JPH0143488Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、エンジンに用いられるピストンに関
し、とくにピストンリング部からトツプランド部
にかけての構造に関するものである。

〔従来の技術〕

エンジンに用いられるピストンには、通常複数
個のピストンリングが装着されている。これらピ
ストンリングは、シリンダボアと摺動するため
に、シリンダボアを摩耗させたり、ピストンリン
グ自身も摩耗したりする。とくに、トツプリング
の上死点近傍の位置でシリンダボアの摩耗が著し
くなる傾向にある。これは、燃料中に含まれる添
加物や不純物がエンジンの燃焼室内で燃焼して、
腐蝕性の強い物質となり、この物質がトツプリン
グ上死点位置付近のシリンダボア表面にまで付着
し、シリンダボアとピストンリング間に供給され
ているオイルの潤滑機能を低下させるためと考え
られている。シリンダボアやピストンリングの摩
耗は、オイル消費量の増加やエンジン出力の低下
を招くことになる。

従来、このような摩耗を防止するために、ピス
トンリングやシリダボアの摺動面に特殊な表面処
理を施す方法が知られている。また、先に本出願
人により、ピストンリングの上側にシリンダボア
と接触する断面略半円形の微粒子破砕用ピストン
リングを設けたり（実開昭58−86451号）、デイー
ゼルエンジンのピストンにおいてピストンリング
の上側に断面Ｌ字状の微粒子阻止リングを設けた
り（特開昭58−144656号）する構造が提案されて
いる。

〔考案が解決しようとする問題点〕

しかし、ピストンリングやシリンダボア表面に
特殊な表面処理を施す方法では、効果が十分でな
かつたり、高価になつたりするという問題があ
る。

また、従来のピストンリングの上部にさらにリ
ングを設ける方法では、そのリングをシリンダボ
ア面に接触させていたので（実開昭58−86451
号）、摺動抵抗が増える分エンジンの効率にとつ
て不利になるおそれがあつた。さらに断面Ｌ字状
のリングを設ける方法（特開昭58−144656号）に
おいては、所定の性能を発揮するためには、寸法
精度が厳しく要求されるという問題が残されてい
た。

本考案は、本質的に摺動抵抗を増加させず、か
つ簡単な構造で、腐蝕性物質がトツプリング付近
に侵入しないようにし、シリンダボアやピストン
リングの摩耗を防止することを目的とする。

〔問題点を解決するための手段〕

この目的を達成するために、本考案のエンジン
用ピストンにおいては、ピストンのトツプランド
部に、ピストン円周方向全周にわたつて延びる従
来のピストンリング溝とは別の環状溝が形成さ
れ、この環状溝に、シリンダボア径よりも小なる
外径で縦断面形状が単に板状のガスコントロール
リングが装着されている。

〔作用〕

このようなエンジン用ピストンにおいては、ガ
スコントロールリングの外径がシリンダボア径よ
りも小であるため、ガスコントロールリングはシ
リンダボア面に接触しないかあるいは接触しても
ピストンリングよりははるかに小さい面圧に抑え
られ、ピストンの摺動抵抗は実質的に増大しな
い。そして、ガスコントロールリングとシリンダ
ボアとのクリアランスは小に保たれるので、この
間からトツプリング側へ腐蝕性物質が侵入しにく
くなり、侵入が抑えられることによつてピストン
リングとシリンダボアの摩耗が抑制される。この
ガスコントロールリングとシリンダボアとの間に
は、腐蝕性物質が侵入する可能性はあるが、前述
のようにこの間には本質的に接触面圧がないた
め、この間では摩耗は生じない。

このような摩耗防止が、単に縦断面板状のリン
グを設けるだけの簡単な構造で実現され、安価な
実施が可能となる。

〔実施例〕

以下に本考案のエンジン用ピストンの望ましい
実施例を図面を参照して説明する。

第１図および第２図は、本考案の第１実施例に
係るエンジン用ピストンを示している。図中、１
はピストン全体、２はシリンダボア、３はシリン
ダブロツク、４はシリンダヘツド、５は燃焼室を
示している。

ピストン１には、トツプリング６、セカンドリ
ング７のピストンリングと、オイルリング８がそ
れぞれ装着され、これらの外周面がシリンダボア
２に接触されている。ここまでの構造は、第３図
に示す従来の構造と同じである。したがつて、第
３図に比較のために示した従来のピストン構造に
は、各部材に上述と同一の符号を付してある。

