JPH021263B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は超音波探触子、特に超音波パルスビー
ムの焦点距離、周波数を制御することの可能な超
音波探触子に関する。

超音波パルスを金属溶接部あるいは被検体等の
音場媒質中に向け送受波し、金属溶接部の損傷検
出あるいは被検体の診断等を行う超音波探触子が
知られている。

このような探触子を被検体内部を診断する超音
波診断装置に用いた場合、探触子から送波された
超音波パルスビームは生体組織内部において音響
インピーダンスの異なる組織境界面で反射され、
この反射エコーが探触子により再び受波される。
そして、受波された反射エコーはその強度に応じ
た信号に変換され、超音波診断装置のブラウン管
等に診断像として表示される。

ここにおいて、前述した超音波パルスビームの
送受波は超音波探触子に設けられた電気音響変換
素子を介して行われる。すなわち、励振信号を電
気音響変換素子に印加すると、超音波パルスビー
ムが送波され、また反射エコーがこの電気音響変
換素子に印加されると、変換素子からはその反射
エコーの強さに応じた電気信号が出力され、画像
信号としてブラウン管等の表示装置に供給され
る。

超音波パルスビームの送受波により得られる診
断像の画質を高めるためには、被検部位が変わる
たびに超音波パルスビームの焦点位置をその被検
部位付近に設定し直す必要がある。

しかし、従来の超音波探触子は使用する超音波
パルスビームの焦点距離が一点に固定されている
ため、この固定された焦点近傍に位置する被検部
位からは良好な画像を得ることができるが、それ
以外の音場例えば焦点位置と異なる深度に存する
被検部位からは良好な画像を得ることができな
い。従つて、例えば異なる深度の被検部位から良
好な診断像を得ようとする場合は、深度に応じた
焦点距離を有する複数本の超音波探触子を揃え、
これを使い分けねばならないという欠点があつ
た。

また超音波パルスビームの送受波により得られ
る診断像の分解能を高めるためには、超音波パル
スビームの周波数を高くすることが好適である。
しかし、高周波の超音波パルスビームは音場媒質
例えば生体中での減衰率が大きくなり、深い被検
部位での感度が低下するという問題があり、深い
被検部位の診断には適さない。

他方、周波数の低い超音波パルスビームは分解
能は低いが音場媒質中での減衰率は小さいので、
深い被検部位の診断に適する。

従つて、超音波パルスビームの送受波により得
られる診断像の画質を高めるためには、浅い被検
部位の診断に周波数の高い超音波パルスビームを
用い、深い被検部位の診断に周波数の低い超音波
パルスビームを用いる必要がある。

しかし、従来の超音波探触子は超音波パルスビ
ームの周波数を可変調整できないため、例えば異
なる深度の被検部位から良好な診断像を得ようと
する場合は、深度に応じた周波数を有する複数本
の超音波探触子を揃え、これをその都度使い分け
ねばならないという欠点があつた。

本発明はこのような従来の課題に鑑みなされた
もので、その目的は音場媒質に向け送受波する超
音波パルスビームの焦点距離及び周波数を必要に
応じて自由に制御でき、良好な画像を得ることが
できる超音波探触子を提供することにある。

この目的を達成するため、本発明は同心円状に
配置され、それぞれが開口面積の異なる開口部を
有するとともにその厚みが外側に向かうにつれて
大きくなるよう形成され、励振制御されることに
より音場媒質に向けて超音波パルスビームを送受
波する複数の電気音響変換素子を備え、励振制御
する電気音響変換素子を選択することにより超音
波パルスビームを送受波する電気音響変換素子の
実質開口面積及び厚みを切り替え、被検体内の検
査対象部位に応じて超音波パルスビームの焦点距
離及び周波数を所望の値に可変制御可能に構成し
たことを特徴とする。

更に本発明は音場媒質に向け送受波する超音波
パルスビームの焦点距離を必要に応じて制御する
とともに、超音波パルスビームの周波数を焦点距
離に応じた最適な値に制御し、良好な画質を得る
ことの可能な超音波探触子の提供を目的とする。

この目的を達成するため、本発明は開口面積の
異なる開口部を有するとともに厚みを異にし励振
制御されることにより音場媒質に向け超音波パル
スビームを送受波する複数の電気音場変換素子を
備え、励振制御する電気音響変換素子の選択によ
り超音波パルスビームを送受波する電気音響変換
素子の実質開口面積および厚みを切り替え、超音
波パルスビームの焦点距離および周波数を制御す
ることを特徴とする。

