JPH0228980B2 - - Google Patents

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JPH0228980B2
JPH0228980B2 JP57113987A JP11398782A JPH0228980B2 JP H0228980 B2 JPH0228980 B2 JP H0228980B2 JP 57113987 A JP57113987 A JP 57113987A JP 11398782 A JP11398782 A JP 11398782A JP H0228980 B2 JPH0228980 B2 JP H0228980B2
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polyvinyl alcohol
gel
water
aqueous solution
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Takashi Teramatsu
Koichi Tamura
Masao Nanbu
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Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、合成系ヒドロゲルからなる生体組織
の癒着防止用膜に係り、特に、従来の天然系また
は合成系のヒドロゲルには見られない優れた諸特
性を有するヒドロゲルからなる生体組織癒着防止
膜に関する。 胸部心臓血管外科(thoracic cardio vascular
surgery)、脳外科(cerebral surgery)、整形外
科(orthopaedic surgery)等の領域において、
手術または外傷(trauma)に因り、横隔膜
(diaphragm)、心膜(心襄)(pericardium)、脳
硬膜(dura matcr encephali)、腹膜
(peritoneum)、腸間膜(mesenterium)、関節襄
(capsula articularis)等の広範囲の切除
(resection)を余儀なくされる場合も多く、これ
により組織欠損(tissue defect)をきたす。この
ような広範囲欠損を補填するに十分な自家組織
(autogenous tissue)の調達は困難であることか
ら、例えばテフロン、ポリエチレン、ポリプロピ
レンなどの合成(artificial)高分子膜(または
網)が用いられるが(J.A.Waldhausen et al、J.
Trauma、、332(1966)、光野孝雄他、手術17
715(1963)、沢井靖明、日外会誌、65、579
(1965)、吉田忠、外科の領域、、678(1950)、
松本守海、京大胸部研紀要、14、1(1981))、組
織反応の比較的少ない(low tissue reactivity)
と言われるテフロン(J.H Harrison、Surg.
Gynecol.Obst.、584(1957))、ポリエチレン(J.
A.Waldhausen et al、J.Trauma、、332
(1966)、吉田忠、外科の領域、、678(1959))、
ポリビニルアルコール(西重敬、医学研究、30
1130(1960))等においても、なお炎症
(inflammation)が認められ、しかもその炎症が
長期化し、器質化(organization)の遅れる例が
指摘されている(松本守海、京大胸部研紀要14
1(1981)、吉田忠、外科の領域、、678(1959)、
西重敬、医学研究、30、1130(1960))ほか、例え
ば、ポリエチレンと金属網(タンタル、ニツケ
ル・クロム合金−Vitalliumステンレス・スチー
ル、アルミニウム、銀)は柔軟性、弾性(伸展
性)に欠け、ポリエチレン、セロハンでは被膜の
肥厚(tylosis of capsule)をきたし、また金属
製網では疼痛(Jolor)、出血(hemorrhage)、炎
症を招き(沢井靖明、日外会誌、65、579(1965)、
松本守海、京大胸部研紀要14、1(1981)、吉田
忠、外科の領域、、678(1959))更に、ポリエ
チレン、セロハン、金属網、シリコン、ポリプロ
ピレン、ポリウレタンなどは、いずれも、心臓、
肺、肝臓あるいは、胸壁間などに強い癒着、また
は隣接組織の搬痕形成(ulosis、cicatrization)、
炎症などをきたす(清水慶彦、寺松孝、化学の領
域、増刊134、178(1982))。また、ポリビニルア
ルコールならびに生体組織(血液)から製造され
るフイブリン膜(fibrin film)は、体内において
新生組織(neoblastocyte)が再生される以前に
膨化(泥状化)または消失する傾向があるほか、
フイブリン膜は抗張力に劣り、縫合が難しいなど
の問題もある(沢井靖明、日外会誌、65、579
(1965)、西重敬、臨床整外、、(6)437(1970)、
医学研究、30、1130(1960))。 前記の広範囲の組織欠損を補填する目的には、
生体組織に害を与えることなく、しかも癒着防止
能が万全で、かつ弾性に富む膜が望まれるが(西
重敬、医学研究、30、1130(1960)、吉田忠、外科
の領域、、678(1959))、上記のとおり、いずれ
もなお十分ではない。 本発明は、前記広範囲の組織欠損の補填あるい
は腱手術(tendinoplasty)においても求められ
る癒着防止能の高く、しかも組織反応性
(foreign body reactivity)の低い人工膜を提供
する。 本発明者は、上記用途に適する合成高分子膜、
即ち、生体組織への損傷をきたさず、しかも近隣
生体組織と癒着しない高分子膜を探索した結果、
新たに、ポリビニルアルコールを原料とする新規
高含水ヒドロゲルを得、これが、上記目的に適す
る性能を有することを見いだし、本発明を完成し
た。 生体組織の大部分には多量の水分が包埋されて
おり、この生体水分が生体の生命活動上きわめて
重大な意義を有することは、既にしばしば指摘さ
れているとおりである(山口辰良、“応用微生物
研究セミナー1”、p.55(1979)技報堂、上平恒、
表面、13、297(1975)、W.Drost−Hansen、
Federation、Proc.、30、1539(1971)、J.D.
Andrade et al、Trans.Am.Soc.Artif.Intern.
Organs、19、1(1973);山村雄一、“新医化学”
p.313(1981)南山堂)。 したがつて、形成外科および整形外科等の分野
における生体修復用埋入材の選定にあたり、生体
組織の高含水性に着目し、含水高分子物質(ヒド
ロゲル)が生体親和性(適合性)に優れていると
期待されている(田辺達三他、“人口血管”p.56
(1977)南江堂、S.D.Bruck、J.Biomed.Mater.
Res.、、387(1973)、Ind.Res.(11)24(1973)、桜
田洋、高分子、24、587(1975)、丹沢宏、外科診
療、20、(1)1(1978))。 しかし、従来のヒドロゲルは、たしかに、生体
組織への損傷は少ないものの、機械的強度に劣る
重大な欠点を有するため、用途はきわめて制限さ
れている(丹沢宏、外科診療、20、(1)1(1978)、
妹尾学編、“医用高分子”、p.81(1978)共立出版、
H.Singh et al.、J.Sci.and Ind.Res、39
March、162(1980)、A.S.Hoffman et al、
Trans.Am.Soc.Artif. Intern.Organs、18、10
(1972)、S.D.Bruck、J.Biomed.Mater.Res.、
173(1972))。 機械的強度の劣るヒドロゲル(またはゲル素
材)を、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒ
ド、テレフタルアルデヒド、ヘキサメチレンジア
ミン等により処理する硬化手段(強度向上策)が
多数提案されてきたが、これらの化学処理は、生
体への有害試薬を使用するため、これらを医用材
料に用いた場合、種々の障害をきたすことが周知
で、例えばポリビニルアルコールのホルマリン架
橋生成物(Ivalon)製人工血管(artifical
vascular graft)が生体内(intracorporeal)で
破断された他、隆房形成材(mammo−
prosthesis)としてポリビニルアルコールのホル
マリン架橋生成物を用いるときは、生体内におい
て収縮することなどが指摘され、現在では、これ
らは使用に耐えないとされている(田辺達三他、
“人工臓器資料集成”p.330、p.88(1976)ライフ
サイエンスセンター、J.R.Lewis、Plast.
Reconstr.Surg.、35、51(1965)、武藤靖雄、日本
臨床外科誌、26、25(1965)、J.B.Blumberg et
al、Ann.Surg.、151、409(1960)、J.H.
Harrison、Surg.Gynecol.Obstet.、584(1957)、
D.L.MacKenzie et al.、Arch.Surg、77、965
(1958)、L.Brown et al、ibid.、79、72(1959))。 また、これらの化学処理により、ヒドロゲルの
優れた特徴(高含水性)が大幅に減退するのが通
例で、この化学処理に多くを期待し難い。化学処
理を行うことなく、軟弱なヒドロゲルを硬化させ
る唯一の手法として、放射線照射法が期待されて
いる(N.A.Peppas et al.、J.Biomed.Mater.
Res.、、423(1977)、H.Singh et al.、Sci.Ind.
