JPH0133610B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は、山止壁にアンカー部材挿入孔を設
け、このアンカー部材を山止壁の背面土中に定着
して山止壁を支持するアースアンカーにおいて、
該挿入孔とアンカー部材との空隙を封止して砂留
と止水を図るアンカー挿入孔の封止構造に関す
る。

従来、地下構造物を構築する為の掘削におい
て、山止壁の背面土中にPC鋼線やPC鋼棒からな
るアンカー部材を定着させて山止壁を支持する、
所謂アースアンカー工法が用いられている。

この工法によれば、土圧から山止壁を支持する
のに切梁を必要としない為、掘削空間を広く確保
することが出来るので、掘削空間内に大型機械の
搬入が可能となり、工事の省力化や工期の短縮が
図られる。しかも山止壁にはプレストレスが与え
られるので周辺地盤の変位が少ないなどの利点に
よつて多く採用されている。

しかし、アンカー部材を挿入する挿入孔を山止
壁に設けるため、この挿入孔から流砂や流水が掘
削空間内へ流出することがある。特に山止壁の背
面が地下水を含有する砂、砂礫又は玉石地盤等の
場合は、流砂や流水の量も多く掘削空間内での施
工に支障をきたしたり、またガス、水道管等地下
埋設物の破損及び建造物自体の不同沈下等を招い
ていた。その為、従来は挿入孔から薬液を注入
し、この薬液によつて山止壁の背面地盤を固化さ
せたり、またウエルポイント工法によつて地下水
位を低下させていた。

しかし、これらの方法でも前者は地下水が流水
中は施工が出来ず、また多量に薬液を注入すると
薬害における周辺地盤の汚染など別途の支障が生
じる。

又後者は、礫層に直接適用出来ず、更に掘削近
辺の地下水位をも低下させる結果となり、地盤沈
下を招くことがある。

以上従来工法の利点及び欠点を考慮し、本発明
はアンカー挿入孔に於ける砂留と止水の効果を完
全に図る封止構造を提供するものである。

以下、図面に基づき本発明の封止構造を詳細に
説明する。

第１図ａ，ｂは本発明に係る山止壁アンカー挿
入孔の封止構造を説明する縦断面概略図である。

第１図ａは、山止壁として鋼矢板１を用い、こ
の鋼矢板１に挿入孔１１を穿設し、該挿入孔１１
の前面に封止板２を設置して封止板２に設けられ
た封止片２１，２１…を鋼矢板１の背面方向に押
し拡げてケーシングパイプ３を挿入したものであ
る。

一方第１図ｂは、ケーシングパイプ３を介して
PC鋼線やPC鋼棒からなるアンカー部材４を挿入
し、グラウテイングモルタル５を注入して土中Ｇ
に定着した状態を示すものである。

すなわち第１図ａに於いて、ケーシングパイプ
３を挿入すると封止片２１，２１…が鋼矢板１の
背面方向に押し拡げられる。封止板２は弾性材に
よつて構成されているので、その弾性力により封
止片２１，２１…はケーシングパイプ３の外周に
密接した状態になる。

よつて鋼矢板１の挿入孔１１がケーシングパイ
プ３の挿入角度を考慮して鉛直方向に対し長楕円
形状となつていても、挿入孔１１とケーシングパ
イプ３間の空隙は封止片２１，２１…により完全
に封止された状態になる。

第２図は、本発明のアンカー挿入孔の封止構造
に用いられる封止板２の斜視図である。

この封止板２は、弾性に富む基板の略中央Ｏか
ら放射状に切込みを入れ、封止片２１，２１…を
形成したものである。

封止片２１，２１…は、第１図で示したように
ケーシングパイプ３を挿入した際に鋼矢板１の背
面方向に屈曲してケーシングパイプ３の外周にむ
らなく当接するものである。

封止板２を補強しかつその封止効果を完全に為
さしめる為に、支板２２と補充板２５が設けられ
る。

支板２２は封止板２の基板よりも剛性の大きい
板材、例えば鋼板や合成樹脂板等が用いられ、こ
のほぼ中央に山止壁の挿入孔１１の径と略等しい
孔径の孔２３が設けられる。又、支板２２の外周
四辺には枠材２４が配設されて支板２２の補強効
果を大きくしている。補充板２５は封止板２の基
板と同質の、例えばネオプレンゴム等の弾性板材
からなり、そのほぼ中央には支板２２の孔２３よ
り小さい孔２６が設けられている。

すなわち封止板２は支板２２の一面においてそ
の枠材２４内に収納された状態で配設され、一方
支板２２の他面は補充板２５が添設されて、所謂
サンドウイツチ構造を為している。

上記した封止板２と支板２２及び補充板２５を
用いた封止構造の施工を更に詳しく説明する。

先ず第３図で示す様に地下構造物の構築位置外
周に、ハンマー打撃やジヤツキ圧入により鋼矢板
１を打ち込む。次いで鋼矢板１に囲撓された内部
地山を所定深さまで掘削する。

