JPH024814B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 産業上の利用分野 本発明は支持部材に組付けた弾性体と隔壁とで
作動液室を形成し、この作動液室の外側に前記隔
壁と囲いとで平衡液室を形成し、この平衡液室を
前記作動液室に連通するオリフイスを前記隔壁に
形成した液体入り防振体に関する。

従来の技術 一般に防振体にあつては、弾性体の振動体から
伝わる振動の加振周波数と振幅との関係は、周波
数の高帯域では振幅が小さく、低帯域のそれは大
きい。この高帯域と低帯域とは、対象とする加振
周波数範囲における周波数の高い領域あるいは低
い領域という相対的なものを示すものであり、こ
こでは防振体をエンジンマウントに使用した場合
について説明するので、例えば約０〜30Hzを低帯
域、約30〜150Hzを中帯域、約150Hz以上を高帯域
として区別している。そこで、前記弾性体のパワ
ーユニツトから伝わる加振周波数が高帯域周波数
の場合は、弾性体の動ばね定数を小さくすればす
るほど、パワーユニツトから車体に伝わる振動伝
達を低減できる。反面、弾性体の動ばね定数を小
さくすると低帯域周波数の振動減衰率、つまりロ
スフアクタが低下してしまう。

このような背景のもとに、例えば実開昭59−
79642号公報に示されるように、弾性体内に作動
液室を形成し、この作動液室の隔壁の外側に該隔
壁に形成したオリフイスを介して連通する平衡液
室を形成することにより、カーシエイクの原因と
なる約０〜30Hzの低帯域周波数でロスフアクタを
高める一方、高帯域周波数で防振体の動ばね定数
を小さくして伝達力を低減するようにした液体入
り防振体が知られている。これを第４図に示して
説明する。１は支持部材を示し、車体に固定する
ハツト形の第１支持部材２と、パワーユニツトを
固定する略截頭逆円錐形の第２支持部材３とから
なる。この第１支持部材２の外周フランジ２ａに
巻締結合した筒状体４の内壁面に弾性体５を加硫
接着し、この弾性体５の頂面に第２支持部材３を
加硫接着し、これにより支持部材１に弾性体５を
一体に組付けてある。前記弾性体５にはその下面
中央に形成した空洞の開口に跨つて剛性の高い隔
壁６を配設しかつ該空洞内に流体を封入して作動
液室７を形成してある。この作動液室７の隔壁６
の外側には可撓膜８を備えた囲い９により仕切ら
れかつ隔壁６に螺旋状に刻設したオリフイス１０
により作動液室７に連通する平衡液室１１を形成
してある。前記囲い９は可撓膜８を加硫接着した
金属製の外周フランジ１２を、前記第１支持部材
２の外周フランジ２ａと共に筒状体４により巻締
結合して支持されている。この囲い９の外周フラ
ンジ１２の上面内周側に前記隔壁６の下面外周側
を重合してある。また前記第１支持部材２には下
面中央に取付ボルト１３を突設し、この取付ボル
ト１３より外側にオフセツトしてストツパ１４を
突設する一方、外周フランジ２ａを連絡する立上
がり壁２ｂの成形基部にエア抜穴１５を貫通形成
してある。なお、１６は前記第２支持部材３の頂
面中央に突設した取付ボルトである。

発明が解決しようとする問題点 ところで前述の液体入り防振体においては、弾
性体５の加振周波数が低帯域周波数であつても高
帯域周波数であつても、可撓膜８のばね定数が単
一の値であるので、第２図に一点鎖線で示すよう
に低帯域周波数でのロスフアクタを大きくかつピ
ーク周波数を低くしようと、可撓膜８のばね定数
を小さくした場合には、第３図に一点鎖線で示す
ように弾性体５、作動液室７および平衡液室１１
全体で形成される液体入り防振体の動ばね定数の
低レベル安定領域が高帯域周波数まで延びなくな
る。そして、この動ばね定数の低レベル安定領域
を高帯域周波数まで延ばすために可撓膜８のばね
定数を大きくした場合には、低帯域周波数でのロ
スフアクタが小さくかつピーク周波数が高くなつ
てしまう。

