JPH0114309Y2 - - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 本考案は糸切り装置を備えたミシンに関し、そ
の目的とするところは、簡単且つ合理的な構成に
より、布押えの上死点を縫針の上死点位置に対応
した位置まで引き上げ、厚物の縫い能力を向上さ
せるものである。

糸切り装置を備えたミシンは、縫針に挿通され
ている上糸の残り量を所定の長さ確保し、糸抜け
しない状態で切断を終える必要がある。そのため
糸切り作動は、縫針が上死点位置を通過して若干
下降した位置に到達した時に完了される。従つて
自動車の座席張りに用いるクツシヨン地の如き厚
物を縫製する場合には、縫製可能な最大厚さは針
板面と縫針先端との距離により決定されるから、
糸切り後次の縫製を行なうに際し、縫針が上死点
よりも下方位置にあればそれだけ厚物縫いの能力
が落ちることになる。即ち、糸切り完了後縫針が
布押えの下方へ僅かでも突き出していると、針先
が被縫製物と引つ掛かりを起こすから、布押えの
上昇高さは糸切り完了時における縫針位置より低
く設定しておかなければならない。糸切り完了時
の縫針高さは、前記した如く上死点より若干下降
した位置であるから、縫針が上死点にある場合と
比べて、布押えの上昇位置を低く設定せざるを得
なかつたのである。

ところで糸切り装置付ミシンは、縫製終了時に
フツトスイツチであるは足踏みペダル等の操作に
よつて糸切りが行なわれ、糸切りの次には必ず布
押えの上昇操作を行なうといつたように両操作は
連続して実行される。そこで布押え上昇操作に連
繋して縫針位置を上死点まで引き上げれば、布押
えの上死点位置も同じく引き上げることができ
る。

本考案は、布押えの上死点位置を縫針の上死点
位置に対応する位置まで引き上げるため、布押え
上昇操作に連繋して針上げ作動を実行させるもの
で、その構成は、糸切り装置を備えたミシンの縫
針駆動軸と連動する任意の回転軸に、該回転軸と
一体的に回転する腕杆を軸方向と直交状に突設
し、糸切り終了時における該腕杆の先端へ直角に
当接して逆転方向に押戻し作動する進退部材を、
布押え昇降装置の操作に連動して作動可動に設け
たことにある。

次に本考案の実施一例を図面に従つて説明する
と次の通りである。

即ち、本考案に直接関連のある部材を示した第
１図の糸切り装置付きミシンにおいて、１はモー
ター（図示せず）によつてビルト駆動され、一方
向に回転する上軸であつて、該上軸１の回転によ
つて針棒２の上下及び揺動機構、布送り機構を
各々所定のタイミング及びサイクルで連続的に働
かせる。又軸端に取付けられた位置検出器３によ
り停止位置の制御が正確に行なわれるようになつ
ている。４は上記上軸１と歯形ベルト５又は歯車
機構等によつて同調回転する下軸であり、該下軸
４には、上下二つ割り構造で、対向面に下軸４の
外周形状に合致した凹部を有する回転腕体６が、
軸方向と直交姿勢で該下軸を両側から挟持し、ボ
ルト７ａ及びナツト７ｂで一体的に締着固定され
ている。８は布押えであり、該布押え８は、操作
棒９の上下操作に連動して昇降し、該操作棒９
は、上向きに備えたシリンダ１０によつて押上げ
力が付与されるようになつている。ミシンに糸切
り信号を与えると、所定の回転により縫合作業を
繰り返していた該ミシンが針棒２が上死点を通過
して若干下降した位置で停止するまでに、糸切り
メスが糸を切断する。尚該糸切り装置は、既存の
糸切り装置付きミシンにおいて多用されているも
のであるから、詳しい機構の説明をここでは省略
する。

