JPH0155968B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 ［産業上の利用分野］ 本発明は、通常の砂、砂利等の骨材を用いない
セメント主体のセメント化粧板及びその製造方法
に関する。更に詳しくは、上面に凹凸の付けられ
たセメント化粧板及びその製造方法に関するもの
である。なお、本明細書で「セメント」とは、ポ
ルトランドセメントをいう。

［従来技術］ 本発明者は、従来のセメント化粧板に含有して
いた骨材を全く含まないにも拘らず、成型硬化後
のひび割れ、反りがなく、粘板岩生成の理論に基
づいた高い密度と強度を有する超高圧縮不焼成の
セメント化粧板の製造方法について特願昭57−
119194号により特許出願した。

この製造方法は、ポルトランドセメントに水セ
メント重量比３％ないし10％の水分を加えてセメ
ント糊を作り、前記セメント糊を型枠に入れ、
100Kg／cm²ないし1000Kg／cm²の圧力を加え、前記
セメント糊中の空気を脱気しながら成型する方法
であり、成型時にセメント糊の上面に天然又は人
工の意匠材をおいて成型し、上面に型押し又は押
込みによる意匠を作り出すこともできる方法であ
る。

しかしこの方法では、でき上がつた化粧板の内
部に細孔が残存し易く、この細孔からクラツク等
が発生することがあつたため、本発明者はこの点
を改良したセメント化粧板の製造方法について特
願昭58−3328号により特許出願した。

この製造方法は、ポルトランドセメントに充填
材として無機質微粉末ならびに補強用の繊維を混
合し、この混合物を水で混練し、600〜4000Kg／
cm²の圧力で圧縮成型して硬化させることにより化
粧板を得る方法であり、型枠の内底面に天然又は
人工の意匠材を敷いて成型し、セメント化粧板の
上面に意匠材の模様をプリントすることもできる
方法である。

しかし、上記方法で意匠材の模様をプリントし
ようとする場合には、型枠の底面に意匠材をセツ
トしなければならず、特に多種の意匠材によりバ
ラエテイに富んだ各種の化粧板を作ろうとすると
きには、意匠材の交換が煩わしい欠点があつた。

［発明の目的］ 本発明の目的は、意匠材である版材の交換が容
易で、バラエテイに富んだ各種の凹凸模様又は凹
凸文字或いは凹凸図形が簡単に化粧板の上に印刷
され、高い密度と強度を有する超高圧縮不焼成の
セメント化粧板及びその製造方法を提供すること
にある。

［発明の構成］ 本願第一発明の特徴は、ポルトランドセメント
と無機質充填材と補強繊維とにより構成され、上
面に凹凸の形成されたセメント化粧板であつて、
前記上面の凹凸が前記ポルトランドセメントと無
機質充填材と補強繊維とを600〜4000Kg／cm²の圧
力をかけて圧縮成型して硬化させるときに凹凸の
ある版材を上面から型転写し、脱型養生後少なく
とも表面に樹脂液をを含浸し、ついで表面に絵付
け又は印刷を施して形成されたセメント化粧板に
あり、本願第二発明の特徴は、その製造方法にあ
る。

［工程説明］ 次に本願第二発明を第１図に基づいて工程順に
詳細に説明する。

＜セメント糊の調製＞（第１図ａ） ポルトランドセメントに混合する無機質充填材
の例としては炭酸カルシウム、ベントナイト等の
無機質微粉末が挙げられ、補強繊維の例としては
鋼繊維、鉱物繊維、植物性繊維、合成繊維等が挙
げられる。これらの混合量は重量比でセメント
100部に対して無機質充填材が３〜30部、補強繊
維が0.1〜15.0部の範囲で選択される。無機質充
填材はセメント化粧板内の空隙を減少させるため
であり、補強繊維は後述する圧縮成型後の脱型時
に成型物のひび割れを防止するためである。

またこれらの混合物に加えられる水は、セメン
トの水和作用を生じさせるため及び混練物の成型
を容易にするために、セメント100部に対して重
量比で５〜16部混入される。このときの水は、混
練物の粘度を高め、かつ型詰めを容易にするため
に、１〜５％のメチルセルロース水溶液が好まし
い。水が加えられた混合物は均一に練られてセメ
ント糊１０となる。

