JPH0238763Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 (1) 考案の技術分野 本考案は、循環式呼吸器内の静圧の過度の上昇
を防止し循環式呼吸器の作動を確実なものとする
静圧自動排出装置に関する。

(2) 考案の従来技術 火災等の際に救出作業や消防活動をする場合、
従来は圧縮空気（酸素）放出式呼吸器が広く用い
られていた。しかし、このタイプは高圧容器に貯
えられた空気（酸素）を吸入し、呼気はそのまま
外部に放出してしまう不経済なものであるため、
使用時間が短時間に限定される欠点があつた。循
環式呼吸器はこれを解決したもので、呼気を外部
に捨てず、清浄剤を通過させて、呼気中の炭酸ガ
スを吸収除去し、残りの空気の中に不足分の酸素
を適量だけ自動的に補給し、これを再呼吸する構
造（循環方式）とすることにより、長時間の使用
を可能にしたものである。

従来の循環式呼吸器の一種として第１図に示す
ような型のものがある。この循環式呼吸器は、マ
スク１に弁２，４をそれぞれ介して吸気管５およ
び吸気管３を接続し、呼気管３から排出される呼
気を吸収剤（例えばCa（OH）₂）６を充填した清
浄缶（炭酸ガス浄化器）７に通して炭酸ガスを除
去し、浄化された空気を外気に連通する呼吸袋８
を収容した缶体９を通して吸気管５に戻し、炭酸
ガスが除去された分だけ酸素ボンベ１０から減圧
器１１を介して酸素を缶体９内に補給するととも
に、マスク１内の圧力が高くなつたとき自動排気
弁１２を用いてマスク１内の空気を排出するよう
に構成されている。

ところで、循環式呼吸器においては、循環系内
の内圧は毎回呼吸に伴つて変動し、呼気のときは
正圧、吸気のときは負圧になるのが通例であつ
て、この圧力範囲は呼吸条件によつて著しく異る
が大体水柱±30mm程度のものである。この呼吸に
よる変動圧を本文では動圧と呼び、これに対しこ
の直接呼吸に無関係な内圧を本文では静圧と呼ぶ
ことにする。呼吸器の循環系内では、炭酸ガス吸
収剤の化学反応熱による循環系内気体の温度上昇
による気体の膨張による内圧の上昇や、系内への
酸素の過剰排出や、圧気状態から大気圧への減圧
等が原因でこの静圧が上昇することがある。この
ために缶体９の中で膨張、収縮を繰り返している
呼吸袋８が正常な収縮限界を超えて収縮してしま
うことがある。こうなると通常0.2mm厚程度のゴ
ム引布で作られている呼吸袋８はよじれたりして
正常な形に復元することが不能となることがあ
り、その機能が失われてしまう。したがつて静圧
の過度上昇を避けねばならない。この静圧の上昇
は実験によれば通常ほぼ水柱＋10mm程度のもので
あつて、呼吸動圧の±30mmより少ないので、循環
系内のマスク１内にある自動排気弁１２により静
圧の上昇分を排出除去させようとすれば呼吸動圧
まで外部に排出させることにより、これでは呼吸
袋の機能が失われて、減圧弁が過度に作用して酸
素過剰に陥つてしまう。

(3) 本考案の目的 本考案は、上記従来の循環式呼吸器の欠点を除
去し、循環式呼吸器内の静圧の過度の上昇を防止
し呼吸袋の作動を常に正常状態に保ち、もつて循
環式呼吸器の作動を確実なものとする静圧自動排
出装置を提供することを目的とする。

(4) 本考案の構成 このため、本考案は、マスクから清浄缶に至る
呼気系統から分岐して呼吸動圧を減衰させるため
に充分な抵抗を有する分岐呼気通路を形成し、こ
の分岐呼気通路と直列に呼気系統内の静圧が設定
値を超えた時開弁して呼気系統内の気体を外部に
排出する静圧排出弁を設けることにより、呼気を
この分岐呼気通路を通過させる間に呼吸動圧を減
衰除去し、残つた静圧分のみを排気弁により外部
に排出するようにしている。

(5) 本考案の実施例 以下添付図面について本考案の実施例を説明す
る。

第２図は、本出願人が先に特願昭57−219488
（特公昭60−28508号）号において提案した循環式
呼吸器の構造を一部利用した本考案の実施例を示
すものである。