前記回転腕体６は、上記針棒２が上死点より若
干下降した糸切り完了時に水平姿勢となるように
取付けられていると共に、シリンダ１１が、該姿
勢における回転腕体６の先端に対し腕体に直交し
てシリンダロツドが当接し、逆回転方向へ押戻し
力を付与するように備えられている。該シリンダ
１１及び前記シリンダ１０は、布押え上昇スイツ
チ（フイツトスイツチ）１２を操作することによ
つて電磁バルブが開いてエアーが送り込まれ、各
シリンダロツドの先端が、一方は回転腕対６の先
端下方に当接して逆回転方向へ押し戻して下軸４
と連動するすべての軸を逆転させて針棒２を上死
点位置まで押し上げ、他方は操作棒９を押し上げ
て布押え８を上昇させるといつたように二つの作
動が同時進行する。該作動によつて、糸切り終了
時第２図示の如く、針棒２下端に取付けられた縫
針１３の先端を、A′位置からＡ位置、即ち縫針
１３の上死点における布押えの上限まで引き上げ
ることが可能となり、それによつて針板と布押え
との間隔が大きくなつて、更に厚い被縫製物を縫
着することができるようになる。

尚当該実施例のミシンは、下軸の押し戻しと布
押えの上昇操作を夫々独立したシリンダにより行
なうものについて示したが、例えば操作棒に押上
げ爪を一体的に取付け、該押上げ爪が回転腕体に
当接し、該回転腕体を押し戻しする構造とするこ
とも可能であるし、操作棒の昇降操作を、足踏み
ペダルにより直接作動させるものであつても差支
えない。要するに、布押えの上昇操作に連繋して
回転腕体が反対方向へ押し戻され、上軸が逆転し
て縫針を上死点まで引き上げることができれば、
回転腕体の取付け軸、及び取付け位置、大きさ、
構造、戻し力の付与手段等は任意に定めて差し支
えないのである。

以上の如く本考案によれば、上軸と連動する任
意の回転軸に回転腕体を取付け、該回転腕体の先
端に、布押え上昇操作に連繋して反対方向へ押圧
力を付与するものであるから、構造が簡単で、既
存のミシンにも僅かな空間を利用して組込み可能
である。そして本機構を組込むことによつて、厚
物縫い可能な厚さが、糸切り終了時の状態で可能
な限度より大幅に向上し、車の座席に用いるクツ
シヨン材等の厚物縫いには絶好なミシンとなる。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案に特に関係の深い部品のみを示
した糸切り装置付きミシンの斜視図、第２図ａ、
第２図ｂは回転腕体押戻し作動と縫針の上昇作動
の関連を示す説明図である。 １……上軸、２……針棒、３……位置検出器、
４……下軸、５……歯形ベルト、６……回転腕
体、７ａ……ボルト、７ｂ……ナツト、８……布
押え、９……操作棒、１０……シリンダ、１１…
…シリンダ、１２……上昇スイツチ、１３……縫
針、Ａ，A′……針先の位置。

Claims (1)

1. 【実用新案登録請求の範囲】 １ 糸切り装置を備えたミシンの縫針駆動軸と連
   動する任意の回転軸に、該回転軸と一体的に回
   転する腕杆を軸方向と直交状に突設し、糸切り
   終了時における該腕杆の先端へ直角に当接して
   逆転方向に押戻し作動する進退部材を、布押え
   昇降装置の操作に連動して作動可動に設けたこ
   とを特徴とする糸切り装置付きミシンにおける
   針上げ機構。 ２ 前記進退部材が、布押え昇降スイツチの操作
   によつて作動するエアシリンダのロツドである
   ところの実用新案登録請求の範囲第１項記載の
   糸切り装置付ミシンにおける針上げ機構。 ３ 前記進退部材が、布押え昇降操作用の足踏み
   ペダルによつて昇降する操作棒と一体的に上下
   運動する戻し爪であるところの実用新案登録請
   求の範囲第１項記載の糸切り装置付きミシンに
   おける針上げ機構。