JPH0210148Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】

〔産業上の利用分野〕 本考案は摩擦溶融防止編地に係り、詳しくはセ
ルロース糸条又はセルロース系糸条を主体とした
糸条と合成繊維糸条とによる二重積層ループ構造
の摩擦溶融防止編地に関するものである。 〔従来の技術〕 一般に編地は伸縮性、フイツト性等の運動機能
特性を有するため広く、スポーツ衣料分野に用い
られており、その糸素材としては強度、耐久性、
イージーケアー性等からポリエステル繊維、ポリ
アミド繊維等の合成繊維が使用されている。 しかるに合成繊維糸条を表面に用いた編地は体
育館の床などで激しくすべりこむと溶融して破れ
てしまう欠点がある。この防止方法として各種の
仕上加工剤で処理したもの、綿糸と合成繊維との
交撚物等が発表されている。 〔考案が解決しようとする問題点〕 しかし加工剤による場合は加工剤使用によるコ
ストアツプ、風合変化を始めとする他、物性の低
下、耐久性等の問題があり、まだ満足するものは
ない。又綿糸と合成繊維との交撚糸を用いたもの
は撚糸コストアツプに加え、製品での綿の染色堅
牢度の問題がある等、いまだ充分なものは得られ
ていない。 〔問題点を解決するための手段〕 本考案者等はかかる従来の欠点を補い優れた摩
擦溶融防止編地を提供すべく種々検討した結果、
編地の片面を構成するループがセルロース系糸条
又はセルロース系糸条を主体とした糸条からなる
内層ループと、合成繊維糸条からなる外層ループ
とによる２重ループによつて形成され、反対面が
任意のループによつて形成された両面編地であつ
て、該２重ループの外層ループを形成している糸
条と同一の糸条で反対面のループがタツク接結又
はリブ接結されている編地により優れた摩擦溶融
防止編地が得られることを見いだしたのである。 即ち本考案は編地の片面のループがセルロース
系糸条又はセルロース系糸条を主体とした糸条か
らなる内層ループと、合成繊維糸による外層ルー
プとによつて形成されるループ構造を有している
ため、この編地の２重ループ形成面をスポーツウ
エア等の外表面とすれば体育館などの床に激しく
すべりこんだ場合、まず外層形成ループの変形と
内層形成ループの変形差、即ち２重構造ループの
ズレにより、すべりこみで生じた衝撃エネルギー
を吸収、分散させ内層ループへ熱エネルギーがつ
たわる。内層ループはセルロース系糸条又はセル
ロース系糸条を主体とした糸条により構成されて
いるため熱エネルギーにより溶融されることがな
い。 このように本考案は２重ループ構造のズレ効果
により衝撃エネルギーを吸収、分散させると同時
に熱エネルギーを内層ループに速やかに移行せし
めることにより摩擦溶融を防止しようとするもの
である。 以下、本考案を図面により更に詳しく説明す
る。 第１図は本考案の編地の１例を示した部分拡大
横断面図であり、片面が内層ループ１と外層ルー
プ２とで形成される２重ループ構造となつてお
り、内層ループ１はセルロース系糸条又はセルロ
ース系糸条を主体とした糸条からなつている。又
外層ループ２は合成繊維糸条からなり、該糸条は
２重ループ構造の外層ループ２を形成していると
同時に反対面のループ３ともタツク接結されてい
る。４はこのタツク結合ループを示している。又
図示してないが、反対面のループ３との接結はリ
ブ接結によるものであつてもよい。反対面のルー
プ３は任意の糸条を用いればよく、繊維素材は限
定されない。 次に本考案編地の製法の１例を説明する。 第２図は本考案編地の組織図の１例であり、図
においてa₁，a₂，a₃……は丸編機におけるダイヤ
ル針を示し、b₁，b₂，b₃……は同じくシリンダ針
を示すものである。そして給糸口(イ)ではセルロー
ス系糸条Ａをすべてのダイヤル針a₁，a₂，a₃……
にのみ供給して内層ループ１を形成させ、合成繊
維糸条Ｂはすべてのダイヤル針a₁，a₂，a₃……と
すべてのシリンダ針b₁，b₂，b₃……に供給しダイ
ヤル針a₁，a₂，a₃……で外層ループ２を、シリン
ダ針b₁，b₂，b₃……ではタツクループ４をそれぞ
れ形成させる。 又、次の給糸口(ロ)では任意の糸条Ｃでタツクル
ープを抜き、ループ３を形成させ両面編地とす
る。 本考案におけるセルロース系糸条とは綿、レー
ヨン等の非熱溶融性糸条をいい、セルロース系糸
条を主体とした糸条とはセルロース系糸条が糸条
構成繊維の60％以上含まれているものであり、実
験の結果では含有量が50％以下では溶融防止効果
が少ないことが判明している。又、合成繊維は主
として強度維持のために用いるものであり、ポリ
エステルやポリアミド繊維等の高強力を有するも
のが好ましい。 又、糸条形態はマルチフイラメント、紡績糸の
いずれを用いてもよい。 〔考案の作用〕 本考案の編地はスポーツウエア等の外表面とな
るようにして使用すれば、運動の際床などにすべ
りこんだ場合、編地表面が合成繊維糸条からなる
外層ループとセルロース系糸条からなる内層ルー
プとの２重ループで形成されているため、内、外
層のループにズレが生じすべりこみで発生した衝
撃エネルギーを吸収分散させ内層形成ループへ熱
エネルギーがつたわる。内層形成ループはセルロ
ース系糸条で形成されているため熱エネルギーに
より溶融されることがない。 〔実施例〕 大隅鉄工(株)製ダブル丸編機20Gを用いて第２図
に示した組織で給糸口(イ)においてＡに綿糸30／
1ccを用い、Ｂにポリエステル仮撚加工糸100デニ
ール48フイラメントを用い、給糸口(ロ)においてＣ
にポリエステル仮撚加工糸150デニール48フイラ
メントを用い両面編地を形成した。比較対照用と
して綿糸30／1ccとポリエステル仮撚加工糸100デ
ニール48フイラメントを引揃え、モツクミラノリ
ブ及び両面編地を作つた。上記３種類の同一染色
加工条件で仕上げたのち実用テスト及びモデルテ
ストを行つた結果は次表のとおりであつた。

〔考案の効果〕

本考案による摩擦溶融防止編地は加工剤によつ
て表面加工したものと異なり、風合変化やくりか
えし洗タクによる耐久性の問題や加工剤によるコ
ストアツプの問題もなく非常に経済的である。 又、加工剤により表面がすべりすぎておこる事
故もなく、安全性が高いスポーツ衣料として優れ
たものである。 又、綿糸を表面に使用していないため洗タクな
どによる色の変色もなく、いつまでも美しい編地
として使用出来る。 又、表面は合成繊維で構成されているため、ア
ウトドア用としても従来のもの同様充分強力のあ
る編地をえることが出来る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の編地の１例を示した拡大横断
面図、第２図は本考案編地の製法の１例を示した
組織図である。 １……内層ループ、２……外層ループ、３……
反対面ループ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 編地の片面を構成するループがセルロース系糸
   条又はセルロース系糸条を主体とした糸条からな
   る内層ループと、合成繊維糸条からなる外層ルー
   プとによる２重ループによつて形成され、反対面
   が任意のループによつて形成された両面編地であ
   つて、該２重ループの外層ループを形成している
   糸条と同一糸条で反対面のループがタツク接結又
   はリブ接結されていることを特徴とする摩擦溶融
   防止編地。