Res.、39、(March)、162(1980))。しかし、こ
れには、特殊な設備を要するうえ、の効果の著し
くないことから、一般に、実用困難で、また放射
線照射により、ヒドロゲル本来の優れた特徴の消
失(または減退)する例も多い。 本発明は、上述の化学処理または放射線照射の
いずれをも回避して製造した機械的強度の優れた
ヒドロゲルからなる生体適合性に優れた生体組織
の癒着防止膜を初めて提供する。 本発明は、生体組織癒着防止膜としての高含水
(ヒドロ)ゲルの合成原料として、ポリビニルア
ルコールを用いる。もつとも、ポリビニルアルコ
ールのゲル化法(ヒドロゲル合成法)については
既に多くの処法が提案されている。しかし、下記
に要約するとおり、いずれにも、操作上または生
成物の性状に難がある。 (1) ポリビニルアルコール水溶液を風乾すること
により、湿潤皮膜または乾燥皮膜が得られる
が、これらは耐水性に劣り、水中における剛直
性を全く有しない軟弱なフイルムにすぎず(特
公昭40−9523)、西重敬、医学研究、30、1130
(1960))、関節形成手術(arthroplasty)にお
ける癒着防止膜として家ウサギの体内に用いた
結果、4〜8週後には形くずれが激しく泥状と
化すことが報告されている(西重敬、医学研究
30、1130(1960))。 (2) ポリビニルアルコールとテトラエチルシリケ
ートを含む懸濁水溶液に酸を加え、風乾する方
法によつても、やはり、上記(1)と同様の皮膜が
得られるにすぎない。この場合、懸濁水溶液に
酸を加え、凍結・乾燥する提案もあるが、生成
する皮膜の強度はかえつて低下し、ほとんど成
型不能である(特公昭55−30358、特公昭55−
11311)。また、たとえ、この材料を生体内へ埋
植しても、組織反応が激しく、周囲組織を刺激
し、炎症を起こすため、医用材料として好まし
くない。 (3) ポリビニルアルコール水溶液へ、コバルト60
(γ線)を照射するゲル化法が周知である。し
かしこの場合、特殊な施設(放射線照射施設)
を不可欠とするうえ、照射経費もかさみ、しか
も得られるゲルが軟弱で、しばしば他の硬化手
段(2次的硬化処理)を要する。したがつて、
この方法で得られるゲルは、人工硝子体(眼球
内充てん液)(artificial vitreous body)など
の、高粘性液(または軟質ゲル)が望まれる特
殊用途以外には利用し難い(J.Material Sci.、
1974、1815、特開昭50−55647)。 (4) ポリビニルアルコール水溶液へホウ酸(また
はホウ酸水溶液)あるいはホウ砂(またはホウ
砂水溶液)(注:ホウ砂=四ホウ酸ナトリウム
十水和物)を加えると、即座にゲル化すること
も古くから著名である。しかし、得られるゲル
は、軟弱で、流動性を有し、しかも単に指先で
つまむことにより直ちに千切れるため、成型後
の形態は保持され難い(J.Am.Chem.Soc、60
1045(1938)、フランス特許743942(1933))。ま
た、このホウ砂ゲルはアルカリ性雰囲気下では
存在しうるが、PH8以下では容易に崩壊する。
したがつて特殊用途以外には利用し難く、バイ
オ・メデイカルポリマーとしての価値に乏し
い。 (5) フエノール、ナフトール、コンゴー・レツド
等のフエノール類またはアミノ化合物、あるい
はチタン、クロム、ジルコニウム等の金属化合
物によるポリビニルアルコールのゲル化法も多
数提案されているが、いずれも上記(4)と同様の
難点がある(日本化学雑誌、72、1058(1951)、
特公昭40−9523、特公昭40−23204)。 (6) アルデヒド、ジアルデヒド、不飽和ニトリ
ル、ジイソシアナート、トリメチロールメラミ
ン、エピクロロヒドリン、ビス−(β−ヒドロ
キシエチル)スルホン、ポリアクリル酸、ジメ
チロール尿素、無水マレイン酸等の架橋剤また
は共重合成分によるポリビニルアルコールのゲ
ル化も周知であるが、いずれも化学試薬を用い
る操作を要するほか、含水性の強固なゲルは得
難い(Textile Res.J.、(3)、189(1962)、英国
特許742900(1958))。 (7) ポリビニルアルコール水溶液を40℃以下、特
に5〜18℃以下の低温に放置することによりゲ
ル化させる手法も古くから著名である(小南
他、高分子化学、12、218(1955)、前田他、高
分子化学、13、193(1956)、工化、59、809
(1956))。しかし、室温付近において生成する
ゲルは寒天、カラゲナンのようにもろく、しか
も、これは単に激しくかきまぜるか、水を加え
てかきまぜるか、あるいは若干温めることによ
り溶解する(小南他、高分子化学、12、218
(1955)、高橋、桜田、高分子化学、13、502
(1956))。この、ポリビニルアルコール水溶液
の放冷ゲルを得るのに、低温が好ましいことも
周知で、例えば18℃、更には0℃あるいは0℃
以下の低温で実施する例も知られている(前田
他、高分子化学、13、193(1956)、特公昭47−
12854、高橋他、Polymer J.、、103
(1974))。しかし、いずれにしても、得られる
ゲルは、寒天、カラゲナン、ゼリー様の軟弱品
(または粘液)であり、激しいベトツキ(粘着
性)を示すうえ、耐水性に乏しく、水中では著
しく膨潤し、更に軟化すると共に、一部は水中
に溶出し、残部は糊状と化す。また水中あるい
は40〜50℃の温水中では、更に迅速に形くずれ
し、水中に分散・溶解するなどの難点を有し、
工業用、医用材料としての用途はきわめて制約
されざるを得ない。 (8) ポリビニルアルコールをホルマール化して得
られるスポンジ状生成物も古くから著名である
が、必ずしも安定ではなく、分解、変質に伴
い、有害作用を周囲に及ぼすため、近年その用
途はきわめて限定されるに到つている(田辺達
三他、“人工臓器資料集成”、330(1976)ライフ
サイエンスセンター、同88(1976)、J.R.
Lewis、Plast.Reconstr.Surg.35、51(1965)、J.
B.Blumberg et al.、Ann.Surg.、151、409
(1960)、J.H.Harrison、Surg.Gynecol.
Obstet、584(1957)、D.L.MacKenzie et al.、
Arch.Surg.、77、965(1958)、L.Brown et al、
ibid.、79、72(1959))。 (9) ゲル化能を有する水溶性高分子、例えばアガ
ロース(agarose)、寒天(agar)、アルブミン
(albumin)、アルギン酸塩、カードラン
(curdlan)、カラゲナン(carrageenan)、カゼ
イン(casein)、CMC(sodium carboxymethy
cellulose)、フアーセレラン(furcellaran)ゼ
ラチン(gelatin)、メチルセルロース(methyl
−cellulose)、ペクチン(pectin)、殿粉
(starch)、タマリンドガム(tamarind gum)、
ザンタンガム(xanthan gum)、トラガントガ
ム(tragacanth gum)、グアーガム(guar
gum)等の水溶液へ少量のポリビニルアルコー
ルを添加後、これを放冷するか、ゲル化剤含有
浴(凝固浴)へ浸漬するか、あるいはこれを凍
結・乾燥する手法も知られているが(フレグラ
ンスジヤーナル、、(7)68(1974)、特公昭56−
25210、25211)、このような手法によつても、
やはり軟弱で耐水性の乏しい粘液または非流動
性ゲル、あるいはパサパサした水溶性の乾燥粉
末(凍結・乾燥粉)が得られるにすぎない。 本発明は、ポリビニルアルコールを原料とし、
これに有害物(化学試薬)を加えることなく機械
的諸特性に優れた水不溶性の、生体適合性の良好
な高含水性ゲルを、安価且つ安定に製造する方法
を開発すべく検討した結果、特定性状のポリビニ
ルアルコールを6wt%以上含有する水溶液を、予
め凍結・成型後、これに、部分的真空脱水を施す
ことにより、弾性に富み、機械的強度と生体適合
性に優れた水不溶性の高含水ゲルが得られること
を見いだし、しかも、このヒドロゲルが生体組織
への刺激が無く、しかも生体組織の癒着防止膜と
して優れるとの知見を得、ここに効果の顕著な本
発明を完成した。 即ち本発明は、けん化度が97モル%以上、粘度
平均重合度が1800以上のポリビニルアルコールを
6wt%以上含有する水溶液を任意形状の容器また
は成型用鋳型へ注入後、これを−15℃より低い温
度で冷却・固化・成型し、しかる後、この成型体
を融解させることなく、脱水率(冷却・固化体の
重量減少率)5wt%以上に到達するまで、部分的
に脱水し、必要に応じ水中に浸漬することによ
り、含水率20〜92wt%(湿潤体基準)に到達さ
せて得たヒドロゲルからなる生体適合性のすぐれ
た生体修復用癒着防止膜を提供するものである。 本発明によれば、ポリビニルアルコール水溶液
を冷却・固化・成型し、これを部分的に真空脱水
することにより、機械的強度の優れた所望の形状
の高含水性ゲルが得られる。本発明はゲル化の過
程ならびにその前処理工程において、従来合成高
分子のゲル化に常用されている酸、アルカリ、ラ
ジカル源、放射線、有機溶媒、反応試薬および水
以外の無機溶媒などを全く用いず、更に、2次的
硬化処理(後処理)も要しない。しかも本発明で
得られるゲルは、含水率が高く、ゴム状の弾性と
すぐれた機械的強度をも兼備している。また、本
発明のゲルは、水または温水に不溶で、粘着性を
示さず、この点においても、前記のポリビニルア
ルコール水溶液の放冷ゲルとは全く異なる。すな
わち、本発明は、従来のポリビニルアルコール水
溶液の放冷ゲル化、あるいは従来知られたポリビ
ニルアルコール水溶液の化学的処理によるゲル化
などに関する知見とは全く異なる新規ゲルを提供
するものであることを意味する。 本発明に用いるポリビニルアルコールのけん化
度は、97モル以上、好ましくは98モル%以上を要
する。けん化度80〜88モル%、特に85モル%以下
のポリビニルアルコールを用いても、軟弱なゲル
が得られるにすぎず、本発明の目的は達成されな
い。 本発明に用いるポリビニルアルコールの重合度
は、1800以上を要する。重合度300〜1500未満、
特に1400以下では粘稠液または軟弱ゲルが生成す
るにすぎない。本発明においては、例えば重合度
1800〜3300程度のポリビニルアルコールが使用で
きるが、通常市販されている高重合度品(重合度
1800〜2600)をそのまま用いるのが良い。 本発明では、まずプリビニルアルコールの濃度
6wt%以上の水溶液を調合する。したがつて、ポ
リビニルアルコールの濃度としては、例えば6〜
25wt%とすることができる。この濃度を更に例
えば90%程度まで高めることもできるが、常温に
おける水溶液の粘度が10000cP以上にも達し、ま
た貯蔵中に粘度上昇あるいはゲル化をきたすこと
もあり、若干、取扱い難い。この濃度を例えば
5wt%より低くすることもできるが、後述の脱水
所要時間が長びき、経費(脱水動力費)がかさむ
うえ、得られるヒドロゲルの機械的強度が低下す
る傾向にある。 本発明においては、上記ポリビニルアルコール
濃度6wt%以上の水溶液に、必要に応じ多価アル
コールを添加・混合することができる。本発明に
おいては、この多価アルコールを必ずしも併用す
る必要はないが、後述するとおり、特に薄い膜を
得ようとする場合、部分脱水操作中に、脱水が過
度に進行して膜面に若干のわん曲、波状化をきた
すのを回避するのに、少量の難揮発性の水溶性有
機化合物が有効で、特に生体に無害な炭素数3〜
6の多価アルコールを併用するのが至便である。
必要に応じ、本発明に用いる上記難揮発性の水溶
性有機化合物としては、グリセリン、1,2−プ
ロピレングリコール、グルコース、ソルビトール
(グルシドール、ソルビツト)が最も好ましい。 これらは、発癌性、急性毒性、亜急性毒性、慢
性毒性等に関する動物実験結果(National
Cancer Inst.U.S.A.、“発癌性データ調査レポー
ト”p.417、p.147、p.265(1975)海外技術資料研
究所、石橋武二、“食品添加物の全貌”、p.140〜
144、p.120〜123(1971)南江堂、石館守三、“食
品添加物公定書解説書”、p.B843、p.B251、p.
