JPH0117669Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、例えば空気、冷媒等の気体（以下、
空気という）を圧縮するのに用いて好適なスクロ
ール式圧縮機に関し、特に固定スクロールと旋回
スクロールとによつて形成される圧縮室内に油を
噴射することによつて、その油によつて圧縮時の
シール、冷却、潤滑作用を行なわせるようにした
油冷型のスクロール式圧縮機に関するものであ
る。

〔従来の技術〕

従来、この種の圧縮機として第１図乃至第３図
に示すものが知られている。即ち、ケーシング１
には軸受部１Ａと後述の背圧室を形成する円筒部
１Ｂとが形成され、該円筒部１Ｂには固定スクロ
ール２が固着して設けられている。前記固定スク
ロール２は鏡板２Ａと、該鏡板２Ａに立設された
うず巻状のラツプ部２Ｂと、前記円筒部１Ｂに固
着されるフランジ部２Ｃとからなり、該ラツプ部
２Ｂはインボリユートまたはインボリユートに近
い曲線に形成されている。また、前記固定スクロ
ール２のフランジ部２Ｃ近くには吸込み口３が形
成されると共に鏡板２Ａの中心位置には吐出口４
が形成されている。

５は固定スクロール２と同一軸線O₁に設けら
れた駆動軸で、該駆動軸５はケーシング１の軸受
部１Ａに軸受６，６を介して回転自在に支持され
ている。前記駆動軸５には円筒部１Ｂ内に位置し
て旋回スクロール７が旋回軸受８を介して回転自
在に支持しれ、該旋回スクロール７の軸線O₂は
駆動軸５の軸線O₁に対して距離δだけ偏心する
ように設けられている。ここで、旋回スクロール
７は鏡板７Ａと、該鏡板７Ａに立設されたうず巻
状のラツプ部７Ｂとからなり、該ラツプ部７Ｂは
インボリユートまたはインボリユートに近い曲線
に形成されている。そして、ラツプ部７Ｂは固定
スクロール２のラツプ部２Ｂと所定角度ずらせて
重なり合うように取付けられ、該各ラツプ部２
Ｂ，７Ｂ間は密閉空間となつて複数の圧縮室９を
形成し、かつ鏡板７Ａと固定スクロール２のフラ
ンジ部２Ｃとが摺動面１０となつて互いに摺動す
るように構成されている。

１１はケーシング１と旋回スクロール７背面と
の間に形成された大気開放空間または密閉空間か
らなる背圧室で、該背圧室１１内には旋回スクロ
ール７を固定スクロール２に向け付勢し、圧縮室
９内の気密が保持できるようにするための機械的
ばね（図示せず）が張設され、または該背圧室１
１内には吐出された圧縮空気の一部が導びかれて
いる。従つて、背圧室１１内は大気圧状態または
加圧状態にある。１２は背圧室１１内に設けられ
た自転防止機構としてのオルダム接手で、該オル
ダム接手１２はオルダムリング１２Ａと、該オル
ダムリング１２Ａの複数箇所に形成された十字状
の凹溝１２Ｂと、旋回スクロール７に植設され、
凹溝１２Ｂに嵌合している軸１２Ｃとからなる。
従つて、駆動軸５を回転すると、旋回スクロール
７はオルダム接手１２によつて案内されつつ該駆
動軸５の軸線O₁と中心として半径δをもつて公
転する。

さらに、１３は固定スクロールのラツプ部２Ｂ
の歯溝の中間部分に位置して鏡板２Ａに穿設され
た単一の油噴射口で、該噴射口１３は第２図に示
す如く固定スクロール２と旋回スクロール７とに
よつて形成される多数の圧縮室９のうちほぼ中間
に位置する圧縮室に向け穿設され、例えば吸込行
程の直後に圧縮室９に油を噴射することによつ
て、シール、冷却、潤滑作用を行なうように構成
されている。

このように構成されるスクロール式圧縮機にお
いて、駆動軸５に連結されたモータ（図示せず）
を回転すると、その回転は駆動軸５、軸受８を介
して旋回スクロール７に伝えられ、該旋回スクロ
ール７は固定スクロール２に対して軸線O₁を中
心として相体的な円運動を行なう。そして、吸込
み口３から吸込まれた空気は圧縮室９内で徐々に
圧縮され、所定の圧力に高められた後に吐出口４
から吐出される。この間、油噴射口１３から、圧
縮室９内に油を噴射し、ラツプ部２Ｂ，７Ｂ間や
摺動面１０のシール作用を行ない油膜による圧縮
空気の漏れ防止を図り、かつこの油によつて各ス
クロール２，７の冷却作用、潤滑作用を行なう。
また、圧縮空気中に混入した油は吐出口４から吐
出され、該吐出口４に接続された油分離器（図示
せず）によつて油分が除去される。

