JPH02515Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 この考案はベルト駆動式無段変速機用駆動ベル
トの構成部品であるＶブロツクに関する。

従来技術 従来、ベルト駆動式無段変速機においては、無
端状の金属帯を多層に重ねて形成しキヤリアに対
して、金属製のＶブロツクをその周方向に移動可
能に連続して取りつけて駆動ベルトを形成してい
る。そして、この駆動ベルトを２個のＶ型ベルト
車に巻き掛けて、一方、Ｖ型ベルト車から他方の
Ｖ型ベルト車へトルクの伝達を行なつている。

始めに、ベルト駆動式無段変速機について説明
すると、第１図〜第３図において、入力側のＶ型
ベルト車１には部分円錐状のプーリ面２ａを有す
る固定プーリ２と、このプーリ２と同一の部分円
錐状のプーリ面３ａを有する可動プーリ３とがあ
り、両プーリ２及び３はそれぞれのプーリ面２ａ
及び３ａを対向させてＶ溝４を形成し、入力軸５
に取りつけられている。そして、可動プーリ３は
油圧等の手段により入力軸５の軸線方向へ移動さ
せられて、Ｖ溝４の幅が変化させられるようにな
つている。

出力側のＶ型ベルト車６は入力側のＶ型ベルト
車１と略同じ形をしており、その軸心部には出力
軸７が取りつけられている。

Ｖ型ベルト車１とＶ型ベルト車６とに巻き掛け
られる駆動ベルト８は、非常に薄い無端状の金属
帯（以下フープという）９ａ，９ｂ…９ｎを多層
に重ねて形成された一対のキヤリヤ９，９（第２
図参照）に、所定の厚さを有するＶブロツク１０
を連続して取りつけることにより形成されてい
る。

ここで、Ｖブロツク１０はテーパ状の側面１１
ａ，１１ａを有する本体部１１と、この本体部１
１の上面（ベルト外周側面）１１ｂの中央部から
上面１１ｂに対して垂直に上方へ突出した接続部
１２と、この接続部１２の上端において本体部１
１の上面１１ｂに平行に形成された支持部１３と
からなつている。そして、Ｖブロツク１０は接続
部１２の両側で、本体部１１の上面１１ｂと支持
部１３の下面（ベルト内周側面）との間がキヤリ
ヤ溝１４，１４になつている。又、Ｖブロツク１
０の両側面１１ａ，１１ａのなすテーパ角は、Ｖ
型ベルト車１の固定プーリ２のプーリ面２ａと可
動プーリ３のプーリ面３ａのなすテーパ角と略等
しくなつている。このＶブロツク１０はその両側
のキヤリヤ溝１４，１４を一対のキヤリヤ９，９
に嵌挿することにより、キヤリヤ９，９に取りつ
けられる。このようにして、両キヤリヤ９，９に
多数のＶブロツク１０が連続して取りつけられる
と、前述のように駆動ベルト８が形成される。

そして、Ｖ型ベルト車１とＶ型ベルト車６とに
巻き掛けられた駆動ベルト８は、Ｖ型ベルト車１
が第１図において矢印Ａ方向へ回転すると、駆動
ベルト８の各Ｖブロツク１０がＶ型ベルト車１か
ら連続的に送り出されてＶ型ベルト車６に達し、
このＶ型ベルト車６にトルクを伝達して、Ｖ型ベ
ルト車６をＶ型ベルト車１と同方向に回転させ
る。そして、この時駆動ベルト８にはＶ型ベルト
車１及び６の間において潤滑用のオイルが吹きか
けられるようになつている。また、両Ｖ型ベルト
車１及び６が回転している時に、Ｖ型ベルト車１
のＶ溝４の幅及びＶ型ベルト車６のＶ溝の幅を変
えることにより、Ｖ型ベルト車６の回転数がＶ型
ベルト車１の回転数に対して無段階に変えられ
る。

無段変速機の作動中においては、Ｖ型ベルト車
１内におけるＶブロツク１０には、Ｖ型ベルト車
１の回転にともない、Ｖブロツク１０をＶ型ベル
ト車１から飛び出させる方向に作用する遠心力Ｆ
と、Ｖブロツク１０をＶ型ベルト車１のＶ溝４内
に押し込む方向に作用するキヤリヤ９，９の張力
Ｗが働く。そして、無段変速機の変速時において
はＶブロツク１０の本体部１１の両側面１１ａ，
１１ａが、固定プーリ２のプーリ面２ａ及び３ａ
に当接しつつ、プーリ面２ａ及び３ａに沿つて移
動する。