次に本発明の好適な実施例を図面に基づき説明
する。

第１図には、本発明の超音波探触子の好適な実
施例が示されており、制動層１０の表面に開口面
積の異なる開口部を有するとともに、厚みを異に
する複数の電気音響変換素子１２，１４，１６が
設けられている。これら各変換素子１２，１４，
１６は圧電材料から成り、励振制御されることに
より音場媒質に向け超音波パルスビームを送受波
する。

実施例において、第２図からも明らかなよう
に、各変換素子１２，１４，１６は同心円状に配
置されている。そして、中央に配置された変換素
子１２は開口部の開口面積が０のほぼ円板状に形
成され、その周囲に同心円状に配置された変換素
子１４は開口部の開口面積が変換素子１２の開口
部開口面積より大きく形成され、更にその周囲に
同心円状に配置された変換素子１６は開口部の開
口面積が変換素子１４の開口部開口面積より大き
く形成されている。

そして、変換素子１２は１枚の圧電材で形成さ
れ、変換素子１４，１６はリング状の圧電材を複
数枚貼り合せて形成されている。このようにし
て、第１図からも明らかなように、変換素子１４
は変換素子１２より厚く形成され、変換素子１６
は変換素子１４より厚く形成されている。

このように形成された各変換素子１２，１４，
１６はその厚みに応じた固有の共振周波数を有し
ている。そして、図示しない駆動回路により励振
電圧が印加されることにより前記共振周波数に対
応する周波数の超音波パルスビームをその送受波
面１２ａ，１４ａ，１６ａから送波するととも
に、反射エコーをその送受波面１２ａ，１４ａ，
１６ａで受波する。

実施例において、このような超音波パルスビー
ムの送受波を行う各変換素子１２，１４，１６の
送受波面１２ａ，１４ａ，１６ａには整合層１８
が貼着されている。

本発明の超音波探触子は以上の構成から成り、
次にその作用を説明する。

本発明の超音波探触子は、開口部の開口面積の
異なる複数の変換素子１２，１４，１６を有して
おり、各変換素子１２，１４，１６はその開口面
積の相違により異なる焦点距離をもつ。従つて、
本発明の超音波探触子は、励振制御する変換素子
１２，１４，１６の選択により、超音波パルスビ
ームの焦点距離を広範囲にわたり制御することが
可能となる。

第３図には、本実施例に係る超音波探触子の変
換素子１２，１４，１６から送波される超音波パ
ルスビームの形状が示されている。

一番有効開口面積の小さい変換素子１２を励振
すると、変換素子１２から送波される超音波パル
スビームは送受波面１２ａに一番近い位置で焦点
１００を結ぶ。従つて、このようにして得られる
超音波パルスビームは近距離領域での音場媒質の
検査、診断に適する。

また変換素子１２，１４を同時に励振すると、
その有効開口面積が変換素子１２，１４の合成に
より拡大され、変換素子１２，１４から送波され
る超音波パルスビームは前述した焦点１００より
遠距離の位置で焦点２００を結ぶ。従つて、この
ようにして得られる超音波パルスビームは中距離
領域での音場媒質の検査、診断に適する。

更に変換素子１２，１４，１６を同時に励振す
ると、その有効開口面積は変換素子１２，１４，
１６の合成により一層拡大し、超音波パルスビー
ムは更に遠方の位置で焦点３００を結ぶ。従つ
て、このようにして得られる超音波パルスビーム
は遠距離領域での音場媒質の検査、診断に適す
る。

以上のように、本発明によれば、変換素子の有
効開口面積を変化させて超音波パルスビームの焦
点距離を任意に変化させることが可能となる。従
つて、各音場領域に対応して前記有効開口面積を
選択することにより、第３図の実線で示すよう
に、広範囲にわたり細いビーム径の超音波パルス
ビームを得ることが可能となる。この結果、本発
明の超音波探触子を用いた場合には、広範囲にわ
たり高い分解能の画像を得ることができる。

なお本実施例においては、同心円状に配列され
た３種類の変換素子１２，１４，１６が用いられ
ているが、変換素子の設定個数は任意に設定可能
であり、また変換素子の形状も他の任意の形状例
えば矩形状の素子を交互に配列した形状とするこ
とも可能である。