B586(1979)広川書店)においても、問題は無い
とされており、例えばプロピレングリコールは、
中華めんに添加されるほか、食品着香料、着色
料、保存料の溶剤としても用いられ、弱い静菌作
用をも有する食品用、医薬用添加物として知られ
る(石橋武二、“食品添加物の全貌”、p.140〜144
(1971)、石橋武二、“食品添加物ガイドブツク”、
p.178(1972)南江堂、石館守三、“食品添加物公
定書解説書”、p.B843(1979)広川書店)。また、
グリセリンは、パン、ケーキ、カステラの湿潤
剤、保湿剤、あるいは清酒、合成清酒、マシユマ
ロ、チユーインガム、ゼラチンデザート、肉製
品、キヤンデーへの添加物として知られる(石橋
武二、“食品添加物の全貌”p.120〜123、p.140、
p.143(1971)、石館守三、“食品添加物公定書解説
書”、p.B251(1979)広川書店)。D−ソルビトー
ル(6価アルコール)はビタミン剤、アミノ酸製
剤、カステラ、ケーキ、パン、羊かん、甘納豆、
合成酒、マヨネーズ、ハム、ソーセージ、清涼飲
料水、みそ、しよう油、食酢、奈良漬けなどに添
加されている(石橋武二、“食品添加物ガイドブ
ツク”、p.35(1972)南江堂、石館守三、“食品添
加物公定書解説書”、p.B589(1979))。 これらの多価アルコールは化粧品、ローシヨ
ン、軟膏剤、錠剤結合材などにも用いられている
(石館守三、“食品添加物公定書解説書”、p.
B590、p.B846(1979)広川書店、“化粧品原料基
準追補注解”、p.275、p.68、p.261、p.277、p.278
(1971)薬事日報社、“化粧品用原料標準規格”、
p.53、p.56、p.57、p.59、p.62(1965)日本化粧品
工業連合会)。また、1,4−ブタンジオールも、
毒性はきわめて低いとされ、1,4−ブタンジオ
ールの経口投与による動物試験のLD50(白ネズ
ミ)は2g/Kgで、プロピレングリコール、D−
ソルビトールには及ばないものの、毒性のきわめ
て弱いことは一般に認められるところである。し
たがつて本発明の水溶性多価アルコールとして
は、上述のプロピレングリコール、グリセリン、
ソルビトール、1,4−ブタンジオールを用いる
ことができる。食品に供されているアルギン酸ナ
トリウム、ペクチン酸、グルコース、フルクトー
ス、スクロース、更には各種単糖類(エリトリト
ール、アラビノース、キシロース、キシリトー
ル、グルコース、グルコン酸、グルクロン酸、グ
ルカル酸、ガラクツロン酸、フルクトース、グル
コサミン)、二糖類(セロビオース ラクトー
ス)、三糖類(ラフイノース)、水溶性多糖類(ア
ガロース、アミロース、カラゲナン、アルギン酸
ナトリウム、グリコーゲン、コンドロイチン、コ
ンドロイチン硫酸、デキストラン、アルギン酸プ
ロピレングリコールエステル、トラガント・ガ
ム、プルラン、コンドロイチン硫酸ナトリウムな
ど)を用いることもできるが、前述したとおり、
既にわが国において、食品への多量添加が許可さ
れている1,2−プロピレングリコール(プロピ
レングリコール)、グリセリン、D−ソルビトー
ルが最も好ましい。 本発明において、これらの多価アルコールを併
用する場合の添加量としては、前記ポリビニルア
ルコール濃度6wt%以上の水溶液に対し、2倍量
以下、好ましくは等量以下とすることができ、例
えば1/2〜1/4量以下とすることができる。この混
合水溶液のポリビニルアルコール濃度を高めると
ともに、後述の操作を経て得られる本発明のヒド
ロゲルの機械的強度(硬度)が高まる。一方、混
合水溶液中の多価アルコール濃度50wt%以上で
は、ヒドロゲルの強度が低下する傾向にある。し
たがつて、ポリビニルアルコール水溶液への多価
アルコールの添加量は等量以下が好ましく、また
1/7量程度以上加えることにより、その添加効果
が十分に発揮され、過度の乾燥を防止することが
できる。 この場合、多価アルコールの添加量に応じ、混
合水溶液のポリビニルアルコール濃度は当然のこ
とながら低下する。しかし、上述のとおり、多価
アルコールの添加量を配慮することにより、混合
水溶液のポリビニルアルコール濃度2wt%以上が
確保され、本発明を実施することができる。 本発明において、ポリビニルアルコール及び多
価アルコールの双方を含む水溶液を調合するには
水中へポリビニルアルコールと多価アルコールと
を添加・溶解させる方式のほか、あらかじめ水中
へポリビニルアルコールを溶解し、しかる後、こ
れを多価アルコール(またはその水溶液)と混合
する方式、あるいは多価アルコール(またはその
水溶液)へポリビニルアルコール水溶液またはポ
リビニルアルコール粉末を添加・溶解させる方式
などを採ることができ、いずれの方式においても
最終的に、ポリビニルアルコール濃度2〜10wt
%、多価アルコール濃度13〜67wt%に調整する
のが好ましい。 これらの場合、ポリビニルアルコールは、水以
外の溶剤に難溶であることから、多価アルコール
の水溶液中において、しばしば透明なミクロゲル
微粒子の分散した状態(透明懸濁水溶液状態)を
とるが、これは本発明の実施になんら差し支えな
い。 本発明においては、上記ポリビニルアルコール
(及び多価アルコール)に滅菌操作を施す。この
操作は、ポリビニルアルコール(と多価アルコー
ルの双方)を含む水溶液につき実施することがで
きるほか、ポリビニルアルコール水溶液と多価ア
ルコール水溶液、または、ポリビニルアルコール
と多価アルコール、あるいはポリビニルアルコー
ル水溶液と多価アルコールなどにつき分割実施
後、これらを無菌室において混合(調合)するこ
ともできる。これらの滅菌には、高圧スチーム滅
菌法が至便で、しかも有効である。 本発明においては、上記ポリビニルアルコール
水溶液(または、必要に応じ多価アルコールを添
加・混合した水溶液)を、任意形状の容器または
所望の成型用鋳型へ注入し、冷却・固化・成型す
る。この場合、冷却剤としては例えば、食塩−氷
(23:77)(−21℃)、塩化カルシウム−氷(30:
70)(−55℃)などの寒剤、あるいは、ドライア
イス−メチルアルコール(−72℃)、液体窒素
(−196℃)などを用い、−15℃より低い温度に冷
却し、固化させる。冷却が不十分であると、後述
する脱水工程を経て得られるゲルの形状が、当初
予期した形態、すなわち、ポリビニルアルコール
水溶液注入容器または成型用鋳型の形状と合致し
難いほか、ゲルの機械的強度に劣るため、本発明
に好ましくない。また、液体ヘリウムを用いれば
−269℃まで冷却できるが、不経済であるうえ、
ゲルの品位に利点はなく、実用上は、フレオン冷
凍機を用い例えば−20〜−80℃に冷却するのが良
い。この冷却温度は後述の脱水工程を経て得られ
るゲルの強度に影響する。特に堅いゴム弾性のゲ
ルを望む場合は、−20℃以下、例えば−20〜−55
℃が好ましく、−6〜−20℃では、ゲルの強度が
若干低下する。この冷却・固化・成型を省略する
ときは、水中において剛直性を全く欠く、単なる
ポリビニルアルコールフイルム・ゲルが生成する
にすぎず、本発明の弾性に富む含水性の、耐水性
ゴム状ヒドロゲルは得られない。 本発明における冷却・固化・成型時の冷却速度
としては、0.1〜7℃/minの緩慢冷却、あるい
は7〜1000℃/minの急速冷却のいずれでも差支
えない。 本発明による冷却・固化・成型においては、ポ
リビニルアルコール水溶液は任意の形状の鋳型内
で固化・成型される。この容器または鋳型へ注入
されたポリビニルアルコール水溶液が冷却・固
化・成型されたことを確認後、これを融解させる
ことなく、必要に応じ、鋳型の上面カバーまたは
下面カバー(あるいはその双方)を取りはずし、
成型体の形状を保持しつつ、これに真空脱水処理
を施す。この場合、冷凍室から冷却・固化・成型
体を取り出し、これを真空脱水室へ移し、直ちに
吸引・脱水するならば、水分の除去(昇華)に伴
い試料が冷却されるので、特に外部冷却を施さな
くとも、冷却・固化・成型体が融解することはな
い。また、冷却・固化・成型体が融解しない程度
に加熱することは差支えなく、これにより脱水を
促進することができる。つまり脱水工程の温度と
しては、冷却・固化・成型体を融解させないかぎ
り、特に制限はなく、これがゲルの品位に特に影
響することはない。ここで言う真空脱水は減圧で
脱水することで、減圧の度合は特に限定されない
が、たとえば10mmHg以下、好ましくは1mmHg以
下、さらには0.1mmHg以下で行なうことができ
る。この脱水工程においては、脱水率を5wt%以
上とする。すなわち、本発明においては、ポリビ
ニルアルコール水溶液の濃度のいかんにかかわら
ず、冷却・固化・成型体に脱水処理を施す。脱水
率としては5wt%以上、更には10wt%以上が採用
される。脱水が進行するとともに、ゲル強度が著
しく高まり、しかも非粘着性、耐水性などの諸性
状が著しく改善されることから、この部分脱水処
理は本発明にとり不可欠である。もつとも、本発
明においては、注射薬液の凍結乾燥あるいはコー
ヒー、ミルク、果汁、めん類等の含水食品の凍結
乾燥に見られる十分なる脱水(乾燥)処理を行う
必要はなく、上述のとおりの部分脱水処理によ
り、十分本発明の目的が達成されるが、上記のと
おり、脱水が進行するに伴いゲル強度が著しく高
まることから、所望のゲル強度に応じ、脱水量を
選定することができる。 いずれにしても、この冷却・固化・部分脱水処
