JPH0114421B2 - - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】 本発明は自動車の始動電動機に係り、特に、出
力回転軸に取り付けたピニオンの移動位置を規制
するピニオンストツパ装置に関するものである。

従来の始動電動機のピニオンストツパ装置は、
ピニオンよりも先端部の出力回転軸上に設けたも
のと、例えば特開昭55−54666号公報に開示され
ているような、出力回転軸の回転力をピニオンに
伝達するヘリカルスプライン部の後方に設けたも
のとがある。前者は、ピニオンよりも先端部の摺
動面に塵埃が付着したり錆を生じたりしてピニオ
ンが摺動不良を起すという欠点がある。また、後
者は構造が複雑で高価になるという欠点をもつて
いる。更に、両者共オーバーランニングを防止す
るクラツチのクラツチスリーブに振れ止め部材が
常時接触しているので、振れ止め部材と出力回転
軸との隙間を微少にすると、クラツチの偏心、出
力回転軸上の塵埃によつて、ピニオンが摺動不良
になり易い。これはピニオンを動作させるマグネ
テツクスイツチの初期押込み力が小さいことも原
因の一部となつている。

本発明は簡単な構造で駆動力伝達部の振れを防
止することができる始動電動機のピニオンストツ
パ装置を提供することを目的とし、電動機の出力
軸に形成したヘリカルスプラインに螺合し、エン
ジン駆動用のピニオンを軸方向に推進させるため
のスプラインチユーブ部、及び、上記電動機のオ
ーバランを防止するオーバランニングクラツチを
収容するクラツチスリーブと、上記出力軸に取り
付けられかつ上記オーバランニングクラツチの内
側に設置され、上記ピニオンの移動範囲を制限す
るピニオンストツパとを有する始動電動機におい
て、上記ピニオンストツパの外径部と上記スプラ
インチユーブ部の内径部とに、上記ピニオンの移
動が阻止された状態で、上記ヘリカルスプライン
と上記スプラインチユーブ部内面に形成したヘリ
カルスプラインとの噛み合い部の径方向ギヤツプ
より小さい間隙を保持して対向する上記クラツチ
スリーブの振れ防止面が設けられていることを特
徴とするものである。

第１図は本発明の一実施例である始動電動機の
要部断面図である。アーマチヤ１の出力回転軸
（以後シヤフトと記す）２はセンターブラケツト
３に取り付けたボールベアリングに支持されて突
出している。このシヤフト２の先端部にはピニオ
ンメタル６を取り付けた管状のピニオン５が嵌合
しており、その先端をふた７で封止している。ま
た、ピニオン５の中間部は軸受部材８を介してク
ラツチハウジング４に回転・移動自在に支持され
ている。

ピニオン５の左端はローラ９を介してクラツチ
スリーブ１０のアウタ部１１に接触し、ローラ９
を包囲すると共にピニオン５をクラツチスリーブ
１０に係止させるために一対のＣワツシヤ１３、
グリース流出防止用のシールワツシヤ１４および
止め輪１５をアウタ部１１に設けている。また、
クラツチスリーブ１０の左半細径部であるスプラ
インチユーブ部１２にはコイル状のスリーブばね
１８が巻回され、このスリーブばね１８の左端が
接触するスリーブ１６とスプラインチユーブ部１
２の左端に取り付けた環状板であるスリーブワツ
シヤ１７との間にはシフトレバー２０の下端が介
在している。このシフトレバー２０の中間部はピ
ン１９で支持され、上端部はマグネチツクスイツ
チ２１のプランジヤ２３の先端に取り付けた金具
の孔内に挿入されている。

ここでクラツチ動作を説明する。マグネテツク
スイツチ２１に通電するとコイルばね２２を圧縮
してプランジヤ２３は矢印方向に引き付けられ、
シフトレバー２０はクラツチスリーブ１０を介し
てピニオン５を矢印方向に前進させる。このとき
ピニオン５の先端は図示されていないリングギヤ
と噛み合つてエンジンを始動させることになる。
なお、第１図はこの始動電動機が静止している状
態であり、クラツチスリーブ１０のスプラインチ
ユーブ部１２内面に形成した穴ヘリカルスプライ
ン２５とシヤフト２に設けた軸ヘリカルスプライ
ン２４とは僅かに噛み合つた状態となつている
が、上記のごとくピニオン５がリングギヤと噛み
合う始動時にはヘリカルスプライン２４，２５は
深く螺合して確実に動力を伝達する。また、エン
ジンが始動したときはピニオンを急速に高速回転
させアーマチヤ１をオーバーランさせる恐れがあ
るので、これを防止するためにローラ９と図示さ
れていないがローラ押しばねとが設置され、クラ
ツチ作用を行わせている。

