JPS6346670Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は、ライナーをシリンダ母材に鋳込んで
なる内燃機関用シリンダに関するものである。

従来より、シリンダ内壁面の耐摩耗性を向上す
るために、例えばアルミニウム鋳物製のシリンダ
母材に鋳鉄製のライナーを内装することは公知で
ある。そして、一般に、上記ライナーの外周に
は、シリンダ母材の上端および下端に相当する位
置に、鍔部を形成し、ライナーの移動を拘束する
ようにしている。

しかるに、上記のようにライナーの上下の鍔部
でシリンダ母材のシリンダ内周部の上下端を挟む
ようにして、ライナーの移動を拘束するようにし
たものでは、ライナーの抜け止めは有効に行われ
るが、温度変化に応じた熱変形による弊害があ
る。すなわち、通常ライナーは耐摩耗性の大きい
鋳鉄材で形成される一方、シリンダ母材は軽量で
熱伝導性の良好なアルミニウム合金にて形成され
るものであり、両者は熱膨張差が大きく、高温時
に、両鍔部間に狭まれた部分のシリンダ母材の熱
膨張により、ライナーの下部が内側に湾曲して張
り出すように変形し、ピストンの摺動に対しピス
トンリングのシール不良によりガス洩れを生じ、
ピストン焼付き等を発生するおそれがある。

また、上記温度変化を繰り返し受けている間
に、ライナーの鍔部と接触するシリンダ母材側の
アルミニウム座面が座屈変形し、ライナーの端面
とシリンダ母材の端面との位置がずれ、シリンダ
ヘツドとの合せ面に段差が生じ、ガスケツトによ
るガスシール性を損ない、ガス洩れを生じやす
い。

一方、ライナーの上端および下端以外に鍔部を
形成した場合には、この鍔部から合せ面に至る長
さに応じて発生するライナーとシリンダ母材との
熱変形差により、シリンダヘツドとの合せ面に段
差が生じ、ガスシール性を損なう場合がある。

シリンダヘツドとの合せ面に上記段差が生じる
と、ライナーとシリンダ母材間に直径方向の熱膨
張差によつて発生している隙間に対し、焼燃室か
らの高圧ガスが侵入し、熱伝導性が低下し、ライ
ナー温度が上昇する問題がある。

本考案はかかる点に鑑み、ライナーの外周部に
環状の鍔部を１つ設け、該鍔部はシリンダヘツド
との合せ面から100mm以内の合せ面近傍位置に配
設してシリンダ母材に鋳ぐるまれてなる内燃機関
用シリンダを提供し、合せ面に生ずる段差を低減
してガスシール性を維持するとともに熱伝導性を
改善せんとするものである。

以下、本考案の実施例を図面に沿つて説明す
る。第１図に示す２サイクル空冷式内燃機関のシ
リンダ１において、２は鋳鉄製のライナー、３は
アルミニウム鋳物製のシリンダ母材であつて、４
は吸気ポート、５は排気ポート、６は掃気ポート
である。

上記ライナー２の外周部には、シリンダヘツド
との合せ面１ａ近傍位置において、この合せ面１
ａより距離Ｌだけ内方の位置に、環状に突出した
鍔部７が形成されている。この鍔部７は、上記各
ポート４，５，６の開口位置より上方に形成され
て、シリンダ母材３に鋳ぐるまれている。

