μmの非多孔質層とか
    ら成る不均質構造を有し、(ロ)該膜の室温における
    みかけの酸素透過係数が、同じ素材の均質膜の酸
    素透過係数の5倍以上であり、かつ(ハ)室温におけ
    る酸素と窒素の分離係数が1.2以上、である不均
    質膜を製造する方法であつて、重合体を(1)溶融温
    度がTm〜Tm+200℃(但しTmは結晶融解温
    度)、ドラフトDfが20≦Df≦10000の条件にて溶
    融押出し製膜して得た中空糸又はフイルムを(2)
    Tg−20〜Tg+50℃(但しTgはガラス転移温度)
    にて元の長さの3〜200%延伸した後(3)Tg〜Tm
    −10℃で熱処理を行ない、その後(4)Tg−50〜
    Tm−10℃の温度で延伸倍率1.1〜5.0に延伸し、
    次いで(5)Tg〜Tmの温度で熱固定する事を特徴
    とする、不均質膜の製造方法。 2 熱可塑性の結晶性重合体が、到達結晶化度が
    30%以上の重合体である、特許請求の範囲第1項
    記載の製造方法。 3 重合体が、ポリ−4−メチルペンテン−1、
    ポリプロピレン、ポリエチレン、又はポリオキシ
    メチレンである、特許請求の範囲第1または2項
    記載の製造方法。 4 不均質膜の片側表面(該膜が中空糸状の場合
    には、外表面もしくは内表面)が実質的に非多孔
    質な層である、特許請求の範囲第1、2または3
    項記載の製造方法。 5 不均質膜の両側表面が共に実質的に非多孔質
    な層である、特許請求の範囲第1、2または3項
    記載の製造方法。 6 不均質膜の多孔質層における個々の空隙細胞
    が、膜の一方の表面には開いているが、同一の空
    隙細胞が膜の両側表面には、連通孔として開いて
    おらず、膜を透過する気体は一以上の非多孔質層
    を透過するような構造を持つ、特許請求の範囲第
    1、2または3項記載の製造方法。 7 溶融押出し製膜が、外径が5μm〜1mm、膜厚
    が1〜300μmの中空糸の溶融紡糸である、特許請
    求の範囲第1〜6項のいずれかに記載の製造方
    法。 8 溶融押出し製膜が、厚さ1〜300μmのフイル
    ムの溶融押出し製膜である、特許請求の範囲第1
    〜6項のいずれかに記載の製造方法。 9 溶融押出し製膜がインフレーシヨンによる、
    厚さ1〜300μmの環状平膜製膜である、特許請求
    の範囲第8項記載の製造方法。
JP9040083A 1983-05-23 1983-05-23 溶融・延伸法による不均質膜の製造方法 Granted JPS59229320A (ja)

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