JPH0227722Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、軸封技術に係るメカニカルシールに
関するもので、ことにシヤフトが軸方向に移動す
る軸移動用のメカニカルシールを改良せんとする
ものである。

〔従来の技術〕

従来よりハウジング側に担持したフローテイン
グシートとシヤフト側に担持したシールリングを
スプリングによつて圧接し、密接摺回動するメカ
ニカルシールが使われているが、この種のメカニ
カルシールではシヤフトのハウジングに対する相
対位置が変わると、上記スプリングの弾性力が変
わつてしまい、フローテイングシートとシールリ
ングの密接圧力の変動によつてシール性能が安定
しなくなるものであつた。したがつて第３図に示
すようにハウジング側に気密担持した一対のシー
ルリング５０，５１間に気密的に連結したフロー
テイングシート５２，５３を介挿して摺回動自在
に圧接し、摺動部５４，５５を構成するととも
に、該フローテイングシート５３とシヤフト５７
間に軸方向に摺動自在になるスライドリング５８
を気密的に介装した構造のメカニカルシールが使
われており、シヤフト５７の軸方向変位に対する
シールリング５０，５１とフローテイングシート
５２，５３の面圧の変動を解消している。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし上記構成のメカニカルシールは、スライ
ドリング５８がシヤフト５７とともに回転するた
め、高速回転のメカニカルシールでは、該スライ
ドリング５８とシヤフト５７間の密封力が低下し
て充分な軸封効果が得られないばかりでなく、メ
カニカルシールの摺動部５４が直接外部雰囲気に
さらされるため、摺動面がスラリー液等により摩
耗し、寿命が短かい等の問題を有していた。

本考案は上記問題に鑑みてなされたもので、シ
ヤフトが軸方向に変位する軸封部に使用するメカ
ニカルシールにおいて、シヤフトの移動に対して
摺動面の面圧が変動することがなく安定した軸封
効果を維持するとともに、摺動部が直接外部雰囲
気にさらされることのないメカニカルシールを提
供することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

すなわち本考案のメカニカルシールは、フロー
テイングシートが、ハウジング側の一方のフラン
ジに回り止めした状態で気密的かつ軸方向摺動自
在に担持され、該フローテイングシートと軸方向
に対向するシールリングが、ハウジング側の他方
のフランジに設けたスラスト受けで後端を支承さ
れたスライダーの前端に気密的に担持され、前記
一方のフランジとフローテイングシートの間に装
着したコイルスプリングにより、前記フローテイ
ングシートは軸方向に押圧されてシールリングと
密接し、前記スライダーは、軸方向に変位するシ
ヤフト側に気密的かつ摺動自在に担持されるとと
もに、一定の軸方向相対変位を許容する係合部を
介して該シヤフト側と周方向に係合し前記シヤフ
ト側の回転をシールリングに伝達する構成とし
た。

〔作用〕

本考案の構成によると、コイルスプリングおよ
びその押圧力を受けるフローテイングシート、シ
ールリングおよびスライダーは、全てハウジング
側の両フランジ間に担持されており、回転側のシ
ールリングを担持しているスライダーは、前記コ
イルスプリングの押圧力によつてスラスト受けに
当接しているとともに、シヤフト側に対して摺動
自在であるため、シヤフトの軸方向変位に拘ら
ず、前記フローテイングシートとシールリングは
常に一定位置に維持される。このためコイルスプ
リングの装着長さは常に一定となつて、フローテ
イングシートとシールリングの摺動面圧の変動が
なくなるので、安定したシール作用が維持され、
シヤフトが軸方向へ変位しても、その回転は一定
の軸方向相対変位を許容する係合部を介してシー
ルリングに確実に伝達される。しかもスライダー
とスラスト受けの接触部は、外部と前記両フラン
ジ間の空間の間を概略的にシールし、外部からの
土砂等がフローテイングシートとシールリングの
摺動面近傍へ侵入するのを阻止する機能を営む。

