JPH0220684B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 この発明は複雑な形状をした金属またはセラミ
ツクスの精密機械部品を粉末原料を使用して高密
度かつ均質に製造する方法に係る。

ガスタービン、デイーゼルエンジン、過給機等
の複雑な形或いは曲面を有する部品を耐熱、耐
食、耐摩耗性を持つた材料で量産できればこれら
の部品を使用する機械装置の寿命或いは性能の向
上に大いに貢献することができる。

ところで鍜造や鋳造で成形が困難な複雑な形状
の精密部品は粉末冶金法により或いはこれを応用
すれば製造が容易になることが知られているが、
通例は焼結中に加圧することができないので、得
られる焼結体の強度や品質に対する信頼性に欠け
るところがあつた。

ところで従来の焼結法に代つて熱間静水圧プレ
ス法を利用して四周から加圧しながら焼結する方
法が開発され、この方法は原理的には複雑な形状
の部品を加圧しながら焼結できる方法があるが、
いまだ技術的には十分に確立されておらず、例え
ば (イ) 一般に所要の粉末を気密で変形可能な容器内
に充填して密封する必要があり、粉末の充填密
度は小さいため焼結収縮が大きく、かつ寸法精
度が低くなる。

(ロ) 予め粉末を目的形状に成形した場合、脆弱な
粉末成形体の取扱いが困難で、その上容器内に
密封し、加圧焼結する際に成形体と容器壁とが
よく密着していないと焼結体に割れや変形を起
し易い。

(ハ) 目的とするセラミツクスまたは金属の焼結温
度において適度な変形特性を有する容器材料を
得ることが難しい。

等の問題点がある。

本発明は上記のような問題点を解決する金属粉
あるいはセラミツクス粉の成形焼結方法を提供す
ることを目的としており、金属粉またはセラミツ
クス粉の成形焼結部品を製造する方法において、 溶解または融解し易い材料で製作した所望形状
の模型に、 耐火物粉95〜50重量％、珪酸塩化合物５〜50重
量％の混合粉に分散液を混合したスラリーを塗布
し、固化させて雌型シエルを形成させ、 これを溶媒に浸し、または加熱して模型を溶解
または融解させて雌型シエルから除去し、模型形
状のキヤビテイを有し、かつ気孔率10〜60％の雌
型を製作して、これを粉体充填床中に保持してお
き、 所望の金属原料粉またはセラミツクス原料粉に
分散液を混合してスリツプとし、 該スリツプを前記雌型のキヤビテイ内に注入
し、該スリツプの分散液を雌型壁を通して粉体充
填床中に浸出させて除去し、キヤビテイ内に残留
充填された原料粉末の成形体を乾燥、固化させ、 雌型の注入口を密閉しておいて加熱炉中で雌型
材料中の珪酸塩化合物の融点まで加熱、融解させ
て、雌型の気孔を封じて密封体とし、 該密封体を熱間静水圧プレス装置で加圧しなが
ら焼結温度に加熱して、密封体中の原料粉末成形
体を加圧焼結したのち、 雌型を除去して焼結体を得ることに係る。

次に本願発明の方法を添付図面を参照して順を
追つて説明する。

(1) 溶解性或いは融解性物質による模型の製作： 目的とする形状の模型を雄型に製作する。こ
の模型は後述するようにこれを用いて雌型シエ
ルを形成したのち除去する必要があるため、雌
型材料を浸さない溶媒に容易に溶解するか、ま
たは雌型材料が軟化変形する温度よりも下の温
度で容易に融解して流れ出る材料で作られるこ
とが必要である。

模型の上に塗布して雌型シエルを形成させる
のに耐火物粉と珪酸塩化合物粉の混合物に結合
剤を混合したスラリーを用いるので、上記の要
件を満足するものとして低融点のワツクスや合
金または水あるいは有機溶媒に溶解するワツク
スを用いる。

模型は所望の材料を融解して金型へ流しこん
で鋳造するとか、射出成形あるいは機械加工等
公知の方法で製作したものでよい。この模型の
寸法は後の熱間静水圧プレスの工程における原
料粉成形体の収縮を見こんで最終製品寸法より
収縮分だけ大きく製作しておく必要がある。

(2) 雌型シエルの形成：雌型シエル用材料として
は所要焼結体の焼結温度において溶融しない耐
火物と該焼結温度以下の温度で溶融する珪酸塩
化合物との混合粉末に結合剤と分散液とを混合
したスラリーを使用する。例えば焼結温度が
1000〜1400℃のニツケル合金や鋼の場合には、
耐火物としてシリカ、アルミナ、ジルコニア
（ZrO₂）等の融点が1400℃よりも充分に高い材
料を用いる。

