JPH0223048Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔考案の技術分野〕 本考案は絶縁ガスとともに充電部を収納したガ
ス絶縁母線等のガス絶縁開閉装置の例えば母線導
体等を接続支持する絶縁スペーサに関する。

〔考案の技術的背景とその問題点〕

一般に、ガス絶縁開閉装置のしや断器、断路器
等の機器をガス区分し導体や開閉部を支持するた
めに、両機器間には絶縁スペーサが設けられてい
る。従来のガス絶縁開閉装置用ガス絶縁スペーサ
を第１図を参照して説明する。絶縁スペーサ１は
導体支持部１ａが中心部に位置されるように絶縁
部１ｂと一体注形して構成する。この絶縁スペー
サ１は、二つの容器２ａ，２ｂのフランジ間に配
置されている。これらの容器２ａ，２ｂ内には
夫々例えばSF₆等の絶縁ガスが充填されていて、
絶縁スペーサ１によりガス区分されている。導体
支持部１ａには開閉部の固定電極３ａ，３ｂを固
着し、この固定電極３ｂには高圧導体４を接続し
ている。即ち、固定電極３ａは導体支持部１ａ、
固定電極３ｂ及び高圧導体４に電気的に相互に接
続されているが、容器１，２とは、絶縁部１ｂを
介して接続されているため、電気的に絶縁されて
いる。ところで、絶縁スペーサ１が断路器の電極
支持用として使用されたり、しや断器の近くに配
置されたりする場合には、これらの開閉振動が絶
縁スペーサ１に伝達される。この開閉振動により
絶縁スペーサ１には曲げモーメントや軸方向の剪
断力が負荷され、特に導体支持部１ａと絶縁部１
ｂとの剥離強度が弱いと、両部材１ａ，１ｂの接
触面１ｃで疲労破壊を生じる恐れがある。このた
め、導体支持部１ａの側面を機械的に粗くした
り、化学処理によつて導体支持部１ａと絶縁部１
ｂとの接着性を高める方法等が試みられている
が、信頼性という点で若干の問題がある。

〔考案の目的〕 本考案は上記欠点を除去し、開閉振動等により
導体支持部と絶縁部との間に発生する剥離応力を
低減して、長期信頼性の高いガス絶縁開閉装置用
絶縁スペーサを提供することを目的とする。

〔考案の概要〕

上記目的を達成するために、本考案において
は、導体支持部の露出する少なくとも一方の面の
外周近傍に位置する部位に溝を設けて、開閉振動
等により導体支持部と絶縁部との接触面に発生す
る剥離応力を緩和することで、絶縁スペーサ全体
としての機械的強度を高めるようにしている。

〔考案の実施例〕

本考案の一実施例を第２図を参照して説明す
る。絶縁スペーサ５は、絶縁部５ｂの中心部に導
体支持部５ａを一体注形して構成する。この導体
支持部５ａは板状の導電体であり、接触面５ｃを
介して絶縁部５ｂに固定されている。この接触面
５ｃ部の厚さはＨである。導体支持部５ａの上下
両面即ち露出面には断面が矩形である環状の溝５
ｄを夫々設けている。この溝５ｄは接触面５ｃの
近傍に位置している。また、溝５ｄは導体支持部
５ａの板厚方向にｔなる深さを持つ。

今、導体支持部５ａにその中心５ｅ回りに時計
方向の回転モーメントＭが作用する場合を考えて
みる。このとき図示右側の接触面５ｃの上側及び
左側接触面５ｃの下側では圧縮力が発生する。逆
に右側接触面５ｃの下側及び左側接触面５ｃの上
側では引張力、つまり剥離応力が発生する。

もし、導体支持部５ａに溝５ｄを設けないとす
れば接触面５ｃ上の応力は直線的に変化し、接触
面５ｃの上下端で最大となる。しかし、導体支持
部５ａの接触面５ｃ近傍の上下両面に溝５ｄを設
けることにより、最大応力が発生していた接触面
５ｃの上下端の変形は容易となり、この場所での
応力が減少する。このことを第８図に示す応力分
布の解析図を用いて説明する。同図は接触面５ｃ
上の剥離応力の分布を示し、横軸には引張−圧縮
応力Ｓ、縦軸には接触面５ｃの導体支持部５ａの
厚さＨ方向の位置を夫々とり更に原点は引張及び
圧縮力が生じない導体支持部５ａの厚さ方向の中
点にとつている。また、破線は溝を設けない場合
の剥離応力の分布であり実線は溝５ｄを設けた場
合の剥離応力の分布である。

図から明らかな様に、溝の有無に拘らず、応力
の符号は引張力から圧縮力に逆転する導体支持部
５ａの厚さＨ方向の中点において変化する。

溝を設けない場合の剥離応力は導体支持部５ａ
の厚さ方向の変化と共に直線的に変化し、接触面
５ｃの上下端で最大剥離応力S₁となる。一方、溝
５ｄを設けた場合の剥離応力は、厚さ方向に曲線
的に変化し、接触面５ｃの上下端においてS₃とな
る。しかし、この場合の最大剥離応力S₂の発生或
は、接触面５ｃの上下端ではなく、溝５ｄの深さ
ｔに等しい場所である。また、この場合の最大剥
離応力S₂は、溝を設けない場合の最大剥離応力S₁
に比べ減少している。

つまり、導体支持部５ａに環状溝５ｄを設ける
ことにより、最大剥離応力が発生していた接触面
５ｃの上下端の変形が容易となり、この部分の応
力が軽減される。結果的に溝５ｄの深さ位置での
変位に対する拘束が一番大きなものとなり、ここ
での剥離応力が最大となる。

また、導体支持部５ａと絶縁部５ｂとの接触面
５ｃにおける接着力が均一であるとすれば、接触
面５ｃの上下端の限界応力は接触面５ｃの他部分
の応力の半分である。第３図からわかるように、
接触面５ｃの上下端の剥離応力S₃は溝５ｄの深さ
位置に発生する最大剥離応力S₂のほぼ半分となつ
ている。このため、接触面５ｃの剥離応力は、強
度的に調和がとれている。

尚、本実施例においては、導体支持部の上下面
に溝を設けたが、例えば単純引張、圧縮のみの場
合、剥離応力が引張となる側のみに溝を設ければ
よい。

また、溝の形状に関して矩形についてのみ説明
したが、この他に円形、楕円形等の種々の形状を
有する溝とすることができる。

更に、ここでは単相絶縁スペーサについて説明
したが同様に三相一括絶縁スペーサについても適
用できる。

〔考案の効果〕

以上説明したように本考案によれば、導体支持
部における導体接続面の少なくとも一方の面の外
周近傍に環状の溝を設けたので、開閉振動等によ
り導体支持部と絶縁部との間に発生する剥離応力
の最大値を低くすることができ、耐久性に優れた
絶縁スペーサを提供できる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のガス絶縁開閉装置用絶縁スペー
サを示す概略断面図、第２図は本考案の一実施例
を示すガス絶縁開閉装置用絶縁スペーサの断面
図、第３図は接触面における剥離応力分布図であ
る。 ５……絶縁スペーサ、５ａ……導体支持部、５
ｂ……絶縁部、５ｃ……接触面、５ｄ……溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 板状の導体支持部の周囲に絶縁部を一体に注形
   して形成した絶縁スペーサにおいて、前記導体支
   持部における導体接続面の少なくとも一方の面の
   外周近傍に環状の溝を設けたことを特徴とするガ
   ス絶縁開閉装置用絶縁スペーサ。