以下、本実施形態の具体的構成について図面を参照して説明する。以下の説明は、本発明の好適な実施の形態を示すものであって、本発明の範囲が以下の実施の形態に限定されるものではない。以下の説明において、同一の符号が付されたものは実質的に同様の内容を示している。
(実施形態1)
本実施形態の光学定数決定装置及び光学定数決定方法は、基本的な原理として、反射分光(分光干渉)式の分光膜厚分布測定法を利用する。本実施形態では、光学定数及び薄膜構造のデータを予め多数用意しておく。それらをフィッティングパラメータに取り込むことにより未知の薄膜の光学定数の決定及び膜厚解析を行う。このような目的のために、以下の8点を用いた反射分光式の分光膜厚分布測定を考える。
(1)最適な光学定数ファイルを検索して膜厚解析をする。同じ薄膜構造の試料の場合には、検索によって決定した光学定数を用いて、2次元的な膜厚分布を解析することができる。
(2)光学定数ファイルには材質の情報が入っているので、膜厚分布と同時に、薄膜の材質分布をマッピングすることができる。試料上に絶縁膜や金属膜など複数の材質が存在しても対応できる。
(3)試料面上に薄膜構造が異なる場所があっても、膜厚分布と同時に積層数分布をマッピングすることができる。例えば、Siウエハー上にSiO2膜が全面にあり、部分的にフォトレジスト膜がパターン形成されていても、膜厚、積層数、膜種をマッピングすることができる。
(4)共焦点光学系を使うことで、透明基板の裏面反射光を除去することができ、正味の表面反射光を正確に測定することが期待される。
(5)従来の分光膜厚計のように反射光を分光するかわりに、照明を単色光を含むものとして試料の反射強度を測定する。そして、照明波長を変える度に、反射強度を同一視野に対して測定する。従って、反射率の波長依存性、すなわち、反射スペクトルを得ることができる。この時に各波長に対して撮像することで、反射率を2次元的に画像化できる。
(6)共焦点光学系を使い、zスキャンすることで、表面形状を膜厚程度の誤差を含んだ形だが、3次元計測することができる。基板に凹凸やそりがある場合は、その情報を同時に測定できる。
(7)共焦点光学系を使い、zスキャンによる焦点合成を行い、全焦点画像を作成することで、試料面全てに焦点を合わせた測定をすることができる。したがって、空間分解能が劣化させずに、膜パターンエッヂなどの測定の影響を低減することができる。
(8)共焦点光学系を使い、微細パターンの膜厚分布を測定するために、開口数NAの大きな対物レンズを使うことで、数μmのパターン幅でも反射像を撮像できる。
(1)~(8)から、観察画像の各画素に対して、分光スペクトルを得ることができるので、絶対反射率に換算して、膜厚と光学モデル(光学定数と膜構造)とをパラメータとするフィッティングを行うことにより、材質不明の膜厚まで求めることができる。波長は、例えば、400~700nmの間の数波長でもよい。
共焦点光学系において、観察波長を変えると、合焦点位置が変化することが考えられるので、これによる輝度の変化が予想される。これは、各波長による合焦点位置のズレ分を予め、PCに記憶しておき、各波長に対して、ズレ分だけ自動的に試料あるいは対物レンズのz位置を調整することでキャンセルする。あるいは、それぞれの波長において、全焦点画像をzスキャンにより作製してもよい。
絶対反射率の基準試料として、シリコンや石英ガラスなどの、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定しておくことで、観察光学系自身の波長依存性は計算により補正できる。
光学定数及び薄膜の積層構造が不明であっても、カーブフィット法を用いることにより、薄膜の膜厚測定をすることができる。試料面上の薄膜が複数の種類の薄膜で構成されていても、膜種を判定しながら膜厚分布解析を行うので、膜種分布、積層数分布も同時に決定することができる。
共焦点顕微鏡を用いて、照明波長を切り替えながら、反射強度を測定することで、基板上の膜厚分布を測定することができる。膜厚分布のムラの大きい場合でも非接触・非破壊で短時間に測定することができる。光学顕微鏡の焦点深度より大きな段差のある表面の膜厚測定にも対応できる。空間分解能を上げるには共焦点光学系が適している。
以下で、実施形態1に係る光学定数決定装置及び光学定数決定方法を具体的に説明する。まず、[光学定数決定装置の構成]を説明する。その後、[光学定数決定方法]を説明し、[膜厚解析]を説明する。
[光学定数決定装置の構成]
