JPH0132373B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は主に二輪車等に用いられる小型の摺動
キヤリパ型デイスクブレーキの改良に関するもの
である。

一般に二輪車等に用いる小型デイスクブレーキ
については、比較的制動時の発生トルクも大きく
ないことから強度的には種々の形態を採用し易い
ものと言えるが、反面取付部が車輪を支持するフ
オーク等を利用し、しかも装置が外部に直接露出
するのが普通であるために、小型かつ構造簡易
で、しかも一対の摩擦パツドをローターに挾圧せ
しめるキヤリパの摺動部を外気から良好に封止で
きる構成のものが、望まれる。

そして従来より提供されているこの種の小型デ
イスクブレーキとしては、キヤリパをローター軸
方向に支持するサポート部が車輪を支持するフオ
ーク部に固設され、しかもこのフオークはロータ
ーの径方向に延在されるものであるという構成を
利用して、キヤリパを一連のスライドピンでロー
ター軸方向摺動可能に支持し、他のもう一つの部
分（例えば回り止めピン等）でキヤリパの回り止
めをなすように構成したものが多いが、ローター
を挾んだ対向一対の摩擦パツドに生ずるブレーキ
トルクを直接サポート等の車体固定部で受ける場
合には構造が複雑となる他、摩擦パツドの共通化
も難かしい等のために部品点数が増加する問題が
あり、他方キヤリパを介して摩擦パツドに生じた
ブレーキトルクをサポート等の車体固定部に伝達
する形式では、摺動支持部のトルク伝達を考慮し
てスライドピンを大径化させねばならないなどの
問題があつた。

そこで本発明においては、主に小型の摺動キヤ
リパ型デイスクブレーキの所要の構造的強度を満
足しつつ、できるだけ簡易なる構造を提供するの
に有利なる構成のものを開発したものであり、し
かもこのようなデイスクブレーキの構成における
各組合せ関係の部材の寸法関係を所定の範囲に設
定することにより、構造的に装置の不具合発生を
防止することができるようにしたものである。

具体的には本発明によりなる摺動キヤリパ型デ
イスクブレーキの特徴は、ローターと、該ロータ
ーの片側に近接して車体固定部に着脱可能に固定
され、かつインナー側摩擦パツドを支持するパツ
ド支持開口が形成されるるサポートとを有し、該
サポートのパツド支持開口のローター周方向両端
部には、ローターから遠ざかる方向に延出支持さ
れる一対のスライドピンを有し、スライドピンの
少なくとも一方はサポートに対して係脱可能の螺
合関係に設けられ、前記一対のスライドピンと滑
合してローター軸方向移動可能に支持されると共
に、インナー側脚部に内蔵のパツド押圧ピストン
によりインナー側摩擦パツドをローターに押圧係
合させ、この反力による摺動にてアウター側脚部
に支持されたアウター側摩擦パツドをローターに
押圧係合させるキヤリパとを備える摺動キヤリパ
型デイスクブレーキに於て、前記一方のスライド
ピンは、そのピンとキヤリパボス部開口との滑合
長よりもキヤリパのインナー側への移動限界量の
方が小なるようにされ、且つそのピンのサポート
からの抜け出し限界量がそのピンの螺合長よりも
小なるようにすると共に、そのピンのサポートか
らの抜け出し限界量とローター厚との和はそのピ
ンの螺合長よりも大と設定したという構成をなす
ところにある。

以下本発明の実施態様を図面に基づいて説明す
る。

図において１はフオークであり、車輪（図示せ
ず）の軸受部から径外方に延在されて車体部分と
一体化されて車体固定部をなしている。２は車輪
と共に一体回転するローターである。３はロータ
ー２の片側において小なる間隙をあけてその回転
面と平行するように配設され、２本のローター径
方向に離隔された締結ボルト５，５によりフオー
クに固定された板金材よりなるサポートであり、
その中央部には後記するインナー側摩擦パツドを
収容支持するパツド支持開口としての開口４が形
成されている。

６，６はこのサポート３の開口４の左右両側
（ローターの回転方向両側）に形成された貫通螺
子孔である。

７，７はこの螺子孔６，６に、ローター２とは
反対側より螺着固定された左右一対のスライドピ
ンであり、その螺合螺子部の長さは、サポート３
の板厚ｃ（第３図参照）と同長をなすように設け
られ、この螺子部６に続いてサポート３の背面
（ローター２とは反対側の面）に係合する大径の
六角頭部７ａ，７ａが設けられ、更にこの六角頭
部７ａ，７ａに続いて滑合ピン部７ｂ，７ｂが設
けられている。尚、大径の六角頭部７ａは、サポ
ート３の背面に係合することによつて、螺子部の
先端位置がサポート３の前面（ローター２と対向
する面）より突出しないように規制する位置決め
と、締付け治具（トルクレンチ等）の組付けられ
る形状をなしているのであるが、これらの機能を
奏すれば特に前記形状に限定されるものではな
い。

