JPH0144911B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明はスクロール形流体機械の改良に関する
ものである。

〔従来の技術〕

従来のスクロール形圧縮機は、特開昭50−
32512号公報に記載されており、第１図に示すよ
うに、ケーシング１に固定され、鏡板２ａに鉛直
に設けた渦巻状ラツプ２ｂを有する固定スクロー
ルと、鏡板３ａに鉛直に設けた渦巻状ラツプ３ｂ
を有する旋回スクロール３とを、その両ラツプ２
ｂ，３ｂを内側にして位相をずらして組合せ、前
記鏡板３ａの背面とケーシング１との間にオルダ
ムリング４およびキー５からなる自転阻止部材を
設けると共に、旋回スクロール３の中央部に主軸
６に連結されたクランク軸７を軸受８を介して回
転自在に取付け、旋回スクロール３を自転するこ
となく公転するように構成されている。

上記主軸６はケーシング１に軸受９およびシー
ル装置１０を介して回転自在に支持され、かつ原
動機（図示せず）に連結されており、その主軸６
の両端にはバランサ１１ａ，１１ｂがそれぞれ取
付けられている。また前記固定スクロール２の鏡
板２ａの中央部および外周部には吐出口１３およ
び吸込口１２がそれぞれ設けられると共に、その
吸込口１２には潤滑油の噴出孔１４が設けられて
いる。

上記のような従来のスクロール圧縮機では、原
動機により主軸６を回転させると、旋回スクロー
ル３は自転を阻止された状態で固定スクロール２
の中心として旋回する。この旋回により両スクロ
ール２，３のラツプ２ｂ，３ｂ間に形された圧縮
室は連続的に縮小されるため、吸込口１２から吸
込されたガスは圧縮されて吐出口１３より吐出さ
れる。

このように圧縮が行なわれている場合には、固
定スクロール２および旋回スクロール３の各鏡板
２ａと３ａおよびオルダムリング４とキー５は互
いに摺動している。そこで前記摺動を円滑にし、
かつラツプ２ｂ，３ｂ間の半径方向および軸方向
のシールを行なうために、噴出孔１４から潤滑油
を吸込口１２へ噴射し、この潤滑油をガスと共に
前記摺動部およびシール部へ供給する。

また、特開昭53−119412号公報に記載されてい
るように旋回スクロール３を固定スクロール２へ
押圧する力をうるために、旋回スクロールの鏡板
３ａの適宜位置に小孔１６を軸対称に２個所設
け、ガスの圧力が旋回スクロール３の片面側に設
けた背圧室１５へ流入するように構成されてい
る。

〔発明が解決しようとする課題〕

ところが、上記のように旋回スクロール３を固
定スクロール２へ押圧する手段では、起動時のよ
うに十分に圧力がえられない過渡期には、旋回ス
クロール３が固定スクロール２に十分に押圧され
ずに旋回運動するため、両スクロール２，３間の
シールが不充分となり正常な圧縮動作に達するの
に長い時間を要し、また両スクロール２，３間の
軸方向隙間が大きい場合には圧縮動作が行なわれ
ないこともある。

また、米国特許第3600114号明細書に記載され
ているように、自身の吐出圧力とばね圧とを併用
して旋回スクロールを固定スクロールに押付ける
ことが提案されている。

しかし、稼動中は常にばね圧による力が旋回ス
クロールに作用しているため、ばねと旋回スクロ
ールとの間の摺動摩擦による損失が発生する。

本発明の目的は稼動時における摺動摩擦損失が
小さく容易に起動を行なうことができるスクロー
ル流体機械を提供することにある。

〔課題を解決するための手段〕

本発明の上記の目的は、ケーシングにおける旋
回スクロール背面側であつて前記旋回スクロール
の鏡板と対向する位置に開口しているシリンダを
有し、このシリンダの開口が旋回スクロールの鏡
板とケーシングとの間に形成される隙間を介して
背圧室と連通しており、軸方向に摺同自在で、一
方の端面が旋回スクロールの鏡板に接触可能に前
記シリンダ内に収容されたピストンを有し、この
ピストンの他方の端面側を大気圧に連通させると
共に、この大気圧側に背圧室の流体がピストンの
一方の端面に作用する力よりも小さいばね力を有
するばねを設け、前記ピストンの一方の端面には
凹部を有するとともに、この凹部の内外を連通す
る連通孔を有することにより達成される。

〔作 用〕

起動時は背圧室の圧力が低いので、ばねによつ
てピストンは旋回スクロールに向かつて突出す
る。このピストンの突出力によつて旋回スクロー
ルは固定スクロールに押し付けられる。これによ
り、両スクロール間の軸方向シールが保たれて、
起動が行われる。稼動時は、背圧室の圧力が旋回
スクロールを固定スクロールに押し付けるような
値になつているので、この圧力はピストンの一方
の端面に作用し、ばねのばね力に対してピストン
を押し下げる。これにより、起動時を除く稼動中
は、ピストンを旋回スクロールとの間の摺動摩擦
損失は発生しない。