図1は、実施形態1に係る光学定数決定装置の構成を例示した図である。図1に示すように、本実施形態に係る光学定数決定装置100は、光源11、波長選択部12、レンズ13a、13b、13c、スリット14、ビームスプリッタ15、振動ミラー16、対物レンズ17、ステージ18、光検出器19、処理部20を備えている。光源11及び波長選択部12は、光源部10を構成している。レンズ13a、13b、13c、スリット14、ビームスプリッタ15、振動ミラー16及び光検出器19は、共焦点光学系101を構成している。ステージ18上には、試料30が載置されている。光学定数決定装置100は、基板31と、基板31上に設けられた薄膜32とを含む試料30の薄膜32の光学定数を決定する。光学定数は、薄膜32の材質の屈折率及び消衰係数を含む。また、光学定数決定装置100は、薄膜32の膜厚を測定する。なお、薄膜32が無い場合には、光学定数決定装置100は、基板31の光学定数を決定することができる。
光学定数決定装置100は、光学定数ファイル21を備えてもよい。光学定数ファイル21は、例えば、400nm~700nmまでの波長について、1nm毎のごとの光学定数が並べられたファイルである。光学定数ファイル21に格納された光学定数は、測定された測定値でもよいし、理論的に計算した計算値及び文献に記載された値でもよい。光学定数ファイル21には、材質名や材質の種類(金属、ガラス等)、膜厚毎の波長と反射率との関係等の情報も格納されてもよい。
なお、光学定数ファイル21は、光学定数決定装置100に備えられたものに限らず、外部の記憶装置に格納されてもよいし、インターネットを介してクラウド上から取得できるものでもよい。また、波長は、400nm~700nmに限らず、400nm未満でもよいし、700nm以上でもよい。
光源11としては、水銀ランプ、キセノンランプ等のような連続スペクトルに複数の輝線を含む白色光源が用いられる。なお、例えば、紫外から赤外域(185nm~2000nm)に幅広い連続スペクトルを有するキセノンランプを用いてもよい。もちろん、光源11としては、キセノンランプに限らず、白色ダイオード、白色レーザ等を用いてもよい。後述するように、波長を選択できればどのような光源を用いてもよい。
光源11からの光によって、試料30を観察するための光学系について説明する。光源11から出射した光は、波長選択部12を通過し、特定の波長の光を含む照明光に変換される。
波長選択部12は、共焦点光学系101を介して試料30を照明する照明光の波長を選択する。波長選択部12は、例えば、バンドパスフィルタBPFである。バンドパスフィルタBPFは、複数の波長帯を透過させるマルチバンドパスフィルタでもよいし、1つの波長帯を透過させるバンドパスフィルタBPFでもよい。本明細書において、バンドパスフィルタBPFと呼ぶ場合は、マルチバンドパスフィルタ及びバンドパスフィルタを含む。バンドパスフィルタBPFと光検出器19との関係は、後述する。
波長選択部12は、特定波長の光を選択的に透過させる複数のバンドパスフィルタBPFを用いてもよい。これにより、複数の単一波長の照明光を選択的に透過させる。例えば、照明光の波長として、水銀キセノンランプの輝線に対応する波長の405nm、436nm、488nm、546nm、578nm、及び水銀キセノンランプの輝線ではない514nm、633nmを選択することができる。水銀キセノンランプを用いる場合、輝線に対応する波長以外の波長の光をバンドパスフィルタBPFで選択することも可能である。輝線の波長以外の光は強度が小さいため、バンドパスフィルタBPFの半値幅を広くすることによりバランスを取ることができる。波長選択部12は、複数の波長を切り替えてもよい。なお、波長は、連続的に切り替えてもよいし、断続的に切り替えてもよい。例えば、400nm~650nmの間で5~7波長を選択してもよい。
なお、光源11として単波長のレーザ光を出射するレーザ光源を用い、波長変換素子を設けてもよい。例えば、第二高調波発生により、波長変換素子に入射する単波長の光の波長変換を行うことができる。また、光源11として、可変波長レーザを用いることも可能である。さらに、異なる波長のレーザ光を出射する複数のレーザ光源を設けて、複数のレーザ光源のうちの所望の波長の光を選択するようにしてもよい。
共焦点光学系101は、光源部10からの照明光を試料30まで導くとともに、試料30からの反射光を光検出器19まで導く。波長選択部12を透過した照明光は、レンズ13aを透過して、スリット14に入射する。照明光は、スリット14を通してX方向のライン状に整形される。そして、ライン状の照明光は、ビームスプリッタ15に入射する。ビームスプリッタ15は、偏光状態によらずに、反射光と透過光の光量が略1:1になるように、光を分岐する。従って、照明光の略半分がビームスプリッタ15を透過する。
その後、図1中右方向に進む光は、振動ミラー16に入射する。振動ミラー16により、X方向のライン状の照明光で試料30上をY方向に走査する。これにより、試料30面上をXYに走査することができる。振動ミラー16としては、例えば、ガルバノミラー、ポリゴンミラー等を用いることができる。