またこのスライドピン７，７への固定は、装置
の組立て、パツド交換時の組付け解除を考慮すれ
ば、少なくとも一方側において取外し可能の螺着
構成のものとすればよく、もう一方側については
溶接等にて固着させる形式としてもよい。

８はローター２の縁部を跨座するように配設さ
れた断面逆Ｕ字状となすキヤリパであり、その一
方の脚部９にはパツド押圧ピストン１４を収容し
たシリンダ１０が形成されていると共に、そのシ
リンダ１０の左右両側には、前記サポート３に固
着された左右一対のスライドピン７，７に対応し
て一端開放のキヤリパボス部の開口としての開口
１１，１１が形成されており、該開口１１，１１
と前記スライドピン７，７の嵌挿滑合によつて、
キヤリパ８はローター２軸方向摺動可能に支持さ
れる。

１２，１２はスライドピン７，７と開口１１，
１１の滑合面をシールするシールリング、１３，
１３はこれら滑合面を外気から封止するブーツで
ある。

１５はキヤリパ８のもう一方の脚部であり、パ
ツド押圧ピストン１４が油圧作用を受けて前進
し、サポート３の開口４に収容支持されているイ
ンナー側摩擦パツド１６をローター２に押圧係合
させたときに、この反力によりキヤリパ８がスラ
イドピン７を介してインナー側に摺動することに
よりアウター側摩擦パツド１７をローター２の反
対側の面に押圧係合させるための反作用部をなし
ている。尚、１８はアウター側摩擦パツドをキヤ
リパ８の反作用部である脚部１５に取着支持せし
めるパツドクリツプである。

以上のような構成をなすデイスクブレーキの作
動は、油圧伝達によりパツド押圧ピストン１４が
シリンダ１０内を前進してインナー側摩擦パツド
１６をローター２の片側面に押圧係合させ、この
反力によりキヤリパ８はインナー側に摺動して反
作用部がアウター側摩擦パツド１７をローター２
の反対側の面に押圧係合させ、これら両パツドの
挾圧によりブレーキ力を得るものである。そして
このときのブレーキトルクはインナー側摩擦パツ
ド１６についてはサポート３により直接受けら
れ、他方アウター側摩擦パツド１７については、
キヤリパ８次いで開口１１及びスライドピン７の
滑合支持部を介してサポート３に伝達されること
になる。

そして以上のような構成のデイスクブレーキに
よれば、サポート３の形状はローター２の片側に
位置する極めて単純な平板材でよく、またこのサ
ポート３に固着された左右一対のスライドピン
７，７の組付けも比較的に簡易に行なえるという
構造上の利点と、ブレーキ時におけるブレーキト
ルクの受圧をインナー側については直接サポート
で受け、アウター側についてはキヤリパを介して
左右一対のスライドピン７，７にてサポートに伝
達する構成をなしているために強度的にもスライ
ドピンの大径化を招くことはなく、しかも左右一
対のスライドピン、並らびにインナー・アウター
の摩擦パツドも共通できる構成となつているとい
う利点を相剰的に得ることができる。

そして本発明の更に大きな特徴は、サポートに
片持ち固着された左右一対のスライドピン７，７
に対して、キヤリパ８に形成した対応する一端開
放の開口１１，１１を嵌挿滑合させているという
構成に基づき、第３図に示す如く前述したサポー
ト３の板厚ｃ、摩擦新品組付け時におけるスライ
ドピン７と開口１１の滑合長さａ、開口１１の有
効滑合長さ、又はスライドピン７の有効滑合長さ
から前記ａを減じた長さｄ又はd′、摩擦パツド新
品組付け時におけるキヤリパ８反作用部とサポー
ト３の間の間隙長さｂ、及び摩擦パツド新品時に
おけるライニング厚ｅの各寸法関係を ａ＞ｂ ……(1) ｃ＞（ｄ又はd′のいずれか小なる量）＋ｅ ……(2) の範囲に設定することにより、ブレーキ装置の不
具合発生を構造的に防止できることにある。この
寸法関係の前記範囲の設定理由につき述べると、
式(1)は次の理由による。即ち、摩擦パツド１６，
１７が経時的にライニング摩耗し、これが限界に
達したときには新たな摩擦パツドに交換を要する
が、この際前述した構成のデイスクブレーキで
は、ボルト５，５を外してサポート３をフオーク
１から取外した後、左右のいずれか一方のスライ
ドピンをこのサポート３から螺出して取外し、も
う一方のスライドピン回りにキヤリパ８を回転さ
せることによりインナー・アウターの摩擦パツド
１６，１７を交換できるだけでなく、この一方の
スライドピン７を螺出させてサポートとの螺合を
解除した状態でキヤリパ８をインナー側（第３図
の下側）に移動させた場合に、反作用部をなす脚
部１５がサポート３に係合する（他方のスライド
ピンは外していないのでこの係合を生ずる）まで
の量（即ちｂ）が、このキヤリパ８のスライドピ
ンとの滑合長さ（即ちａ）よりも短い（ａ＞ｂ）
関係、換言すればパツド交換時のキヤリパインナ
ー側への移動限界量が滑合長よりも小なる関係に
設定されているので、前記パツド交換作業時にお
いても、キヤリパ８と該ピン７の係合関係が外れ
ることはなく、従つてパツド交換作業が容易に行
なえることになると共に、開口１１内が外気に晒
されることもないために塵等の侵入による摺動不
良発生の虞れも大幅に軽減されるという利益があ
る。