また、上記鍔部７は、シリンダ母材３の上部外
周に配設された空冷用シリンダフイン８の位置に
合致して形成されている。

さらに、上記ライナー２において、鍔部７下方
の各ポート４，５，６の開口部を含む部分の肉厚
は、鍔部７上方の肉厚よりも大きく形成されてい
る。

上記合せ面１ａから鍔部７までの距離Ｌは、
100mm以下で好ましくは25mm以下に設定するもの
である。すなわち、熱膨張差に伴うライナー２上
端とシリンダ母材３上端との段差は、その値が
0.05〜0.2mm程度になるとガス洩れが発生するも
のであるが、この値はガスケツトの種類、材質に
よつて異なる。一方、合せ面１ａから鍔部７まで
の距離Ｌに対応する熱膨張差の大きさ、すなわ
ち、段差の発生量は、ライナー２およびシリンダ
母材３の線膨張係数および運転時の温度によつて
決定され、両者の線膨張率を、 鋳鉄の線膨張率：11×10^-6／℃ アルミニウム鋳物の線膨張率：21×10^-6／℃ とし、ライナー２およびシリンダ母材３の運転時
温度を200〜250℃とした場合、上記段差を0.2mm
以下とするためには、距離Ｌは100mm以下とする
必要があり、段差0.05mm以下とするためには、距
離Ｌは25mm以下とする必要がある。

また、第２図には変形例のシリンダ１０を示す
ものであり、ライナー１１の外周部に形成した環
状の鍔部１２は、シリンダ母材１３のシリンダフ
イン１４の内部にまで突出し、包合さたれ状態で
鋳ぐるまれてなり、この鍔部１２からシリンダフ
イン１４に伝導する熱量が増大し、放熱効果が向
上するものである。その他、合せ面１０ａから鍔
部１２までの距離Ｌ等については、前例と同様に
設定されている。

上記実施例のように構成すると、シリンダ合せ
面１ａにおける段差の発生を許容値以下とするこ
とができ、良好なガスシール性を容易に維持して
ガス洩れが防止できる。よつて、従来、洩れたガ
スがライナー２とシリンダ母材３間の隙間に侵入
する結果、ライナー２とシリンダ母材３との接触
面での熱伝導性が低下して放熱効果が低下する不
具合が改善でき、良好な冷却性能を維持するる。
また、鍔部７はライナー２で最も高温となる合せ
面１ａの近傍部分に形成し、この鍔部７の形成に
伴う接触（伝熱）面積が増加し、特に、シリンダ
フイン８に合致しているのでその放熱量が多く、
冷却性能が改善される。

さらに、鍔部７の位置は、燃焼室が最大爆発圧
となるときのピストンリングの位置に対応するの
で、ピストンリングが最も厳密なシール機能が要
求されるとき、シリンダ内径の変形が最も少ない
位置にピストンリングが位置することになり、良
好なシール性が得られる。

なお、特に、２サイクル内燃機関においては、
ライナー２下部は上部より強度が要求されるが、
これに対して、鍔部７下方の肉厚を増すことで解
決している。

以上説明したように、本考案シリンダによれ
ば、ライナーの合せ面近傍位置の外周部にシリン
ダ母材に鋳ぐるまれた環状の鍔部を１つ設けたこ
とにより、温度上昇時の熱変形差によつて合せ面
に発生する段差を低減し、ガスケツトによるガス
シール性を損なうことなく、また、ライナーの下
部における熱膨張差によつてライナーが拘束変形
を受けることなく、さらに、ピストン焼付き等を
生起することなく、この部分においても良好なガ
スシール性を維持し、しかもライナーからシリン
ダ母材への熱伝導性を向上し、良好な冷却性能を
得ることができる効果を有する。

【図面の簡単な説明】

図面は本考案の実施態様を例示し、第１図はシ
リンダの中央縦断面図、第２図は変形例を示す要
部縦断面図である。 １，１０…シリンダ、１ａ，１０ａ…合せ面、
２，１１…ライナー、３，１３…シリンダ母材、
７，１２…鍔部、８，１４…シリンダフイン。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 (1) ライナーを鋳込んだ内燃機関用シリンダにお
   いて、上記ライナーの外周部に環状の鍔部を１
   つ設け、該鍔部はシリンダヘツドとの合せ面か
   ら100mm以内の合せ面近傍位置に配設されシリ
   ンダ母材に鋳ぐるまれていることを特徴とする
   内燃機関用シリンダ。 (2) ライナーの鍔部は、空冷用シリンダフインの
   配設位置に合致して形成されている実用新案登
   録請求の範囲第１項記載の内燃機関用シリン
   ダ。