JPH0125643B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

本発明は焼入鋼などの高硬度材料を硬質焼結体
工具を用いて切削加工するに好適な工具を提供す
るものである。ダイヤモンドや高圧相型窒化硼素
を主体にした各種の超高圧硬質焼結体工具が開発
され実用に供されているが、中でも立方晶型窒化
硼素（以下CBNと略す）焼結体工具を用いて自
動車のトランスミツシヨンギヤーを始めとする焼
入鋼機械部品の切削加工が注目され、かなりの規
模で使われるようになつてきている。又、ダイヤ
モンド焼結体工具によるセラミツクスや岩石など
の高硬度材料の切削も実用化が検討されている。 さて以下CBN焼結体工具による焼入鋼部品の
切削加工を例として説明するが、説明の内容はそ
のまま一般的に硬質焼結体により高硬度材料を切
削する場合に当てはまるものである。 CBN焼結工具による焼入鋼部品の切削加工は
研削加工に変わる高能率の加工法として注目さ
れ、現在では自動車を始めとする各種機械・車輛
のギヤ、シヤフト等の内・外径、端面加工などに
広範囲に使われている。このような部品の加工で
は被削面に切欠きなどがない全くの連続切削加工
も多いが、油穴やキー溝又はスプライン軸の外周
など断続切削や或いは切削量の変動すなわち仕上
代の変動する偏肉切削となる部品の方がより多
い。研削加工ではこのような断続加工や偏肉加工
であつても砥石の欠けや割れをそれ程心配しなく
てよいが、CBN焼結体工具による切削加工では
刃先が欠損することが多いので問題である。特に
被削材が高硬度であるために切削抵抗が高く、な
おかつCBN焼結体工具の強度が超硬合金などに
比し低いため、断続切削や偏肉切削では連続切削
に比べて工具寿命が非常に短かくなる場合が多か
つた。 超硬工具やセラミツク工具ではこのような断続
切削に対して刃先強度を向上させる目的で各種の
形状の刃先処理が行われており、CBN焼結体工
具に於いてもたとえば第１図に示すような刃先処
理が施されて使用されており、刃先の欠損防止に
ある程度効果はあるもののまだ不充分であつた。 又、特公昭57−42442号公報で「仕上げバイト
の刃」として「逃げ面から切刃に連らなる間に切
刃からの幅寸法が0.02〜0.1mmの範囲内にあり、
かつ逃げ角相当角が0゜近傍にある逃げ面相当面を
有する仕上げバイトの刃」なる発明が開示されて
いる。この公知発明は本発明と一見類似している
が、その目的使用用途とも本発明と全く異なつて
おり、異質の発明である。すなわち、該公知発明
は鋼系の材料の切削仕上に用いられるバイトであ
つて、低速領域の切削において構成刃先の発生を
抑制し得て良好な仕上げ面を得ることができる仕
上げバイトの刃を提供せんとするものである。 一方本発明は硬質焼結体工具を使用して硬質被
削材を研削する際とりわけ断続切削を行う際の工
具寿命を飛躍的にのばすことが目的である。 更に該公知発明は逃げ角相当角が0゜近傍にある
逃げ面相当面の幅寸法が0.02〜0.1mmの範囲が良
好とされているが、本発明では後で説明するよう
に第１逃げ面の幅が0.02〜0.1mmの範囲では効果
は殆んどなく0.1mmより大きく0.3mm以下の範囲で
より効果がある。 本発明はこのような高硬度材料の断続切削や偏
肉切削に於ても連続切削と同等の長寿命を有する
工具を提供するものである。 本発明はダイヤモンド或いは高圧相窒化硼素の
内の１又はこれらの混合物を主体とした硬質焼結
体を切刃に有し、ロツクウエルＣスケール硬度で
45以上の焼入鋼又はシヨアー硬度60以上の高硬度
鋳鉄の切削を行なう切削工具に於て、逃げ面を切
刃エツヂを含む第１逃げ面とその下の第２逃げ面
とに分け、第１逃げ面の切刃からの幅が0.1より
大きく0.3mm以下の範囲にあり、第１逃げ面の逃
げ角を実際切削時に逃げ角θが−3゜≦θ≦0゜の範
囲にあるように形成したことを特徴とする高硬度
材料切削用工具である。 以下本発明の内容を図面に基づき説明する。第
２図は本発明に基づく工具Ａの刃先断面を示すも
のであるが、逃げ面が刃先エツヂを含む第１逃げ
面３とそれから下の第２逃げ面３′とから形成さ
れている。なお、同図において２は切刃、３はす
くい面である。第１逃げ面はこの工具が機械刃物
台にセツトされた状態で逃げ角θが−3゜≦θ≦0゜
の範囲内にあるように形成されている。従つて実
際切削時は第３図に示すようにこの第１逃げ面が
被削材に当接する状態になる。このような形状の
工具で高硬度材の断続切削や偏肉切削を行うと工
具が欠損し難くなり、工具寿命が従来工具に比べ
て飛躍的に長くなることを発見した。この発明は
この発見に基づくものである。 この理由を考察してみると次のように考えられ
る。 断続切削での工具欠損は第一に断続切削の喰い
つきや離脱時に工具に負荷される衝撃力によるも
のであると考えられるがCBN焼結体工具による
焼入鋼断続切削では切削初期に欠けることは少な
く、一定量切削後に欠けることが多い。このこと
から考えると断続切削での工具欠損は喰いつき・
離脱時の衝撃力のみでなく、この衝撃に伴なつて
生ずる工具−被削材間の振動が工具材料の疲労破
壊を起こさせる原因になつていると考えられる。
従つてこの衝撃に伴なう振動を何らかの方法で抑
えてやれば工具寿命をのばすことができると思わ
れる。 ところで本発明工具は第３図に示した通り、工
具Ａの第一逃げ面３が被削材Ｂに当接した状態で
切削しているため被削材及び工具はこの面でお互
いに拘束されており、従つて振動の自由度がそれ
だけ少なくなつている。この点を調べるため長手
方向に溝のついた丸棒の外周断続切削試験を行い
主分力を測定したところ第４図ａ，ｂに示される
結果を得た。すなわち従来工具では第４図ａに示
すように断続喰いつき時の衝撃のあとほぼ１サイ
クル（図中のＣ）の間振動が続くのに対し、本発
明工具では第４図ｂに示すようにほぼ1/3サイク
ルで振動は殆んど０となつている。このため本発
明工具では断続切削で工具寿命が大幅にのびるも
のと考えられる。更に本発明工具ではもう一つの
効果があると考えられる。 すなわち本発明工具では第３図に示す如く第１
逃げ面を意識的に被削材に当接した状態としてい
るため、第１逃げ面を介しての背分力Ｎが大きく
作用することになるが、このため第５図に示すよ
うにすくい面からの主分力Ｍと合わせて工具刃先
内部の応力状態は圧縮応力場Ｓとなる。一般的に
ダイヤモンドやCBN焼結工具は脆性材料であり、
引つ張り応力に対しては弱いが圧縮応力に対して
は非常に強い。従つて刃先をこのような圧縮応力
場とすることはこれら硬質焼結工具にとつて非常
に有利なのである。 さてこのような理由により本発明工具が断続切
削で長寿命となるのであるが、第１逃げ面の角度
と幅は以下の範囲がよい。角度は先に説明した本
発明工具の効果の点よりなるべく第１逃げ面が被
削材と正確に当接した方がよい。この範囲は−3゜
≦θ≦0゜の範囲である。−3゜未満だと工具刃先が
被削材に喰いつかず不適当である。0゜を越えると
第１逃げ面が被削材に当接する幅が小となつてし
まうためやはり不適当である。 第１逃げ面の幅は0.1より大きく0.3mm以下がよ
い。0.1mm以下では先に説明した振動抑制及び圧
縮応力場の効果が不充分である。又0.3mmを超え
ると背分力が大となり過ぎ工具が被削材に喰い込
みにくくなり被削材の加工寸法精度が悪化するな
どの悪影響が出てくるのでよくない。 上記のような構成を有する本発明の切削用工具
は特にロツクウエルＣスケール硬度が45以上の焼
入鋼、シヨアー硬度60以上の高硬度鋳鉄、セラミ
ツク等の高硬度材料の断続切削用に適する。 以下実施例により本発明をさらに詳細に説明す
る。 実施例 CBN工具スミポロンBN200を１コーナーに鑞
付けしたSNG432型のスローアウエイチツプを作
成し、その刃先形状をそれぞれ表１に示す形状と
した。