また前記式(2)の理由は、サポート３に対しての
スライドピン７の組付けが充分確実に行なわれて
いないような組付け不良が仮りにあつた場合に
は、振動等により螺子螺合部分が緩み、その一方
のスライドピン７とサポート３の固定関係が解除
するようなことが生ずる虞れがある。しかしなが
ら前記した式(2)の如く、組付け状態におけるキヤ
リパ８のインナー側への移動限界量ｅと、スライ
ドピン７のキヤリパ開口１１への相対的嵌入限界
量ｄ（又はd′）を加えた値が、該スライドピン７
のサポート３からの抜け出しに要するスライドピ
ンがサポートに螺合している長さｃよりも小なる
関係、換言すれば組立て時のスライドピンのサポ
ート３からの抜け出し限界量をこれらの螺合長よ
りも小なる関係に設定されていれば、このスライ
ドピン７のサポート３からの脱落を生ずることが
規制されることになるため、結局構造的にキヤリ
パ８の正常位置からの脱落は防止され、ブレーキ
作動はこの場合にも確保されるという利益が得ら
れる。

尚、パツド交換時には少なくとも一方のスライ
ドピン７はサポート３からの取外しが可能でなけ
ればならないが、摩擦パツドの交換時はサポート
のフオーク１に対する締結ボルト５を外すことに
よつてサポート３ごとキヤリパ８及び摩擦パツド
１６，１７を取外すので、ローターによるキヤリ
パ移動範囲の制限がなく前記一方のスライドピン
の螺出によるサポートからの螺合解除ができる。

新しい摩擦パツドの取付けは、インナー側摩擦
パツド１６をサポートの開口４に組込み、キヤリ
パボス部開口内の外してある一方のスライドピン
をサポートに螺合して固着させた後、次にキヤリ
パをアウター側に摺動させて取付け余裕をもたせ
た状態で、アウター側摩擦パツド１７をキヤリパ
のアウター側脚部１５に挿入して取付ければよ
く、この後サポート３をフオーク１にボルト５で
締結固定すればよい。

以上述べた如く、本発明よりなる主に二輪車用
に適した小型の摺動キヤリパ型デイスクブレーキ
は、極めて簡易なる構成によつて良好なる効果を
示すものであり、その有用性は極めて大なるもの
である。

【図面の簡単な説明】

図面第１図は本発明によりなる小型の摺動キヤ
リパ型デイスクブレーキの正面図、第２図は同縦
断側面図、第３図は同拡大平断面図である。 １……フオーク、２……ローター、３……サポ
ート、４……開口、５……締結ボルト、６……螺
子孔、７……スライドピン、７ａ……大径六角頭
部、７ｂ……滑合ピン部、８……キヤリパ、９，
１５……脚部、１０……シリンダ、１１……開
口、１２……シールリング、１３……ブーツ、１
４……パツド押圧ピストン、１６……インナー側
摩擦パツド、１７……アウター側摩擦パツド、１
８……パツドクリツプ。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ ローターと、該ローターの片側に近接して車
   体固定部に着脱可能に固定され、かつインナー側
   摩擦パツドを支持するパツド支持開口が形成され
   るるサポートとを有し、該サポートのパツド支持
   開口のローター周方向両端部には、ローターから
   遠ざかる方向に延出支持される一対のスライドピ
   ンを有し、スライドピンの少なくとも一方はサポ
   ートに対して係脱可能の螺合関係に設けられ、前
   記一対のスライドピンと滑合してローター軸方向
   移動可能に支持されると共に、インナー側脚部に
   内蔵のパツド押圧ピストンによりインナー側摩擦
   パツドをローターに押圧係合させ、この反力によ
   る摺動にてアウター側脚部に支持されたアウター
   側摩擦パツドをローターに押圧係合させるキヤリ
   パとを備える摺動キヤリパ型デイスクブレーキに
   於て、 前記一方のスライドピンは、そのピンとキヤリ
   パボス部開口との滑合長よりもキヤリパのインナ
   ー側への移動限界量の方が小なるようにされ、且
   つそのピンのサポートからの抜け出し限界量がそ
   のピンの螺合長よりも小なるようにすると共に、
   そのピンのサポートからの抜け出し限界量とロー
   ター厚との和はそのピンの螺合長よりも大と設定
   したことを特徴とするとを特徴とする摺動キヤリ
   パ型デイスクブレーキ。