また例えば窒化珪素（Si₃N₄）セラミツクが
焼結体の原料粉であるときはその焼結温度は
1600〜1850℃であるからアルミナ、ジルコニ
ア、炭化珪素等の上記温度範囲において融解し
ない材料を耐火物として用いる。

これらの耐火物と混合する珪酸塩化合物とし
ては上記の金属またはセラミツクスの焼結温度
において、融解または軟化する材料を選ぶこと
が必要である。例えばニツケル合金や鋼の場合
にはパイレツクスガラス等を用い、窒化珪素セ
ラミツクスや炭化珪素セラミツクスの場合には
硼珪酸ガラス、石英ガラスまたはコージエライ
ト（2MgO.2Al₂O₃・5SiO₂）のようにセラミツ
クスの焼結温度で融解または軟化する珪酸塩化
合物を用いるとよい。

珪酸塩化合物の耐火物に対する混合率は５％
以上50％以下とする。これが５％以下であると
耐火物粒子間の〓間を十分に塞ぐだけの量が不
足して完全に気密化することができず、他方50
％以上になるとガス加圧の際、雌型壁の変形の
ほかに耐火物粒子間の融液が内部へ浸入、圧入
されるのが顕著になるから適当に珪酸塩化合物
の混合率を選定する必要がある。

この混合率を適正に選ぶことによつて雌型壁
は気密かつ変形可能な圧力伝達壁として原料粉
成形体に等方的に圧力を作用するので一様に焼
結収縮がおこり、寸法形状の精度の高い、高密
度、高品質の焼結体が得られる。

この耐火物粉と珪酸塩化合物粉の模型への塗
布が容易に行なえるように、水、エタノール等
の分散液と混合し、また乾燥後に強度を持たせ
るため水ラス、隣酸アルミニウム、コロイダル
シリカ、アルミナセメント等の結合剤を混合し
たスラリー状とする。このスラリーを模型に塗
布し、乾燥硬化させたのち、10〜60％の気孔率
になるようにすることが必要である。気孔率が
60％を超えると雌型の強度が低下し、破損し易
くなり、他方気孔率が10％以下では原料粉スリ
ツプの注入後、分散液の浸出が起り難くなるの
で好ましくない。

(3) 模型の除去：雌型内の模型を融解させるか、
溶媒に溶解させて雌型から除去して、雌型シエ
ル内に模型と同じ形状のキヤビテイを作る。溶
媒で溶解除去した場合はその後充分に乾燥す
る。

(4) 焼結原料粉の準備：目的とする焼結部品を作
るための原料粉が金属粉の場合は平均粒径が数
10〜100ミクロンで、アトマイズ法或いは回転
電極式法等で作つた球形粒子であることが充填
性の点から望ましい。

原料粉がセラミツクの場合には焼結性の点か
ら平均粒径は大きくても数ミクロン、望ましく
は１ミクロン以下であり、また充填性の点から
球形粒子であることが望ましい。

また窒化珪素や炭化珪素等それ自体では焼結
性が不十分なセラミツクスの場合には焼結促進
剤を添加することが好ましい。焼結促進剤とし
ては窒化珪素の場合Al₂O₃、AlN、Y₂O₃、
MgO、CeO²等が適当である。

上記のほか、WC−Co、あるいはTiN−Ni
等のサーメツトや、Al₂O₃等のセラミツクス粉
をNi合金等の金属中に分散させた分散強化合
金、あるいはＣやSiC等の繊維を金属中に分散
させた繊維強化合金の粉末も焼結原料粉として
使用することができる。

(5) 焼結原料粉のスリツプの製作：前記の焼結原
料粉に分散用液体を混合してスリツプとする。
分散用液体としては一般には水を用いるが、焼
結原料粉が分散液と化学反応を起したり、凝集
するような場合にはエタノール、プロパノール
等の有機溶媒を用いるとよい。

また必要によつてはスリツプを安定させるた
めの解膠剤や結合剤、離型剤の添加、pHの調
整等を行なう。セラミツクス粉の場合解膠剤と
して水ガラスまたはアルギン酸アンモニウム等
が、結合剤としてはメチルセルローズまたはポ
リビニールアルコール等を用いる。

(6) スリツプの注入：上記のように調整したスリ
ツプを前記の所要形状のキヤビテイを持つ雌型
内に注入する。この際薄肉の雌型の保持および
雌型から浸出して来るスリツプ用分散液の吸収
の目的で雌型を粉体充填床中に保持することが
望ましい。このようにすると雌型に注入された
スリツプ中の分散用液体は雌型壁の気孔を通し
て浸出し、周囲の粉体充填床中に吸収され、浸
出が促進される。

