JPH0123793B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は音質の向上を期待できる合成樹脂製竪
笛の改良に関するものである。

〔従来の技術〕

従来より合成樹脂製竪笛の音質を改善すべく頭
部管に改良を加えたものとしては、例えば特許第
589818号、特許第873379号、実開昭55−130387
号、特開昭54−48217号等が知られている。

〔発明が解決すべき課題〕 上記のように従来においても音質の改善を目的
として、竪笛の頭部管に改良を加えたものは知ら
れているが、これらはいずれも合成樹脂を用いて
管体部品を形成する際に、特に頭部管の構成部品
を薄肉に形成することによつて、成形の過程で生
じやすい収縮歪を防止するという点に主たる目的
があり、従つて音質の改善向上は成形歪の発生を
防止することに付随した効果であるといえるもの
であつた。しかしながら合成樹脂製の竪笛におい
ては、成形歪を防止する意味で構成部品を薄肉に
成形した場合には、音質に重要な影響を与える部
品、特に頭部管の剛性を低下させることになり、
その結果演奏によつて生ずる管体内孔の空気振動
により頭部管が共振して、音質の劣化を来すとい
う欠点を生ずることになる。

〔課題を解決すべき手段〕

古くから楽器の音質は、その楽器の主体を構成
する材質の硬度や弾性と密接な関係を有し、硬度
の高い材質を用いた楽器は豊かな音質を出すとい
うことが知られている。本発明は、このような古
くから知られている理論を基礎とし、木管楽器に
おける音質に大きな影響を与える頭部管の材質的
剛性化を図ること、つまり成形歪の発生を防止す
るために頭部管の構成部材を薄肉とするが、部材
が薄肉軽量化されて剛性が失われる結果として、
頭部管が管体内孔の空気振動に共振して音質の劣
化を招くという原因を、頭部管に実質的な剛性を
付与することによつて解消しようとするものであ
る。本発明はそのための具体的手段として、頭部
管体内における気道栓の気道背部に形成される中
空部内に、該中空部内の内部容積を実質的に縮小
して、管体内孔の空気振動に伴う前記気道栓の共
振を防止するための、所要断面積と所要重量とを
有する金属、木材、石材、陶磁器、プラスチツク
等からなる音質調節栓を密嵌充填したことを特徴
とするものである。

〔作用〕

本発明においては、頭部管の構成部品としての
気道栓の気道背部に設けられる中空部に、該気道
栓に実質的剛性を付与し得る所要の断面積と重量
とをもつた音質調節栓を密嵌充填するので、気道
栓の後方における管体内孔において生ずる空気振
動によつて該気道栓が共振すること、つまりその
結果として頭部管自体が共振することをを適確に
阻止することができる。この場合竪笛の種類に応
じた音質の微妙な調整は、充填される音質調節栓
に適当な大きさの透孔を穿設することであると
か、栓の表面に一個以上の凹溝を削設することに
よつて行うことができる。

〔実施例〕

次に本発明を図面に示す実施例により説明する
と、第１図は本発明を特許第589818号の木管楽器
に適用した例を示しており、１は本管、４は頭部
管、７はエツジ、２１は頭部管４の管体内孔を示
している。頭部管４は外周に突条８を有すると共
に、この突条８により先端側に突出する気道栓挿
入部９の内部に気道栓１０の外周が密着するよう
に挿合される。この気道栓１０は第２図に示すよ
うに、上方部に気道１１が形成され、この気道１
１の背面下方部にはこの気道１１を頭部管４内に
保持するための中空部１２をもつた筒部１０ａが
形成されており、かつこの筒部１０ａの内端に
は、前記中空部１２を管体内孔２１と仕切るため
の隔壁１０ｂが設けられている。

もともと頭部管４の構成部材として、気道１１
の背面下方部に中空部１２を有する筒形の気道栓
１０を形成することは、この気道栓１０のみなら
ず、気道栓挿入部９の外周に嵌合される外筒１３
なども含めて、各構成部材を成形時における収縮
歪が生じないように薄肉に成形するという成形工
程上の事情に基づいている。ところでこのように
気道１１を含めた頭部管４の構成部材が薄肉に成
形されると、成形歪の発生は防止できる反面、頭
部管４自体の剛性が失われることになり、管体内
孔２１内における空気振動が気道栓１０の隔壁１
０ｂをし介して頭部管の全体に伝わり、頭部管４
が共振して管体内孔２１内の空気振動を不安定な
状態とする結果、音質を劣化させることになる。

そのため本発明では、頭部管４内に設けられる
気道栓１０の中空部１２内に、第３図に示すよう
な音質調節栓１６を密着挿合することにより、該
中空部１２の内部容積を実質的に縮小させ、中空
部１２内が管体内孔２１からの空気振動を受けに
くい状態とする。この音質調節栓１６の素材とし
ては、金属、木材、石材、陶磁器あるいはプラス
チツクなどの硬質の材質を用いることが望まし
く、また基本的な形状としては、第３図に示すよ
うに、上面に気道栓１０の気道下面１１ａと接す
る気道支持面１６ａをもつた、中空部１２内を実
質的に中実とする外形をもつものが好ましい。

