JPH0240264Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本考案は、エンジンの排気時期制御装置に係わ
り、特に、２サイクルエンジンに用いられる排気
時期制御装置に関するものである。

「従来の技術およびその問題点」 ２サイクルエンジンにおいて、燃焼ガス充填効
率を高めるための手段として、排気通路内の反射
波を利用し、掃気時燃焼室から排気通路へ吹き抜
けるガス（いわゆる吹き抜けガス）を燃焼室へ押
し戻す技術が知られている。

この技術を実際のエンジンに適用する上で留意
しなければならない点は、掃気ポートが閉じられ
た後であつてしかも排気ポートが閉じられる寸前
に排気反射波を排気ポートに戻すようにしなけれ
ばならない点である。

ところで、自動二輪車や自動車に搭載される２
サイクルエンジンの場合では、回転速度を変えて
使用することから、ある回転速度においては反射
波を排気ポート閉塞寸前に戻すことができて、燃
焼ガス充填効率を高めることができる場合であつ
ても、他の回転速度ではそれができなくなるとい
う現象が生ずる。

そこで従来では、排気通路の上部に弁体を設
け、この弁体をエンジンの回転速度に応じて開閉
させることにより排気通路の開口上縁を上下動変
化させて、排気開始時期および終了時期をエンジ
ンの回転速度に応じて早めたり遅くしたりする技
術が開発されている。

ところが、これまでの排気時期制御装置は完全
なものではなく、ガス燃焼時に生ずるカーボンが
弁体が弁体収納凹所に付着し、極端な場合には、
弁体を作動させることができなくなるという問題
が残されていた。

「考案の目的」 本考案は上記事情に鑑みてなされたもので、排
気時期制御用の弁体や弁体収納凹所にカーボンが
付着するのを防ぐことができ、弁作動の安定化が
図れる２サイクルエンジンの排気時期制御装置を
提供することを目的とする。

「問題点を解決するための手段」 本考案では前述した目的を達成するため、排気
時期制御用弁体に、弁体収納凹所に相対する上面
から排気通路の内周面となる下面に達する貫通孔
を設けた構成としている。

「実施例」 以下、本考案の一実施例について第１図〜第３
図を参照して説明する。

第１図は本考案に係わる排気時期制御装置を備
えた２サイクルエンジンの縦断面図、第２図は第
１図の−線に沿う断面図である。

図において符号１はシリンダブロツク、２はシ
リンダヘツド、３はシリンダ内に摺動自在に嵌挿
されたピストン、４は掃気通路、５は排気通路で
ある。排気通路５のシリンダ内への開口（排気ポ
ート）５ａ近傍には第１図中上下方向に延びる補
強用リブ６が設けられている。このリブ６は排気
通路５のシリンダ内への開口近傍を補強するとと
もに、ピストンリングが径方向外方へ広がつて排
気ポート５ａの上縁や下縁に突き当たるのを防止
する機能を果たす。

排気通路５の上部であつてシリンダ内への開口
５ａの若干下流側には、後述する弁体を収納する
ための凹所７が形成されている。凹所７には軸８
がシリンダの中心線と直交する方向に延在されて
回転自在に設けられている。軸８の中央部分は断
面方形状とされ、そこには排気時期制御用の弁体
９，９が間にリブ６を挟むように、リブ６の両側
に位置して設けられている。また、軸８の弁体９
を支持する部分の外側にはリング溝８ａが形成さ
れている（第２図参照）。

前記両弁体９，９は互いに左右対称となつてい
る。弁体９は、第３図に示すように軸８が挿通さ
れる軸挿通部１０と、軸挿通部１０から一側に延
びる腕部１１と、腕部１１の先端（揺動端）に設
けられかつシリンダの内周面とほぼ同一曲率を有
して立設されてシリンダ内面と整合する制御面１
２を備えている。制御面１２の上部には該制御面
１２の上縁に連続するとともに、軸挿通部１０側
斜め上方に傾斜する傾斜部１３を有する凸部１４
が設けられている。また、弁体９の制御面１２と
弁体回動軸線ｍ（軸８の中心軸線）の間に位置す
る部位、すなわち腕部１１には、前記弁体収納凹
所７に相対する上面から排気通路の内周面となる
下面に達する貫通孔１５が、凸部１４側に位置し
て複数設けられている。貫通孔１５の上部は径が
孔１５の直径の２倍程度となるよう面取り処理が
施され、これにより斜面部１５ａが形成されてい
る。上述のように構成された弁体９はシリンダブ
ロツク１に組み付けれる際、シリンダ内面と制御
面１２との間に若干の隙間ｘを形成するように組
み付けられる。