上記のように、Ｖブロツク１０が移動する際、
従来のＶブロツク１０では本体部１１の側面１１
ａの上端部と下端部との角部１５，１６に、半径
ｒの小さな面取りがしてあるだけであるため、変
速時においてはＶブロツク１０に供給される潤滑
油の油膜が両側面１１ａ，１１ａとプーリ面２ａ
及び３ａとの間にうまく形成されない。このた
め、側面１１ａとプーリ面２ａあるいは３ａとの
間に生じる摩擦が大きく、滑らかに変速しないと
いう欠点があつた。さらに、側面１１ａの角部１
５，１６の半径が小さいことにより、固定プーリ
２のプーリ面２ａ及び可動プーリ３のプーリ面３
ａに段差部ｄができて（第３図参照）、変速不良
を起こすという欠点があつた。出力側のＶ型ベル
ト車６においても上記と同様の欠点があつた。

考案の目的 この考案は上記に鑑み、変速時においてＶ型ベ
ルト車の固定及び可動プーリのプーリ面との間で
潤滑油膜を容易に形成できて変速をスムーズに行
なうことができ、かつ変速に影響を及ぼすような
段状の傷をプーリ面に発生させることのない無段
変速機用駆動ベルトのＶブロツクの提供を目的と
するものである。

上記の目的を達成するために、この考案の構成
は次のようになされる。すなわち、本体部及びこ
の本体部の上部両側に形成されたキヤリヤ溝を含
み、このキヤリヤ溝を介して一対のキヤリヤの周
方向に移動可能に連続して取りつけられた多数の
Ｖブロツクとからなり、一対のＶ型ベルト車に巻
き掛けられる無段変速機用駆動ベルトにおいて、
Ｖブロツクの本体部の両側面の上面側又は下面側
の少なくとも一側の面に、プーリ面との間で略Ｖ
字状の隙間を有しかつ曲面により前記側面に接続
される逃げ部を設けたことである。

実施例 次に、この考案を図面に示す実施例に基づいて
説明する。

第４図、第５図において、Ｖブロツク１０Ａは
その側面１１ａの上部と本体部１１の上面１１ｂ
との接続部に、上逃げ部１７が形成されている。
この上逃げ部１７は側面１１ａの上部（本体部１
１の上面１１ｂ側）を削り取る形の傾斜面になつ
ており、この側面１１ａの当接するプーリ面２ａ
と上逃げ部１７のなす角はa゜になつている。この
上逃げ部１７の側面１１ａ側における開始点１７
ａは、上面１１ｂからの距離がｂになつている。
側面１１ａの下部にも、本体部１１の下面１１ｃ
との接続部に下逃げ部１８が形成されている。こ
の下逃げ部１８は上逃げ部１７と同様、プーリ面
２ａとのなす角a゜になつている。この下逃げ部１
８の、側面１１ａ側における開始点１８ａの本体
部１１の下面１１ｃからの距離は、上逃げ部１７
の開始点１７ａの上面１１ｂからの距離と同じｂ
になつている。又、上逃げ部１７と本体部１１の
上面１１ｂとを接続する接続部１７ｂの曲率半径
及び下逃げ部１８と本体部１１の下面１１ｃとの
接続する接続部１８ｂの曲率半径はいずれもｃに
なつている。さらに、上逃げ部１７及び下逃げ部
１８の各開始点１７ａ及び１８ａの曲率半径はい
ずれもｅになつている。

