JPH0133806Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 産業上の利用分野 本考案は、内燃機関のシリンダブロツク構造に
関し、とくにウオータジヤケツト外壁をシリンダ
ブロツク本体とは別体の鋼、アルミ、樹脂等の薄
板から構成したシリンダブロツクの構造に関する
ものである。

従来技術 従来から、エンジンの軽量化、低コスト化のた
めウオータジヤケツト外壁をシリンダブロツク本
体とは別体の薄板（たとえば鋼板）から構成した
シリンダブロツクの構造が提案されている（たと
えば実開昭57−31549号）。この別体のウオータジ
ヤケツト外壁は、シリンダボア外壁周囲に、ウオ
ータジヤケツトを形成するためにシリンダボア外
壁と間隔をあけて支持される必要があるが、通常
冷却水のシール効果とともに制振、防音効果をも
たせるために、その上下部が弾性体を介して支持
される。

ところが、シリンダボア外壁を囲む部分は凹凸
の多い部分であり、かつ弾性体の支持およびシー
ル構造を確保するためのスペースが限られている
ので、シール性を確保しつつ、生産性の向上、小
形化をはかることは困難であつた。

また、ウオータジヤケツト外壁は、シリンダブ
ロツク本体とは別部材として弾性体により浮動支
持されるので、ウオータジヤケツト内部の冷却水
の水圧等による外力によつて変形しやすく、変形
の程度によつては弾性体支持部のシール性が十分
に確保されないおそれがあつた。シール性が不十
分であると、軽量化、低コスト化等の利点はある
ものの、結局薄板ウオータジヤケツト外壁構造が
採用できないおそれがあつた。

考案の目的 本考案は、上記のような問題を解消するため
に、生産性がよくしかもコンパクトな手段によ
り、冷却水水圧等の外力によるウオータジヤケツ
ト外壁の変形を抑制し、シール部の信頼性を向上
することを目的とする。

考案の構成 この目的に沿う本考案のシリンダブロツク構造
は、ウオータジヤケツト外壁をシリンダブロツク
本体とは別体の薄板から構成し、このウオータジ
ヤケツト外壁を弾性体を介して支持したエンジン
において、ウオータジヤケツト外壁に沿つて上下
方向に長く延びるヘツドボルトを設け、ヘツドボ
ルトにナツトを螺合させてナツトによりバツクア
ツプ部材を介して弾性体をシール面に押圧し、ヘ
ツドボルトとウオータジヤケツト外壁との間に、
ヘツドボルトに支持されウオータジヤケツト外壁
に当接する支持部材を介装したものから成つてい
る。この支持部材は、制振作用のある弾性体から
構成されることが望ましく、かつ容易に介装され
る簡単な構造のものが望ましい。

考案の作用 このようなシリンダブロツク構造においては、
シリンダヘツドをシリンダブロツク本体に締結す
るヘツドボルトが長く延ばされ、ヘツドボルトに
螺合されたナツトによりバツクアツプ部材を介し
て弾性体がシール面に押圧される。そして、ウオ
ータジヤケツト外壁に当接された支持部材は、剛
性の高いヘツドボルトによつて支持されるので、
ウオータジヤケツト外壁の冷却水水圧による変形
は支持部材を介してヘツドボルトによつて抑えら
れる。支持部材による支持部の変形が抑えられる
と、ウオータジヤケツト全体の変形、すなわち弾
性体支持部の変形も抑えられるので、弾性体によ
る浮動支持性能とともにシール性能の低下が防止
される。

また、弾性体押圧とともに支持部材の支持にヘ
ツドボルトを利用したので、変形防止のためには
支持部材以外にとくに部品が必要なく、コンパク
トな構造にまとめられる。

考案の効果 したがつて、ウオータジヤケツト外壁の変形が
適切にかつ十分に抑えられるので、弾性体支持部
のシール性の信頼性を十分に向上することができ
る。

また、ヘツドボルトを利用してウオータジヤケ
ツト外壁の変形を防止するようにしたので、コン
パクトな構造にまとめることができ、狭いスペー
ス内でも容易に納めることができる。

さらに、変形防止用の支持部材は、単にヘツド
ボルトに支持されウオータジヤケツト外壁に当接
されるだけでその効果を発揮できるので、簡単な
構造のものでよく、容易に生産性のよい形状をと
ることができ、シールおよび支持構造全体として
もスペース的にコンパクトな構造にまとめること
ができるとともにコストダウンをはかることがで
きる。