理は本発明に不可欠で、きわめて重大な意義を有
するため、これを省略するとき、本発明に述べる
非流動性、非粘着性、かつ高含水性で、しかも機
械的強度と生体適合性に優れるヒドロゲルは決し
て得られない。 本発明においては、次に、冷却・固化・成型・
部分脱水体を、例えば常温放置し、融解(解凍)
させることにより、弾性に富むゲルが得られる。
融解速度としては1〜3℃/minの緩慢融解、ま
たは3〜1000℃/minの急速融解のいずれによる
ことも差支えない。ポリビニルアルコール水溶液
を、0〜30℃程度で放置(貯蔵)する場合に得ら
れるゲルの融点が15〜29℃前後であるのに反し、
本発明のゲルの融点は100℃以上に及ぶため、温
水または温風による急速融解も差支えないが、本
発明のゲルも熱湯中では溶解すること、60℃以上
では表面に硬質皮膜が急速に発生することなどか
ら高温融解は避けなければならず、40〜50℃以下
で融解させるのが望ましい。 この融解操作後、容器または鋳型の支持部から
ゲルを容易に取りはずすことができる。これは水
中において吸水し、含水率50〜95wt%(湿潤体
基準)に達するが、なお強固な弾性体である。 本発明のヒドロゲルは、含水率が上述のとおり
50〜95wt%で、生体組織の含水率(例:成人皮
膚60wt%、赤血球(erythrocyte)72wt%、血小
板(platelet)77〜88wt%、心臓76〜80wt%、横
隔膜80〜84wt%、小腸粘膜74〜80wt%、肝臓
(hepar)69〜73wt%、肺(lung)80〜85wt%、
胸腺(thymus)76wt%)にほぼ合致することを
特徴とする、特異な高含水ゲルである。しかも、
その強度の点でも、人間、動物等の筋肉質
(muscularity)に類似する。本発明のゲルはこ
のように多量の水分を含むにかかわらず、強固な
弾性を示し、堅く握しめても、一時的に変形する
が、直ちに元の形状に復し、形くずれしない。ま
た、本発明の、含水率88%の板状ゲル上へ成人が
片足または両足により直立しても、やはり一時的
変形をきたすものの、直ちに元の形状に復し、形
くずれしない。 高含水性と機械的強度とは、従来から医用高分
子を開発するうえで、流立し難い難題とされてい
るが、本発明のゲルは、上述の高含水性と強度と
を有し、従来のポリビニルアルコール水溶液を風
乾して得られる皮膜あるいは前述のポリビニルア
ルコール水溶液を単に0〜30℃に貯蔵する場合に
生成する水溶性ゲルとは全く異なる新規ゲルであ
る。 本発明のゲルに圧力を加えても、含有水分の浸
出はほとんど見られず、例えば、含水率90wt%
のゲルに4Kg/cm2の圧縮応力を課しても浸出(流
出)水量は、含有水の2%以下にすぎない。 本発明のゲルには、粘着性がない。膜状(8mm
×8mm×1mm)に成型したゲルを50mlの水中で40
日間かきまぜても、相互付着、形くずれ等の現象
は全く認められない。なお、生理食塩水中に1年
間浸漬したが溶解せず、弾性および強度も変らな
い(これは、例えばこんにやくを数日間水道水に
浸漬した場合、激しい形くずれが起こるのと、き
わめて対照的である)。また、ポリビニルアルコ
ール水溶液の単なる放冷ゲル(凍結ゲル)が著し
い粘着性を示し、しばしば流動性粘液状あるい
は、たかだかゼリー、プリン、寒天状で、しかも
耐水性に乏しく、水中で分散・溶解しやすいのと
きわめて対照的である。 本発明のゲルの外見(色相)は、イカの刺身、
餅、ういろ(白色)、かまぼこ、鮮魚(白身)に
近い。 本発明のゲルの感触としては、人間、動物等の
肉、イカの刺身、魚肉、餅(もち)、ちくわ、は
んぺん、シユウマイ、ソーセージに類似する。本
発明においては、ポリビニルアルコール水溶液の
注入容器または鋳型の形状を任意に選定し、所望
の形状のヒドロゲル膜とすることができる。即ち
最終目的物の形状に合わせて成型してもよいし、
一旦得た任意形状の成型体を切削等により膜状に
成型してもよい。 本発明においては、このようにして膜状ヒドロ
ゲルが得られるほか、必要に応じ網状ヒドロゲル
を得ることもできる。従来、テフロン、ポリエチ
レン、ステンレススチール、タンタルなどの網を
横隔膜、心膜、胸壁(ehest wall)、腹壁
(abdominal wall)などに用いる試みが報告され
ているが、いずれにも種々の難点があつたことは
前述したとおりである。本発明において得られる
網状ヒドロゲルは、上記の各種網状生体修復膜に
かわり用いることができ、生体組織への損傷をき
たさず、しかも近隣生体組織と癒着しない網状態
とすることができる。 本発明において、網状ヒドロゲルを得るには、
滅菌済みのポリビニルアルコール水溶液(または
これに多価アルコールを加えた混合水溶液)を、
予め滅菌した突起配列板へ注ぎ、面上に塗布し、
しかる後、これを冷却・固化させ、真空部分脱水
する。これに用いる突起配列板としては、成型後
のヒドロゲル・ネツト(本発明の網状膜)の網目
に新生組織(neoblastocyte)が喰い込み、しか
もこの網状膜全体が薄い新生組織により包被され
ることを意図して、1m2あたり3万〜20万個の突
起を設けた平板または曲板(波板)が用いられ
る。突起密度が過小の場合は、網目を通じて行わ
れる新生組織の進展被覆が遅れる。したがつて、
突起相互間距離としては、通常2.5cm以下、好ま
しくは0.6cm以下とし、その個数は1m2あたり3
万個以上、好ましくは5万個以上とする。また、
突起密度が過大の場合は、ヒドロゲル成型体
(膜)の機械的強度が低下する。 突起の太さについては、過小の場合、ヒドロゲ
ル成型体(網目状膜)の網目径が過小のため、新
生組織の喰い込みが妨げられる。したがつて、突
起の太さは、通常1mm以上、好ましくは1.5mm以
上とし、しかも、新生組織の喰い込み・被覆進展
の観点から突起部分の占める合計面積を全板面の
10%以上とする。また、本発明の網状膜の網目を
通して異なる生体組織の癒着するのを防止する必
要上、上記突起の太さは1cm以下、好ましくは7
mm以下とし、突起数は、1m2あたり20万個以下、
また、突起部の占める合計面積は、全板面の70%
以下とするのが良い。 本発明においては突起部の合計面積は好ましく
は20〜50%である。 また、突起の高さは、所望するゲル成品型の厚
みに応じ決定されるが、例えば0.01〜5mmとする
ことができる。 突起および突起付設平板の材質としては、ポリ
エチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、テフ
ロン、鋼鉄、アルミニウム、鋳鉄、シリコーンな
どに代表される任意の成型材を用いることができ
る。 本発明においては、上記突起付設板へ、前記ポ
リビニルアルコール(またはポリビニルアルコー
ルと多価アルコールとの混合)水溶液を注ぐか、
あるいはへら等を用い突起付設板面に塗布する。
塗布の厚さは0.5〜5mm、好ましくは1〜3mmで
ある。この場合、突起と同一の高さにまで塗布し
て差支えない。すなわち、ポリビニルアルコール
を含む水溶液の塗布後、本発明により、これを冷
却・固化・成型、部分脱水した場合、厚さ方向へ
の収縮率は、約3〜8%であり、これにより、突
起密度に対応した開孔が達成される。しかしなが
ら、突起の高さを超えて厚く塗布した場合、しば
しば開孔(多孔板状ゲルの成型)の目的を達成す
ることができないので注意を要する。 本発明においては、上記の塗布操作後、この塗
布面を、既に述べた方法により冷却・固化・成型
する。 本発明においては、術部(oderated area)の
化膿防止(pyostatics)、治療などの観点から、
医薬をヒドロゲル膜内へ包埋させることができ
る。即ち、前記ポリビニルアルコールを含む水溶
液へ、あらかじめ医薬品を添加した後、これに本
発明の冷却・固化・成型・真空脱水操作を施すこ
とにより、ゲル内に医薬が包埋される。 この添加操作は、ポリビニルアルコールを含む
水溶液の滅菌後に実施するのが至便であるが、耐
熱性医薬品については、上記水溶液へあらかじめ
添加後、これを加圧水蒸気滅菌し、しかる後、前
述した本発明のゲル化手法(冷却・固化・真空部
分脱水)を同様に適用することにより、やはり生
体組織に対する癒着防止能に優れ、しかも弾性に
富む膜が得られる。包埋対象とする医薬品として
は、化膿防止の観点から、例えば、サルフアジア
ジン(sulfadiazine)、銀サルフアジアジン
(silver sulfadiazine)、ベンザルコニウムクロリ
ド(benzalkonium chloride)、セタルコニウム
クロリド(cetalkonium chloride)、メチルベン
ゼトニウム(methylbenzethonium)、硫酸ネオ
マイシン(neomycin sulfate)、ヘキサクロロフ
エン(hexachlorophene)、エオシン(eosine)、
ペニシリンG(penicillin G)セフアロチン
(cephalothin)、セフアロリジン
(cephaloridine)、テトラサイクリン
(tetracycline)、リンコマイシン(lincomycin)、
ナイスタチン(nystatin)、カナマイシン
(kanamycin)、ペニシリナーゼ抵抗性ペニシリ
ン(penicillinaseresistant penicillin)、硫酸フ
ラジオマイシン(fradiomycin silfate)、乳酸銀
(silver lactate)などの単独使用または併用が挙