＜型枠への充填と版材の配置＞（第１図ｂ，ｃ） 上記重量比の配合で混練されたセメント糊１０
は、上部が開口された型枠１１に注入され、型枠
１１の内部容積が一杯になるまで充填される。型
枠１０にセメント糊が充填されると、片面に凹凸
が刻設された版材１２がセメント糊１０の上面を
覆うように配置される。この版材１２の配置方法
により、版材が多種類になつても容易に版材１２
を交換することができる。

この版材１２のの凹凸は所望の模様、文字、数
字、図形等を予め刻設しておく。版材１２として
は公知の各種版材を利用できるが、本発明の超高
圧の圧縮成型に耐え、かつ細かい線模様等を再現
性良く現すことができ、取扱い及びコスト面等の
理由から、感光性樹脂凸版が好ましい。この感光
性樹脂凸版は、所望の模様等が予め現像された
ネガフイルムを感光性樹脂材料の上に密着し、
このネガフイルムの上から紫外線を豊富に出すケ
ミカルランプや水銀灯等を照射して感光性樹脂材
料を露光させた後、所定の現像機を用いて水又
は溶剤で洗い出し処理を行い、熱風乾燥をした
後、最後に版面強度を上げるため、後露光して
得られる。感光性樹脂凸版の例としては、アクリ
ロイル基を感光基とする感光性樹脂（感光性ナイ
ロン）、ジアゾ基を感光基とする感光性樹脂（プ
リセンシタイズ版）等により作られた凸版が挙げ
られる。

＜圧縮成型＞（第１図ｄ） 版材１２が配置された後、版材１２の上から
600〜4000Kg／cm²の圧力をかけて型枠１１内のセ
メント糊１０を圧縮成型する。この圧力は上記範
囲の中からセメント糊の配合比、化粧板の用途等
により適宜選定されるが、セメントの水和による
固化作用を起こして、前述の粘板岩生成の理論に
基づいた高い密度と強度を生ずるために、下限圧
力は600Kg／cm²であることが必要である。また圧
縮成型機又は版材１２の耐久度等からその上限圧
力は4000Kg／cm²程度になる。

この圧縮成型により成型された成型物１３は、
版材１２の凹部に相応する部分が浮彫りに加工処
理される。

＜脱型と養生＞（第１図ｅ，ｆ） 成型物１３は脱型後、常温常圧下で養生し硬化
させることも可能であるが、温度40〜100℃、相
対湿度60〜100％の高温高湿の環境下で養生する
方法、又は40〜100℃の温度で成型物を合成樹脂
材料等で密封して養生する方法がセメントの水和
を促進し、成型物１３の硬化を速めることから好
ましい。

＜樹脂含浸＞（第１図ｇ） 硬化した成型物１３′は微視的に観察すると、
その表面に空隙があり、その吸水率は４〜５％で
ある。このため本発明の化粧板を建築用外装材と
して用いるときには、化粧板の塩吹き（エフロレ
ツセンス）を防止するために吸水率を１％以下に
抑えることを目的として、成型物１３′の上面に
樹脂含浸が行われる。

含浸方法としては、図示するように成型物１
３′全体を樹脂液１４の中にどぶづけする方法、
全面にスプレーで吹付ける方法、全面にローラ塗
りをする方法等が採られる。この樹脂液の例とし
ては、ウレタン、アクリル、エポキシ、ポリエス
テル等の熱硬化性樹脂液が挙げられる。この樹脂
含浸により、成型物１３′全面に樹脂皮膜が形成
される。

＜上面処理＞（第１図ｈ） 樹脂皮膜の形成された成型物１３″は、用途に
より上面に絵付け、印刷等の装飾が施された後、
上面に艷出し液等が塗布され、セメント化粧板１
５となる。

このようにして得られたセメント化粧板１５
は、超高圧の圧縮成型のため、高い強度と密度を
有するとともに、版材１２の凹凸が鮮明に転写さ
れ、かつ焼成工程を経由しないため、細かい模
様、文字であつても凹凸が崩れることなく、その
まま残存する。この特性を利用して、本発明のセ
メント化粧板は、建築用内外装材はもとより、壁
掛、置き物、カレンダー、記念品等の室内装飾品
として使用することができる。

また、焼成工程がないため焼成による化粧板の
収縮も生じず、30cm×30cm程度の大型のセメント
化粧板を製造してもひび割れ、反りは一切発生し
ない。

［発明の効果］ 以上述べたように、本発明の製造方法によれ
ば、セメント糊の上面に版材を配置して圧縮成型
するため、版材の交換が容易で、バラエテイに富
んだ意匠を迅速に化粧板の上面に現すことができ
る。特に版材に感光性樹脂凸版を用いれば、所望
の意匠が簡便に、高い精度で反復生産することが
でき、所望の色調を加えることもできる。