振動ミラー16により、下方に反射された照明光は、対物レンズ17により集光され、試料30に照射される。試料30は、ステージ18上に載置されている。そして、試料30からの反射光は、再度対物レンズ17を通過し、振動ミラー16により再び反射され、ビームスプリッタ15へ入射する。その後、入射した光の略半分がビームスプリッタ15で反射され、レンズ13cに入射する。レンズ13cは、光検出器19の受光面に合成光を結像させる。レンズ13cを透過した光は、光検出器19で受光される。
光検出器19は、試料30で反射した反射光を検出し、試料30の測定領域における画像を取得する。光検出器19は、試料30のコンフォーカル画像を撮像する3CCD(Charged Coupled Device)ラインセンサ等でもよい。例えば、光検出器19は、青色画像撮像素子、緑色画像撮像素子及び赤色画像撮像素子の3つの撮像素子を有してもよい。青色画像撮像素子は、青色波長帯域の波長の光による画像を取得する。緑色画像撮像素子は、緑色波長帯域の波長の光による画像を取得する。赤色画像撮像素子は、赤色波長帯域の波長の光による画像を取得する。
このようにして、光検出器19は、共焦点光学系101を介して試料30を照明した照明光が試料30で反射した反射光を、共焦点光学系101を介して検出し、反射光に含まれた複数の波長の光による試料30の各画像を取得する。なお、共焦点光学系101の方式が用いられていれば、走査方法等は異なってもよく、スリット14や及び光検出器19は、方式に適応したものを適宜用いることができる。例えば、振動ミラー16の代わりに、音響光学素子であるAODを用いることも可能である。また、光検出器19にラインセンサを用いた場合のスリット14と振動ミラー16との組み合わせの代わりに、光検出器19に点センサを用いた場合のXY2次元スキャンの組み合わせを適用してもよい。
ステージ18は、図示しないZ軸駆動モータを有しており、試料30をZ方向に移動させることができる。ステージ18をZ方向に移動することにより、試料面が焦点位置にくるように制御される。なお、ステージ18がZ方向に移動するかわりに、対物レンズ17を移動させて焦点位置調整を行うこともできる。可変焦点レンズ等による焦点合成でもよい。
共焦点光学系101において、観察する波長が異なると合焦点位置が変化することが考えられ、これによる輝度の変化が予想される。この場合には、各波長の合焦点位置のズレ分を予め測定して処理部20に記憶しておき、波長毎に、ズレ分だけ自動的に試料30あるいは対物レンズ17のZ位置を微調整することでキャンセルすることができる。あるいは、それぞれの波長において、全焦点画像をZスキャンにより作製してもよい。全ての波長の焦点位置をカバーできるようにZスキャン範囲を広げてもよい。なお、観察光学系自身の波長依存性は、シリコンや石英ガラスなどの、反射スペクトルが既知のサンプルを予め測定しておくことで、計算により補正できる。
本実施形態の光学定数決定装置100は、共焦点光学系101を用いることで、基板31のそりや基板31の凹凸表面の全焦点反射像を取得することができる。光学定数決定装置100は、光源11から生成される白色光から複数の波長を透過させるバンドパスフィルタBPF等の波長選択部12と、3CCDカメラ等の光検出器19とで構成されたカラーの共焦点光学系101を組み合わせることで、一回の焦点合成で複数の画像を取得するように構成されてもよい。
次に、波長選択部12がマルチバンドパスフィルタを含む場合に、光検出器19と波長選択部12との組み合わせを説明する。まず、光検出器19の分光特性を説明する。図2は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、光検出器19の分光特性を例示したグラフであり、横軸は、波長を示し、縦軸は透過率を示す。図2に示すように、光検出器19は、可視光領域を3分割して透過させた反射光を検出する分光特性を有するように設計されている。例えば、光検出器19は、青色の波長帯域の光を検出するチャネルB-ch、緑色の波長帯域の光を検出するチャネルG-ch、赤色の波長帯域の光を検出するチャネルR-chのそれぞれに対応した青色撮像素子、緑色撮像素子及び赤色撮像素子を有している。なお、青色の波長帯域、緑色の波長帯域及び赤色の波長帯域のいずれかを、第1波長帯域、第2波長帯域と呼ぶ場合がある。これら3つの撮像素子で受信した信号を用いることにより、可視光全体のカラー画像を取得することができる。なお、可視光を含む照明光を検出した画像をカラーレビュー画像として用いる。