シヤフト２の中間部に形成した環状のクリツプ
溝２７にはクリツプ２８が設置され、このクリツ
プ２８でピニオンストツパ２６が係止されてい
る。ピニオン５が前進してエンジンを始動させた
ときはピニオンストツパ２６の外周面はクラツチ
スリーブ１０のスプラインチユーブ部１２の内径
面と僅少な隙間を介して対向し、クラツチスリー
ブ１０およびオーバーランニングクラツチの振れ
を抑制している。また、第１図に示すようにピニ
オンストツパ２６左端面とクラツチスリーブ１０
の端面との間隔ｌにピニオンストツパ２６の厚さ
を加えた範囲がクラツチスリーブ１０とピストン
５の移動できる最大範囲である。

本実施例のピニオンストツパ装置は、スプライ
ンチユーブ部１２の内径部とピニオンストツパ２
６の外径部とが僅かな間隙をもつて対向するよう
になるので、動力伝達時にはオーバーランニング
クラツチの振れを防止すると共に、ピニオン５の
突出位置を規制するという効果が得られる。ま
た、その構成は比較的簡単であるという利点をも
つている。

第２図は本発明の他の実施例である始動電動機
の要部断面図で、第１図と同じ部分には同一符号
を付してある。この場合はスプラインチユーブ部
１２の内径部とピニオンストツパ２６の外径部が
45゜以下の勾配面をもつて対向している。即ち、
アーマチヤ１の動力をピニオン５に伝達している
時は、穴ヘリカルスプライン２５と軸ヘリカルス
プライン２４との間に、ピニオンストツパ２６の
方向への推力が発生するため、シヤフト２、ピニ
オンストツパ２６、クラツチインナー部２９、穴
ヘリカルスプライン２５と一体となつているアウ
タ部１１は完全に同心の状態となり、クラツチ機
能が100％発揮される。また、ピニオン５が図示
されていないエンジンによつてオーバーランさせ
られたときは、軸方向に多少の振れが生じても
45゜以下のテーパー面であるのでギヤツプ発生は
微少であり、振れ止めの効果を十分に果すことが
できる。

本実施例のピニオンストツパ装置は、ピニオン
ストツパ２６の外面に45゜以下のテーパー面を形
成してスプラインチユーブ部１２の内径部に微小
隙間を介して対向させることによつて、更に振れ
止めが顕著になるという効果をもつている。

本発明の始動電動機のピニオンストツパ装置
は、ピニオンストツパをオーバーランニングクラ
ツチ内に設け、ピニオンは封止しているので塵埃
等がシヤフトに付着して摺動不良を起すことがな
い。また、ピニオン駆動時にはピニオンストツパ
の外面がクラツチスリーブの内面に微小間隙を介
して対向しているので動力伝達部の振れを抑制す
る等の効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本発明の一実施例である始動電動機の
要部断面図、第２図は本発明の他の実施例である
始動電動機の要部断面図である。 １……アーマチヤ、２……シヤフト、５……ピ
ニオン、９……ローラ、１０……クラツチスリー
ブ、１１……アウタ部、１２……スプラインチユ
ーブ部、１６……スリーブ、１７……スリーブワ
ツシヤ、１８……スリーブばね、１９……ピン、
２０……シフトレバー、２１……マグネテツクス
イツチ、２２……コイルばね、２３……プランジ
ヤ、２４……軸ヘリカルスプライン、２５……穴
ヘリカルスプライン、２６……ピニオンストツ
パ、２７……クリツプ溝、２８……クリツプ、２
９……クラツチインナー部。

Claims (1)

1. 【特許請求の範囲】 １ 電動機の出力軸に形成したヘリカルスプライ
   ンに螺合し、エンジン駆動用のピニオンを軸方向
   に推進させるためのスプラインチユーブ部、及
   び、上記電動機のオーバランを防止するオーバラ
   ンニングクラツチを収容するクラツチスリーブ
   と、上記出力軸に取り付けられかつ上記オーバラ
   ンニングクラツチの内側に設置され、上記ピニオ
   ンの移動範囲を制限するピニオンストツパとを有
   する始動電動機において、上記ピニオンストツパ
   の外径部と上記スプラインチユーブ部の内径部と
   に、上記ピニオンの移動が阻止された状態で、上
   記ヘリカルスプラインと上記スプラインチユーブ
   部内面に形成したヘリカルスプラインとの噛み合
   い部の径方向ギヤツプより小さい間隙を保持して
   対向する上記クラツチシリーズの振れ防止面が設
   けられていることを特徴とする始動電動機のピニ
   オンストツパ装置。 ２ 上記クラツチスリーブの振れ防止面が、上記
   出力軸に対してなす角が45゜以下の勾配面よりな
   る特許請求の範囲第１項記載の始動電動機のピニ
   オンストツパ装置。