また本発明により得られたセメント化粧板は、
超高圧の圧縮成型のため、高い強度と密度を有す
るとともに、不焼成で製造されるため、版材の凹
凸が細かい模様、文字であつても成型後で崩れる
ことがない。このため版材の最終製品に鮮明に転
写することができ、しかも収縮率が極めて少ない
ため成型通りの寸法で仕上げることができる。

［実施例］ 次に本発明の実施例について説明するが、以下
に示す例はあくまでも一例であつて、本発明の技
術的範囲を限定するものではない。

実施例 １ 重量比で白色ポルトランドセメント100部、粉
末度試験法であるブレーン法による比表面積が
10000cm²／ｇの炭酸カルシウム15部、長さが７mm
で直径が2μmのアクリル繊維0.5部の混合物をメ
チルセルロースの２％水溶液で混練してセメント
糊を調製し、上部が開口した内寸110×90×６mm
の鋼製型枠に充填した。

次いで愛玩動物の輪郭が刻設された版材を上記
セメント糊の上に配置した。この例では版材は、
予め図案化した愛玩動物を写真にとりネガフイル
ムにした後、このネガフイルムを、鉄の薄板上面
に接着層を介してアルコール溶性感光性ナイロン
層を圧着した作製された感光性樹脂材料に密着
し、水銀灯を照射して、アクリロイル基を分子の
両端にもつ光架橋重合性のメチレンビスアクリル
アミドモノマーで、露光によりアルコールに対す
るナイロン分子の不溶性化を起こさせた後、アル
コール系溶剤で洗い出し処理を行い、熱風乾燥を
した後、後露光して得た。

その後、型枠の上底面に3000Kg／cm²の圧力を加
え、上記セメント糊を押し固め、上面に愛玩動物
の輪郭が浮彫りされた成型物を得た。脱型後、成
型物の中から水分が逸散するのを防ぐため、成型
物を合成樹脂製の密封容器に入れ、60℃で約２時
間硬化させた。成型物を密封容器から取出し、自
然冷却した後、トルエン、酢酸エチルが18％溶解
したウレタンの溶液の中に10秒間浸漬させて、成
型物をウレタン皮膜でカバーした。

次に、この成型物の愛玩動物の輪郭をなす浮彫
り部分を黒色で絵付けを施し、乾燥後、その上に
艷出し剤を塗布して、置き物用のセメント化粧板
を得た。

この化粧板は、曲げ強度が約180Kg／cm²、比重
が2.46で天然の粘板岩に匹敵し、水に濡らしても
塩吹きを生じることはなかつた。またこの化粧板
は不焼成のため、愛玩動物の輪郭は版材と殆んど
同一の寸法で、かつ全く型崩せず、鮮明に転写さ
れていた。

【図面の簡単な説明】

第１図は本願発明の製造方法のブロツク図であ
る。 １０：セメント糊、１１：型枠、２：版材、１
３，１３′，１３″：成型物、１４：樹脂液、１
５：セメント化粧板。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ポルトランドセメントに無機質充填材及び補
   強繊維を混合したセメント材に水を加えてセメン
   ト糊を調整し、このセメント糊を型枠に入れた
   後、このセメント糊の上面を覆うように凹凸の形
   成された版材を配置し、この型枠中のセメント糊
   を前記版材に600〜4000Kg／cm²の圧力をかけて圧
   縮成型して硬化させる製造方法において、脱型養
   生後少なくとも上面に樹脂液を含浸し、ついで上
   面に絵付け印刷を施すことを特徴とするセメント
   化粧板の製造方法。 ２ 版材は感光性樹脂凸版である特許請求の範囲
   第１項に記載のセメント化粧板の製造方法。 ３ ポルトランドセメントと無機質充填材と補強
   繊維とにより構成され、上面に凹凸の形成された
   セメント化粧板であつて、前記上面の凹凸が前記
   ポルトランドセメントと無機質充填材と補強繊維
   とを600〜4000Kg／cm²の圧力をかけて圧縮成型し
   て硬化させるときに凹凸のある版材を上面に型転
   写して形成され、脱型養生後少なくとも上面に樹
   脂液が含浸され、ついで上面に絵付け印刷が施さ
   れたことを特徴とするセメント化粧板。