ところで、前述のように、超音波パルスビーム
の送受波により分解能、感度に優れた画像を得る
ためには、超音波パルスビームの焦点位置のほか
に超音波パルスビームの周波数の問題がある。す
なわち、音場領域の深度に応じて超音波パルスビ
ームの周波数を変化させることである。従つて、
超音波パルスビームの焦点位置を焦点１００，２
００，３００と変化させた場合にその焦点距離に
応じて超音波パルスビームの周波数を変化させる
ことができれば、更に優れた画像を得ることがで
きるのは明らかである。

一般に、圧電材料で形成された電気音響変換素
子の共振周波数は厚さと一定の関係を有し、圧電
材料中の音速をｃとすれば、この変換素子から送
受波される超音波パルスビームの周波数と変換
素子の厚さｌとの間には、 ＝ｃ／2l ………(1) の関係がある。

本発明の超音波探触子は超音波パルスビームの
この性質を利用して、焦点距離の移動と同時に超
音波パルスビームの周波数を変化させ、近距離に
対しては高周波数の超音波パルスビームを用い、
得られる画像を分解能の高いものとし、遠距離に
対しては低周波数の超音波パルスビームを用い、
得られる画像の感度低下を防止している。

すなわち、第３図に示すように、変換素子１２
は他の変換素子１４，１６より薄く形成されてい
るので、他の変換素子１４，１６より高周波数の
超音波パルスビームを得ることができる。また変
換素子１４は変換素子１２よりは厚く、変換素子
１６よりは薄く形成されているため、変換素子１
２より低い周波数でかつ変換素子１６より高い周
波数の超音波パルスビームを得ることができる。
また変換素子１６は他の変換素子１２，１４より
厚く形成されているため、他の変換素子１２，１
４より低い周波数の超音波パルスビームを得るこ
とができる。

従つて、変換素子１２を励振することにより送
波された近距離位置１００に焦点を結ぶ超音波パ
ルスビームは、高い周波数のものとなる。また変
換素子１２，１４を同時に励振することにより送
波され焦点１００より遠距離位置２００に焦点を
結ぶ超音波パルスビームは、近距離位置１００に
焦点を結ぶ超音波パルスビームの周波数より低い
周波数のものとなる。更に変換素子１２，１４，
１６を同時に励振することにより送波され他の超
音波パルスビームより遠くの位置３００に焦点を
結ぶ超音波パルスビームは、他の超音波パルスビ
ームより更に低い周波数のものとなる。

従つて、本発明の超音波探触子を用いることに
より、近距離の音場媒質に対しては高周波数の超
音波パルスビームを用い、高い分解能の画像を得
ることができる。また中距離、遠距離の音場媒質
に対しては、音場媒体が近距離より遠距離になる
に従い、徐々に超音波パルスビームの周波数を下
げ、超音波パルスビームの減衰による感度の低下
を最少限に抑えつつ、可能な限り高い分解能の画
像を得ることができる。

以上のとおり、本発明によれば、電気音響変換
素子の実質開口面積を切り替え、音場媒質に向け
送受波する超音波パルスビームの焦点距離を音場
媒質の被検部位に合わせて調整できるので、分解
能の高い良質な画像を１本の超音波探触子を使用
するのみで、広範囲の音場媒質から得ることがで
きるという優れた効果を発揮する。

更に本発明によれば、電気音響変換素子の実質
開口面積の切替えと同時にその実質的な厚みをも
切り替え、超音波パルスビームの周波数をその焦
点距離に応じた最適な値に制御できるため、音場
媒質中における超音波パルスビームの減衰を考離
した分解能の高い更に良質な画像を１本の超音波
探触子を使用するのみで広範囲の音場媒質から得
ることができるという優れた効果を発揮する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る超音波探触子の好適な実
施例の側断面図、第２図は第１図に示す実施例の
正面説明図、第３図は本発明の超音波探触子によ
り送受波される超音波パルスビームの説明図であ
る。 １２，１４，１６……電気音響変換素子。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 同心円状に配置され、それぞれが開口面積の
   異なる開口部を有するとともにその厚みが外側に
   向かうにつれて大きくなるよう形成され、励振制
   御されることにより音場媒質に向けて超音波パル
   スビームを送受波する複数の電気音響変換素子を
   備え、 励振制御する電気音響変換素子を選択すること
   により超音波パルスビームを送受波する電気音響
   変換素子の実質開口面積及び厚みを切り替え、 被検体内の検査対象部位に応じて超音波パルス
   ビームの焦点距離及び周波数を所望の値に可変制
   御可能に構成したことを特徴とする超音波探触
   子。