げられる。抗菌薬のうち、例えば、ナトリウムス
ルフアジアジンの、水に対する溶解度は50wt%
にも及ぶが、スルフアジアジンでは13000mlの水
に1gが溶解するにすぎない。しかし、本発明に
おいては、抗菌薬を必ずしも水溶液として用いる
必要はなく、粉末あるいはその懸濁水を、前述の
ポリビニルアルコール(多価アルコールの混合)
水溶液へ添加混合することにより本発明のゲル
(膜)内に包埋させることができる。 催眠鎮痛剤(hypnotics、analgetics)として
のバルビタール(Barbital、5,5−
diethylbarbituric acid)、解熱鎮痛消炎剤
(antipyretics、analgetics、antiphlosistics)と
してのスルピリン(Sulpyrin、1−phenyl−2,
3−dimethyl−5−pyrazolon−4−
methylaminomethansulfonic acid sodium
salt)、ペンタゾシン(pentazocine)(1,2,
3,4,5,6−hexahydro−6,11−dimethyl
−3−(3−methyl−2−butenyl)−2,6−
methano−3−benzazocin−8−ol)、アザビシ
クラン(Azabicyclane)(9β−methoxy−9α−
phenyl−3−methyl−3−azabicyclo〔3.3〕
nonane citrate)、局所麻酔剤(local
anesthetics)、筋弛緩剤(muscle relaxants)と
してのメタンスルホン酸プリジノール(Pridinol
methanesulfonate)(1,1−diph−enyl−3−
piperidine propanol−1−methanesulfonate)、
メトカルバモール(Methocarbamol)(3−(O
−methoxyphenoxy)−2−hydroxypropyl−1
−carbamate)、止血剤(styptics)としてのク
ラウデン(clauden)、ビタミンKa(2−methyl
−1,4−naphthoquinone)なども同様にして、
必要に応じ本発明のヒドロゲル膜中に包埋・徐放
することができる。 本発明におけるポリビニルアルコールを含む水
溶液への医薬品の添加量としては、ポリビニルア
ルコールの15倍重量以下とすることができ、例え
ば、硫酸フラジオマイシン0.2〜4wt%、サルフア
ジアジン1〜25wt%、ペニシリンG0.2〜1wt%な
どとすることができる。本発明のゲルに包埋され
た医薬は、短時間で流失することはなく、長時間
にわたり包埋・徐放される。例えば、ポリビニル
アルコールと多価アルコールの混合水溶液へサル
フアジアジン・ナトリウムを3wt%溶解後、本発
明の処法を適用して得られるゲル5gを、5mlの
生理食塩水に6時間浸漬した場合のサルフアジア
ジン・ナトリウムの流失(損失)は、約30%であ
り、その後、新たな生理食塩水5mlに3日間浸漬
しても、なおサルフアジアジンの放出が持続し、
当初包埋量の15%は、なおもゲル内に残存する。
したがつて、本発明においては、各種医薬それぞ
れの徐放速度ならびに治療(または予防)対象を
配慮しつつ、医師の指示により医薬の包埋量を選
定するのが良い。 本発明においては、ヒドロゲルの合成過程に、
有害化学試薬、有害溶媒等を全く使用しないこと
から、単にポリビニルアルコールを含む水溶液の
加圧スチーム滅菌を入念に実施し、しかも、これ
を無菌的に冷却・固化・真空部分脱水するかぎり
本発明のヒドロゲルへの有害物随伴を懸念する必
要がない。また、本発明のゲルに医薬を包埋させ
る場合にも、医薬の種別とその包埋量に配慮する
かぎり有害物随伴の懸念はなく、むしろ、これに
より、予防または治療促進効果が発揮される。 本発明のヒドロゲルは、多量の水を包埋し、水
または生理食塩水に1〜16時間浸漬することによ
り、含水率50〜92wt%にまで容易に到達する。
特に、本発明における原料水溶液のポリビニルア
ルコール濃度を6〜20wt%に選定して冷却・固
化・成型・部分脱水を施し、更に水または生理食
塩水に浸漬して得られるヒドロゲルの含水率は70
〜92wt%にも及ぶ。したがつて、本発明の高含
水ゲルは、前述の優れた機械的強度を有するゴム
状弾性体であるにもかかわらず、生体組織に対し
ては単なる水(あるいは生理食塩水)同然の挙動
を示し、生体への損傷はきわめて軽微である。従
来、親水性(または含水性)医用材料として最も
注目されているヒドロゲル、すなわち、ポリ(2
−ヒドロキシエチルメタクリレート)の含水率は
通常38〜40wt%であり、しかも機械的強度に劣
る(田辺達三、“人工血管”p.56(1977)南江堂、
田辺達三、人工臓器、、245(1976)、丹沢宏、
工業材料、25、70(1977)、丹沢宏、外科診療、
20、(1)3(1978)、S.D.Brnck、J.Biomed.Mater.
Res.、、389(1973)、丹沢宏、化学工業、1258
(1974))。その含水率を60wt%まで高めることも
提案されたが、含水率を高めるとともに機械的強
度は更に低下する難点がある(J.D.Andrade
(ed.)、“Hydrogels for Medical and Related
Applications”p.23(1976)ACSSymp.Ser.31
森有一、“人工臓器資料集成”p.116(1976)ライ
フサイエンスセンター、丹沢宏、外科診療、20
(1)1(1978))。これに反し、本発明においては、
含水率70〜92wt%、更には80〜92wt%の含水ゲ
ルが容易に得られる。しかもその機械的強度も優
れることから、従来公知の非親水性、親水性およ
び含水性の医用材料のいずれにも勝る癒着防止膜
としての価値を有し、交通事故、外傷、先天性奇
形(lusus naturae)等による脳硬膜、横隔膜、
腹膜、心膜、関節襄、縦隔(mediastinum)胸膜
(pleura)、胸壁、結腸間膜(mesocolon)などの
修復(補修)、及び術部の癒着防止に、必要に応
じ用いることができる。 本発明のヒドロゲルは、水、多価アルコール、
食塩、グルコース、乳酸、抗生物質等の水溶性低
分子化合物を透過させるが、細菌、酵母、かびの
侵入を阻止する。したがつて、本発明のヒドロゲ
ルを無菌的に合成した後、万一非無菌的取扱いを
受けることがあつても、汚染は単にヒドロゲルの
表面にかぎられ、これを医用材料として使用する
に先立ち、単にヒドロゲルの表面を紫外線照射す
るか、あるいはプロピレンオキシド、エチレンオ
キシド、オゾン、塩素、次亜塩素酸塩、過酸化水
素、ホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、エ
チルアルコール(70〜90%)、イソプロピルアル
コール(30〜50%)、クロールヘキシジン、ベン
ザルコニウムクロリドなどのいずれかにより表面
を滅菌後、清浄な水または生理食塩水を用い洗浄
することにより、再び無菌のヒドロゲルを得るこ
とができる。 本発明のゲルには、可塑剤または安定剤を添加
する必要がない。従来の医用材料の多くが生体組
織を損傷する原因の代表例として、医用材料中の
可塑剤と安定剤がしばしば挙げられていること
(小島幸一他、高分子論文集、34、267270(1977)、
増原英一他、MOL、(12)51(1979))からも、これ
らを全く必要としない本発明のヒドロゲルは、医
用材料として優れている。 本発明において、ポリビニルアルコールを含む
水溶液を単に冷却・固化・成型・真空部分脱水す
ることにより、従来公知のポリビニルアルコール
系ゲルとは全く異なるゲルの得られる理由は明ら
かでないが、冷却・固化ならびに、これに続く部
分的脱水処理時に、ポリビニルアルコールの分子
内および分子間にきわめて多数の水素結合が形成
され、特に、部分脱水時にゲル組織の結晶化度が
高まり、機械的強度と弾性の向上をきたすことに
因ると推察される。 いずれにしても、この種のポリビニルアルコー
ルの冷却・固化・真空部分脱水ゲル及びその製法
ならびに、このゲルからなる膜(または網状膜)
が生体組織癒着防止に優れることは本発明者が初
めて見いだしたものである。 実施例 1 市販ポリビニルアルコール(けん化度99.4モル
%、粘度平均重合度2600、4%水溶液の粘度(20
℃)66cP)の粉末65g(含水率8wt%)を、水
935gに溶解し、6wt%とした。この水溶液170g
をポリエチレン製ビーカー(底面直径8cm)に注
ぎ、これに高圧水蒸気滅菌処理(120℃×30min)
を施し、次に−50℃×0.7hの冷却(凍結・成型)
を施した。しかる後、凍結・成型体を融解させる
ことなく6hの真空脱水を施した後、無菌フイル
ターを通過させた清浄な空気を用いて真空を破
り、成型体(円板)を取出し、無菌室に放置・融
解して97g(含水率89wt%、脱水率43wt%)の
白色不透明な弾性に富むゲルを得た。このゲル
(厚さ約2cm)を人工体液(PH8、食塩0.7wt%、
塩化カリウム0.2wt%、炭酸水素ナトリウム2.4wt
%、リン酸水素ナトリウム0.35wt%、120℃×
30min滅菌)100mlに6h浸漬することにより、こ
のゲルは吸水して143g(含水率93wt%)に達し
た。これに4Kg/cm2の荷重を課したが、水分浸出
量は3ml(流失損失2%)にすぎなかつた。ま
た、この荷重を除くことにより、この弾性体の形
状は直ちに元に復し、さらに、このヒドロゲルの