次に、波長選択部12の例としてバンドパスフィルタBPFの透過波長帯を説明する。図3は、実施形態1に係るバンドパスフィルタBPFの透過波長帯を例示したグラフであり、横軸は、波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図4は、実施形態1に係るバンドパスフィルタBPFの透過波長を例示した図である。図3及び図4に示すように、バンドパスフィルタBPF-1~BPF-5は、それぞれ、特定の波長を含む波長帯を透過させる。特定の波長を、第1波長、第2波長、第3波長と呼ぶ場合がある。具体的には、波長選択部12は、第1波長、第2波長、及び、第3波長として、それぞれ、青色波長帯域の波長、緑色波長帯域の波長及び赤色波長帯域の波長のいずれかから選択してもよい。バンドパスフィルタBPF-1~BPF-5は、それぞれ、特定の波長を中心波長とする波長帯を透過させてもよいし、特定の波長にピークを有する波長帯を透過させてもよい。
例えば、バンドパスフィルタBPF-1は、波長b1、波長g1及び波長r1の3つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-2は、波長b2、波長g2及び波長r2の3つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-3は、波長b3、波長g3及び波長r3の3つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-4は、波長c4及び波長r4の2つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-5は、波長y5を含む照明光を透過させる。
波長b1、波長b2及び波長b3は、チャネルB-chの波長帯域に含まれる。波長g1、波長g2及び波長g3は、チャネルG-chの波長帯域に含まれる。波長r1、波長r2、波長r3及び波長r4は、チャネルR-chの波長帯域に含まれる。波長c4は、チャネルB-chとチャネルG-chとの間の波長帯域(例えば、シアン色の波長帯域)に含まれる。波長y5は、チャネルG-chとチャネルR-chとの間の波長帯域(例えば、黄色の波長帯域)に含まれる。異なるチャンネルの間の波長帯域は、両チャンネルの信号を合算した信号を使う。
このように、バンドパスフィルタBPF等の波長選択部12は、共焦点光学系101を介して試料30を照明する照明光が少なくとも第1波長帯域の第1波長及び第1波長帯域と異なる第2波長帯域の第2波長を含むように波長を選択する。そして、光検出器19は、共焦点光学系101を介して試料30で反射した反射光を検出し、反射光に含まれる各波長の光による試料30の測定領域における各画像を取得する。したがって、バンドパスフィルタBPF-1~BPF-5を用いた5回の焦点合成を行えば、12の波長の画像を得ることができる。
図5は、実施形態1に係る他のバンドパスフィルタBPFの透過波長帯を例示したグラフであり、横軸は、波長を示し、縦軸は、透過率を示す。図6は、実施形態1に係る他のバンドパスフィルタBPFの透過波長を例示した図である。図5及び図6に示すように、バンドパスフィルタBPF-1~BPF-3及びBPF-6~BPF-8は、それぞれ、特定の波長の照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-1~BPF-3は、前述と同様に、それぞれ、波長b1、波長g1及び波長r1の3つの波長、波長b2、波長g2及び波長r2の3つの波長、並びに、波長b3、波長g3及び波長r3の3つの波長を含む照明光を透過させる。
バンドパスフィルタBPF-6は、波長v1及び波長y1の2つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-7は、波長c1及び波長r4の2つの波長を含む照明光を透過させる。バンドパスフィルタBPF-8は、波長c2及び波長r5の2つの波長を含む照明光を透過させる。
波長v1、波長b1、波長b2及び波長b3は、チャネルB-chの波長帯域に含まれる。波長g1、波長g2及び波長g3は、チャネルG-chの波長帯域に含まれる。波長r1、波長r2、波長r3、波長r4及び波長r5は、チャネルR-chの波長帯域に含まれる。波長c1及び波長c2は、チャネルB-chとチャネルG-chとの間の波長帯域に含まれる。波長y1は、チャネルG-chとチャネルR-chとの間の波長帯域に含まれる。
バンドパスフィルタBPF-1~BPF-3及びBPF-6~BPF-8を用いた6回の焦点合成を行えば、15の波長の画像を得ることができる。
処理部20は、光検出器19が取得した各波長の各画像を入力される。処理部20は、
入力された各画像に基づいて、各波長に対する各反射率の測定データを取得する。処理部20は、取得した波長別の画像の明るさ(諧調レベル)を、予め取得した反射基準(反射率既知の試料)と暗輝度(照明の無い状態)を使って、絶対反射率(R)に変換する。処理部20は、波長(λ)に対する絶対反射率(R)の値を、視野内の全画素に対して算出する。
