JPH0115693B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は内燃機関の燃焼室を形成するシリンダ
ライナに関する。

内燃機関においては、この内燃機関のシリンダ
ブロツクに貫通孔を形成し、この貫通孔に筒状を
成すシリンダライナを装着して燃焼室を形成する
ようにしていた。すなわちこのシリンダライナ内
には、摺動可能にピストンが配されるとともに、
このシリンダライナの上部にはシリンダヘツドが
取付けられて上部の開口を閉塞するようにしてい
た。従つてシリンダライナとシリンダヘツドとそ
してピストンとによつて囲まれた空間が燃焼室を
構成することになる。そしてこの燃焼室内におい
て、燃料を燃料爆発させるようにしているため
に、シリンダライナはかなりの高温にさらされる
ことになる。そこで従来の水冷エンジンにおいて
は、上記ライナの外周部であつて、シリンダブロ
ツクに凹部から成るウオータジヤケツトを形成
し、このウオータジヤケツト内を冷却水を還流さ
せるようにしてシリンダライナの冷却を行なうよ
うにしていた。

このウオータジヤケツトは、シリンダライナの
外周側において、その全周に及ぶように形成され
ているために、シリンダライナはその全周におい
て冷却されることになる。しかし上記冷却水はシ
リンダブロツクの長さ方向には比較的円滑に流れ
ても、シリンダブロツクの幅方向の流れはあまり
円滑でなく、このために互に隣接するシリンダラ
イナの外周部間において冷却水のたまりを生ずる
ことになる。従つてこのような従来のシリンダラ
イナの冷却方法によれば、シリンダライナの円周
方向における冷却が必ずしも均一にならず、従つ
て円周方向に温度勾配を生ずることになる。この
結果シリンダライナは非円形の形状に熱変形を起
こすことになる。またシリンダライナはその上端
側が比較的高温にさらされるのに対して、下端側
は比較的温度が低くなつているために、高さ方向
にも温度勾配を生じ、これによつて軸線方向に沿
つた変形も起こることになる。

このようなシリンダライナの円周方向および高
さ方向の温度差に伴なう変形によつて、ピストン
を摺動させる際の潤滑オイルの消費量が増えるこ
とになる。また特にシリンダライナが非円形に変
形すると、シリンダライナとピストンとの間でス
カツフが発生し易くなり、シリンダライナやピス
トンを損傷する場合が生ずる。

またこのようなシリンダライナの温度勾配によ
る不具合を解消するために、例えば実開昭57―
13820号公報に見られるようにシリンダライナの
外周の一部をヒートパイプで被覆することも有効
である。

しかしながら斯る従来例のようにシリンダライ
ナの外周の一部のみをヒートパイプで被覆し、し
かもこのヒートパイプの一端をウオータジヤケツ
トに曝したのみでは、シリンダライナの温度勾配
を充分に解消することが困難であると同時に熱交
換面積が制約されるのでシリンダライナを充分に
冷却することができないという不具合があつた。

本発明はこのような問題点に鑑みてなされたも
のであつて、シリンダライナの円周方向および高
さ方向の冷却の不均一性に伴なう温度差を無く
し、これによつて潤滑オイルの消費量を少なくす
るとともに、ピストンとの干渉に伴なう騒音を低
減させ、さらにはスカツフの発生を未然に防止す
るようにしたシリンダライナを提供することを目
的とするものである。

このような目的を達成するために本発明は、シ
リンダライナとこのシリンダライナの外周に配設
した筒体とでこのシリンダライナの外周ほぼ全域
を覆う減圧空間を形成するとともに、前記筒体を
隔てて前記減圧空間の外周部にウオータジヤケツ
トを隣接させて形成している。そして前記減圧空
間を形成するシリンダライナの外周面の全域及び
筒体の内周面の全域にウイツク材を取付けたうえ
で、前記減圧空間に作動媒体を封入したことを特
徴としている。