引張り強度は10Kg/cm2に及ぶことを知つた。 このヒドロゲル円板から、20mm×13mm×5mmの
断片を切取り、生体内埋入試験試料とする。 家兎(体重2.5Kg)の背部皮膚を剃毛し、クロ
ルヘキシン(chorhexidine、bis−(p−
chlorophenyl diguanido)−hexane)(Hibitane)
の0.5%のエチルアルコール溶液を塗布し、さら
に70%エチルアルコールを用いて消毒後、皮膚を
約1.5cm切開し、上記試験試料を埋入後、皮膚を
縫合した。この場合、皮膚切開線が埋入試料上に
位置しないよう留意した。24h後の所見として
は、皮膚発赤(rubefaction)とわずかな腫脹
(tumefaction、oncoides)を認め、埋入試料を
皮膚面上から指触すると試料は、皮下組織の剥離
部分を移動する。4日後、腫脹と発赤は消失し、
6日後抜糸した。9日後、試料は既に固定され、
指触しても移動しない。その後1カ月間、埋入局
所に変化なく、全身にわたりなんらの症状も無
い。35日後、皮下組織をも含めて、試料を摘出し
たが試料は被包組織に包まれており、相互間の癒
着は認められないが、密着状態を呈していた。こ
の被包組織を10%ホルマリン処理(固定)後、パ
ラフインに包埋し、ヘマトキシリン・エオジン染
色(hematoxylin and eosin stain)とワンギー
ソン氏染色(vanGieson stain)を実施して観察
したところ、偽好酸球(pseudo−acidocyte)と
円形化組織球(round cell)が少数認められるも
のの、細胞浸潤(cellular infiltration)はきわ
めて軽度で、炎症(inflammation)反応はほと
んど欠如している。 一方、縫合糸として用いたcatgutの周囲には、
抜糸後も強度の異物性組織反応が認められた。ま
た、比較のため前記と同様の20mm×13mm×5mmの
海綿を、同様に家兎背部皮下に埋入した場合、発
赤と腫脹の消失に14日を要し、1カ月後の摘出所
見によれば、海綿の寸法が10%程度減少してお
り、海綿周辺部に強度の細胞浸潤と多数の異物性
巨細胞(foreign body giant cell)を認め、膿
瘍化している。メチルメタクリレート樹脂につい
ても、同様に比較試験したが、発赤と腫脹の消失
に1週間を要し、偽好酸球の浸潤も著しい。すな
わち、本発明のヒドロゲルのほうが生体適合性の
点において、はるかに優れ、しかも癒着性の無い
ことが判つた。 実施例 2 市販ポリビニルアルコール(けん化度97モル
%、粘度平均重合度1800、4%水溶液の粘度(20
℃)28cP)の粉末86g(含水率7wt%)を水914
gに溶解し、8.0wt%とした。 この水溶液41gを、実施例1に準じ滅菌し、凍
結・成型後、10hの真空脱水を施した。 解凍後8g(含水率58wt%、脱水率=80wt%)
の白色不透明ゲルを得た。これを滅菌済み生理食
塩水10mlに6h浸漬することにより、このゲルは
吸水して14g(含水率76wt%)に達した。この
ゲル(厚さ0.5cm)に4Kg/cm2の荷重を課したが、
水分の浸出はほとんど見られなかつた(保水率99
%)。 この円板状ヒドロゲルから、直径13mm、厚さ
1.5mmの小円板状埋入試験試料を作成する。家兎
(体重2.5Kg)の膝関節内側(medial knee joint)
面を縦方向に3cm切開(incision)し、大腿四頭
筋(四頭股筋)内側(medial musclus
quadriceps femoris)面を縦切開(longitudinal
incision)して膝蓋骨(patella)を外側へ脱臼
(dislocation)させ、膝関節(knee joint)を屈
曲させて関節前部(anterior surface)の脂肪組
織(adipose tissue)を切除(abscission)し、
交差靭帯(crossed ligamentum)の切断
(ablatio)後、後関節襄(posterior joint
capsule)以外の関節襄及び半月板(meniscus)
を切除する。次に大腿骨関節軟骨(femur
arthrodial cartilage)を削除し、この軟骨に代
えて上記試料を大腿骨関節面(femur articilar
surface)へ挿入・固定後、膝関節150度屈曲位に
おいて大腿(thigh)上部から足部までギブス包
帯を施し、3週間後にこれを除いた。この時点に
おいて、関節には軽度の腫脹を認めたが、発赤局
所熱感は無く、一次性癒合(primary
coaptation)も良好で、分必液は見られず、膝関
節は約120度屈曲位をとり保護跛行を示す。他動
的可動範囲は150〜90゜であつた。組織標本
(specimen)につき、ホルマリン固定、パラフイ
ン包埋、ヘマトキシリン・エオジン染色、マロリ
ー・アザン染色(Mallory azan staining)を施
し、鏡検の結果、大腿骨造形関節面(articular
surface of femur)は結合組織(tela
conjunctive)により被覆されており、挿入試料
による反応性骨質増殖(ossein hyperplasia)と
骨髄腔内炎症(inflammation of medullary
space)はいずれも認められない。 一方、同じく1.5mmの厚みのメチルメタクリリ
ート樹脂につき、同様の比較試験を実施したとこ
ろ、3週間後の所見として、関節に腫脹のほか、
局所熱感を認め、膝蓋上部に波動を触知した。ギ
ブス包帯除去後の膝関節には、他動的にわずかの
可動性を認めるが、自動的にはほとんど関節運動
が認められない。また、大腿骨関節面には、炎症
性細胞(inflammatory cellular infiltration)
と線維性搬痕組織(fibrous cicatrization)とが
認められた。これらの所見から、本発明ヒドロゲ
ルの生体適合性の良いことが判明した。 実施例 3 実施例2のポリビニルアルコール粉末13g(含
水率8wt%)を水89gに溶解して得た11.6wt%水
溶液90gを、1cm×1cm×5cmの板状体(18枚
分)成型用鋳型へ注入し、−53℃×1hの冷却(凍
結・成型)を施した後、鋳型を解体し、成型体を
取りはずすとともに、直ちに6hの真空脱水を施
した結果、48g(含水率78wt%、脱水率47wt%)
のゲルを得た。このゲルの引張り試験において、
6Kg/cm2の応力まで切断しなかつた。このゲルを
実施例2と同様に生体内に埋入して試験した結
果、生体適合性の良いことが判明した。 実施例 4 実施例3のポリビニルアルコール粉末から調製
した6wt%水溶液170gを5等分し、それぞれを
ポリエチレン製ビーカー(50ml)に注ぎ、−50℃
×1hの冷却(凍結・成型)を施し、続いて、そ
れぞれに1〜14hの真空脱水を施した。また脱水
ゲルを水中に6h浸漬後の重量を求めた。 【表】 また、浸漬後のゲルにつき、引張り強度を測定
した。 脱水時間(h) 強度(切断時、Kg/cm2) 1 1 2 2 4 3 8 5 14 6 なお、当該ゲルはいずれも水道水に浸漬し常温
で90日間以上放置しても、相互付着、形くずれは
おこらず、強度変化もほとんど起こらなかつた。
これらのゲルを実施例2と同様に生体内に埋入し
て試験した結果、生体適合性の良いことが判明し
た。 比較例 1 実施例2のポリビニルアルコール水溶液41.g
を8cm×8cmの底面の角形容器へ注ぎ、常温で2
日間放置した結果、無色透明の軟弱な湿潤膜を得
た。この膜を水道水に6h浸漬したが、水中に一
部溶解するうえ、膜自体粘着性を示す。実施例2
の場合のようなゴム状ゲルは全く生成しない。す
なわちポリビニルアルコール水溶液を単に乾燥さ
せても本発明のゴム状高含水性ゲルは得られな
い。 比較例 2 実施例2のポリビニルアルコールのかわりに、
けん化度78.5モル%、粘度平均重合度1800、4%
水溶液の粘度(20℃)36cPの市販ポリビニルア
ルコールを用い、同様に操作した。凍結・成型・
脱水体7.4g(含水率55wt%)が得られたが、解
凍後は5℃においても軟弱化し、少量のゲル層の
ほかに、多量のポリビニルアルコール濃厚水溶液
が層分離するのを認めた。すなわち、けん化度の
低いポリビニルアルコールを用いても、本発明の
耐水性ゲルは得られない。 比較例 3 実施例1のポリビニルアルコールのかわりに、
けん化度99.2モル%、粘度平均重合度500、4%
水溶液の粘度(20℃)56cPの市販ポリビニルア
ルコールを用い、その18wt%水溶液20gを、同
様に凍結・成型・脱水したが、寒天に似たもろい
ゲル13g(含水率72wt%)が得られたにすぎず、
ほとんど弾性は認められないことを知つた。すな
わち、重合度の低いポリビニルアルコールを用い
ても、本発明の機械的強度の優れたゴム状の弾性
ゲルは得られない。 比較例 4 比較例3と同じ重合度500のポリビニルアルコ
ール水溶液の濃度を30wt%まで高め、その水溶
液120gに−73℃×1hの凍結・成型を施した後、
6hの真空脱水を施した。凍結・成型・脱水体106
g(含水率66wt%)を解凍後、水中に8h浸漬し
た結果、120g(含水率70wt%)にまで吸水する
とともに著しく軟化し、その一部は形くずれ(水
中への溶解)を起こした。 比較例 5 ポリビニルアルコール(けん化度99.4モル%、
粘度平均重合度2600)の6wt%水溶液34gを冷却
