JPH0121158Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、内燃機関のシリンダライナ内を往復
動するピストンに備えられたピストンリングとシ
リンダライナ内周面との間のシールを行なう装置
に関する。

近年、舶用デイーゼル機関に使用されている燃
料油の質が低下し、燃料油中に微細な硬質粒子が
混在する場合が多い。この硬質粒子は、たとえば
触媒であり、あるいはまた燃料残渣物である高硬
度のカーボンである。このような硬質粒子がピス
トンリングとシリンダライナの間に入り込むと、
これらの摩耗が増大することになる。

このような問題を解決するために、従来では、
シリンダライナの内周面およびピストンリングを
高硬度にしたり、またシリンダライナを充分に冷
却したり、あるいはまた燃料油が燃焼室内に入る
までにこれらの硬質粒子を除去するための構成が
採用されているけれども、これらのいずれの先行
技術も摩耗を根本的に解決することにはならな
い。

本考案の目的は、高硬度粒子がシリンダライナ
とピストンリングとの間に入り込んでこれらを摩
耗することを防ぐようにした内燃機関のシール装
置を提供することである。

本考案は、ピストンの外周に、その軸線方向に
間隔をあけて複数のリング溝が形成され、各リン
グ溝にはピストンリングがそれぞれ嵌め込まれ、
これらのピストンリングの外周面がシリンダライ
ナの内周面に摺接するように構成された内燃機関
のシール装置において、 シリンダライナには、高圧力気体供給装置から
の高圧力気体が供給される気体導入孔が形成さ
れ、この高圧力気体は燃焼室の最高圧力よりも高
い圧力を有し、 気体導入孔は、ピストンの上死点と下死点との
間で往復動するとき、前記ピストンリングのうち
最も燃焼室寄りのトツプリングと、そのトツプリ
ングに距離Ｓ１を隔てて隣接する第２リングとの
間に常に位置するように形成されており、 前記高圧力気体供給装置は、燃焼室内の気体が
爆発直前から最高圧力となる期間においてのみ高
圧力気体を、前記気体導入孔を介してトツプリン
グと第２リングとの間に供給することを特徴とす
る内燃機関のシール装置である。

第１図は本考案の一実施例の断面図である。４
サイクルデイーゼル機関の燃焼室１は、シリンダ
ヘツド２とシリンダライナ３とによつて規定され
る。このシリンダライナ３内には、ピストン４が
第１図の上下に往復動する。ピストン４には、第
１のピストンリングであるトツプリング５と、そ
のトツプリング５から距離Ｓ１を隔てた第２のピ
ストンリング６とが設けられており、さらに第２
のピストンリング６よりもクランク室側（第１図
の下方）にはピストンリングが設けられる。シリ
ンダライナ３の周壁には、気体導入孔７が形成さ
れている。

高圧コンプレツサ１４からの高圧力の空気など
の気体は、冷却器１３によつて冷却され、高圧容
器１２に貯留され、電磁弁１０を介して管路１５
から気体導入孔７に供給される。この電磁弁１０
は、制御装置１１によつて後述のように開閉制御
される。制御装置１１は、クランク軸に同期して
電磁弁１０を制御する。これらの電磁弁１０、制
御装置１１、高圧容器１２、冷却器１３および高
圧コンプレツサ１４とを含んで高圧力気体供給装
置２０を構成する。

ピストン４が第１図示のように上死点TDCに
あるとき、ピストン４の頂部から離れた位置にあ
る第２ピストンリング６よりも上方で気体導入孔
７が開口している。ピストン４が下死点にあると
き、気体導入孔７はトツプリング５よりも第１図
の下方にあり、これによつて気体導入孔７は常に
シリンダライナ３の内周面とピストン４の外周面
とトツプリング５と第２ピストンリング６とによ
つて規定される空間８に臨む。このことが可能と
なるようにトツプリング５と第２ピストンリング
６との距離Ｓ１が設定される。つまり、気体導入
孔７は、ピストン４の上死点と下死点との間で往
復動するとき、前記ピストンリングのうち最も燃
焼室１寄りのトツプリング５と、そのトツプリン
グ５に距離Ｓ１を隔てて隣接する第２リング６と
の間に常に位置している。また前記高圧力気体供
給装置２０は、燃焼室１内の気体が爆発直前から
最高圧力となる期間においてのみ高圧力気体を、
前記気体導入孔７を介してトツプリング５と第２
リング６との間の空間８に供給するように構成さ
れている。