本実施形態の光学定数決定装置100は、基板31上の未知の薄膜32の光学定数を決定する。また、前述したように、薄膜32が無い場合には、光学定数決定装置100は、未知の基板31の光学定数を決定することができる。図7は、実施形態1に係る試料30の解析領域を例示した断面図である。図7に示すように、試料30の薄膜32の材質及び積層数は、不明とする。処理部20は、取得した視野Vの画像において、まず、視野Vの中央における100×100画素の解析領域40の平均値を用いて、光学定数を決定する。
光学定数決定装置100において、未知の薄膜32の決定係数を決定するために、処理部20は、まず、薄膜32の材質の候補として選択された既知の光学定数を有する複数の候補材質を入力される。候補材質の既知の光学定数は、例えば、光学定数ファイル21に保存されている。このように、光学定数ファイル21は、既知の光学定数を有する複数の候補材質について、波長と反射率との関係が膜厚毎にそれぞれ示されている計算データが保存されている。処理部20は、光学定数ファイル21を選択することによって、複数の候補材質の光学定数を選択してもよい。また、処理部20は、薄膜32に含まれる膜の積層数の候補として選択された候補積層数を入力されてもよい。なお、薄膜32が無い場合には、未知の基板31の決定係数を決定するために、処理部20は、基板31の材質の候補として選択された既知の光学定数を有する複数の候補材質を入力される。このように、本実施形態では、材質不明及び積層数不明の試料30の複数の候補材質及び候補積層数を選択する。
まず、光学モデルとして、基板31上の薄膜32が1層の場合を説明する。基板31の光学定数は、既知であるとする。1層とした薄膜32の候補材質の光学定数を用いれば、処理部20は、後述する膜厚解析、すなわち、フレネル係数を用いた計算から、光学モデルの理論的な絶対反射率を計算して取得することができる。
処理部20は、光学定数を固定したまま、膜厚を0nm~1000nmまで、1nm刻みで変化させることにより、絶対反射率を計算して取得する。処理部20は、薄膜32の複数の候補材料について、次々に入れ替えて、絶対反射率を計算して取得する。そして、処理部20は、このようにして取得した各候補材質について波長と反射率との関係が膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データから膜厚を近似して算出する。例えば、処理部20は、最小自乗法によるフィッティングを行い、薄膜32の膜厚の最確値を得る。また、処理部20は、計算データを参照して、測定データから膜厚を近似して算出する際に決定係数(Coefficient of Determination)を算出する。
決定係数は、各波長の反射率の測定値から最小自乗法で膜厚をパラメータとしてフィッティングさせる際のあてはまりの良さの尺度を示す。決定係数の最大値は、1である。決定係数が1に近いほど、フィッティングは合致していると評価される。一般的には、決定係数は、R2で表される。本実施形態では、反射率Rと区別するため、決定係数をD2で表す場合がある。決定係数は、例えば、フィッティングさせる際の残差の自乗和を平均値からの偏差の自乗和で割ったものを1から引いた値でもよいが、フィッティングさせる際のあてはまりの良さの尺度を示せば、これに限らない。
処理部20は、決定係数を大きい順に並べたリストを生成する。リストにおいて、候補材料及び膜厚は、決定係数に対応づけられている。よって、候補材料と膜厚とが決定係数の大きい順番に並べたリストが得られる。処理部20は、算出した決定係数に基づいて、複数の候補材質の光学定数の中から薄膜32の光学定数を決定する。例えば、処理部20は、決定係数を大きい順に並べたリストに基づいて、薄膜32の光学定数を決定する。このようにして、処理部20は、このリストを参照することで、薄膜32の材料を推定することができ、妥当な光学定数を得ることができる。処理部20は、視野内の全画素について、膜厚解析を行うことにより、最終決定した光学定数及び膜厚の分布を求めることができる。なお、試料30に薄膜32が無い場合に、基板31の光学定数を決定するためには、処理部20は、薄膜32の膜厚を0として、上記の最小自乗法によるフィッティングを行い、決定係数を算出する。そして、処理部20は、算出した決定係数に基づいて、複数の候補材質の光学定数の中から基板31の光学定数を決定する。
次に、光学モデルとして、2層以上の膜が含まれた薄膜32の場合を説明する。図8は、実施形態1に係る2層の膜が含まれた薄膜32を含む試料30を例示した断面図である。図9は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、膜厚及び決定係数の算出処理の表示を例示した図である。
