JPH0134658Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、主燃焼室に連通する副燃焼室内に主
燃焼室からの押し上げ流によつて渦流を発生し
て、副燃焼室内での着火燃焼を促進させるように
した渦流式のデイーゼル機関に関するものであ
る。

〔従来の技術及び考案が解決しようとする課題〕

この種の渦流式デイーゼル機関においては、副
燃焼室内に主燃焼室からの押し上げ流によつて強
い渦流が形成されるため、渦室式の副燃焼室を持
たない直接噴射式に比べて、燃料と空気の混合が
良く空気過剰率を低減できると共に、渦流の強さ
は機関の回転数に略比例するため、回転を高めて
も混合気形成の時間遅れがなく、燃焼が短時間に
完了して高速回転が可能である特徴を有すること
が良く知られている。

しかし、この種の渦流式デイーゼル機関におい
て副燃焼室内に強い渦流が得られるのは、機関が
完全に始動した後であり、機関が完全に始動する
までは副燃焼室内の渦流はきわめて弱いから、始
動時において燃料噴射弁から副燃焼室内に噴出し
た燃料は副燃焼室を突つ切つて反対側の内壁面に
吹き当たり、大部分の燃料が内壁面に付着したま
まの状態になり、空気との混合が著しく悪いと共
に、この付着した燃料によつて副燃焼室の温度上
昇が遅れることになるので、着火燃焼が著しく低
下して、白煙を発生するばかりか、始動性が悪い
のである。

そこで先行技術としての実開昭54−97504号公
報は、副燃焼室内への連通孔の開口部の近傍で且
つ燃料噴射弁と反対側の位置に、副燃焼室の内壁
面を凹ませた凹所を設け、該凹所に噴射燃料を溜
めた後、この燃料を連通孔からの押し上げ流に乗
せるようにすることを提案しているが、このよう
に噴射燃料を副燃焼室内に凹み形成した凹所に溜
めることは、それだけ副燃焼室の内壁面の温度上
昇が遅くなると共に、凹所に溜つた燃料を細かく
霧化して押し上げ流に乗せることが出来ないか
ら、白煙の低減及び始動性の向上の効果が低いの
であり、しかも、先行技術の凹所は、副燃焼室の
内壁面への開口内径が大きいので、副燃焼室にお
ける渦流を阻害するのであつた。

本考案は、この不具合を解消するものである。

〔課題を解決するための手段〕

この目的を達成するため本考案は、副燃焼室と
主燃焼室とを、主燃焼室からの押し上げ流によつ
て副燃焼室内に渦流を生ずるように連通孔を介し
て連通し、且つ副燃焼室内に燃料噴射弁をのぞま
せて成る渦流式デイーゼル機関において、前記副
燃焼室における内壁面のうち前記燃料噴射弁から
の噴射燃料が当たる箇所に、副燃焼室の内壁面に
対する開口内径を小さくすると共に、奥を半球形
面とし、更に、該半球形面から前記開口までの間
における内周面を前記燃料噴射弁の軸線に対して
緩やかな傾斜角度のテーパ面に形成して成るはね
返し用凹所を、凹み形成する構成にした。

〔考案の作用・効果〕

このように構成すると、燃料噴射弁からの噴射
燃料は、凹所の奥における半球形面に当たり、当
該半球形面から、緩やかな傾斜角度のテーパ状内
周面に沿つて前記燃料噴射弁の方向にはね返るこ
とになるから、機関の始動に際して副燃焼室の内
壁面に付着する燃料の量を少なくできる一方、は
ね返つた燃料は微細化して、空気と良く混合する
のである。

従つて本考案によると、機関の始動時におい
て、噴射燃料が副燃焼室の内壁面に付着するのを
低減できて、副燃焼室の内壁面の温度上昇を遅ら
せることがない一方、噴射燃料と空気との混合を
良くすることができるから、機関の始動時におけ
る白煙を確実に低減できると共に、機関の始動性
を著しく向上できるのである。