特願昭57−219488号は、マスク１から清浄缶７
に至る呼気系統の途中に分岐して分岐管１３を形
成しこの先に復元力を持つ弾性袋体（以下呼気袋
という）１４を設け、この呼気袋が呼気に連動し
て膨らみ、時間差をおいてしぼむようにすること
によつて、大呼吸や急呼吸時の系内の圧力のピー
クを和らげ、自動排気弁１２の過度の作動による
酸素の過剰供給を防止しようとするものである
が、本実施例においては、この分岐管１３および
呼気袋１４を呼吸動圧を減衰させる分岐呼気通路
の一部として利用している。なお、第２図に示す
実施例においては、第１図と共通する部分には同
一の符号を付してある。

呼気管３には分岐管１３が接続され、その端部
に呼気袋１４が接続されている。分岐管１３は呼
気管３内の呼気の流れが滑らかに分岐されるよう
に、それらのなす角度αを小さくして呼気管３に
接続すれば都合よい。呼気収容袋１４は弱い復元
力を持つ弾性袋体（例えば医療で用いられる麻酔
用ゴム袋のようなもの）で構成されたもので、原
形では実線１４で示すようにしぼんでいるが、大
きな呼吸や早い呼吸によつて気体が流入すると点
線１４′で示すように膨み、気体の流入が止まる
と、復元力によつて袋体内の気体を再び分岐管１
３を通して循環系内に環元させる。

呼気袋１４の先端には孔が形成されておりその
先には極く小径の細管１５が接続されている。細
管１５の長さおよび内径は所要の動圧減衰量にも
とづいて適宜設定する。分岐管１３、呼気袋１４
および細管１５により分岐呼気通路１９が形成さ
れる。細管１５の先端には静圧排出弁１６が接続
されている。この静圧排出弁１６はケース１６ａ
の一端部には細管１５と連通する接続端部１６ｂ
が形成され、他端部には外気に連通する孔１６ｃ
が形成されている。ケース１６ａ内の接続端部１
６ｂ側には弁座１６ｄが形成され、この弁座１６
ｄに対し弁体１７が押しバネ１８により押付けら
れている。押しバネの力は弁体１７に加わる圧力
が設定を超えると押し下げられて弁体１７が弁座
１６ｄから離れるように設定されている。

次に上記実施例の動作について説明する。

呼吸により呼気系統に発生する呼吸動圧は、呼
気が呼気管３および分岐管１３、呼気袋１４、細
管１５からなる分岐呼気通路１９を経て静圧排出
弁１６に至るまでの間にこれらの低抗によつて生
じる圧力損失によつて減衰除去され、静圧分のみ
が静圧排出弁１６の弁体１７に加わる。この静圧
が設定値を超えると弁体１７が押しバネ１８の押
圧力に抗して弁座から離れ、呼気系統内の気体の
一部が弁１６の孔１６ｃを通つて外部に排出され
る結果、静圧は設定値以下に下降し、弁１６は閉
じる。

上記実施例においては、分岐呼気通路１９を分
岐管１３、呼気袋１４、および細管１５により構
成したが、分岐呼気通路としてはこれに限らず他
の構成を採用することができる。たとえば呼気管
３から分岐して細く長い管を螺旋状に巻いて分岐
呼気通路を形成する等、要は呼気が静圧排出弁１
６を通過する前又は後に於て呼吸動圧が減衰除去
されるだけの抵抗を有するものであればよい。ま
た静圧排出弁１６は第２図に図示したものに限ら
ず、設定値を超える圧力により開弁して気体を外
部に逃すものであればよい。

以上述べたように、本考案は、呼気系統中の圧
力中呼吸によつて生じる呼吸動圧分を分岐呼気通
路によつて減衰除去し、主として静圧分のみを静
圧排出弁に到達せしめるように構成したので、設
定値以上の静圧分のみを外部に排出することがで
き、これによつて静圧の過度の上昇を防ぎ、常に
呼吸袋の作動を正常状態に保ち、吸気中の酸素濃
度の過度の上昇を防ぎ、実験によればほぼ40％以
下の酸素濃度を保ち、もつて循環式呼吸器の作動
を確実のものとすることができる。

【図面の簡単な説明】

添付図面において、第１図は従来の循環式呼吸
器を示す図、第２図は本考案の一実施例を示す図
である。 １……マスク、７……清浄缶、１３……分岐
管、１４……呼気袋、１５……細管、１６……静
圧排出弁、１９……分岐呼気通路。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. マスクから清浄缶に至る呼気系統から分岐して
   呼吸動圧を減衰させるために充分な抵抗を有する
   分岐呼気通路を形成し、この分岐呼気通路の先端
   に呼気系統内の静圧が設定値を超えた時間弁して
   呼気系統内の気体を外部に排出する静圧排出弁を
   設けてなる循環式呼吸器用静圧自動排出装置。