JPH0237418B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

この発明は、黄銅合金特に耐摩耗性が必要とさ
れる用途に有用な黄銅合金に関するものである。 従来、高速高荷重の下で使用される耐摩耗性黄
銅合金としては、高力黄銅にSiを添加して高硬度
のMn₅Si₃等の化合物を析出させたものが使用さ
れている。しかしながら高速化、潤滑油の低粘度
化等により使用条件が一段と荷酷な摺動条件下で
は耐摩耗性等実用面で充分とはいえず更に高性能
なものが望まれている。 本発明は上記の点に鑑みて提案されたもので、
高力黄銅に比べて優れた耐摩耗性を有する銅合金
を提供することを目的とし、重量％でCu55〜70
％、Al1.0〜6.0％、Fe0.1〜4.0％、Ni0.5〜5.0％、
Zr0.1〜3.0％および残部はZnからなること、およ
びこの合金にSi0.1〜2.0％添加したことを特徴と
する。 上記各構成元素を選定し、また上記割合に限定
した理由は以下の通りである。 即ち、Alはβ相形成促進元素であり、合金の
機械的強度を高めるが、添加量が6.0％以上では
鋳造組織の粗大化傾向があり、また酸化スラグを
生成しやすく、靭性が低下する。一方添加量が
1.0％以下では強靭効果が認められない。 Feは金属間化合物を強化し、また鋳造組織を
微細化する効果がある。ただし、添加量が4.0％
を上回ると金属間化合物が粗大化して機械加工性
を損ない、また耐摩耗性でバラツキが大きくな
る。一方添加量が0.1％を下回ると上記効果は認
められない。 Niはα相形成促進元素でマトリツクスの靭性
を向上させ、またFeとの共存で金属間化合物を、
均一に分布させる。この点を勘案した場合Niの
添加量は0.5〜5.0％が好適範囲である。 Zrは本合金特有の金属間化合物を析出させる
には必須の元素で、析出物の均一分布および析出
物の硬度向上に寄与し、これが耐摩耗性に著しい
効果を示し、3.0％以上では析出物が粗大化し、
偏析が生じ、0.1％以下では上記効果が認められ
ない。 またSiもZrと同様に金属間化合物を強化し0.1
〜２％が好的範囲である。２％以上では析出物の
偏析あるいは靭性が低下し0.1％以下ではその効
果が少ない。以下本発明の実施例について説明す
る。 実施例 １ この発明合金の各種組成のものと、公知の高力
黄銅を溶解鋳造し熱間鍛造したものの、特性値を
比較したところ第１表の結果が得られた。この結
果から本発明合金が従来の高力黄銅に比較して引
張り試験、硬度ともに従来品より優れており、靭
性に優れているといえる。

【表】 実施例 ２ この発明合金（No.１、３およびNo.４、６）と市
販の高力黄銅No.１（従来の高力黄銅ではNo.１のSi
−Mn系のものが耐摩耗性が優れている）とを用
いて自動車用変速機のシンクロナイザーリングを
作成し、それのテーパ面と、鋼材（JIS記号
SCM420H）により作成したテーパコーンとの摺
動による摩耗試験の結果を示す。 試験条件は、リング押付荷重60Kgｆ、摺動速度
4.7ｍ／sec、押付回数2000回とし、潤滑油は
ATFデクストロンとSAE10W−30の２種類とす
る。なお摩耗変位量は、テーパコーン軸方向に対
する変位量である。

【表】 以上の通り本発明合金は、従来の高力黄銅合金
よりも機械的性質の優れた耐摩耗性黄銅合金で、
特に高速、高荷重における耐摩耗性がすぐれてお
り、苛酷な使用条件に充分に耐えうる合金であ
る。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 重量割合でCu55〜70％、Al1.0〜6.0％、
   Fe0.1〜4.0％、Ni0.5〜5.0％、Zr0.1〜3.0％および
   残部はZnからなることを特徴とする耐摩耗性黄
   銅合金。 ２ 重量割合でCu55〜70％、Al1.0〜6.0％、
   Fe0.1〜4.0％、Ni0.5〜5.0％、Si0.1〜2.0％、
   Zr0.1〜3.0％および残部はZnからなることを特徴
   とする耐摩耗性黄銅合金。