JPH0127836Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本案は木目込み人形に係り、衣裳用布地の表面
に紗その他所要の織物を重ね張りし、高級感及び
美観を向上させたことを特徴とするものである。

木目込み人形は桐の粉に正麩糊を混練して成型
した原型の表面に、布地の縫い目或いは人形のポ
ーズにより形成される衣裳の折れ目等を表現する
布地のきめ込み用溝を掘削し、このきめ込み用溝
に予め糊剤を注入しておいて原型の表面に当てた
衣裳用布地の端縁を嵌入して固定し、原型の表面
に布製の衣裳を張着した伝統工芸品である。

この木目込み人形は上記の如く、きめ込み用溝
に衣裳用布地の端縁をきめ込んで衣裳の縫い目或
いは折り目等を表現したので、デフオルメされ単
純化された外形が素朴な味わいを醸すと共に、衣
裳部分に布地を張着したので単に顔料を用いて着
色したものに比べて豊かな質感と風合いがあり、
特に雛人形として古来より高い人気を得ている。

本案は上記した如く伝統的な木目込み人形に更
なる豊かな美感と高級感とを付加するために考案
されたものであつて、伝統的な木目込み人形の衣
裳用布地の上に練つた胡粉を下地としてこの下地
の表面を螺鈿、金銀の箔などにより加飾した凹凸
状の模様を設けて、この加飾された凹凸状模様の
表面に紗または絽などの粗目に織つた織物を重ね
張りし、この重ね張り織物を通して衣裳用布地に
表現した模様を浮き上がらせ、高級な紗や絽の衣
裳をまとつた如くしたことを特徴とするものであ
る。

次に本案の実施例を添付の図面に基いて説明す
ると、１は原型であつて、桐の粉末に正麩粉を混
練した材料を鋳型に鋳込んで衣裳を着用した人形
の胴体の形状に成型し、表面をサンドペーパー等
で補修して平滑に仕上げ、表面全体に胡粉を均一
に塗付して地膚を強化して成る。

２は原型１の表面に掘削したきめ込み用溝であ
つて、衣裳の縫い目や折れ目、それに襟や袖口な
ど、衣裳が重複する状態を表現する部分に筋彫り
してある。

３は衣裳用布地であつて、上衣、下衣、袴、
帯、足袋など人形の各パートに夫々適した色彩及
び模様を有する布地を用い、原型１の表面に張着
る。衣裳用布地３を原型１の表面に張着する手段
は従来と全く同様であつて、第３図に示す如く、
張着せんとするパートに適した形状及び大きさに
裁断した衣裳用布地３を原型１の表面に押し当
て、衣裳用布地３の縁端３ａを予め糊剤を注入し
たきめ込み用溝２にきめ込んで固定するものであ
る。

４は人形の上衣部分に表現した模様であつて、
第４図に示す如く、衣裳用布地３の表面に固めに
練つた胡粉５を下地として所定の模様４の形状に
置き上げ、該置き上げ胡粉５の凹部に螺鈿６等を
嵌合すると共に、凸部の表面に金銀の箔７を押し
付け接着する等、加飾を施す。

８は重ね張り織物であつて、紗や絽など絹糸、
麻糸、錦糸を粗目に織つた織物を衣裳用布地３を
張着した人形の所要の部分、例えば上衣部分に重
ね張りする。重ね張り織物８は衣裳用布地３と同
様、第５図に示す如く、端縁８ａをきめ込み用溝
２にきめ込むことによつて衣裳用布地３の表面に
張着し、重ね合わせ部分に上塗り胡粉９をたたき
張りして衣裳用布地３の表面に定着する。この場
合、前記模様４の部分については、上塗り胡粉９
をたたき張りせず、模様４の表面に重ね張り織物
８を浮かしておくと人形の表面側から重ね張り織
物８を介して模様４が観察でき、より美感上優れ
る。

１０は重ね張り織物８の表面に形成した模様で
あつて、前記の模様４と同様、重ね張り織物８の
表面に置き上げ胡粉を施して模様を表現し、該置
き上げ胡粉の凹部に螺鈿を嵌合すると共に、凸部
に金銀箔を押し付け被着する。

１１は人形の頭、１２は人形の手指であつて、
それぞれ前記の胴部とは別体に製造し、前記の如
くして完成した胴体に夫々固着して人形を完成す
る（第６図）。

なお、衣裳用布地３としては、前記のような色
彩、模様を有する布地のほかに、例えば金糸、銀
糸を用いた布地でもよく、また表層の重ね張り織
物８としては、第７図に示すように、縦糸８ｂま
たは横糸８ｃを適宜ずらして模様状に織つたもの
を用いてもよい。

また衣裳用布地３の表面に重ね張織物を単に張
着するだけでなく、上塗り胡粉９の表面に岩絵
具、水干絵具等所要の絵具を用いて彩色を施すこ
とも自在である。

尚、本実施例では雛人形についてのみ図示した
が、本案の要旨とするところはこれに限定される
ものではなく、あらゆる形態の人形について実施
し得ることは当然である。

本考案に係る木目込み人形は、衣裳用布地の表
面に練つた胡粉からなる下地の表面に螺鈿、金銀
の箔などにより加飾した凹凸状の模様を設け、こ
の凹凸状模様の表面に、紗、絽などの粗目状織物
を重ね張りしたので、表層の重ね張り織物を通し
て衣裳用布地上の加飾された凹凸状模様が透視で
き、衣裳用布地と粗目状重ね張り織物と、これら
の間に介在する凹凸模様との組み合わせによつて
従来の木目込み人形には見られなかつた独特の美
感と立体感とを与えることができる。また衣裳用
布地の表面の加飾された凹凸状模様が表層の粗目
状重ね張り織物を通して透視されるので立体感の
ある凹凸状模様の派手さが和らげられ、伝統工芸
品にふさわしい高級感を与えることができる。

【図面の簡単な説明】

第１図は原型の斜視図、第２図は衣裳用布地及
び重ね張り織物をきめ込んだ人形胴部の斜視図、
第３図は衣裳用布地のきめ込み手段を示す断面
図、第４図は人形の上衣部分に形成した模様の構
成を示す断面図、第５図は重ね張り織物のきめ込
み手段を示す断面図、第６図は人形の完成品を示
す正面図、第７図は重ね張り織物によつて人形の
表面に形成した模様を示す正面図である。 １：原型、２：きめ込み用溝、３：衣裳用布
地、４：模様、５：下地用胡粉、６：螺鈿、７：
金銀箔、８：重ね張り織物、９：上塗り胡粉、１
０：模様、１１：人形の頭、１２：人形の手指。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 原型１の表面に切込んだきめ込み用溝２内に衣
   裳用布地３の端縁をきめ込んで原型１の表面に衣
   裳布地３を張設し、前記衣裳用布地３の表面の所
   要部分には、練つた胡粉５を下地としてこの下地
   の表面を螺鈿６、金銀の箔７などにより加飾した
   凹凸状の模様４を設けて、この加飾された凹凸模
   様４の表面に紗、絽その他の粗目に織つた織物８
   を重ね張りして、該重ね張り織物８の端縁を前記
   衣裳用布地３の端縁がきめ込まれたきめ込み用溝
   ２内にきめ込むことを特徴とする木目込み人形。