もつとも音質調節栓１６の素材によつては、質
量の違いから頭部管４の重量が不当に増大して、
演奏時に不都合を生ずるということがある。その
ため或る程度の共振状態が残るとしても、これが
さほど音質を劣化させるまでのものでなければ、
栓の一部を削り取るような形状として重量を軽く
することも考えられる。また、音質調節栓１６の
形状が第３図のように中実のものでは、頭部管４
に対する共振を確実に阻止して管体内孔２１内に
おける空気振動を良好な状態とし、完壁な音質を
期待できるが、演奏者の好みとか、楽器の種類・
大きさ等によつては、音質を劣化させる程でなけ
れば或る程度の共振が生じたとしても、完壁な音
質とは異なつた良い意味での変化のある音質を期
待することもできる。そのような趣旨から、本発
明では第４図Ａのように音質調節栓１６に長さ方
向に沿つた所要の内径をもつ透孔１７を穿設して
重量の調節を図つたり、或いは第４図Ｂ，Ｃのよ
うに気道支持面１６ａに一個以上の凹溝１８，１
９を削設して、硬度を失わない限度において重
量、断面積、弾性係数等を適宜選択し、適切な音
質の調整を幅広く自由に行えるようにする。第４
図のＢ，Ｃに示すような音質調節栓１６では、上
面に気道支持面１６ａが残されていて、これが気
道１１の下面１１ａをしつかりと支え、中空部１
２内の容積を実質的に縮小して共振状態を大幅に
抑制することができる。第５図は、第４図Ｂに示
した音質調節栓１６を気道栓１０の中空部１２に
嵌込んだ状態の頭部管４の構造を示している。第
６図は前記第４図Ｂの音質調節栓１６を使用した
頭部管４の気道部１１における断面図であるが、
気道栓１０の内部は凹溝１８によつて形成される
僅かな空間部２０を残して、気道栓１０の筒部１
０ａが内外面からしつかりと固定されるので、該
部における共振状態が大幅に抑制された形で音質
の調整を行うことができる。

気道栓１０の中空部１２内に前記音質調節栓１
６が挿合されたのち、気道栓挿入部９の外周に外
筒１３を、後端が突条８に接触する位置まで嵌合
させる。

第７図は本発明を特許第873379号の木管楽器に
適用した実施例を示している。この木管楽器で
は、頭部管４の先端における気道栓挿入部９の上
部に気道１１の一部を構成する上部気道壁１４が
形成され、従つて気道栓１０は第８図に示すよう
に前記上部気道壁１４と一対をなす下部気道壁１
５が中空部１２と一体に設けられた形状となつて
いる。従つてこの場合にも気道栓１０内に前記音
質調節栓１６を挿合することによつて音質の劣化
を生じない頭部管４を形成することができる。

〔効果〕

本発明に係る木管楽器においては、成形歪をな
くすべく薄肉に形成された頭部管の各構成部材
が、薄肉による剛性低下のために管体内孔に生ず
る空気振動を受けて共振する現象を、気道栓の中
空部内に該中空部の内部容積を縮小するための音
質調節栓を密に嵌装することによつて阻止される
ようにしたので、管体内孔における空気振動が大
きくても頭部管の共振がきわめて少ないように抑
制することができ、その結果良い音質を得ること
ができる。

また音質調節栓に透孔や凹溝を設けることによ
つて栓の重量や音質の調整を図ることができ、そ
の木管楽器に適する優れた音質を得ることができ
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明に係る木管楽器の構成を示す一
部を縦断した側面図、第２図は気道栓の斜視図、
第３図は気道栓に設けられる音質調節栓の斜視
図、第４図Ａ：Ｂ：Ｃはいずれも音質調節栓の別
の実施例を示す斜視図、第５図は第４図Ｂに示し
た音質調節栓を装着した頭部管の断面図、第６図
は第５図のＶ−Ｖ線における断面図、第７図は第
１図の頭部管と異なる頭部管の構造を示す一部縦
断側面図、第８図は第７図の頭部管に取付られる
気道栓の斜視図である。 ４：頭部管、９：気道栓挿入部、１０：気道
栓、１０ａ：気道栓筒部、１０ｂ：隔壁、１１：
気道、１１ａ：気道下面、１２：中空部、１３：
外筒、１４：上部気道壁、１５：下部気道壁、１
６：音質調節栓、１６ａ：気道支持面、１７：透
孔、１８，１９：凹溝、２０：空間部、２１：管
体内孔。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 頭部管内における気道栓の気道背部に形成さ
   れる中空部内に、該中空部内の内部容積を実質的
   に縮小して、管体内孔の空気振動に伴う前記気道
   栓の共振を防止するための、所要断面積と所要重
   量とを有する金属、木材、石材、陶磁器、プラス
   チツク等からなる音質調節栓を密嵌充填したこと
   を特徴とする音質調節栓を有する木管楽器。 ２ 音質調節栓の断面積と重量とを加減する手段
   として、音質調節栓の長さ方向に沿つて所要の内
   径を有する透孔が穿設されている特許請求の範囲
   第１項記載の音質調節栓を有する木管楽器。 ３ 音質調節栓の断面と断面積と重量とを加減す
   る手段として、音質調節栓の表面に長さ方向に沿
   つて一個以上の凹溝が削設されている特許請求の
   範囲第１項記載の音質調節栓を有する木管楽器。