前記弁体収納凹所７の下面は弁体９の上面に対
応した形状、すなわち、開口側から奥方に向かつ
て断面略３角形状の凹部７ａ、平坦部７ｂ、断面
円弧状の凹部７ｃが順に設けられた形状と成つて
いる。

弁体９，９はエンジンの回転速度に応じ、軸８
を介して駆動機構２０によつて揺動操作されるよ
うになつている。すなわち、弁体９、軸８、駆動
機構２０によつて排気通路５の上部を開放あるい
は閉塞操作する排気時期制御装置が構成されてい
る。駆動機構２０は第２図に示すように、軸８の
一端であつてシリンダブロツク１の外部に突出す
る部分に取り付けられたワイヤーガイド２１と、
該ワイヤーガイド２１にワイヤー２２を介して接
続されたモータ（図示せず）と、該モータをエン
ジンの回転速度に応じて正・逆回転速度する制御
器（図示せず）とから成つている。

また、前記軸８のシリンダブロツク１から突出
する部分およびワイヤーガイド２１は、シリンダ
ブロツク１に取り付けられたワイヤーケース２３
およびワイヤーケース２３にねじ止めされるケー
スカバー２４によつて覆われている。なお、軸８
の一端側には中央部から端部に向かつてブツシユ
２５、位置決め用コツター２６、シール部材２７
が順に配設されている。また、第１図および第２
図中Ｒは冷却水を通すための通路を示す。

しかして、このように構成された排気時期制御
装置は、エンジンの運転状態に基づいて操作され
ることにより、エンジンの出力特性を全回転域に
おいて高めることができる。

すなわち、エンジンが低回転で運転されている
場合には、軸８を所定方向へ回転させて弁体９を
揺動させ、同弁体９，９を排気通路５内に突出さ
せる。このような弁体９，９の移動により、その
制御面１２を排気通路の開口５ａの上部途中に位
置させ、これによつて、第１図中実線で示すよう
に排気通路５の開口５ａの上部を閉塞し、同開口
５ａの上縁を見掛け上弁体９，９の制御面１２の
下端縁までの距離ｌを分下げる。したがつて、制
御面１２を距離ｌ下げた分、ピストン３の移動に
より閉開される排気ポート５ａは、遅く開かれか
つ早く閉じられる。

このように、エンジンが低回転のときには、ピ
ストン３の上下動周期が長いのに対応して排気ポ
ート５ａを遅く開かせかつ遅く閉じせ、これによ
り、排気ポート５ａが閉じられる寸法に排気反射
波を排気ポート５ａに戻し、燃焼ガス充填効率を
高めている。

一方、エンジンが高回転域に至つた場合には、
弁体９，９を前述とは逆向きに移動させて第１図
中２点鎖線で示すように凹所７内に収納する。す
なわちこの場合にあつては、ピストン３の上下動
周期が短くなるのに対応して、排気ポート５ａを
前述した場合に比べて早く開かせかつ遅く閉じら
せる。したがつて、この場合においても、排気ポ
ート５ａが閉じられる寸前に排気反射波を排気ポ
ート５ａに戻し、前述と同様、反射波の有効利用
によつて燃焼ガスの充填効率を高めている。

このように、エンジンの排気時期を弁体９，９
の下端縁によつて制御し、全回転域における出力
特性の向上を図つている。

なお、上記弁体９の制御方法は、２位置制御等
のステツプ式制御、あるいは連続する比例制御い
ずれであつてもよい。

また、上記排気時期制御装置にあつては、弁体
９の平板部１１に貫通孔１５を設けていることか
ら、弁体９近傍を反射波（粗密波）が通る際、排
気ガスや吹き抜けガスが、第１図中矢印で示すよ
うに貫通孔１５を通つて弁体９と弁体収納凹所７
との間に侵入する。この侵入したガスは弁体９の
外周部分と凹所７との隙間を通つたり、あるい
は、粗波が来た時に貫通孔１５を逆流したりし
て、再び排気通路５へ戻る。そのとき、燃焼ガス
中に含まれているカーボンもそれらガスととも
に、排気通路５に排出されることから、弁体９や
凹所７内に付着することが極めて少ない。