【表】 表１の各チツプを使用し、直径30mm、長さ200
mmのスプライン軸（材質SCM420、硬さH_RC65）
の外周断続旋削を行つた。切削条件は切削速度
100ｍ／min、切込み0.2mm、送り0.1mm／rev、乾
式である。テスト結果を表２に示す。

【表】 表２に示すような従来の標準形状であるNo.１チ
ツプでは40本切削でチツピングが発生し、その後
10本合計で50本切削で大欠けし、再研削使用も不
可となつたのに対し、チツプNo.３〜５は多少の違
いはあるが、いずれも300本前後まで切削可能で
なおかつチツプは大欠けしないため再研削使用可
能であり、顕著な効果が認められる。又、第１逃
げ面を好適範囲より小としたチツプNo.２は通常チ
ツプに比べやや寿命が長くなつているが、その効
果は不充分である。同様に第１逃げ面の幅を好適
範囲より大としたチツプNo.６は切削可能ではある
が寸法精度が不安定で使用に耐えない。第１逃げ
面の逃げ角を−3゜30′としたチツプNo.７は喰いつ
かないのでやはり使用できない。逃げ角をやはり
範囲外の＋30′としたチツプNo.８も標準チツプNo.
１に比べやや寿命が長くなつているがごくわずか
である。 以上説明したように本発明は高硬度材料の断続
切削や偏肉切削でも連続切削と同等の安定した長
寿命を発揮する高硬度材料切削用工具を提供する
ものである。

【図面の簡単な説明】

第１図は従来法により刃先処理された切削工具
の断面図、第２図は本発明による切削工具の断面
図、第３図は本発明の切削工具を用いて被削材を
切削する際の状態を示す概念図、第４図ａ，ｂは
それぞれ従来工具と本発明の工具を用いて、長手
方向に溝のついた丸棒の外周断続切削試験を行い
主分力を測定した結果を示すグラフ、第５図は本
発明の切削工具における応力状態を示す概念図で
ある。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ ダイヤモンド或いは高圧相窒化硼素の内の１
   又はこれらの混合物を主体とした硬質焼結体を切
   刃に有し、ロツクウエルＣスケール硬度で45以上
   の焼入鋼又はシヨアー硬度60以上の高硬度鋳鉄の
   切削を行なう切削工具に於て、逃げ面を切刃エツ
   ヂを含む第１逃げ面とその下の第２逃げ面とに分
   け、第１逃げ面の切刃からの幅が0.1より大きく
   0.3mm以下の範囲にあり、第１逃げ面の逃げ角を
   実際切削時に逃げ角θが−3゜≦θ≦0゜の範囲にあ
   るように形成したことを特徴とする高硬度材料切
   削用工具。