(凍結・成型)後、常温で1h放置した。粘着性の
軟質ゲル(34g、脱水率0%、含水率94wt%)
を得たが、弾性を示さず、引張り強度としてはわ
ずか100g/cm2で既に破断された。また、前記ゲ
ル10gを水30mlに浸漬したところ、約20時間で形
がくずれだし、水層は濁り、しかも大部分粘着性
の水に変わつた。 このように、たとえポリビニルアルコール水溶
液に凍結・成型を施し融解させても、強度が低く
耐水性の乏しい粘着性のゲルが得られるにすぎ
ず、凍結・成型後融解をさせずに脱水を施さない
かぎり、本発明で言う強度の強い耐水性のあるゲ
ルは生成しない。 比較例 6 実施例1のポリビニルアルコール粉末(含水率
8wt%)とカルボキシメチルセルロースのそれぞ
れの0.5gずつを水90gに加え、15min者沸して
溶解させて後、室温まで放冷して激しくかきま
ぜ、しかる後、これを−50℃で10h放冷(凍結)
し、直ちに真空乾燥することにより、乾燥体1g
を得た。これは、発泡ステロール状の、しかもこ
れより更にもろい白色のスポンジであり、水中で
容易に粘着液と化した。 すなわち、ポリビニルアルコール0.5%程度の
水溶液につき本発明に準ずる操作を実施しても、
単なる水溶性の凍結乾燥体が得られるにすぎな
い。 実施例 5 実施例1と同様の操作により得られるヒドロゲ
ル断片(20×13×5mm)を、生体内埋入試験試料
とする。 ペントパルビタールナトリウム(sodium
pentbarbiturate、pentobarbital、
pentobarbitone Nembutal、sodium5−ethyl−
5−(1−methylbutyl)barbiturate)の静脈注
射による麻酔を施した(anesthetized with
intravenous sodium pentobarbital)家ウサギ
の背腰部(loin)を脱毛後、脊柱(spine)に平
行に約1.5cmの皮膚切開(skin incision)と筋膜
切開(fasciotomy)を加えて筋(caro)を露出
させ、筋線維走行方向に切開し、起子(エレバト
リウム、levator)により創(incision)を開きつ
つ、上述のヒドロゲル膜を挿入し、皮膚縫合
(skin suture)後、滅菌済みコロジオン(sterile
collodium)を塗布した。 1カ月後に、上記試料埋植部からの採取組織
(excised specimens)を肉眼観察し(examined
grossly)、更にヘマトキシリン・エオキシン染色
(hematoxylin and eosion stain)による光学顕
微鏡観察を実施したが、埋植試料の形くずれ、膨
化、変色、周囲組織との癒着は全く認められず、
細胞浸潤(cellular infiltration)の無いことを
知つた。また、周辺組織に、なんらの炎症反応も
認められなかつた。 比較例 7 市販ポリビニルアルコール(けん化度99.9モル
%、粘度平均重合度1500、4%水溶液粘度(20
℃)25cP)の粉末130g(含水率8wt%)を水870
gに溶解し、12wt%とした。この水溶液2gを
ガラス板上に塗布し、アプリケーターを用いて
0.3mmの厚さとする。1昼夜風乾して得たポリビ
ニルアルコール膜(10cm×13cm×30μm)から、
20×13mmの裁断片を採り、試験試料とする。 実施例5と同様に、家兎背腰部を切開し、ここ
へ上記ポリビニルアルコール膜(本発明のポリビ
ニルアルコールゲルとは異なる公知のポリビニル
アルコール膜(0.5cm×0.5cm×0.03mm)を埋植し
た。1カ月後の採取組織につき、同様に観察した
ところ、試料周囲に円形細胞(globoid cell)、
巨細胞(giant cell)が見られたほか、試料自体
が著しく膨化し、大半が泥状と化していた。 実施例 6 けん化度99.5モル%、粘度平均重合度2600、4
%水溶液粘度(20℃)67cPのポリビニルアルコ
ールの9.4wt%水溶液500gとプロピレングリコー
ル500gとを混合し、プロピレングリコール50wt
%、ポリビニルアルコール4.7wt%の水溶液を得、
これに120℃×30minの加圧スチーム滅菌を施し、
無菌室において放冷する。 この水溶液41gを、予めガス消毒を施したポリ
エチレン製の突起配列板(突起高さ1mm、突起密
度74000個/m2、突起形状:直径1.8mmの円柱、突
起部合計面積占有率20%、突起配列板48cm×17
cm)に注ぎ、へらを用い、均一に塗布した(塗布
厚さ0.7mm)。これに、−50℃×0.7hの冷却(冷
却・固化成型)を施した後、4hの真空脱水を施
し、24.6g(脱水率すなわち冷却・固化体の重量
減少率=40wt%)の白色不透明ゲル(ネツト)
を得た。このネツトの見かけの引張り強度は1
Kg/cm2に達した。これは、こんにやく類似の弾性
と柔軟性を有し、しかも、こんにやくに勝る機械
的強度を有し耐圧縮強度10Kg/cm2以上を示した。 この膜(多孔板ゲル)の孔径は1.8mm、開孔率
(面積比)は20%、厚みは約0.5mmであつた。これ
を、あらかじめプロピレンオキシド・ガスを用い
て滅菌したポリエチレン製の袋(50×20cm)に収
め、密封した。 雑種成大(adult mongrel dog)(体重11Kg)
にペントバルビタールナトリウム(sodium
pentobarbiturate)の静脈注射による麻酔を施
し、気管内挿管(endotracheal tube)による酸
素供給下に、犬の左胸(left chest)第9肋間
(the ninth inter−costal space)を切開し、左
横隔膜(left leaf of the diaphragm)を露出さ
せ、その約80%を切除(excised)した。この欠
損部を前記ヒドロゲル膜(7cm×7cm×0.5mm)
により補修(repair)し、絹糸により縫合後ペニ
シリン(penicillin)を、術後1週間
(postoperatively)投与(administer)した。1
年後の蛍光透視X線観察(fluoroscopic and X
−ray examination)によれば、補填膜
(repaired diaphragm)の作動は良好で、右側横
隔膜に比し、何ら異常(elevation)を認めなか
つた。また、その犠牲死体から採取した組織標本
(specimens)につき、肉眼及び組織学的
(histologically)観察の結果、ヒドロゲル膜は腹
腔内臓(abdominal viscera)と肺臓間に収ま
り、薄い線維組織(fibroustissue)に包被されて
おり、肉芽(顆粒)組織(granulation)は認め
られず、組織反応(foreign body reaction)は
見られなかつた。 実施例 7 けん化度97.5モル%、粘度平均重合度2200、4
%水溶液の粘度(20℃)56cPのポリビニルアル
コール630g(含水率7wt%)を、水4800gに溶
解し、11.4wt%溶液とした。 この水溶液4536gとグリセリン2443gとを混合
し、ポリビニルアルコール濃度7.4wt%、グリセ
リン濃度35wt%の水溶液を得、これに120℃×30
mmの加圧スチーム滅菌を施し、無菌室において放
冷する。この水溶液29gを、予めスチーム滅菌し
たステンレス・スチール製の突起配列板(突起高
さ0.25mm、突起密度74000個/m2、突起形状:直
径1.8mmの円柱、突起部合計面積占有率20%、突
起配列板48cm×27cm)へ注ぎ、アルミ板(27cm×
4cm×0.1cm)を用いて均一に掃き(塗布し)、塗
膜厚さ0.25mmとした。これに−60℃×0.7hの冷却
(固化・成型)を施した後、5hの真空脱水を施
し、19g(脱水率33wt%)の白色不透明ゲルを
得た。このネツトの見かけの引張り強度は2Kg/
cm2に達した。この膜(多孔板ゲル)の孔径は1.8
mm、開孔率(面積比)は20%、厚みは0.2mmであ
つた。これを、あらかじめプロピレンオキシド・
ガスを用いて滅菌したポリエチレン製の袋(50×
30cm)に収め密封した。 ペントバルビタールナトリウムの静脈注射によ
る麻酔を施した家ウサギのアキレス腱
(Achille′stendon、tendo achillis、tendo
calcaneus)部を脱毛後、1.5cmの縦皮膚切開
(longitudinal skin incision)を加えて腱旁組織
(paratenon)を露出させ、線維走行方向に、前
方腱旁紙織と腱を5mm切開し、切開部を起子によ
り支えて腱を上下左右に圧迫摩擦する。しかる
後、前記ヒドロゲル膜(0.3×0.5×0.02cm)を切
開部へ挿入し、前方腱旁組織と腱とを一針縫合
し、皮膚縫合(skin suture)を終え、滅菌済み
コロジオンを塗布した。術後の跳躍はほぼ正常
で、3日後にはその機能に全く異常を認めない。
1カ月後、そのアキレス腱部を採取し、ヘマトキ
シリン・エオシン染色後、光学顕微鏡を用いて観
察した結果、腱組織とヒドロゲル周辺に巨細胞は
見られず、細胞浸潤の無いことを知つた。また、
血管の新生が見られ、腔(lumen)形成も良好で
ある。 比較例 8 比較例7の方法に準じて得られるポリビニルア
ルコール膜(本発明のヒドロゲルとは異なる旧来
のポリビニルアルコール又)(0.3×0.5×0.02cm)
を実施例7に準じて、家ウサギのアキレス腱切開
部へ挿入した。1カ月後の組織標本を観察した結
果、試料は著しく膨化し、原形をとどめず、しか