このように作動媒体が封入された減圧空間でシ
リンダライナの外周のほぼ全域を覆つているため
に、シリンダライナの円周方向はもとより軸方向
への温度勾配をも確実に小さくすることができ
る。また前記減圧空間の内周壁がシリンダライナ
で構成されるとともに、この減圧空間の外周壁を
構成する筒体の外周をウオータジヤケツトに望ま
せたうえで、前記シリンダライナの外周面の全域
及び筒体の内周面の全域にそれぞれウイツク材を
取付けて熱交換面積を確保しているために、ヒー
トパイプの熱伝達能力（冷却能力）を大きくでき
ると同時に、シリンダライナの外周に内外二重の
空間が形成されるのでシリンダブロツクを透過す
る騒音をも低減することができる。

以下に本発明の実施例を図面に基づいて説明す
る。本実施例に係るエンジンは第１図に示すよう
にシリンダブロツク１を備えており、このシリン
ダブロツク１は鋳造によつて形成されたものであ
る。そしてこのシリンダブロツク１には、そのシ
リンダと対応する位置において貫通孔２が形成さ
れており、この貫通孔２には円筒状を成すシリン
ダライナ３が装着されるようになつている。そし
てこのシリンダライナ３の外周側には、もう１つ
の円筒状を成す筒体４が取付けられている。この
筒体４の上端は、上記シリンダライナ３のフラン
ジ５に形成された段部６と係合されており、また
筒体４の下端には内側へ折返された閉塞部７が形
成されており、この閉塞部７がシリンダライナ３
の外周面に密着するようになつている。このよう
にして上記シリンダライナ３と筒体４との間に
は、密閉空間８が形成されている。そしてこの密
閉空間８の内表面には、例えばスチールウールか
らなるウイツク材９が取付けられている。また密
閉空間８内は減圧されるとともに、その中には作
動媒体、例えば水が封入されている。また上記筒
体４の外周側には、ウオータジヤケツト１１が形
成されており、このウオータジヤケツト１１内を
冷却水が還流するようになつている。

以上のような構成において、シリンダライナ３
の内側には図外のピストンが配されるとともに、
シリンダライナ３の上部開口は、シリンダヘツド
によつて閉塞され、これによつてシリンダライナ
３の上部側に燃焼室が形成されることになる。そ
してこのシリンダライナ３内において燃焼爆発が
行なわれることにより、エンジンが出力を生ずる
ようになつている。そして上記燃焼爆発に伴なつ
て、シリンダライナ３はその温度が上昇すること
になり、ウオータジヤケツト１１内を還流する水
によつてこのシリンダライナ３を冷却するように
している。

そして上記シリンダライナ３の外周側には、筒
体４によつて密閉空間８が形成されており、この
密閉空間８内は減圧されるとともに、その内周面
にはウイツク材９が取付けられており、かつ作動
媒体を構成する水が封入されている。従つてこの
シリンダライナ３と筒体４とによつてヒートパイ
プが構成されることになり、このヒートパイプに
よつてシリンダライナ３の半径方向および高さ方
向の熱の移動が行なわれることになる。すなわち
ウイツク材９に含浸された作動媒体を構成する水
は、シリンダライナ３の高温部において蒸発し、
密閉空間８を通つて、シリンダライナ３の円周方
向あるいは高さ方向に低温部へ移動することにな
る。そして密閉空間８の低温側において水蒸気が
液化され、再び上記ウイツク材９に含浸されるこ
とになる。このように作動媒体である水がウイツ
ク材９を通して高温側へ移動するとともに、高温
側において蒸発した水蒸気が密閉空間８内を低温
側に移動するような作動媒体の流動がこの空間８
内において発生し、これによつて熱の移動を生ず
るようにしている。

一般にシリンダライナ３の外側における冷却水
の流れは、第２図におけるシリンダブロツク１の
幅方向の外側の近傍の点Ａにおいては良好である
のに対して、互に隣接するシリンダライナ３の間
の点Ｂにおいては、水の流れが不良になり、従つ
て円周方向における冷却の不均一に伴なうライナ
３の温度勾配が生ずる。また高さ方向について
は、第１図において燃焼室を形成する上部側の方
が下部側よりも温度が高くなる。これらのシリン
ダライナ３の温度の不均一が、密閉空間８内にお
ける作動媒体１０の移動により是正される。従つ
てシリンダライナ３の円周方向および高さ方向に
おける温度差が是正され、ほぼ均一な温度分布を
有するようになる。従つてこのシリンダライナ３
が非円形に変形したり、あるいは高さ方向の一部
が局部的に変形することが防止されることにな
る。