実施例 以下に本考案のシリンダブロツク構造の望まし
い実施例を図面を参照して説明する。

第１図および第２図は、本考案の第１実施例に
係るシリンダブロツク構造を示している。図にお
いて、１はシリンダブロツク本体、２はシリンダ
ヘツドを示している。シリンダブロツク本体１の
シリンダボア外壁３の周囲には、シリンダボア外
壁３と間隔をもたせて、シリンダボア外壁３に沿
う形状の環状のウオータジヤケツト外壁４が設け
られ、この間にウオータジヤケツト５が形成され
ている。

ウオータジヤケツト外壁４は、薄板構造に構成
されている。ウオータジヤケツト外壁４の材質
は、本実施例では鋼板から成つているが、薄板の
アルミ、アルミ合金、強化アルミ、樹脂、繊維強
化樹脂等であつてもよく、とくに材質は限定され
ない。

ウオータジヤケツト外壁４は、その上下端部が
弾性体６，７を介して、シリンダヘツド下面２ａ
およびシリンダブロツク本体１の上面１ａにそれ
ぞれ支持されている。ウオータジヤケツト外壁４
のシリンダヘツド側の上端部４ａは、Ｌ字状に折
り曲げられており、折り曲げ部４ａを内部に挾み
込むように弾性体６が設けられている。この折り
曲げ部４ａと弾性体６とは、接着剤で接着されて
いてもよい。下端部４ｂは、上下方向に延びたま
ま弾性体７に挾み込まれている。この下端部４ｂ
と弾性体７とは、接着されていてもよいが、フリ
ー状態すなわち弾性体７に対しウオータジヤケツ
ト外壁４が密着を保ちながら上下にスライドでき
る構造であつてもよい。

弾性体６は、上部バツクアツプ部材８によつ
て、シリンダヘツド下面２ａに直接押しつけら
れ、弾性体７は、下部バツクアツプ部材９によつ
てシリンダヘツド本体上面１ａに押しつけられて
いる。バツクアツプ部材７，８は、互に接合され
た、弾性体６，７を直接押圧する断面Ｌ字状の部
材１０，１１と、Ｌ字状部材１０，１１を外側か
ら押圧する断面Ｌ字状の部材１２，１３と、から
成つている。

シリンダヘツド２には、シリンダヘツド２をシ
リンダブロツク本体１側に締結するヘツドボルト
１４が挿通されている。ヘツドボルト１４は、シ
リンダヘツド下面２ａからシリンダブロツク本体
上面１ａへと延び、さらに延びてシリンダブロツ
ク本体１のねじ穴１５にねじ込まれて固定されて
いる。

ヘツドボルト１４の途中の位置でバツクアツプ
部材８，９に対応する位置は、ねじ加工されてお
り、それぞれのねじ部にナツト１６，１７が螺合
されている。ナツト１６，１７は、その締めつけ
により、バツクアツプ部材８のＬ字状部材１２の
下面、バツクアツプ部材９のＬ字状部材１３の上
面をそれぞれ押しつけるように位置している。し
たがつて、弾性体６，７は、ナツト１６，１７の
締めつけにより、バツクアツプ部材８，９を介し
て、それぞれシリンダヘツド下面２ａ、シリンダ
ブロツク本体上面１ａに押圧される。

ウオータジヤケツト外壁４に沿つて上下方向に
延びるヘツドボルト１４と、ウオータジヤケツト
外壁４との間には、支持部材１８が介装されてい
る。支持部材１８は、とくに材質は限定されない
が、本実施例では弾性体から成つており、制振作
用を有するものが好ましい。支持部材１８は、第
３図に示すように、ヘツドボルト１４に支持さ
れ、ウオータジヤケツト外壁４に当接されてい
る。また、支持部材１８は、ヘツドボルト１４と
ウオータジヤケツト外壁４間の隙間に外部から容
易に介装され、第３図に示す形状の支持部材１８
にあつては、支持部材１８自体の弾性あるいは薄
板から成るウオータジヤケツト外壁４の外側へ向
けての弾性によつて、ヘツドボルト１４との間に
支持される。

上記のように構成されたシリンダブロツク構造
においては、ナツト１６および１７を締めつけて
いくことにより、バツクアツプ部材８、バツクア
ツプ部材９を介して、弾性体６、弾性体７がシリ
ンダヘツド下面２ａ、シリンダブロツク本体上面
１ａに押しつけられ、ウオータジヤケツト外壁４
の上下部がそれぞれシールされるとともに浮動支
持される。

このウオータジヤケツト外壁４には、主として
ウオータジヤケツト５内を循環される冷却水の水
圧によつて、外側に張り出すように変形を与える
外力が加わる。しかし、ウオータジヤケツト外壁
４は、その上下方向中央部で、剛性の高いヘツド
ボルト１４に支持された支持部材１８により外側
から拘束されているので、その部分の変形が抑え
られる。中央部の変形が抑えられると、ウオータ
ジヤケツト外壁４はその構造上全体の変形が抑え
られることになり、弾性体６，７支持部の変形も
抑えられる。したがつて、弾性体６，７の所定の
圧縮率による、ウオータジヤケツト外壁４の所定
の浮動支持性能と、シール面２ａ，１ａへの均一
なシール圧が維持され、所定の制振、防音性能お
よびシール性能が確保される。