〔考案が解決しようとする問題点〕

然るに、前述した従来の技術によるものにおい
ては、油噴射口１３は固定スクロール２のラツプ
部２Ｂの歯溝の中間部分に位置して鏡板２Ａに穿
設されている。一方、駆動軸５が回転すると、旋
回スクロール７は固定スクロール２に対して軸線
O₁を中心に半径δをもつて相対的な円運動を行
なう結果、該旋回スクロール７のラツプ部７Ｂは
半径方向に距離2δだけ偏心しつつ旋回する。

かくして、旋回スクロール７が半径方向に偏心
しつつ相対的な円運動を行なう間、短時間ではあ
るが、前記油噴射口１３は旋回スクロール７のラ
ツプ部７Ｂの歯先で完全に閉塞されてしまい、第
３図の状態となることがある。

この結果、油噴射口１３が閉塞された瞬間に該
油噴射口１３内の圧力が高まり、ラツプ部７Ｂの
歯先に作用する油圧によつて旋回スクロール７が
部分的に押し上げられてしまう。従つて、油の噴
射量を増加させるために油圧を高めると旋回スク
ロール７の旋回運動が不安定となり、振動を増加
させる欠点があつた。また、旋回スクロール７が
押し上げられると、各スクロール２，７間に隙間
が発生すると共に摺動面１０に隙間が発生し、圧
縮効率を低下させるばかりでなく、背圧室１１内
の背圧が吸込み口３に吸込まれ、旋回スクロール
７がさらに浮上してしまう欠点があつた。

一方、第４図に示す如く、固定スクロール２の
インボリユート基礎円２１の対向接線ＡおよびＢ
の線上で、かつ固定スクロール２と旋回スクロー
ル７との対向接点に位置して、固定スクロール２
の鏡板２Ａに２箇所の油噴射口２２，２３を配設
したものも知られている。

このように構成されるスクロール式圧縮機は油
噴射口２２，２３を含んで形成される対向する圧
縮室９，９の容積が同一となるから、これらの圧
縮室９は同一圧力となり、油噴射口２２，２３か
ら同一の油噴射量が得られる利点がある。

しかし、前述の構成を採用したものにおいて
も、油噴射口２２，２３は、短時間ではあるが、
旋回スクロール７のラツプ部７Ｂで同時に閉塞さ
れ、第４図の状態となる瞬間がある。このため、
前述した場合と同様に噴射口２２，２３内の圧力
が高まり、ラツプ部７Ｂの歯先に作用する油圧に
よつて旋回スクロール７が押し上げられてしまう
欠点があつた。

本考案は、前述した従来技術による欠点を改良
し、旋回スクロールがいかなる旋回状態にあつて
も油噴射口を常時圧縮室に開口しうるようにした
スクロール式圧縮機を提供することを目的とする
ものである。

〔問題点を解決するための手段〕

上記目的を達成するために、本考案が採用する
構成は、筒状のケーシングと、該ケーシングの端
面を閉塞するように該ケーシングに固着して設け
られ、鏡板にうず巻状のラツプ部が立設された固
定スクロールと、前記ケーシングの軸線方向に回
転自在に配設された駆動軸と、前記ケーシング内
に位置して該駆動軸に旋回自在に設けられ、鏡板
には前記固定スクロールのラツプ部と重なり合つ
て旋回する間に複数の圧縮室を形成するうず巻状
のラツプ部が立設された旋回スクロールとからな
るスクロール式圧縮機において、前記固定スクロ
ールの鏡板には半径方向に離間して２箇所の油噴
射口を穿設し、該各油噴射口の半径方向間隔は前
記旋回スクロールのラツプ部歯厚と等しいか、ま
た、若干大となるように設定し、かつ該各油噴射
口は１箇所の油供給口に連通させる構成としたこ
とを特徴とする。

〔作用〕

このように構成することにより、旋回スクロー
ルのラツプ部が旋回運動する間、一方の油噴射口
が閉塞されても、他方の油噴射口は圧縮室に開口
しているから、油供給口に連通する各油噴射口は
ほぼ同圧状態に保たれる。この結果、旋回スクロ
ールに油圧による押し上げ力が作用するのを防止
でき、旋回スクロールの旋回運動が不安となつて
振動を増加させたり、軸受に過大な荷重が作用す
るのを防止でき、軸受の寿命を延ばすことができ
る。