スリツプの注入終了後、雌型の注入口を前記
の雌型用材料を閉塞して密閉する。雌型内から
分散用液体を浸出させたのち粉末充填床より雌
型を取出し、自然乾燥または徐々に加熱するこ
とにより乾燥する。十分乾燥することにより焼
結原料粉が雌型内に充填された成形体が得られ
る。必要によつては混合した有機結合剤のか焼
を行なう。

(7) 雌型シエルの気密化：焼結原料粉の充填され
た雌型を構成成分の珪酸塩化合物の融点以上ま
で加熱して珪酸塩化合物を溶融させ、雌型シエ
ルの耐火物粒子間の空間を珪酸塩化合物の融液
によつて完全に満たすことによつて雌型シエル
を気密化する。

この加熱は雌型シエル内に気体を残留させな
いために、真空中で行なうことが好ましいが、
原料粉が酸化しないような雰囲気中で常圧で行
なつてもよい。

(8) 熱間静水圧プレス：雌型を完全に気密化した
のち熱間静水圧プレス装置の中に雌型を入れ、
ガスを通入して装置内のガス圧をおよそ100〜
2000気圧に上げて雌型をガス加圧しながら加熱
して原料粉の焼結適正温度まで昇温し、加圧に
よる密度の上昇と焼結を行なう。ガス圧が100
気圧より低い場合は焼結中に成形体に加えられ
る圧力が不足し、熱間静水圧プレスの効果が不
十分である。また2000気圧より高い圧力を使う
ことは現状の熱間静水圧プレス能力から制限さ
れる。

雌型材料には珪酸塩化合物が適当量混合して
あるので雌型壁は気密で而も変形可能な圧力伝
達壁として、内部に充填されている原料粉成形
体に等方的な圧力を加える。

(9) 雌型の除去：焼結後に常温まで冷却し、サン
ドブラスト、打撃、振動、研削等の機械的方法
または高温高圧アルカリ溶液処理のような化学
的方法により焼結体上の雌型シエルを除去し、
焼結体を取出す。

次に実施例について説明する。

実施例 １ ニツケル合金（14％Co−９％Cr−5.5％Al−
4.7％Ti−３％Mo−Ni）アトマイズ球状粉（平
均粒径100ミクロン）を原料粉とし、見掛け容積
で等量のエタノールと混合して成形用のスリツプ
とした。一方、射出成形によつてエンジン用ター
ビン翼の模型をワツクスで製作した。雌型シエル
用として耐火物は300メツシユの溶融石英粉を、
珪酸塩化合物はパイレツクスガラス粉を重量で60
％：40％の割合に混合し、これに結合剤としてコ
ロイダルシリカを15重量％分散させた水を35重量
％混合してスラリーとし、これをワツクス製の模
型の上に約２mm厚のシエルになるように塗布し
た。これを約120℃に加熱して、シエルの内側の
ワツクスを融解させ流出させて除去し、気孔率40
％の雌型とし、粉体充填床中に保持した。

この雌型のキヤビテイ内に前記の予め調製して
おいたニツケル合金粉のスリツプを注入し、スリ
ツプ中のエタノールを雌型壁の気孔を通して浸出
させ、雌型のキヤビテイ中に残留した原料粉をキ
ヤビテイ内に充填させ、前記の雌型用スラリーを
雌型の注入口に塗布して注入口を封じ、全体を十
分に乾燥したのち熱間静水圧プレス装置内に入
れ、装置内を10^-2Torrの真空に引いておいて
1100℃に加熱し、パイレツクスガラスを溶融させ
て雌型シエルの耐火物粒子間の〓間を満たして気
密にしたのち、アルゴンガスを装置内に送入して
1000気圧とし、更に1200℃まで温度を上げて１時
間熱間静水圧プレスを行なつた。

冷却後、焼結体のつまつた雌型を取出し、サン
ドブラストをかけて表面の雌型材を除去して製品
焼結体を得た。焼結体の密度はほとんど理論密度
に稠密化されており、焼結体は従来の精密鋳造タ
ービン翼に比して気孔等の欠陥が著しく少ないこ
とが認められた。

実施例 ２ 平均粒径0.7ミクロン、α型結晶を95％以上含
み、不純物として酸素を1.5％含む窒化珪素粉94
％、窒化アルミニウム６％の混合物１に対し分散
用液体としてエタノールを重量比で２の割合で加
えて混合してスリツプとした。