本考案においては、ピストン１のトツプランド
部９に、ピストンリングとは別のガスコントロー
ルリング１０が設けられている。トツプランド部
９には、ピストン円周方向全周にわたつて延びる
ピストンリング溝とは別の環状溝１１が形成さ
れ、この環状溝１１にガスコントロールリング１
０が装着されている。ガスコントロールリング１
０は、その外径がシリンダボア径より小に形成さ
れ、ガスコントロールリング１０の軸心とピスト
ンの軸心が同一位置の場合には、ガスコントロー
ルリング１０の外周とシリンダボア２面との間に
は小さな隙間が形成される。このガスコントロー
ルリング１０は、縦断面形状が単なる板状に形成
されている。

上記のように構成されたエンジン用ピストンの
作用につい以下に説明する。

ガスコントロールリング１０の外径が、シリン
ダボア径よりも小とされているので、この間には
隙間が形成されるが、ガスコントロールリング１
０の外径を適切に設定することにより、この間に
実質的に面圧が発生させることなく隙間を極小に
することができる。

燃焼室５の中で燃焼した混合気の中には、腐蝕
性物質が含まれるが、ガスコントロールリング１
０とシリンダボア２との間の隙間が小さいため、
トツプリング６とシリンダボア２との間にこの腐
蝕性物質が侵入する可能性は極めて小さくなる。
このため、従来シリンダボア２とトツプリング６
との間で生じていた腐蝕性物質による摩耗が防止
される。ガスコントロールリング１０とシリンダ
ボア２間には、腐蝕性物質が侵入する可能性はあ
るが、ガスコントロールリング１０は単なる断面
板状の部材でシリンダボア２方向に張力を有して
おらず、かつこの間には通常状態で隙間が形成さ
れており、接触しないか又は接触してもシリンダ
ボア２との間の面圧はピストンリングに比べ極小
に保たれるので、この間で腐蝕性物質による摩耗
は本質的に生じない。

また、接触面圧がほとんどないことから、ガス
コントロールリング１０を設けても、ピストンの
摺動抵抗は実質的に増加しない。

つぎに第４図に本考案の第２実施例を示す。本
実施例においては、前記第１実施例に比べ、ピス
トン１２からセカンドリングが省略され、トツプ
リング１３、オイルリング１４、ガスコントロー
ルリング１５が装着されている。このように、ガ
スコントロールリング１５を設けると、ガスコン
トロールリング１５が燃焼室に対するシールにつ
いてピストンリングに似た作用をなすので、セカ
ンドリングを設けなくともすむ場合がある。本実
施例の場合は、シリンダボア２とトツプリング１
３との間の摩耗が減少するだけでなく、セカンド
リングによる摺動抵抗が減少する分だけ、エンジ
ンの効率が向上するという利点が生じる。その他
の構成、作用は第１実施例に準じる。

なお、第１、第２実施例においては、ガスコン
トロールリングとシリンダボアとの接触面圧がほ
とんどない場合を示したが、従来のトツプリング
の接触面圧よりもはるかに小さい接触面圧を持つ
たガスコントロールリングの場合でも、ほぼ同様
の機能が得られる。

〔考案の効果〕

したがつて、本考案によるときは、トツプラン
ド部に簡単な構造のガスコントロールリングを設
けることにより、トツプリングとシリンダボアと
の間の摩耗をピストンの摺動抵抗を増大させるこ
となく容易にかつ大幅に減少させることができ、
エンジンの性能を維持して、エンジンの寿命、耐
久性を大きく改善することができるという効果が
得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例に係るエンジン用
ピストンまわりの縦断面図、第２図は第１図のピ
ストンの部分拡大縦断面図、第３図は従来のピス
トンの部分縦断面図、第４図は本考案の第２実施
例に係るエンジン用ピストンの部分縦断面図、で
ある。 １，１２……ピストン、２……シリンダボア、
５……燃焼室、６，１３……トツプリング、７…
…セカンドリング、９……トツプランド部、１
０，１５……ガスコントロールリング、１１……
環状溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ピストンのトツプランド部に、ピストン円周方
   向全周にわたつて延びるピストンリング溝とは別
   の環状溝を形成し、該環状溝に、シリンダボア径
   よりも小なる外径で縦断面形状が板状のガスコン
   トロールリングを装着したことを特徴とするエン
   ジン用ピストン。