そこで、本発明は低帯域周波数でのロスフアク
タを大きくかつピーク周波数も低くすると共に、
動ばね定数の低レベル安定領域を高帯域周波数ま
で延ばすことができる液体入り防振体を提供しよ
うとするものである。

問題点を解決するための手段 本発明にあつては、支持部材に一体に組付けた
弾性体と隔壁とで作動液室を形成し、この作動液
室の外側に前記隔壁と可撓膜を備えた囲いとで第
１・第２平衡液室を個別に形成し、この第１平衡
液室を前記作動液室に連通するオリフイスと前記
第２平衡液室を前記作動液室に連通するオリフイ
スとを前記隔壁に形成する一方、前記作動液室と
第２平衡液室とを連通するオリフイスに前記弾性
体に伝わる振動の大振幅時に閉弁し、小振幅時に
開弁するバルブ機構を配設すると共に、この第２
平衡液室の可撓膜の外面と前記支持部材の内面と
の間に気密室を形成してある。

実施例 以下、本発明の実施例を図面と共に従来の構造
と同一部分に同一符号を付して詳述する。

第１図において、支持部材１は例えば図外の車
体に固定するハツト形の第１支持部材２と、例え
ばパワーユニツトに固定する略截頭逆円錐形の第
２支持部材３とで構成されている。この第１支持
部材２の外周フランジ２ａに巻締結合した筒状体
４の内周面に弾性体５を加硫接着し、この弾性体
５の頂面に第２支持部材３を加硫接着し、これに
より支持部材１に弾性体５を一体に組付けてあ
る。弾性体５の第１支持部材２と遊離する下面中
央には下部開放山形の空洞を形成し、この空洞の
開口を剛性の高い隔壁６で被覆すると共に、この
空洞内に流体を封入することにより、弾性体５と
隔壁６とで作動液室７が形成されている。この作
動液室７の外側には隔壁６と囲い１７とで第１平
衡液室１８と第２平衡液室１９とが個別に形成し
てある。この囲い１７は金属製の外周フランジ１
２を備えており、この外周フランジ１２が第１支
持部材２の外周フランジ２ａと共に筒状体４で巻
締結合されている。この外周フランジ１２と筒状
体４とで隔壁６が挾持されている。この隔壁６と
筒状体４との間には弾性体５の空洞下部周縁に延
長した部分が介在されている。また第１平衡液室
１８は隔壁６の外側中央部に配置した第２平衡液
室１９の外周に環状に配置してあり、隔壁６に螺
旋状に刻設したオリフイス１０により作動液室７
に連通されている。前記第２平衡液室１９は隔壁
６の中央部に上下に直状にあけられたオリフイス
２０により作動液室７に連通されている。前記囲
い１７は外周フランジ１２と筒状の内周フランジ
２１とに跨つて配設され前記第１平衡液室１８を
仕切る可撓膜２２と、内周フランジ２１の内側に
跨つて配設され前記第２平衡液室１９を仕切る可
撓膜２３とを備えている。また、前記作動液室７
と第２平衡液室１９とを連通しているオリフイス
２０には、前記弾性体５に伝わる振動の大振幅時
に閉弁し、小振幅時に後述する弁体２６が開弁す
るバルブ機構２４を配設してある。このバルブ機
構２４はオリフイス２０に直交して水平状に刻設
された空洞部２５内に該空洞部２５と略相似形で
小形の平板状の弁体２６を遊嵌して構成されてい
る。さらに、前記隔壁６の下面に上端面を密接し
た内周フランジ２１の下端面を、第１支持部材２
のエア抜穴１５より内側に位置する上面に密接し
て、前記第２平衡液室１９の可撓膜２３の下面と
第１支持部材２の上面との間に、内周フランジ２
１と可撓膜２３および第１支持部材２により密閉
して囲撓された気密室２７を形成してある。な
お、前記内周フランジ２１の外側に第１平衡液室
１８の可撓膜２２と第１支持部材２とで囲まれた
空間２８は前記第１支持部材２に貫通形成したエ
ア抜穴１５により第１支持部材２の外側の外気に
連通されている。

