JPH0219787B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は防汚性を有するポリオレフイン被覆に
関するものである。

ポリオレフイン被覆、特にポリエチレン被覆は
埋設鋼管の外面或いは海水取水管の内面等に施さ
れ、長年に亘つて優れた防食性能を発揮してい
る。又最近は鋼管杭の防食にも利用され始めてい
る。ポリオレフインは防食性、耐久性が優れてい
るのみならず、上記のような海水に接する用途に
於て貝や藻類の付着も少ないという利点がある。
しかしながらこのように物が付着し難いというポ
リオレフインの性質は一方ではむしろ弱点として
働くものである。たとえばポリオレフイン上に塗
装を施しても、その付着力は弱く、長期の耐久性
を期待できるものではない。

こゝで海水取水管に例をとれば、内面にポリオ
レフインを被覆することにより防食効果は十分で
あり、通常は貝類も殆ど付着しない。しかしなが
ら管内の滞水部等は貝類が付着し易い部位であ
り、ポリオレフインといえども貝の付着が無視で
きなくなる。一般的は塗装型の防食被覆であれ
ば、このような特別な個所には防汚塗装を上塗り
し対処することができるが、ポリオレフイン被覆
の場合前述のように塗装による対処に問題を残し
ていた。ポリオレフイン中に防汚剤を含有させる
試みもあるが、防汚剤のポリオレフイン中への溶
解或いは分散が困難であるため、長期の防汚に必
要な多量の防汚剤を含有させられないことから、
未だ完成されるに至つていない。

本発明者らは上述したポリオレフイン面の防汚
処置について種々検討の結果、本発明の達成に至
つた。本発明の要旨とするところは、(1)防食用ポ
リオレフイン被覆層の中に、防汚剤を含有したエ
チレン−酢酸ビニル共重合体が分散混合されてい
ることを特徴とするポリオレフイン被覆、および
(2)防食用ポリオレフイン被覆層を下層とし、防食
用ポリオレフイン被覆層の中に、防汚剤を含有し
たエチレン−酢酸ビニル共重合体が分散混合され
ているポリオレフイン被覆層を上層とすることを
特徴とする、二層構造のポリオレフイン被覆にあ
る。なお、本発明にいう被覆用ポリオレフインと
してはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテ
ン−１等を例示することができる。これらは単独
で用いても混合して用いてもよく、又防食性能を
損わない範囲の変性を加えたものも対象としう
る。勿論カーボンブラツク、酸化防止剤等の添加
は差支えない。

以下に本発明を詳細に説明する。

まず第１図は本発明被覆の一態様例を模式的に
示す断面図であつて、素地鋼材１の上にポリオレ
フインの層２が設けられており、その表層部２′
に防汚剤を含有したエチレン−酢酸ビニル共重合
体（以下EVAと略称する）３が分散混合してい
る態様を示す。

この場合、ポリオレフイン被覆層２全体に防汚
剤含有EVA混合物３を分散混合させても勿論差
支えないが、被覆層深部の防汚剤放出は極めて遅
く、防汚性能或いは寿命に対する寄与が少ないた
め、被覆層のあまり深部まで混合分を分散せしめ
るには及ばず、少くとも表層部が防汚剤含有
EVAを分散混合した層を以つて構成されていれ
ば良い。なお表層部の厚さに特に制限は設けない
が、100〜1000μの範囲が実用的である。

こゝで防汚剤としてはたとえばトリフエニル錫
ハイドロオキサイト、トリブチル錫オキサイド等
の有機錫化合物、亜酸化銅等の銅化合物、チアベ
ンダゾール等の殺菌防黴剤等を挙げることができ
る。

次にEVAは防汚剤を多量に溶解或いは分散含
有させうる基剤となり、且ポリオレフイン中への
分散混合も容易な物質として選定したものであ
る。即ち長期の防汚に必要な多量の防汚剤を
EVA中に含有させ、この防汚剤はEVAを含んだ
ポリオレフインを通して徐々に放出されるため、
長期に亘り防汚効果を持続させうる。

この場合EVAの種類は特に限定するものでは
ないが、酢酸ビニル基10〜30％、メルトインデツ
クス３〜30のものが適している。又EVAに部分
けん化、カルボン酸付加等の変性を加えたものを
用いてもよい。EVA中の防汚剤濃度は高い方が
防汚効果が長期に持続するが、10〜60％程度が実
用的である。EVAをポリオレフインに分散混合
させるためにはたとえば両者のメルトインデツク
スに差のあるものを溶解混合すればよい。即ち、
本発明被覆を得るにはたとえば上記条件に合う防
汚剤含有EVAとポリオレフインの粉状混合物を
防食用ポリオレフイン被覆の表面に溶射法或いは
流動浸漬法にて被覆するか、或いは該粉状混合物
の溶融成型シートを防食用ポリオレフイン被覆に
熱融着させるなどの手段が適宜採用できる。表層
部に於るEVAのポリオレフインへの混合物比率
は10〜60％程度が実用的である。

本発明のポリオレフイン被覆は下記に挙げるよ
うな利点を有する。

防汚剤とポリオレフインが溶融一体化してい
るため、長期に亘つて表層剥離の危惧がない。

防汚剤含有EVAはポリオレフインを介して
外界と接するため防汚剤の放出が適度に抑制さ
れ防汚効果が長期持続する。

防汚性能が低下したときには表層部の再処理
による機能更新が容易である。

防汚処理の施工に有機溶剤を用いないため安
全衛生上有利である。

次に本発明の効果を実施例にて具体的に説明す
る。

実施例 呼び径125mm、４ｍ長の鋼管の外面に流動浸漬
法により密度0.925、メルトインデツクス４のポ
リエチレンを２mmの厚さで被覆したものを２本用
意した（Ａ，Ｂと呼称を付す）。

Ａには上記流動浸漬に引続き、トリフエニル錫
ハイドロオキサイドを30％含有させた酢酸ビニル
基19％、メルトインデツクス14のEVAと前記ポ
リエチレンの１：１粉状混合物を振かけて溶融さ
せ、0.5mm厚さの層を形成させ、本発明被覆を完
成した。

又、Ｂはポリエチレン被覆のまゝで比較材とし
た。

Ａ，Ｂ両試験体を２年間海中に浸漬したとこ
ろ、本発明被覆を施したＡには貝類、藻類の付着
が皆無であつたのに対し、比較材Ｂには若干の緑
藻、セルプラ及び数十個のフジシボの付着が見ら
れた。

なお、Ａは残存防汚剤の量から更に２年以上の
防汚寿命が推定されたが、この表面をプラスチン
グした後、上記Ａと同じ構成の表層を溶射法によ
つて付与し、新規材と同様の本発明被覆を更新す
ることができた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明被覆の構成を模式的に示す断面
図である。 １……素地鋼材、２，２′……ポリオレフイン、
３……防汚剤を含有したエチレン−酢酸ビニル共
重合樹脂混合物。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 防食用ポリオレフイン被覆層の中に、防汚剤
   を含有したエチレン−酢酸ビニル共重合体が分散
   混合されていることを特徴とするポリオレフイン
   被覆。 ２ 防食用ポリオレフイン被覆層を下層とし、防
   食用ポリオレフイン被覆層の中に、防汚剤を含有
   したエチレン−酢酸ビニル共重合体が分散混合さ
   れているポリオレフイン被覆層を上層とすること
   を特徴とする、二層構造のポリオレフイン被覆。