図8及び図9に示すように、2層以上の膜L1及びL2が含まれた薄膜32の場合には、処理部20は、それぞれの膜L1及びL2に独立に光学定数ファイル21を設定し、多層膜の解析を行ってもよい。具体的には、処理部20は、薄膜32に含まれる膜の積層数の候補として選択された候補積層数を入力される。そして、処理部20は、各膜の候補材質として選択された既知の光学定数を有する複数の候補材質を入力される。処理部20は、各膜について合成された計算データを参照して、測定データから膜厚を近似して算出する。多層膜の場合でも基板31側からフレネル係数を合成することにより反射率の計算データを得ることができる。処理部20は、各膜について、膜厚を近似して算出する際の決定係数を算出する。
例えば、図9に示すように、測定範囲(解析領域40)として、視野V内の始点X及び始点Yがともに461座標から幅100nm、高さ100nmを設定する。X方向及びY方向は、幅方向及び高さ方向を示す。処理部20は、例えば、解析領域40が一様である場合には、解析領域40の平均の反射率を解析する。そして、処理部20は、薄膜32の膜L1及び膜L2として、それぞれ、例えば、窒化シリコン(Si3N4)及び酸化シリコン(SiO2)を候補材質とした計算データを参照して、測定データから膜厚92nm及び102nmを近似して算出する。膜厚を算出する際に、処理部20は、決定係数として、0.997537を算出する。処理部20は、薄膜32の複数の候補材料及び候補積層数について、次々に入れ替えて、膜厚を算出するとともに、膜厚を算出する際の決定係数を算出する。
図10は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、決定係数を大きい順に並べたリストを例示した図である。処理部20は、算出した決定係数の大きい順に、候補材質及び候補積層数を並べる。このように、処理部20は、各膜の光学定数の組み合わせが決定係数順に並んだリストを得ることができる。そして、処理部20は、決定係数を大きい順に並べたリストに基づいて、複数の候補材料の光学定数の中から薄膜の光学定数を決定する。よって、試料30の薄膜32の材質名を取得することができる。それとともに、処理部20は、試料30の薄膜32の積層数及び薄膜32に含まれた各膜の膜厚を取得することができる。なお、処理結果として得られた材質を、他の情報から棄却できる場合は、第二候補を選ぶか、棄却した光学定数をリストから除外して、再解析してもよい。
処理部20は、視野V内の全画素について、膜厚解析を行うことにより、最終決定した光学定数及び膜厚の分布を求めてもよい。さらに、光検出器19は、試料30の他の複数の視野Vについて、反射光に含まれる各波長の光による各画像を取得し、処理部20は、各視野Vについて光学定数及び膜厚の分布を求めてもよい。
図11は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、試料30の薄膜32における材質及び積層数を例示した断面図である。図12は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、試料30の薄膜32における材質及び積層数を例示した平面図である。図13は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、試料30の薄膜32の積算された膜厚をグレースケールで例示した平面図である。図14は、実施形態1に係る光学定数決定装置100において、試料30の薄膜32の積層数をグレースケールで例示した平面図である。
図11及び図12に示すように、処理部20は、試料30の全面や視野V内、複数の解析領域40等の所定の範囲の領域において、例えば、画素等の微小領域毎に決定した各光学定数(光学定数を有する材質)、各膜厚及び各積層数をマッピングして表示してもよい。このように、処理部20は、光学定数を光学定数ファイルから読み出すだけではなく、特定の光学定数の材料が何層目であるかという膜構造の情報を求めることができる。また、処理部20は、1層の場合及び2層の場合を含む全ての光学定数の組み合わせの中で、もっとも決定係数が1に近いものから膜厚及び積層数を決定する。これにより、処理部20は、基板31上の薄膜が1層なのか2層なのか未知の場合でも、膜厚及び積層数を決定することができる。また、図13及び図14に示すように、処理部20は、試料30の薄膜32の膜厚及び積層数をグレースケールで表示することができる。
処理部20は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置でもよい。情報処理装置は、図示しない制御部、通信部、記憶部及びインターフェース部を有している。制御部、通信部、記憶部及びインターフェース部は、それぞれ、制御手段、通信手段、記憶手段及びインターフェース手段としての機能を有している。