しかも、本考案は、前記凹所における副燃焼室
の内壁面に対する開口内径を小径にしたことによ
り、副燃焼室内における空気の渦流を、当該凹所
によつて阻害することを回避できるのである。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を図面について説明する
と、図において符号１はシリンダブロツクを、符
号２はシリンダヘツドを、符号３は前記シリンダ
ブロツク１におけるシリンダボア４内を往復動す
るピストンを、符号５は前記シリンダヘツド２内
に形成した略球形状の副燃焼室を、そして、符号
６は前記副燃焼室５を形成するためにシリンダヘ
ツド２にインサートしたチヤンバーインサートを
各々示す。

前記副燃焼室５と主燃焼室７とは、副燃焼室５
に対して接線方向に穿設した連通孔８を介して互
いに連通しており、該連通孔８から主燃焼室７に
向かう燃焼ガスは、ピストン３の頂面又はシリン
ダヘツド２の下面に凹み形成したキヤビテイー９
内に噴出するようになつている。

そして、符号１０は、前記副燃焼室５内に対す
る燃料噴射弁を示し、該燃料噴射弁１０は、その
軸線１１、つまり燃料の噴射方向が副燃焼室５内
における矢印１２で示す渦流に対して、当該渦流
と同方向で、且つ、略接線方向に向かうように設
けられており、この燃料噴射弁１０の軸線１１が
当該燃料噴射弁１０と反対側において、副燃焼室
５の内壁面と交わる箇所、つまり、燃料噴射弁１
０からの噴射燃料が副燃焼室５の内壁面に吹き当
たる箇所には、はね返し用の凹所１３を凹み形成
する。

このはね返し用凹所１３における副燃焼室５の
内壁面に対する開口内径を小さくすると共に、該
凹所１３における奥を半球形面１４とし、更に、
該半球形面１４から前記開口までの間における内
周面１３ａを、前記燃料噴射弁１０の軸線１１に
対して緩やかな傾斜角度のテーパ面に形成する。

但し、符号１５はグロープラグを示す。

このようにすると、機関の始動後において副燃
焼室５内に矢印１２で示すように、強い渦流が発
生しているときには、燃料噴射弁１０から強い渦
流に対して渦流と同方向で且つ接線方向に噴射さ
れた燃料は、この強い渦流を横断することなく、
強い渦流に乗つて空気と良く混合されることにな
り、この場合、燃料噴射弁１０と反対側に設けた
はね返し用凹所１３は、その副燃焼室５内への開
口内径を小径にしたことにより、当該凹所１３に
よつて副燃焼室５内の渦流を阻害することは殆ど
ない。

しかし、機関の始動時において副燃焼室５内の
渦流が弱いときには、燃料噴射弁１０からの噴射
燃料は、副燃焼室内の渦流を横断して、燃料噴射
弁１０と反対側の内壁面に設けたはね返し用凹所
１３の奥における半球形面１４に当たり、当該半
球形面１４から、緩やかな傾斜角度のテーパ状内
周面１３ａに沿つて前記燃料噴射弁１０の方向
に、矢印１６で示すように、はね返ることになる
のである。

なお、この場合、はね返し用凹所１３は、これ
に燃料噴射弁１０からの噴射燃料のうち約80％程
度が入るように設定することが好ましい。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施例を示す機関要部の縦断正
面図である。 １……シリンダブロツク、２……シリンダヘツ
ド、３……ピストン、５……副燃焼室、７……主
燃焼室、８……連通孔、１０……燃料噴射弁、１
３……はね返し用凹所、１４……半球形面、１３
ａ……内周面。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 副燃焼室と主燃焼室とを、主燃焼室からの押し
   上げ流によつて副燃焼室内に渦流を生ずるように
   連通孔を介して連通し、且つ副燃焼室内に燃料噴
   射弁をのぞませて成る渦流式デイーゼル機関にお
   いて、前記副燃焼室における内壁面のうち前記燃
   料噴射弁からの噴射燃料が当たる箇所に、副燃焼
   室の内壁面に対する開口内径を小さくすると共
   に、奥を半球形面とし、更に、当該半球形面から
   前記開口までの間における内周面を前記燃料噴射
   弁の軸線に対して緩やかな傾斜角度のテーパ面に
   形成して成るはね返し用凹所を、凹み形成したこ
   とを特徴とする渦流式デイーゼル機関。