以上のように本実施例に係るシリンダライナ３
は、その外側に筒体を設けるとともに、このライ
ナ３と筒体４との間にウイツク材と水とを収納し
た密閉空間８を形成し、この密閉空間８内におい
て水および水蒸気の流動を行なうことにより、シ
リンダライナ３の高さ方向および円周方向の熱の
移動を行なうようにしたものであるから、シリン
ダライナ３の不自然な変形が防止されることにな
る。従つてこのシリンダライナ３内において摺動
するピストンを潤滑する潤滑オイルの消費量を少
なくすることができる。またシリンダライナ３の
不自然な変形が防止されることから、ピストンと
シリンダライナ３との間におけるスカツフの発生
をも防止することが可能になる。さらにピストン
が上死点でシリンダライナに衝突する際にいわゆ
るスラツプ音を生ずるが、シリンダライナ３の周
囲に減圧の空間８が形成され、しかもこの空間８
の周囲にウオータジヤケツト１１が形成されてい
るために、これら空間８およびウオータジヤケツ
ト１１によるダンピング作用により、シリンダブ
ロツクを透過して外部に漏れ出す騒音を低減する
ことも可能になる。

以上本発明を図示の一実施例につき述べたが、
本発明は上記実施例によつて限定されることな
く、本発明の技術的思想に基づいて各種変更が可
能である。例えば上記実施例においては、作動媒
体として水を利用し、またウイツク材としてスチ
ールウールを使用しているが、これらの作動媒体
やウイツク材については、その他の各種のものを
選択することが可能である。

以上に述べたように本発明は、シリンダライナ
の外周側に筒体を取付け、この筒体とシリンダラ
イナとの間の空間を減圧の空間にし、この空間内
にウイツク材を取付けるとともに、作動媒体を封
入するようにしたものである。従つてシリンダラ
イナの外周側がヒートパイプと同一の構造とな
る。しかもこのヒートパイプの内周壁をシリンダ
ライナで構成してその外周面のほぼ全域で熱交換
を行わせるとともに、ヒートパイプの外周壁を構
成する筒体の外周面のほぼ全域をウオータジヤケ
ツトに曝すことによつて熱交換を行わせるという
ように、シリンダライナおよび筒体の全域で熱交
換を行わせるようにしているために、ヒートパイ
プによる温度勾配の是正能力を大きくすることが
できると同時にウオータジヤケツトを流れる水へ
の放熱能力をも大きくすることができる。このた
めにヒートパイプによつてシリンダライナの外周
のほぼ全域を被覆したことと相俟つてシリンダラ
イナの円周方向および高さ方向の温度分布を均一
なものとすることが可能になる。従つてシリンダ
ライナの不自然な変形、すなわち非円形の変形が
高さ方向における局部的な変形を防止することが
可能になる。従つて潤滑オイルの消費量およびス
カツフの発生を改善できる。さらにシリンダライ
ナの変形量の減少に伴なつて騒音の発生そのもの
を低減できるとともに、減圧空間およびウオータ
ジヤケツトによるダンピング作用で騒音の遮断機
能を改善できるために、シリンダブロツクを透過
して外部に漏れ出す騒音を低減することもでき
る。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例に係るシリンダライ
ナを備えたエンジンの要部縦断面図、第２図は第
１図おける〜線断面図である。なお図面に用
いた符号において、 ３…シリンダライナ、４…筒体、８…密閉空
間、９…ウイツク材、１０…水（作動媒体）であ
る。

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. １ シリンダライナとこのシリンダライナの外周
   に配設した筒体とで形成したシリンダライナの外
   周ほぼ全域を覆う減圧空間と、前記筒体を隔てて
   前記減圧空間の外周部に隣接させて形成したウオ
   ータジヤケツトと、前記減圧空間を形成するシリ
   ンダライナ外周面及び筒体内周面の全域に取付け
   たウイツク材とを備え、前記減圧空間に作動媒体
   を封入したことを特徴とするシリンダライナ。