制御部は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ECU(Electronic Control Unit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application Specific Integrated Circuit)等のプロセッサを含む。制御部は、制御処理及び演算処理等を行う演算装置としての機能を有する。また、制御部は、通信部、記憶部、インターフェース部及び各装置の機能を実行するための各構成要素の動作を制御する。
情報処理装置の各構成要素は、例えば、制御部の制御によって、プログラムを実行させることによって実現できる。より具体的には、各構成要素は、記憶部に格納されたプログラムを、制御部が実行することによって実現され得る。また、必要なプログラムを任意の不揮発性記録媒体に記録しておき、必要に応じてインストールすることで、各構成要素を実現するようにしてもよい。また、各構成要素は、プログラムによるソフトウェアで実現することに限ることなく、ハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアのうちのいずれかの組み合わせ等により実現してもよい。
通信部は、情報処理装置が情報処理を行う上で必要な通信を行う。記憶部は、例えば、ROM(Read Only Memory)、又はRAM(Random Access Memory)等である。記憶部は、制御部によって実行される制御プログラム及び演算プログラム等を記憶するための機能を有する。また、記憶部は、処理データ等を一時的に記憶するための機能を有する。
インターフェース部は、例えば、ユーザインターフェース(User Interface)である。インターフェース部は、キーボード、タッチパネル又はマウス等の入力手段と、ディスプレイ又はスピーカ等の出力手段とに接続されている。インターフェース部は、ユーザ(オペレータ等)によるデータの入力の操作を受け付け、ユーザに対して情報を出力する。
[光学定数決定方法]
次に、光学定数決定方法を説明する。光学定数決定方法は、基板31と、基板31上に設けられた薄膜32と、を含む試料30の薄膜32及び基板31の光学定数を決定する。また、光学定数決定方法は、薄膜32の膜厚を算出する。図15は、実施形態1に係る光学定数決定方法を例示したフローチャート図である。図15に示すように、光学定数決定方法は、焦点合成画像取得ステップ(S11)、候補材質選択ステップ(S12)、膜厚解析ステップ(S13)、決定係数算出ステップ(S14)及び光学定数決定ステップ(S15)を備えている。
まず、焦点合成画像取得ステップ(S11)において、光検出器19は、共焦点光学系101を介して試料30を照明した照明光が試料30で反射した反射光を、共焦点光学系101を介して検出する。そして、光検出器19は、検出した反射光に含まれた複数の波長の光による試料30の各画像を取得する。
次に、候補材質選択ステップ(S12)において、薄膜32及び基板31の材質の候補として既知の光学定数を有する複数の候補材質を選択する。例えば、候補材質が格納された複数の光学定数ファイルを選択してもよい。このようにして、処理部20は、薄膜32及び基板31の材質の候補として選択された既知の光学定数を有する複数の候補材質を入力される。
次に、膜厚解析ステップ(S13)において、処理部20は、複数の波長の光による試料30の各画像に基づいて、各波長に対する各反射率の測定データを取得する。
次に、決定係数算出ステップ(S14)において、処理部20は、各候補材質について、波長と反射率との関係が薄膜の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、測定データから薄膜の膜厚を近似して算出する。そして、処理部20は、膜厚を近似して算出する際の決定係数を算出する。なお、薄膜32が無い場合には、薄膜32の膜厚を0として算出する。
次に、光学定数決定ステップ(S15)において、処理部20は、算出された決定係数に基づいて、複数の候補材質の光学定数の中から薄膜32及び基板31の光学定数を決定する。例えば、処理部20は、決定係数を大きい順に並べたリストに基づいて、複数の候補材質の光学定数の中から薄膜32及び基板31の光学定数を決定する。このようにして、試料30の薄膜32及び基板31の光学定数を決定することができる。
次に、別の光学定数決定方法を説明する。図16は、実施形態1に係る別の光学定数決定方法を例示したフローチャート図である。図16に示すように、別の光学定数決定方法は、積層数選択ステップ(S11a)、次の候補材料を選択するか判断するステップ(S14a)、及び、次の積層数を選択するか判断するステップ(S14b)をさらに備えている。