〔実施例〕

以下本発明の一実施例を図面について説明す
る。

第２図および第３図において、１はケーシン
グ、２は鏡板２ａおよびこの鏡板２ａに鉛直に設
けた渦巻状ラツプ２ｂからなる旋回スクロール
で、この固定スクロール２はケーシング１に固定
されている。３は鏡板３ａおよびこの鏡板３ａに
鉛直に設けた渦巻状ラツプ３ｂからなる旋回スク
ロールで、そのラツプ３ｂは固定スクールのラツ
プ２ｂと位相をずらして組合わされている。１５
は旋回スクロール３の背面とスケル１とにより形
成された背圧室、１６は旋回スクロール３の鏡板
３ａの適宜位置に、かつ軸対称に設けられた小孔
で、この小孔１６により両ラツプ２ｂ，３ｂ間の
空間と前記背圧室１５は互いに連通されている。

１７はケーシング１における旋回スクロール３
の背面側に設けられたシリンダで、このシリンダ
１７は通路２０ａ，２０ｂを介して背圧室１５お
よび大気側にそれぞれ連通されている。１８，１
９はシリンダ１７内に収納されたピストンおよび
ピストン付勢用ばね、２１はシリンダ１７に設け
たＯリングである。前記ピストン１８はその頂面
に第４図および第５図に示すような円錐台状の凹
部１８ａが設けられると共に、この凹部１８ａに
連通する貫通孔１８ｂが半径方向に放射状に設け
られている。その他の構造は第１図に示す従来例
と同一であるから図面および説明を省略する。

次に上記のような構成からなる本実施例の作用
について説明する。

起動前には、旋回スクロール３はピストン１８
を介してばね１９の力により固定スクロール２に
押し付けられている。そのばね１９は、起動開始
後に背圧室１５の圧力が旋回スクロール３をさら
に押圧するのに十分な圧力になるまでは、第２図
に示す状態を保持できる程度の力を有するように
設定されている。このように背圧が十分でないと
きには、旋回スクロール３はピストン１８を介し
てばね１９の力により固定スクロール２に押圧さ
れるため、旋回スクロール３の耐摩性の向上およ
び旋回スクロール３のボス部軸受（図示せず）の
寿命を延長させることができる。

その後、背圧室１５の圧力が十分になつたとき
には、ピストン１８はシリンダ１７の背圧（ガス
圧）と大気圧との差圧により、第３図に示すよう
に旋回スクロール３から離脱し、旋回スクロール
３は従来例と同様に背圧により固定クロール２に
圧接される。この際、背圧の一部がピストン１８
の貫通孔１８ｂを経てその凹部１８ａに導入さ
れ、ピストン１８を反旋回スクロール側へ押圧す
るため、ピストン１８が旋回スクロール３から離
脱するのを容易にする。

そして背圧が十分になつたときには、この背圧
によりピストン１８は反旋回スクロール側へより
強力に押圧されるため、ピストン１８は旋回スク
ロール３から迅速に離脱するので、ピストン１８
と旋回スクロール３との摩擦による動力損失を防
止することができる。

またスクロール流体機械では、その潤滑は吐出
圧と各給油部との差圧を利用して行われているた
め、起動時に旋回スクロール３が固定スクロール
２と離れて運転されている時間、換言すれば起動
時の不安定時間が長いときには、各給油部への給
油が遅れるから事故の原因となる恐れがある。と
ころが、本実施例では前記のように起動時には、
旋回スクロール３はピストン１８を介してばね１
９により旋回スクロール３に圧接されているか
ら、各給油部の円滑に行い事故の発生を防止する
ことができる。

〔発明の効果〕

以上説明したように本発明によれば、起動時に
は機械的手段により旋回スクロールを固定スクロ
ールに押圧し、定常時にはガス圧により機械的手
段による押圧を解除して旋回スクロールを固定ス
クロールに押圧するようにしたので、稼動中にお
ける摺動摩擦損失が小さく容易に起動を行うこと
ができるスクロール流体機械を提供することがで
きる。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来のスクロール圧縮機の断面図、第
２図および第３図は本発明に係わるスクロール形
流体機械の一実施例の作動状態を示す要部断面、
第４図および第５図は同実施例のピストンの平面
図および断面図である。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ 鏡板と渦巻状のラツプとを有し、互いにラツ
   プ同士でかみ合つている固定スクロールおよび旋
   回スクロール、旋回スクロールを包囲し、旋回ス
   クロールの背面側に背圧室を形成するように固定
   スクロールに結合されたケーシングおよび旋回ス
   クロールの自転を阻止する自転阻止部材を備え、
   稼動時背圧室に導入される流体圧力によつて旋回
   スクロールを固定スクロールに向つて押付けるス
   クロール形流体機械において、前記ケーシングに
   おける前記旋回スクロール背面側であつて前記旋
   回スクロールの鏡板と対向する位置に開口してい
   るシリンダを有し、このシリンダの開口が旋回ス
   クロールの鏡板とケーシングの間に形成される隙
   間を介して前記背圧と連通しており、軸方向に摺
   動自在で、端面が旋回スクロールの鏡板に接触可
   能に前記シリンダ内に収容されたピストンを有
   し、このピストンの他方の端面側を大気圧に連通
   させると共にこの大気圧に、背圧室の流体がピス
   トンの一方の端面に作用する力よりも小さいばね
   力を有するばねを設け、前記ピストンの一方の端
   面には凹部を有するとともに、この凹部の内外を
   連通する連通孔を有することを特徴とするスクロ
   ール形流体機械。