一方、水溶性のソルブルワツクスを射出成形し
てターボ過給機翼車の形状をした模型を製作し、
その上に雌型シエル用スラリーを塗布した。この
スラリーは耐火物粉として−300メツシユの炭化
珪素粉、珪酸塩化合物として硼珪酸ガラス粉を
２：１（重量比）の割合に混合したものに、結合
剤のコロイダルシリカを分散させたエタノール液
を35重量％混合してスラリーとした。前記模型に
スラリーを塗布し、乾燥固化させて約1mm厚の
雌型シエルを形成させたのち、水中に浸漬して模
型のソルブルワツクスを溶解して除去し、模型形
状のキヤビテイを有し、気孔率約30％の雌型とし
た。

この雌型を珪砂粉充填床中に保持し、上記の窒
化珪素を主成分とするスリツプを雌型に注入し、
分散液を雌型壁を通して浸出させ、雌型キヤビテ
イ内に原料粉を残留、充填させて乾燥、固化させ
た。次に、雌型材料のスラリーを用いてスリツプ
注入口を封じたのち、熱間静水圧プレス装置内に
入れ、装置を真空に引いて10^-3Torrとし、この
中で雌型を1550℃に加熱して雌型材料中の硼珪酸
ガラスを融解させて、雌型の気孔を硼珪酸ガラス
融液で満たして気密にしたのち、熱間静水圧プレ
ス装置にアルゴンガスを通入して1000気圧まで上
げ、この中で雌型を1750℃に２時間加熱して熱間
静水圧プレスを行なつた。

冷却後、雌型を装置から取出し、アルカリ水溶
液によるオートクレープ処理を施して雌型シエル
の硼珪酸ガラスを溶解して除去した。得られた焼
結体の密度は3.15g／c.c.で、充分に稠密化され、
クラツクその他の欠陥はなかつた。

以上説明したように、従来の粉末冶金法では通
例単軸プレスで粉末を成形して焼結するため複雑
な形状の機械部品の製作は勿論のこと、均一な密
度の焼結体を製作することは困難であつたが、本
発明の方法によれば焼結には熱間静水圧プレス法
を採用するので焼結中に四周から圧力を加えるこ
とができ、高い密度で而も均一密度の複雑な形状
の部品でも量産可能になる。

而も密封容器として原料粉の焼結温度で軟化溶
融しない耐火物粉に焼結温度以下で溶融する珪酸
塩化合物を混合してスラリーとし模型に塗布して
シエルを形成させ、模型は溶解または融解させて
除去して所望形状のキヤビテイを有する雌型とし
た容器を使用するので、加圧焼結する前に容器の
密封が容易である。

また該雌型のキヤビテイ内に所要の金属或いは
セラミツクス粉をスリツプ状にして注入し、分散
液は雌型壁の気孔を通して浸出させ、キヤビテイ
内にスリツプ中の原料粉を残留させ充填させるの
で、これを乾燥固化させると所望形状の成形体が
得られ、所望形状にするのに従来の如くプレス成
形する必要がなく、また雌型の気孔を利用して分
散液を浸出させるので原料粉を雌型キヤビテイ内
に充填させることも容易である等実用上の効果が
きわめて大きい。

【図面の簡単な説明】

添付図面は本発明の方法のフローシートを示す
図面である。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 金属粉またはセラミツクス粉の成形焼結部品
   を製造する方法において、 溶解または融解し易い材料で製作した所望形状
   の模型に、 耐火物粉95〜50重量％、珪酸塩化合物５〜50重
   量％の混合粉に分散液を混合したスラリーを塗布
   し、固化させて雌型シエルを形成させ、 これを溶媒に浸し、または加熱して模型を溶解
   または融解させて雌型シエルから除去し、模型形
   状のキヤビテイを有し、かつ気孔率10〜60％の雌
   型を製作して、これを粉体充填床中に保持してお
   き、 所望の金属原料粉またはセラミツクス原料粉に
   分散液を混合してスリツプとし、 該スリツプを前記雌型のキヤビテイ内に注入
   し、該スリツプの分散液を雌型壁を通して粉体充
   填床中に浸出させて除去し、キヤビテイ内に残留
   充填された原料粉末の成形体を乾燥、固化させ、 雌型の注入口を密閉しておいて加熱炉中で雌型
   材料中の珪酸塩化合物の融点まで加熱、融解させ
   て、雌型の気孔を封じて密封体とし、 該密封体を熱間静水圧プレス装置で加圧しなが
   ら焼結温度に加熱して、密封体中の原料粉末成形
   体を加圧焼結したのち、 雌型を除去して焼結体を得る ことを特徴とするセラミツクスまたは金属粉の成
   形焼結部品の製造方法。