JPH0133388Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 この考案は車両の各種パネル部材を音響振動板
として利用する車両用音響装置に関する。

従来の車両用音響装置としてのスピーカは、コ
ーン紙等の振動板を具備した通常のスピーカユニ
ツトを、単独のフルレンジ形として、あるいは複
数組み合せて２ウエイ形等として用いるもので、
これら完成されたスピーカを、例えばフロントパ
ネル、フロントドア、リヤサイド、リヤパーセル
シエルフ等の所定位置に埋設または据置として設
置している。

ところが、コーン紙等を用いた通常のスピーカ
ユニツトでは、200Hz以下程度の低音域を十分に
再生しようとすると、口径が20cm近いものが必要
であり、これに対し多数の各種部品が集約されて
いる車両では、その取付位置等の関係で搭載可能
なスピーカユニツトの大きさが自から限られてし
まうため、一部大型車等を除けば、一般には上記
のような大口径スピーカの使用は困難である。ま
た、このような大口径スピーカを無理にリヤパー
セルシエルフ上に据置いた場合には、後方視界を
妨げる問題も生じてくる。

従つて実際には口径５〜10cm程度のスピーカユ
ニツトが主に実用されており、それ故に低音域が
再生が不十分であつた。

そこで本出願人は先に、車両の各部に用いられ
ている合板や鉄板あるいは合成樹脂板等の各種パ
ネル部材、例えばリヤパーセルシエルフ、ドアト
リム、ドアインナパネル、ヘツドライニング等に
音響用加振ドライバを取り付け、該パネル部材自
体を振動板として利用するようにした車両用音響
装置を提案した。これによれば小型で車室内スペ
ースを占有することがなく、しかも振動面積を広
く得られるので大口径スピーカに匹敵する低音域
再生が可能である。

しかしながら、上記のようなパネル部材は、材
質的に音響振動板として必ずしも適したものでは
無く、従つて能率が低くなつてしまつたり、音質
が歪んでこもりがちになる、等の問題を生じ、こ
の種のパネル型車両用音響装置を実用化する上で
大きな障害となつている。

この考案は、上記のような点に鑑みてなされた
もので、車両の適宜なパネル部材の一部に、膜振
動可能な発泡樹脂部を設けるととも、ここに音響
用加振ドライバを配設し、パネル状をなす上記発
泡樹脂部を振動板として振動発音せしめるように
した構成により、小型で車室内スペースを占有す
ることがなく、低音域を良好に再生でき、しかも
音質の優れた車両用音響装置を得ることを目的と
する。

すなわち音響振動板として要求される特性は、
能率の点から密度が小さく軽量であつて、しかも
分割振動を防止するために剛性つまりヤング率が
大きいことであり、こられの点で発泡ウレタン、
発泡スチロール、発泡フエニレンオキサイド等の
発泡樹脂材は好適であり、しかも車両のパネル部
材と一体にパネル状に形成し得る利点を有するも
のである。

以下、この考案の一実施例を図面に基づいて詳
細に説明する。

第１，２図はこの考案を自動車のリヤパーセル
部に適用した一実施例を示しており、１は車体部
材２に外縁部を接合されてなる非振動部材である
リヤパーセルインナパネル、３は上記リヤパーセ
ルインナパネル１のリブ４にクリツプ５を介して
固着されたリヤパーセルシエルフである。このリ
ヤパーセルシエルフ３は、通常の材質つまりハー
ドボードあるいは硬質発泡樹脂等からなり、かつ
その左右には、円形状をなす一対の発泡樹脂部
６，６が音響振動板として設けられている。上記
発泡樹脂部６，６は、例えば発泡ウレタン、発泡
スチロール、発泡フエニレンオキサイドなどから
なり、その発泡倍率および口径は所期の音響特性
に応じて適宜に設定されている。

そして、上記発泡樹脂部６，６の裏面と、リヤ
パーセルインナパネル１に溶接固定したドライバ
カバー７，７との間には、上記発泡樹脂部６，６
を振動板として音響信号を再生するパネル加振ド
ライバ８，８が配設されている。

第３図は上記加振ドライバ８の構成を示すもの
で、これはマグネツト９、ポールピース１０、ヨ
ークプレート１１の３者からなる磁気回路１２
と、その磁界中に置かれるボイスコイル１３とに
大別され、一方のボイスコイル１３を支持するボ
ビン１４はリヤパーセルシエルフ３の発泡樹脂部
６裏面に固設され、かつ他方の磁気回路１２はド
ライバカバー７にビス１５により固定されてい
る。即ち上記ボイスコイル１３にリード線１６を
介して信号電流が流れると、リヤパーセルインナ
パネル１に支持された磁気回路１２に対してボイ
スコイル１３が振動し、リヤパーセルシエルフ３
を加振する。この加振力により主として音響特性
に優れた発泡樹脂部６が膜振動し、良好な音質の
再生音を得ることができるのである。

次に、上記発泡樹脂部６をリヤパーセルシエル
フ３に一体に形成する具体的な方法の一例を第４
図に基づいて説明する。先ず、ハードボード等か
らなるリヤパーセルシエルフ３の所定部位に円形
の開口部２１を予め形成し、これを下型２２内に
セツトすとともに、この下型２２に上記開口部２
１に対応して形成された凹部２３内に、ノズル２
４から樹脂原液２５を注入する（図Ａ）。その後、
図Ｂに示す如く、上型２６を載置し、上記樹脂原
液２５を発泡せしめれば、図Ｃに示すように、発
泡樹脂部６がリヤパーセルシエルフ３の一部を構
成する如く一体に形成されるのである。

以上、この考案をリヤパーセルシエルフに適用
した実施例を説明したが、この考案はこれに限定
されるものでは無く、車両の各種の内外装パネ
ル、例えばドアパネル、インストルメントパネ
ル、成形天井等に種々適用可能である。

以上の説明で明らかなように、この考案によれ
ば、音響特性に優れた発泡樹脂部を振動板として
利用するので、良好な音質ならびに十分な能率を
確保することができ、しかも上記発泡樹脂部は車
両パネル部材の一部として形成されるものである
から、小型化や良好な低音再生等のパネル型音響
装置の利点を何ら損なうことがない。

【図面の簡単な説明】

第１図はこの考案をリヤパーセル部に適用した
実施例を示す平面図、第２図は同断面図、第３図
はその要部の拡大断面図、第４図はリヤパーセル
シエルフの製造方法の一例を示す説明図である。 １……リヤパーセルインナパネル、３……リヤ
パーセルシエルフ、６……発泡樹脂部、８……パ
ネル加振ドライバ。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 車両の適宜なパネル部材の一部に、膜振動可能
   な発泡樹脂部を設けるとともに、ここに音響用加
   振ドライバを配設し、パネル状をなす上記発泡樹
   脂部を振動板として振動発音せしめるようにした
   ことを特徴とする車両用音響装置。