また、支持部材１８を弾性体から構成すれば、
その支持部においても浮動支持されることになる
ので、一層制振、防音性能が向上される。

さらに、このウオータジヤケツト外壁４の変形
防止においては、ヘツドボルト１４が利用される
とともに、単にウオータジヤケツト外壁４との間
に簡単な形状の支持部材１８を介装するだけで達
成されるので、機構全体が狭いスペース内に容易
にコンパクトにまとめられる。

つぎに、第４図に本考案の第２実施例に係るシ
リンダブロツク構造の支持部材介装部を示す。本
実施例においては、支持部材１９の平面形状を扇
形とし、ウオータジヤケツト外壁４の外壁面が円
弧形状に形成されている。

このような形状とすることにより、支持部材１
９は、その内周面１９ａをヘツドボルト１４に当
てながら、回転させるだけで容易に所定の位置に
介装され固定される。そして、取付後は、ウオー
タジヤケツト外壁４の弾性、あるいは支持部材１
９を弾性体から構成する場合にはそれ自身の弾性
によつて、容易に脱落が防止され、しかも支持部
材１９自体の脱着が容易化されて組付性も向上さ
れる。その他の構成、作用は第１実施例に準じ
る。

つぎに、第５図ないし第７図に本考案の第３実
施例に係るシリンダブロツク構造を示す。本実施
例においては、支持部材２０がウオータジヤケツ
ト外壁４の上下方向に長い範囲にかつ広い範囲に
わたつて当接されている。支持部材２０は、上部
断面は第６図に示すように第２実施例に示したと
同様の形状に形成されており、下部断面は、第７
図に示すように、ナツト１７外形形状に対応する
切り込み２１が設けられた形状に形成されてい
る。

このような構造においては、ウオータジヤケツ
ト外壁４が広い範囲にわたつて支持部材２０に拘
束されるので、より確実に変形が防止され、弾性
体６，７支持部のシール性能は一層向上される。
また、切り込み２１をナツト１７にはめ込むこと
により、確実に支持部材２０の回転が防止され、
エンジン振動が激しいような場合であつても、支
持部材２０は所定の位置に容易に維持される。

以上の実施例の説明からも明らかなように、本
考案によるときは、狭いスペース内に容易に納め
られる簡単な機構でウオータジヤケツト外壁の変
形を防止することができ、ウオータジヤケツト外
壁の弾性体支持による良好な制振、防音性能を維
持することができるとともに、そのシールの信頼
性を向上することができるという効果が得られ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の第１実施例に係るシリンダブ
ロツク構造の分解斜視図、第２図は第１図の装置
のウオータジヤケツト外壁廻りの拡大縦断面図、
第３図は第２図の−線に沿う部分断面図、第
４図は本考案の第２実施例に係るシリンダブロツ
ク構造のウオータジヤケツト外壁廻りの縦断面
図、第５図は本考案の第３実施例に係るシリンダ
ブロツク構造のウオータジヤケツト外壁廻りの縦
断面図、第６図は第５図の−線に沿う部分断
面図、第７図は第５図の−線に沿う部分断面
図、である。 １……シリンダブロツク本体、１ａ……シール
面としてのシリンダブロツク本体上面、２……シ
リンダヘツド、２ａ……シール面としてのシリン
ダヘツド下面、３……シリンダボア外壁、４……
ウオータジヤケツト外壁、５……ウオータジヤケ
ツト、６，７……弾性体、８，９……バツクアツ
プ部材、１４……ヘツドボルト、１６，１７……
ナツト、１８，１９，２０……支持部材。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. ウオータジヤケツト外壁をシリンダブロツク本
   体とは別体の薄板から構成し、該ウオータジヤケ
   ツト外壁を弾性体を介して支持したエンジンにお
   いて、前記ウオータジヤケツト外壁に沿つて上下
   方向に延びるヘツドボルトを設けるとともに、該
   ヘツドボルトに螺合したナツトにより前記ウオー
   タジヤケツト外壁を支持する弾性体をバツクアツ
   プ部材を介してシール面に押圧し、前記ヘツドボ
   ルトとウオータジヤケツト外壁との間に、ヘツド
   ボルトに支持されウオータジヤケツト外壁に当接
   する支持部材を介装したことを特徴とするシリン
   ダブロツク構造。