〔実施例〕

以下、本考案のメカニカルシールの一実施例を
第１図および第２図にしたがつて説明する。符号
１は、シヤフト２を内挿したハウジング３の軸封
部に固着したフランジであり、該フランジ１の固
着と同時にハウジング３と該フランジ１間に、内
縁を形成する内フランジ４を気密的に固着してな
るもので、該内フランジ４の内周に担持したＯリ
ング５を介して上記シヤフト１に遊嵌外挿したフ
ローテイングリテーナ６の外周部を気密的に、か
つ軸方向に摺動自在に担持してなる。該フローテ
イングリテーナ６の一端に嵌合したSiC等の硬質
材からなるフローテイングシート７は、上記シヤ
フト２に対し、軸方向摺動自在に外挿したスライ
ダー８の対向端面に嵌合した同じく硬質材からな
るシールリング９と上記内フランジ４とフローテ
イングリテーナ６間に弾装したコイルスプリング
１０によつて軸方向に適宜圧力によつて弾性押圧
せしめられ密接摺動自在になるとともに、該フロ
ーテイングリテーナ６は端部に突設したドライブ
ピン１１を内フランジ４と回動方向に係合してな
る。また上記スライダー８は、フランジ１の内縁
１ａに回り止めピン１２を介して嵌合した環状の
スラスト受１３に後端部を接するとともに、シヤ
フト２に対して気密的に外挿固着したカラー１４
の外周に対し、後段部８ａ内径に担持したＯリン
グ１５を介して軸方向摺動自在に外挿した構造と
なるもので、上記スラスト受１３の受圧面には放
射方向に小切欠１６を等配形成する。また上記ス
ライダー８は後段部８ａ後面に突設したピン１７
をカラー１４の端面に穿設した係合孔１８に内挿
し、回動方向に係合して回り止めされるものであ
り、前記Ｏリング１５と該ピン１７による軸方向
の各部係合量l1，l2，l3，l4は、シヤフト２の軸
方向移動量をδとすると l1，l2，l3，l4＞δ となるように構成してなる。

したがつて上記構成のメカニカルシールは、フ
ローテイングシート７とシールリング９により外
側シールを行なうものであり、シヤフト２が移動
してもピン１７と係合孔１８およびＯリング１５
とカラー１４の各部係合量l1，l2，l3，l4がその
移動量δより大きいため、気密性および回り止め
作用が損なわれることはない。また、この軸移動
に対してフランジ１側に担持されているフローテ
イングシート７とシールリング９はフローテイン
グリテーナ６とスライダー８がコイルスプリング
１０を介して常時一定の取付長さの間にあるた
め、該コイルスプリング１０の弾性力が変動する
ことがなく、安定した摺動面圧が得られるもので
あり、一定の軸封作用を維持する。

さらに上記構成のメカニカルシールは、フロー
テイングシート７とシールリング９との摺動面の
外側にスラスト受１３に形成した小切欠１６が位
置しているため、該小切欠１６の断面より大径の
異物の侵入を阻止するようになり、使用に際して
大径の土砂が直接摺動面に侵入することがない。

〔考案の効果〕

以上述べたごとく、本考案のメカニカルシール
は、シヤフト２が軸方向に変位するような場合で
あつても、コイルスプリング１０の荷重が変化し
ないので安定した軸封機能を発揮するばかりでな
く、スライダー８とスラスト受け１３の接触部が
外部シールとなつてフローテイングシート７とシ
ールリング９の摺動面側への土砂等の侵入を阻止
するため、これら両摺動材７，９の摩耗を低減し
て長寿命化を達成することができるといつた優れ
た効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例を示すメカニカルシ
ールの正断面図、第２図は第１図におけるＡ−Ａ
線断面図、第３図は従来のメカニカルシールを示
す正断面図である。 １……フランジ、２……シヤフト、５，１５…
…Ｏリング、６……フローテイングリテーナ、７
……フローテイングシート、８……スライダー、
９……シールリング、１０……コイルスプリン
グ、１３……スラスト受、１４……カラー、１６
……小切欠、１７……ピン、１８……係合孔。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. フローテイングシートが、ハウジング側の一方
   のフランジに回り止めした状態で気密的かつ軸方
   向摺動自在に担持され、該フローテイングシート
   と軸方向に対向するシールリングが、ハウジング
   側の他方のフランジに設けたスラスト受けで後端
   を支承されたスライダーの前端に気密的に担持さ
   れ、前記一方のフランジとフローテイングシート
   の間に装着したコイルスプリングにより、前記フ
   ローテイングシートは軸方向に押圧されてシール
   リングと密接し、前記スライダーは、軸方向に変
   位するシヤフト側に気密的かつ摺動自在に担持さ
   れるとともに、一定の軸方向相対変位を許容する
   係合部を介して該シヤフト側と周方向に係合して
   前記シヤフト側の回転をシールリングに伝達して
   なることを特徴とするメカニカルシール。