以上の実施例構造によれば、弾性体５の加振周
波数が低帯域周波数の場合には、作動液室７の流
体の振幅も大きく、オリフイス２０を作動液室７
側から第２平衡液室１９側に向けて流動する流体
が弁体２６を押して、弁体２６が空洞部２５の底
面または天井に押付けられ、該オリフイス２０が
閉止する（バルブ機構２４が閉弁する）。したが
つて、作動液室７の流体は第２平衡液室１９への
流入を阻止され、オリフイス１０を通つて第１平
衡液室１８に流入して、可撓膜２２を拡張する。
この可撓膜２２の拡張により第１平衡液室１８の
容積が大きくなり、作動液室７の液圧が低下す
る。この結果、低帯域周波数でのロスフアクタが
大きくかつピーク周波数も低下する（第２図の一
点鎖線の特性を示す）。一方、弾性体５の加振周
波数が高帯域周波数の場合には、作動液室７の流
体の振幅も小さく、バルブ機構２４が開弁され、
該流体が弁体２６と空洞部２５との間の隙間を通
つて第２平衡液室１９にも流入し、可撓膜２３を
拡張しようとするが、可撓膜２３が気密室２７に
支えられるので、第２平衡液室１９の流体に可撓
膜２３と気密室２７の弾性が作用し、第２平衡液
室１９のばね定数が大きくなり、作動液室７の液
圧が高まり、弾性体５、作動液室７および第１、
第２平衡液室１８，１９の全体によつて形成され
る動ばね定数の低レベル安定領域を高帯域周波数
まで延ばしかつピーク周波数をも高くすることが
できる（第３図の実線の特性を示す）。

発明の効果 以上のように本発明によれば、弾性体の加振周
波数が低帯域周波数の場合には、バルブ機構を閉
弁して第１平衡液室の拡張のみを作用させてロス
フアクタを大きくかつピーク周波数を低くするこ
とができ、高帯域周波数の場合にはバルブ機構の
開弁下で、気密室の圧縮反力でばね定数の大きく
なつた第２平衡液室の振動伝達の低減作用を効果
的に働かせて動ばね定数の低レベル安定領域を高
帯域まで延ばし、ピーク周波数も高くすることが
できる。この結果、低帯域周波数によつて生じる
カーシエイクと、高帯域周波数によつて生じるこ
もり音とを低減することができる。しかも、第２
平衡液室の可撓膜を気密室で支えるので、第２平
衡液室のばね定数を可撓膜と気密室の両者で設定
できるので、第２平衡液室の可撓膜の素材選定の
自由度を増し、第２平衡液室のばね定数を大きく
できる等実用上大なる効果がある。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例を示す断面図、第２
図は低帯域周波数での加振周波数とロスフアクタ
との関係を示す特性図、第３図は高帯域周波数で
の加振周波数と動ばね定数との関係を示す特性
図、第４図は従来の液体入り防振体を示す断面図
である。 １…支持部材、５…弾性体、６…隔壁、７…作
動液室、１０…オリフイス、１７…囲い、１８…
第１平衡液室、１９…第２平衡液室、２０…オリ
フイス、２４…バルブ機構、２７…気密室。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 支持部材に一体に組付けた弾性体と隔壁とで
   作動液室を形成し、この作動液室の外側に前記隔
   壁と可撓膜を備えた囲いとで第１・第２平衡液室
   を個別に形成し、この第１平衡液室を前記作動液
   室に連通するオリフイスと前記第２平衡液室を前
   記作動液室に連通するオリフイスとを前記隔壁に
   形成する一方、前記作動液室と第２平衡液室とを
   連通するオリフイスに前記弾性体に伝わる振動の
   大振幅時に閉弁するとともに小振幅時に開弁する
   バルブ機構を設け、さらに前記第２平衡液室の可
   撓膜の外面と前記支持部材の内面との間に気密室
   を形成したことを特徴とする液体入り防振体。