JPH0228746B2 - Furikoshikidokyushinki - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は構造物の振動防止のための振り式動吸
振器に関するものであり、詳しくは、風、地震そ
の他の励振による構造物の任意方向の水平運動を
振り子を利用して効果的に抑制・減少させる振り
子式動吸振器に関するものである。

構造物の振動を抑制することを目的とする従来
技術としては、第１図に示すように、塔状の構造
物１の頂部から索（ワイヤロープ）２を斜めに地
上に張り、その下端を減衰器３に結合する方法
や、第４図に示すように構造物１の頂部に動吸収
器４を設置する方法などがある。

第１図の方法に使用される減衰器３は第２図、
第３図に示すようなものがある。第２図は減衰器
３は斜面５上の重錘６の滑動往復の摩擦を利用す
るスライデイングブロツク方式（SB方式）と呼
ばれるものであり、第３図の減衰器３は重錘６と
オイルダンバー７とを使うものでダンバー重錘式
（DW式）と呼ばれるものである。上記重錘６は
いずれも滑車８によつて中継された索２によつて
動かされる。

後者のDW式は本発明者らの発明になるもの
で、発明の名称「構造物の制振装置」として昭和
53年11月３日に特許出願され（特願昭53−138829
号）、昭和57年10月23日に出願公告されている
（特公昭57−49703号） 第４図の方法に使用される動吸振器は第５図、
第６図に示すようなものがある。第５図の動吸振
器４は動吸振器の一般的な構成を示したものであ
り、第６図の動吸振器は本発明者が昭和57年12月
２日に出願した振り子式動吸振器（特願昭57−
210553号）を示したものである。第５図において
重錘６はバネ９とダンパー７とによつて支持体１
１に取付けられている。第６図において２つの重
錘６，６は２本の垂下桿１２，１２の下部に取付
けられ、垂下桿１２，１２の上部は軸受１３，１
３を介して対象構造物１に揺動可能に取付けら
れ、垂下桿１２，１２の間には粘弾性体１４が取
付けられている。振動数と減衰係数とが適当に調
整された動吸振器４を対象となる構造物１に上記
のように取付けることにより、励振エネルギーを
動吸振器４で消費して、構造物１の振動を大幅に
減少させることができる。

ところで、第１図の索を張る方法の場合は、索
を高所から斜めに地上に張るので、広範囲の用地
を必要とし、制振が一時的ではなく長期にわたる
ときは、空間使用の障害、装置の保守点検、外観
上の問題等が生じる。また減衰器のオイルダンパ
ーや滑動重錘などの減衰要素は静摩擦などに起因
する初期抵抗があり、構造物の振動があるレベル
を超えないと作動しないという望ましくない性質
がある。

第４図の動吸振器を用いる方法は索を張ること
を要せず、索を張ることが困難あるいは不可能な
場合にも適用できるという特長があり、特に第６
図の振り子式動吸振器では粘弾性減衰要素を用い
ることにより初期抵抗力は格段に小さく改良され
ている。

しかし、上述のいずれの方法も、ある一定方向
の振動に対して制振機能を有するものであり、そ
の適用範囲は予め振動方向が定まつている構造物
に限定されてしまう。ところが、例えば円柱状の
塔のような構造物が風や地震で振動する場合、こ
のような構造物は水平面内のいずれの方向にもほ
ぼ等しい振動特性であり、風や地震はいずれの方
向からも加振力が作用しうるので、その振動方向
は特定できず、あらゆる方向に振動が生じうる。
このような場合は上述のような方向性を有する制
振方法であれば、水平面内の全方向360゜をいくつ
かに分割した範囲毎に１台の制振装置を設置しな
ければならないから、少なくとも３台は必要とな
る。

本発明は以上述べた不都合に鑑みてなされたも
ので、いずれの方向に対しても等しく優れた振動
制御機能を持つ振り子式動吸振器を提供すること
を目的とするものである。

本発明は上述した動吸振器の原理を応用するも
のである。まず、構造物の振動制御に動吸振器を
用いた場合の解析モデルを第７図に示す。動吸振
器とは対象構造物の卓越する振動を制御するため
に取付ける付加一質点振動系のことであり、制振
効果をあげるためには、その振動数f_dと減衰係数
C_dが調整されていなければならない。構造物に、
振動数f_dと減衰係数C_dが適当に調整された動吸振
器を付加することにより、励振エネルギーを動吸
振器で消費して、本体構造物の振動を大幅に減少
させることができる。

動吸振器は対象構造物がある特定の振動形と振
動数で振動している場合、あるいは特定の振動が
著しく卓越している場合に有効であり、動吸振器
の固有振動数f_dを対象構造物の特定振動数f_pにほ
ぼ合致させ、減衰係数C_dは各種条件から定まる
最適値に調整することにより、優れた制振効果が
得られるものである。動吸振器としては付加され
る重錘の質量M_dは大きい方が制振効果も高いが、
これは夫々の構造物の制振の要求度合により異な
る値となり、構造物の等価質量M_eとの比M_d／
M_eで数十分の１から数百分の１程度となる。

参考までに、一方向型の振り子式動吸振器の制
振効果に関する模型実験データを第８図に示す。
高さ約4.5ｍの模型塔に振り子式動吸振器（第６
図の形式のもの、等価質量比１／180）を取付け
て、頂部を加振する実験を行つた。第８図は曲げ
一次振動の共振曲線であり、調整された動吸振器
により、振幅が約１／16に抑えられ、高い制振効
果のあることが認められる。