また仮に、凹所７の下面や弁体９の上面にカー
ボンが付着したとしても、同カーボンが固化した
際に弁体９の揺動に伴い弁体９の上部の貫通孔周
縁に形成されるエツジ部１５ｂによつて、その固
化したカーボンをたたき落として貫通孔１５を介
して排気通路５に排出することができ、このこと
からもカーボンのある程度以上の付着を防止する
ことができる。

なお、弁体９に貫通孔１５を設けていることか
ら出力特性を付与する弁機能が損なわれるおそれ
も考えられるが、実験の結果、弁体９は貫通孔１
５の有無に拘わらず機能することがわかつた。

また、弁体９に設ける貫通孔１５の形状は、上
記実施例に示すような円状のものに限られること
なく、適宜設計変更可能であり、例えば、第４図
に示すように長軸が弁体９の長手方向に沿つて延
びる長孔状のものでもよく、あるいは、第５図に
示すように長軸がシリンダの内周面に沿つて周方
向に延びる長孔状のものでもよい。また、貫通孔
１５は複数設ける必要がなく、１個であつてもよ
い。

第６図は本考案の他の実施例を示している。こ
の実施例において両弁体９には長軸が弁体の長さ
方向に延びる長方形状の貫通孔１５が２個づつ並
列に設けられている。そして、弁体９の上面は、
貫通孔１５の斜面部１５ａによつて全面が覆われ
ている。この実施例においても、前記実施例と同
様、弁体９の上面に流れこむガスによつてカーボ
ンが付着するのを防止し得、かつ、仮にカーボン
が付着した場合であつても、カーボン固化後、弁
体９の上面によつてたたき落とし、貫通孔１５か
ら排気通路５へ排出させることができる。

「考案の効果」 以上説明したように本考案にかかる排気時期制
御装置によれば、弁体に上面から下面に達する貫
通孔を設け、この貫通孔を利用して弁体と弁体収
納凹所の間に排気ガス等を強制的に侵入させて、
その部分をガスの流れによつて掃除している。ま
た、排気ガス等を弁体と弁体収納凹所との間に積
極的に導くことができ、該吹き抜けガスの流れを
利用してカーボンを排気通路に排出させることが
できる。このため、弁体と弁体収納凹所との間に
カーボンの付着が少なく、弁作動の安定化が図れ
ることとなつた。また、ある程度堆積したカーボ
ンは、弁体の上面によりたたき落とされるので、
カーボンが過度に堆積するおそれもない。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案にかかる排気時期制御装置を備
えた２サイクルエンジンの縦断面図、第２図は第
１図の−線に沿う断面図、第３図は弁体の斜
視図、第４図は本考案の他の実施例を示す断面
図、第５図は本考案のさらに他の実施例を示す断
面図、第６図は本考案のまたさらに他の実施例を
示す斜視図である。 １……シリンダブロツク、２……シリンダヘツ
ド、４……掃気通路、５……排気通路、５ａ……
（排気ポート）開口、７……弁体収納凹所、９…
…弁体、１２……制御面、１５……貫通孔、１５
ａ……斜面部、ｍ……弁体回転軸線。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) ２サイクルエンジンのシリンダの内部へ連通
   された排気通路の開口上部を開閉して、シリン
   ダの内部に摺動自在に嵌挿されたピストンによ
   るシリンダ内部と排気通路との連通時期を変化
   させるようにした排気時期制御装置であつて、
   前記排気通路の上部に設けた弁体回動軸線を中
   心として揺動自在に取り付けられ、その揺動先
   端部にシリンダの内面とほぼ同一の曲率を有し
   て立設した制御面により前記排気通路の開口上
   部を開閉する弁体と、前記排気通路の上部に設
   けられた弁体開放時において該弁体を収納する
   弁体収納凹所とを備えてなり、前記弁体の制御
   面と弁体回動軸線の間の部位には前記弁体収納
   凹所に相対する上面から排気通路の内周面とな
   る下面に達する貫通孔を備えてなる２サイクル
   エンジンの排気時期制御装置。 (2) 前記貫通孔には上部が隣の貫通孔と隣合う斜
   面部を有していることを特徴とする実用新案登
   録請求の範囲第１項記載の２サイクルエンジン
   の排気時期制御装置。