も周囲組織に巨細胞が認められ、細胞浸潤が著明
で、結合組織(sheath)細胞間に難染色性物質と
してのヒドロゲルが散在し、腱線維の走行が結合
組織細胞の出現により乱されていた。 実施例 8 実施例7に準じて得られるポリビニルアルコー
ルとグリセリンの混合水溶液を、予め滅菌したガ
ラス板に塗布し、アプリケーターを用いて0.3mm
の厚さとし、これに本発明の冷却(−30℃)固
化・真空脱水(脱水率35wt%)を施して得られ
るヒドロゲル膜(2×2.3cm、厚さ0.2mm)を試験
試料とする。ラボナール(thiopental sodium、
sodium5−ethyl−5−(1−methylbutyl)−2−
thiobarbiturate)の静注(venoclysis)による全
身麻酔(general anesthesia)を施した体重17Kg
の雑種成犬の頭皮(sealp)を脱毛後、右頭頂部
(right parietal resion)に7cmの縦皮膚切開
(longitudinal scalp incision)を加えて側頭筋
(musculars temporalis)を剥離し、次に、ドリ
ルを用いて頭頂骨に穿孔し、骨鉗子(rongeur)
を用いて鶏卵大の骨欠損を設け、1.5×2cmの硬
膜切除を加え、この部分へ前記ヒドロゲル膜を当
て四隅を縫合後、筋縫合(temporal muscle
suture)と頭皮縫合(scalp suture)を施した。 6カ月後の犠牲死体から、ヒドロゲル膜及びそ
の周囲硬膜と脳実質(brain)を剔出し、肉眼観
察及びヘマトキシリン・エオキシン染色
(hematoxylin and eosin stain)による光学顕
微鏡観察を実施したが、ヒドロゲル膜と脳表面と
の癒着は認められなかつた。また、ヒドロゲル表
面は被覆(theca、capsule)様組織により包囲さ
れていたが、軟膜(pia mater)への癒着はほと
んど認められず、細胞浸潤及びグリア細胞(glia
cell)の増殖なども見られなかつた。 実施例 9 ポリビニルアルコール(けん化度99.5モル%、
粘度平均重合度2600、4%水溶液の粘度(20℃)
66cP)の粉末30g、ソルビトール、158g、水
292gを混合し、90℃×2h撹拌後、加圧スチーム
滅菌(120℃×30mm)を施し、無菌室において放
冷する。ここへ抗菌薬としてのペニシリンGカリ
ウム(potassium penicillinG)結晶粉末(無菌
乾燥品)20mg(33000単位)を溶解することによ
り、抗菌薬50ppm、ポリビニルアルコール5.8wt
%、ソルビトール33wt%の水溶液を得た。その
45gを、あらかじめプロピレンオキシド・ガスを
用いて滅菌したポリウレタン・ゴム製の突起配列
板(突起高さ0.5mm、突起密度74000個/m2、突起
形状:直径1.8mmの円柱、突起部合計面積占有率
20%、突起配列板100cm×17cm)へ注ぎ、へらを
用い、均一に塗布した(塗布厚さ0.3mm)。これに
−58℃×0.7hの冷却(固化・成型)を施した後、
4hの真空脱水を施し、32g(脱水率30wt%)の
白色不透明膜(ネツト)を得た。このネツトの見
かけの引張り強度は3Kg/cm2に達した。このネツ
トの孔径は1.8mm、開孔率20%、厚みは約0.2mmで
あつた。これを、あらかじめプロピレンオキシ
ド・ガスを用いて滅菌したポリエチレン製の袋
(100cm×20cm)に収め、密封した。 ペントバルビタールの静脈麻酔(intravenous
anesthesia)を施した体重13Kgの雑種成犬を開胸
(thoracotomy)し、左室側心膜(left
pericardium)に、縫い代を残す程度に及ぶ広範
囲の切除を加え、ここに、上記ヒドロゲル膜(5
cm×5cm×0.2mm)による組織欠損部補填を施し
た。 6カ月後の犠牲死体から得られる上記補填
(anaplerosis)部の切除標本(preparation)に
つき、肉眼、光学顕微鏡及び走査型電子顕微鏡に
より観察した結果、心臓側における補填部との癒
着は全く認められず、ヒドロゲル膜表面は、内皮
様組織(endothelial tissue)により被覆され、
平滑であつた。病理組織学(cytologram
patholosical anatomy)的にも、細胞反応は無
く、心臓側に薄い内皮様組織が見られた。 実施例 10 体重15Kgの雑種成犬につき、実施例9に準じて
開胸後、横隔膜筋性部に欠損(diaphragmatic
defect)を作製し、実施例9のヒドロゲル膜(4
cm×6cm×0.2mm)により補填(repair)した。
6カ月後の犠牲死体から得た補填部切除標本を観
察した結果、補填部と肺との癒着は見られなかつ
た。また、実施例9の場合と同様、薄い線維組織
に包被されており、組織反応は見られなかつた。 実施例 11 実施例8と同様に操作して、本発明のヒドロゲ
ル膜(厚さ0.2mm、1.3×1.2cm)を得た。 ペントバルビタールナトリウムの静脈注射によ
る麻酔を施した体重2.5Kgの家ウサギの膝関節
(kee joint)部を脱毛後、膝部前面(anterior
surface)の外側(lateral)に、2cmの縦切開を
加え、膝蓋骨(patella)を内側(medial)へ脱
臼(dislocation)させ、膝蓋腱(patellar
tendon)を残して、膝蓋骨外縁(lateral
border)の軟部組織(portio mollis)を切開し、
長指伸筋腱(tendon of the extensor disitorum
longus muscle)を離断して膝関節を開き、関節
襄(capsula articularis)、交差靭帯(crossed
ligament)、半月板(meniscus)等の関節内軟部
と関栓軟骨(cartilago articularis)を、骨鉗子
(rongeur)、骨膜刀(periosteotome)及びはさ
み(scissors)を用いて切除し、やすりを用い関
節面(facies articularis patellae)を研磨し、
そこに、前記ヒドロゲル膜を挿入・被覆した。次
に、膝蓋骨を整復(redintegration)し、関節襄
及び軟部を縫合し、皮膚縫合後、関節を伸展位
(extended)にてギブス固定した。1カ月後の組
織標本(specimen)の肉眼観察及びヘマトキシ
リン・エオシン染色による顕微鏡観察の結果、手
術関節(joint)の腫脹(oncoides)と炎症は認
められず、該膝関節は90゜屈曲位をとり、他動的
には160゜〜70゜の可動域(excursion)が認められ
る。関節面は縫合織(shcaths)により被覆され、
骨質増殖(ossein proliferation)、骨髄腔内
(lumen of bone marrow tunnel)の炎症など
も無く、健康関節面と類似の所見が得られた。 実施例 12 体重10Kgの雑種成犬に、ペントバルビタールナ
トリウム静脈麻酔を施し、その気管(trachea)
に、左右別肺活量測定用管(Carlen′s catheter)
を挿入した。肺活量(1回換気量
(ventilation))は、左肺(left lung)85ml、右
肺100mlであつた。 次に、この挿入管(endotracheal tube)を人
工呼吸器(respirator)に接続して、呼吸管理の
もとに、胸骨正中部に縦切開を加え、開胸した。 まず、右胸腔(right thoracic cavity)の壁側
胸膜(pleura parietalis)を、ガーゼにより擦過
(abrade)し、更にタルク(talc)粉末1gを散
布後、生理食塩水により胸腔内を洗浄した。 一方、左胸腔の壁側胸膜にも、同様の擦過とタ
ルク粉散布、洗浄を施した後、実施例1の方法に
準じ制作したヒドロゲル膜(25cm×15cm×2mm)
を、その四隅および中央部の計5個所にわたり、
胸部へ縫合固定した。 前記胸骨切開部(sterpotomy)を、金属製手
術用縫合線(ニツケル、モリブデン、銅、マンガ
ン、けい素、すず系ステンレススチール)により
結紮(ligation)閉鎖した。 1カ月後、再び全身麻酔(general
anesthesia)を施し、気管内へ、左右別肺活量測
定用チユーブ(Carlen′s catheter)を挿入し、
左右肺の1回換気量を測定した結果、左肺80ml、
右肺65mlであり、右肺の換気量が著しく低下して
いることを知つた。 この犬の犠牲死体の解剖所見によれば、右肺は
胸膜と強固に癒着していたのに反し、左肺の癒着
は全く認められない。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 1 けん化度97モル%以上、粘度平均重合度1800
    以上のポリビニルアルコールを6wt%以上溶解し
    た水溶液に、必要に応じ炭素数3ないし6の多価
    アルコールを混合し、これを任意形状の容器また
    は成型用鋳型へ注入後、これを−15℃より低い温
    度で冷却・固化・成型し、しかる後、この成型体
    を融解させることなく、脱水率5wt%以上に到達
    するまで部分的に脱水し、必要に応じ水中に浸漬
    することにより含水率20〜92wt%に到達させて
    得たヒドロゲルからなる生体組織癒着防止膜。
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