そして、上記ａ，ｂ，ｃ及びｅの値は次のよう
に設定されている。

a゜＝1゜〜5゜，ｂ＝hmm×（1/4〜1/10）、 ｃ＝0.3mm〜0.9mm，ｅ＝1mm〜5mm 但し、ｈは第５図に示すように本体部１１の高
さである。

次に、この実施例の作用について説明する。

無段変速機の作動中において、Ｖブロツク１０
ＡがＶ型ベルト車１内にある時には、Ｖブロツク
１０Ａの本体部１１の側面１１ａは、上、下の逃
げ部１７及び１８を除いた箇所で固定プーリ２及
び可動プーリ３の各プーリ面２ａ及び３ａ当接す
る。そして、上、下の逃げ部１７及び１８とプー
リ面２ａ及び３ａとの間には略Ｖ字状の隙間１
９，２０がそれぞれ形成される。この略Ｖ字状の
隙間は潤滑論によると、油膜を作りやすくする働
きがあるので、この隙間１９，２０には容易に油
膜が形成される。従つて、変速時におけるＶ型ベ
ルト車１のプーリ面２ａ及び３ａに対するＶブロ
ツク１０Ａの側面１１ａ，１１ａの動きが滑らか
になり、無段変速機の変速がスムーズに行なわれ
る。又、上、下の逃げ部１７，１８により、プー
リ面２ａ及び３ａに多少の凹凸があつても、乗り
越えられるので変速不良が起りにくく、すなわ
ち、これが無いと、Ｖブロツク１０Ａの本体部側
面１１ａは前記凹凸に対する接触角（本体部側面
１１ａが凹凸上に乗つたときの、本体部側面１１
ａとプーリ面２ａ，３ａとのなす角）が大きくな
つて、凹凸を乗越えるために大きく振動し、回転
動作に変動が生じ、変速を滑らかに行えなくな
る。これに対し、前記Ｖ字状の隙間１９，２０を
設けることにより、前記本体部側面１１ａの前記
凹凸に対する接触角が小さく、Ｖブロツク１０Ａ
の振動量は少なく、変速を滑らかに行えるように
なる。さらに、下逃げ部１８の開始点１８ａの曲
率半径は大きな半径になつているので、変速時に
Ｖブロツク１０ＡがＶ型ベルト車１のＶ溝４内に
押し込まれる際、開始点１８ａ部によりプーリ面
２ａ及び３ａに対して変速を妨げるような段状の
傷を発生させない。

なお、上記実施例は入力軸のＶ型ベルト車１に
ついて説明したが、出力側のＶ型ベルト車６にお
いても同様である。

以上の説明から明らかなように、この考案によ
ると無段変速機の作動中において、Ｖブロツクの
側面に設けた逃げ部とＶ型ベルト車のプーリ面と
の間に油膜が形成されるので、Ｖ型ベルト車に対
するＶブロツクの動きが滑らかになり、無段変速
機の変速がスムーズに行なわれるようになる。
又、上記油膜の形成によりプーリ面及びブロツク
面の摩耗を減少させ、かつ変速に消費される動力
を低減させることができる。さらに、変速に影響
を及ぼすような段状の傷の発生を防止することが
できるとともに、プーリ面に多少の凹凸がある場
合においても変速を滑らかに行なうことができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の無段変速機の要部を示す一部切
欠き斜視図、第２図は第１図の−線断面拡大
図、第３図は第２図のＶブロツクの側面とＶ型ベ
ルト車のプーリ面との当り状態を示す拡大説明
図、第４図、第５図はこの考案の一実施例を示
し、第４図イはキヤリヤに取りつけられたＶブロ
ツクの正面図、第４図ロは第４図イの側面図、第
５図は第４図イの点線部の拡大図である。 １……Ｖ型ベルト車、２……固定プーリ、２ａ
……プーリ面、３……可動プーリ、３ａ……プー
リ面、４……Ｖ溝、６……Ｖ型ベルト車、８……
駆動ベルト、９ａ，９ｂ…９ｎ……フープ、１０
Ａ……Ｖブロツク、１１……本体部、１１ａ……
側面、１１ｂ……上面、１１ｃ……下面、１４…
…キヤリヤ溝、１７……上逃げ部、１７ａ……開
始点、１８……下逃げ部、１８ａ……開始点、１
９，２０……隙間。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 複数の無端状の金属帯を層状にして形成された
   一対のキヤリアと、本体部及びこの本体部の上部
   両側に形成されたキヤリア溝を含みキヤリア溝を
   介して一対のキヤリアの周方向に移動可能に連続
   して取りつけられた多数のＶブロツクとからな
   り、一対のＶ型ベルト車に巻き掛けられてＶブロ
   ツクの本体部のテーパにした側面がＶ型ベルト車
   のＶ溝を形成する一対のプーリ面に当接して両Ｖ
   型ベルト車間のトルク伝達を行なう無段変速機用
   駆動ベルトであつて、前記Ｖブロツクにはその本
   体部の両側面の上面側又は下面側の少なくとも一
   側の面に、プーリ面との間で略Ｖ字状の隙間を有
   しかつ曲面により前記側面に接続される逃げ部を
   設けたことを特徴とする無段変速機用駆動ベル
   ト。