掘削された空間内において、アースアンカーの
頭部を固着する鋼矢板１の内面近傍に、ガイド片
１２，１２を溶接等の手段により固定する。

ガイド片１２，１２は、断面略Ｌ字状の棒体か
らなり、鋼矢板１の内面とガイド片１２，１２の
一片とでガイド溝１３，１３を形成する。次いで
このガイド溝１３，１３のほぼ中央をドリル等に
より穿孔して挿入孔１１を設ける。挿入孔１１は
ケーシングパイプ３やアンカー部材４を鋼矢板１
に対して上方斜め方向から挿入する為、その挿入
角度を考慮して鉛直方向に対して長径を有する長
楕円形となつている。しかもその長、短径はケー
シングパイプ３やアンカー部材４を挿入出来るに
十分な大きさのものである。

次いで第４図で示すように、封止板２と補充板
２５の間に支板２２を挾んで一体的に構成し、こ
れを上記ガイド溝１３，１３に装着する。これに
より、前記封止片２の切込中心と、支板の孔２２
と補充板の孔２６とが夫々整合した状態になる。

尚、封止板２と支板２２及び補充板２５を一体
的に構成したものを用いる場合は、第５図の平断
面及び第６図の正面図で示す様に、支板２２の枠
材２４内に封止板２を収納して鋼矢板１の内面側
に装着する。斯かる状態に於いてケーシングパイ
プ３の先端で封止板２の封止片２１，２１…を開
口し、ケーシングパイプ３を鋼矢板１の背面土中
Ｇに当接させる。そしてこのケーシングパイプ３
内にボーリングマシーン（図示せず）を挿入して
所定のアンカー深さまで土中Ｇを削孔しつつ排土
する。この時第１図で示す様に、ケーシングパイ
プ３の外周面には封止板２の封止片２１，２１…
が屈曲した状態でケーシングパイプ３の外周に接
している。

封止片２１，２１…は、屈曲状態から基板の弾
性力により元に戻ろうとする為ケーシングパイプ
３の外周に密着した状態となる。これにより挿入
孔１１は封止されて、土中Ｇからの流水や流砂が
遮断される構造となる。

又封止板２には支板２２が配設されているの
で、土圧や水圧にも対処出来る構造となつてお
り、かつ又ケーシングパイプ３の外周に補充板２
５の孔２６の内周が弾接するので封止効果が極め
て高いものとなる。

削孔が所定のアンカー深さまで到達すると第１
図ｂで示すようにケーシングパイプ３内にPC鋼
線やPC鋼棒からなるアンカー部材４を挿入する。
そしてケーシングパイプ３を介して所定の定着長
に亘つてグラウトモルタル５を注入してケーシン
グパイプ３を引抜く。ケーシングパイプ３が引抜
かれる際に、封止板２の封止片２１，２１…が鋼
矢板１の内面側に引寄せられるが、支板２２と補
充板２５によつて内面側に捲くり返されることは
阻止される。

またケーシングパイプ３を引抜いた直後に、挿
入孔１１とアンカー部材４の周りに瞬結性モルタ
ル６を充填して封止効果を維持することも出来
る。

グラウトモルタル５が硬化して所定の強度にな
つた時点でジヤツキ等を介してアンカー部材４に
プレストレスを導入する。この時鋼矢板１の内面
にはブラケツト、腹起等を介してナツトや楔によ
るアンカー部材４の頭部定着を行なう。

以上の様な山止壁アンカー挿入孔の封止構造
は、簡単な構造及び施工によつて流砂や流水を封
止することが出来るのでアースアンカー工法にお
いて大幅な工期の短縮とコストダウンが達成出来
る。

更に又、周囲地盤への影響が殆ど無い為、アー
スアンカー工法の利点を最大限に活用出来るもの
である。

【図面の簡単な説明】

第１図ａ，ｂは、本発明に係るアンカー挿入孔
の封止構造とその施工を説明する為の概略縦断面
図、第２図は、封止構造に用いられる封止板と支
板及び補充板の斜視図、第３図は、鋼矢板にガイ
ド片を取付け、挿入孔を設けた状態を説明する斜
視図、第４図は、封止板の装着状態を説明する斜
視図、第５図は、鋼矢板に封止板が装着された状
態を示す平断面図、第６図は、鋼矢板に封止板が
装着された状態を説明する正面図である。 １…鋼矢板、１１…挿入孔、１２，１２…ガイ
ド片、１３，１３…ガイド溝、２…封止板、２
１，２１…封止片、２２…支板、２５…補充板、
３…ケーシングパイプ、４…アンカー部材、５…
グラウトモルタル。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 山止壁の内面と該内面に固定したガイド片と
   が成す一対のガイド溝間にアンカー挿入孔を穿設
   し、 該ガイド溝に、封止板と補充板間に支板を挾ん
   だ状態で装着し、該封止板と支板及び補充板を貫
   通して前記アンカー挿入孔から土中にアンカー部
   材を挿入したものであつて、 鉛直方向に対して長径を有する長楕円形に前記
   アンカー挿入孔を穿設するとともに、 該アンカー挿入孔と前記封止板に設けた封止片
   の切込中心と、前記挿入孔の径と略等しい孔径の
   支板の孔と、該支板の孔径より小さい径の補充板
   の孔とを夫々整合させ、前記アンカー部材の外周
   に前記封止板の封止片を密着させて封止したこと
   を特徴とする山止壁アンカー挿入孔の封止構造。