第２図は、上述の実施例の圧力線図を示す。制
御装置１１は、下死点BDCから上死点TDCとな
るように第１図の上方に移動するとき、爆発時点
ｔ２の直前の時点ｔ１において、制御装置１１は
電磁弁１０を作動させて気体導入孔７に高圧力の
気体を導く。この電磁弁１０は、燃焼室１におけ
るシリンダ内最高圧力Pzの時刻ｔ４まで気体導
入孔７に高圧力の気体を継続して導く。気体導入
孔７に導かれる気体の圧力は、シリンダ内最高圧
力Pzよりも高い圧力を有する。こうして燃焼室
１内の圧力は、実線ｌ１で示される圧力変化をた
どり、また空間８の圧力は破線ｌ２で示される経
過を辿る。こうして爆発時点ｔ２以降シリンダ内
最高圧力の時点ｔ４の期間中において、空間８の
圧力はそのシリンダ内最高圧力Pzを越える圧力
となつており、これによつて燃焼行程においてト
ツプリング５を通つてシリンダの燃焼室１内に清
浄な気体が流れるようにし、トツプリング５、お
よびトツプリング５よりも上のピストン４とシリ
ンダライナ３との間隙であるピストントツプラン
ドにある硬質粒子および燃焼ガスを、燃焼室１側
に押し戻すようにし、これによつてピストンリン
グ５，６とシリンダライナ３との摺動面に硬質粒
子が侵入することを防いでいる。

時点ｔ４以降においては、制御装置１１は電磁
弁１０を閉じる。これによつてトツプリング５お
よび第２ピストンリング６が摩耗することが防げ
る。

本考案の他の実施例として、気体導入孔７は、
シリンダライナ３に周方向に複数個形成されても
よい。

本考案は４サイクルデイーゼル機関だけでな
く、その他の内燃機関および２サイクル機関に関
連しても実施することができる。

以上のように本考案によれば、ピストン頂部か
ら離れた位置にあるピストンリングよりも上死点
において上方で開口する気体導入孔から、シリン
ダ内最高圧力よりも高圧力の気体を爆発直前から
シリンダ内最高圧力の時刻まで供給し、これによ
つてシリンダライナの内周面とピストン４の外周
面との空間に硬質粒子が入り込むのを防ぐように
したので、シリンダライナおよびピストンリング
の摩耗が防げることになる。

また本考案によれば、高圧力気体供給装置２０
によつて、気体導入孔７から高圧力気体を燃焼室
内の気体が爆発直前から最高圧力となる期間にお
いてのみ供給され、その他の期間では遮断されて
おり、このように高圧力気体を断続的に供給する
ことによつてトツプリングと第２リングとのシリ
ンダライナ内周面への接触圧力を低減することが
でき、これによつてトツプリングおよび第２リン
グの摩耗を低減することができる。

さらに本考案によれば、トツプリングと第２リ
ングとの間に気体導入孔が常に臨むように構成さ
れるので、これらのトツプリングと第２リングと
の間の空間８および気体導入孔７内に硬質粒子な
どが入り込んでしまうことを防止でき、これによ
つて気体導入孔７が目詰まりを生じることはな
い。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の一実施例の断面図、第２図は
第１図に示された実施例の圧力線図である。 １……燃焼室、２……シリンダヘツド、３……
シリンダライナ、４……ピストン、５……トツプ
リング、６……第２ピストンリング、７……気体
導入孔、８……空間、９……ピストントツプラン
ド。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 ピストンの外周に、その軸線方向に間隔をあけ
   て複数のリング溝が形成され、各リング溝にはピ
   ストンリングがそれぞれ嵌め込まれ、これらのピ
   ストンリングの外周面がシリンダライナの内周面
   に摺接するように構成された内燃機関のシール装
   置において、 シリンダライナには、高圧力気体供給装置から
   の高圧力気体が供給される気体導入孔が形成さ
   れ、この高圧力気体は燃焼室の最高圧力よりも高
   い圧力を有し、 気体導入孔は、ピストンの上死点と下死点との
   間で往復動するとき、前記ピストンリングのうち
   最も燃焼室寄りのトツプリングと、そのトツプリ
   ングに距離Ｓ１を隔てて隣接する第２リングとの
   間に常に位置するように形成されており、 前記高圧力気体供給装置は、燃焼室内の気体が
   爆発直前から最高圧力となる期間においてのみ高
   圧力気体を、前記気体導入孔を介してトツプリン
   グと第２リングとの間に供給することを特徴とす
   る内燃機関のシール装置。