本発明は制振対象構造物に取付ける支持枠に振
り子桿を揺動自在に垂下させ、該振り子桿の下部
に重錘を上下位置調節可能に取付け、上記振り子
桿の中間に粘弾性体下支持板を摺動可能に取付
け、該粘弾性体下支持板の上に上記振り子桿を囲
繞する粘弾性体を取付け、該粘弾性体の上に粘弾
性体上支持板を取付け、該粘弾性体上支持板を上
記支持枠に取付けた振り子式動吸振器を要旨とす
るものである。

本発明の振り子式動吸振器では、通常の動吸振
器を構成する方向性のあるバネを用いず、振り子
を利用し、これを球座や弾性支承等により全方向
に振動可能なものとした。振り子の長さにより振
動数の調節を行うが、復元力の調節にバネを併用
することも可能である。また、減衰要素として
は、それ自身摩擦等の機構的抵抗のない粘弾性体
を用いており、これの取付位置とせん断変形させ
る面積と厚さによつて減衰係数の調節が可能であ
る。

以下、実施例図によりその詳細を説明する。

第９図は本発明の振り子式動吸振器の基本構成
を示す断面図、第１０図、第１１図は第９図のＡ
−Ａ矢視図である。図中、１５は制振対象構造物
１に取付ける支持枠であり、支持枠１５には振り
子桿１６の上部が弾性支承体１７を介して揺動自
在に取付けられている。この場合、支持枠１５に
振り子桿１６の上部を球座を介して揺動自在に取
付けてもよい。振り子桿１６の下部には重錘６が
上下位置調節可能に取付けられている。振り子桿
１６の中間部には円盤状の粘弾性体下支持板１８
が摺動可能に取付けられ、粘弾性体下支持板１８
の上には粘弾性体１４が振り子桿１６を囲繞する
ように環状に取付けられている。粘弾性体１４は
第１０図に示すようにドーナツ状のものを用いて
もよいし、また第１１図に示すように小ブロツク
を環状に配置したものを用いてもよい。粘弾性体
１４の上には粘弾性体１４を挾むようにして粘弾
性体上支持板１９が取付けられており、粘弾性体
上支持板１９は支持枠１５に取付けられている。
なお、振り子の振幅が比較的大きい場合は、粘弾
性下支持板１８と振り子桿１６とは回転及び上下
の滑動可能な結合とするか、粘弾性体上下支持板
１８，１９を振り子の中心に関する球面とするの
がよい。

上記の如き本発明の動吸振器の構成によれば、
以下の如き効果が得られる。

本発明の振り子式動吸振器により、従来、複数
の減衰器で構成されていた制御装置は方向性のな
い単一の動吸振器で構成可能となり単純化され
た。また、本発明の振り子式動吸振器は構造物の
振動振幅の大きいところへ取付けるだけで、基礎
と連結する必要がないので、連結材や基礎側の碇
着部が必要となるばかりでなく、基礎との位置関
係を考慮することなく高いところにも設置可能で
ある。さらに、減衰要素として、静摩擦などによ
る不要の機構的抵抗のない粘弾性体を用いている
ので、振動が大きくならなくても本装置が作動し
て、常に構造物の振動を小さく抑えることがき
る。

本発明の振り子式動吸振器は、風などの自然励
振源あるいは他の人工的励振源による展望塔、煙
突、アンテナ塔、照明柱、塔槽などの構造物やそ
れらの部分の任意方位の水平振動の抑制に効果的
に適用される。なお、特定の一方向の振動制御に
本発明の振り子式動吸振器を用いることももちろ
ん可能である。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来の制振方法の説明図、第２図及び
第３図は第１図の方法で使用する減衰器の説明
図、第４図は従来の他の制振方法の説明図、第５
図及び第６図は第４図の方法で使用する動吸振器
の説明図、第７図は構造物に動吸振器を用いた場
合の解析モデルの説明図、第８図は一方向の振り
子式動吸振器の制御効果を示す振動数と角度及び
振動数と加速度との相関図、第９図は本発明の振
り子式動吸振器の基本構成を示す断面図、第１０
図及び第１１図は第９図のＡ−Ａ矢視図である。 １……制振対象構造物、６……重錘、１４……
粘弾性体、１５……支持枠、１６……振り子桿、
１７……弾性支承体、１８……粘弾性体下支持
板、１９……粘弾性体上支持板。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 制振対象構造物に取付ける支持枠に振り子桿
   を揺動自在に垂下させ、該振り子桿の下部に重錘
   を上下位置調節可能に取付け、上記振り子桿の中
   間部に粘弾性体下支持板を摺動可能に取付け、該
   粘弾性体下支持板の上に上記振り子桿を囲繞する
   粘弾性体を取付け、該粘弾性体の上に粘弾性体上
   支持板を取付け、該粘弾性体上支持板を上記支持
   枠に取付けた振り子式動吸振器。 ２ 支持枠に振り子桿の上部を弾性支承体を介し
   て取付けて振り子桿を揺動自在に垂下させたこと
   を特徴とする特許請求の範囲第１項記載の振り子
   式動吸振器。 ３ 支持枠に振り子桿の上部を球座を介して取付
   けて振り子桿を揺動自在に垂下させたことを特徴
   とする特許請求の範囲第１項記載の振り子式動吸
   振器。