〔実施例〕

以下、本考案について第５図および第６図に示
す実施例に基づいて述べる。なお、前述した従来
技術と同一構成要素には同一符号を付し、その説
明を省略する。

然るに、３１，３２は固定スクロール２の鏡板
２Ａに穿設された油噴射口で、該各油噴射口３
１，３２は固定スクロール２のインボリユート基
礎円２１の接戦Ｃの線上で、かつ旋回スクロール
７のラツプ部７Ｂの歯厚ｌを跨ぐ間隔で、即ち各
油噴射口３１，３２の中心間距離が歯厚ｌと等し
いか、または当該歯厚ｌよりも若干大となるよう
に設定されている。しかも、前記各噴射口３１，
３２は固定スクロール２と旋回スクロール７とに
よつて形成される多数の圧縮室９のうち、第５図
に示す如くほぼ中間に位置する圧縮室に向け穿設
され、容積を減少しつつ中心に向つて進む圧縮室
９のほぼ中間で油を噴射しうるように構成されて
いる。さらに、３３は第６図に示すように油噴射
口３１，３２に油を供給すべく、これらと連通す
るように固定スクロール２の鏡板２Ａに形成され
た油供給口としての配管接続口で該配管接続口３
３は１箇所のみ形成され、該配管接続口３３から
各油噴射口３１，３２に油を供給するようになさ
れている。

本実施例は上記のように構成されるが、その圧
縮時の作動については前述した従来技術と格別変
るところがない。

然るに、本実施例においては、油噴射口３１，
３２はラツプ部７Ｂの歯厚ｌを跨ぐ間隔で形成さ
れているから、旋回スクロール７の旋回運動の状
況いかんに拘わらず、即ち、第６図に示すように
ラツプ部７Ｂが各油噴射口３１，３２の丁度中間
位置となつたとしても、少なくとも一方の油噴射
口３１または３２を圧縮室９に開口させることが
できる。従つて、油噴射口３１，３２内の油圧の
上昇を防止でき、従来技術の如く旋回スクロール
７が油圧によつて押し上げられる事故を確実防止
しうる。さらに、配管接続口３３は１箇所のみと
し、油噴射口３１，３２は該配管接続口３３と連
通しているから、一方の油噴射口が完全に閉塞し
ても他方の油噴射口は圧縮室９に開口し、油噴射
口３１，３１間をほぼ同圧とすることができ、旋
回スクロール７の押し上げを確実に防止しうる。

なお、前述の実施例では各油噴射口３１，３２
は接線Ｃの線上に２箇所設けるものとして述べた
が、第４図に示したようにインボリユート基礎円
２１の異なる接線Ａ，Ｂ線上にそれぞれ２箇所づ
つ油噴射口を穿設してもよい。さらに、各油噴射
口３１，３２はほぼ中間部位に位置する圧縮室９
に向けて穿設するものとして述べたが、当該中間
部位よりも吸込み口３に近い圧縮室９に向けて穿
設してもよく、この場合には摺動面１０に対する
油の供給も十分に行なうことができる。

〔考案の効果〕

本考案に係るスクロール式圧縮機は以上詳細に
述べた如くであつて、固定スクロールの鏡板には
半径方向に離間して２箇所の油噴射口を穿設し、
該各油噴射口の半径方向間隔は旋回スクロールの
ラツプ部歯厚と等しいか、または若干大となるよ
うに設定し、かつ該各油噴射口は１箇所の油供給
口から分岐させる構成としたから旋回スクロール
の旋回運動のいかんに拘わらず、いずれかの油噴
射口を圧縮室に開口させ、油供給口と同圧状態に
保持することができる。従つて、旋回スクロール
に油圧による押し上げ力が作用するのを防止でき
るから、該旋回スクロールを円滑に旋回させるこ
とができ、軸受の寿命を延すと共に圧縮効率を高
めることができる等の効課を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１乃至第４図は従来技術によるスクロール式
圧縮機を示し、第１図はその縦断面図、第２図は
第１図中の−矢示方向断面図、第３図は第２
図中の−矢示方向断面図、第４図は他の従来
技術を示す第２図と同様位置の断面図、第５図お
よび第６図は本考案の実施例を示し、第５図は第
２図と同様位置の断面図、第６図は第５図中の
−矢示方向断面図である。 １……ケーシング、２……固定スクロール、２
Ｂ……ラツプ部、３……吸込口、４……吐出口、
５……駆動軸、７……旋回スクロール、７Ｂ……
ラツプ部、９……圧縮室、２１……インボリユー
ト基礎円、３１，３２……油噴射口、３３……配
管接続口。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 筒状のケーシングと、該ケーシングの端面を閉
   塞するように該ケーシングに固着して設けられ、
   鏡板にうず巻状のラツプ部が立設された固定スク
   ロールと、前記ケーシングの軸線方向に回転自在
   に配設された駆動軸と、前記ケーシング内に位置
   して該駆動軸に旋回自在に設けられ、鏡板には前
   記固定スクロールのラツプ部と重なり合つて旋回
   する間に複数の圧縮室を形成するうず巻状のラツ
   プ部が立設された旋回スクロールとからなるスク
   ロール式圧縮機において、前記固定スクロールの
   鏡板には半径方向に離間して２箇所の油噴射口を
   穿設し、該各油噴射口の半径方向間隔は前記旋回
   スクロールのラツプ部歯厚と等しいか、または若
   干大となるように設定し、かつ該各油噴射口は１
   箇所の油供給口に連通させる構成としたことを特
   徴とするスクロール式圧縮機。