積層数選択ステップ(S11a)は、焦点合成画像取得ステップ(S11)の後であり、候補材質選択ステップ(S12)の前に実施される。積層数選択ステップ(S11a)において、薄膜32に含まれる膜の積層数の候補が選択される。よって、処理部20は、薄膜32に含まれる膜の積層数の候補として選択された候補積層数を入力される。この場合には、候補材質選択ステップ(S12)において、処理部20は、各膜の候補材質として選択された既知の光学定数を有する複数の候補材質を入力される。決定係数算出ステップ(S14)において、処理部20は、各膜について合成された計算データを参照して、測定データから膜厚を近似して算出する際の決定係数を算出する。
ステップS14の後で、ステップS14aに示すように、次の候補材料を選択するか判断する。ステップS14aにおいて、次の候補材料を選択するYESの場合には、ステップS12に戻り、ステップS12~ステップS14aを繰り返す。ステップS14aにおいて、次の候補材料を選択しないNOの場合には、ステップS14bに示すように、次の積層数を選択するか判断する。
ステップS14bにおいて、次の積層数を選択するYESの場合には、ステップS11aに戻り、ステップS11a~ステップS14bを繰り返す。ステップS14bにおいて、次の積層数を選択しないNOの場合には、ステップS15において、処理部20は、算出された決定係数に基づいて、光学定数に加えて、複数の候補積層数の中から薄膜32の積層数を決定する。このようにして、試料30の薄膜32の積層数を決定することができる。
図17は、実施形態1に係るさらに別の光学定数決定方法を例示したフローチャート図である。図17に示すように、光学定数決定方法は、微小領域設定ステップ(S11x)、次の微小領域を設定するか判断するステップ(S15a)、及び、マッピング表示ステップ(S16)をさらに備えている。
微小領域設定ステップ(S11x)は、焦点合成画像取得ステップ(S11)の後に実施される。微小領域設定ステップ(S11x)において、微小領域を設定する。微小領域は、例えば、画素である。微小領域を画素とすることにより、マッピングの分解能を向上させることができる。なお、微小領域は、画素に限らず、いくつかの画素の集合体でもよい。ステップS15の後で、ステップS15aに示すように、次の微小領域を設定するか判断する。ステップS15aにおいて、次の微小領域を設定するYESの場合には、ステップS11xに戻り、ステップS11x~ステップS15aを繰り返す。これにより、光検出器19は、試料30の複数の微小領域について、光学定数及び積層数を取得する。ステップS15aにおいて、次の微小領域を設定しないNOの場合には、ステップS16に示すように、マッピング表示する。マッピング表示ステップ(S16)において、処理部20は、複数の微小領域において決定した各光学定数及び各積層数をマッピングして表示する。
なお、焦点合成画像取得ステップ(S11)において、共焦点光学系101を介して試料30を照明する照明光が青色波長帯域の波長、緑色波長帯域の波長及び赤色波長帯域の波長の少なくともいずれかを含むように波長を選択してもよい。そして、光検出器19は、青色波長帯域の波長の光による画像、緑色波長帯域の波長の光による画像及び赤色波長帯域の波長の光による画像を取得してもよい。また、候補材質選択ステップ(S12)において、既知の光学定数を有する複数の候補材質について、波長と反射率との関係が膜厚毎にそれぞれ示されている計算データが保存された光学定数ファイルを準備してもよい。
[膜厚解析]
次に、膜厚解析を説明する。まず、膜厚解析で参照する計算データについて説明する。その後、反射率を測定し、測定した反射率の測定データから、計算データを参照して、膜厚を算出する方法を説明する。
<可干渉性因子の導入>
高開口数の対物レンズを使用する場合及び膜厚が1μm以上の場合のように、反射光の可干渉性が低下した場合でも、反射率を算出することができるように、反射率の計算に可干渉性因子を導入する。試料30における薄膜の干渉による反射率Rは、干渉成分の項と非干渉成分の項とに分けられる。よって、試料30における薄膜の干渉による反射率Rは、非干渉成分の項Ricと干渉成分の項Rifと可干渉性因子Γを使って、式(1)のように書くことができる。
薄膜内の反射光が完全に干渉する状態を完全可干渉(Γ=1)、全く干渉しない状態を完全非可干渉(Γ=0)とすると、一般の状態はそれらの中間にあると考えることができる。反射率を理論計算する際に、Γ=1の場合(R=Rch)とΓ=0場合(R=Ric)についてそれぞれフレネル係数から計算することができる。従って、それらの差をとることで、干渉成分Rifを式(2)で計算することができる。
従って、可干渉性因子Γを入れて式(3)を使い、反射率Rを理論計算することができる。
可干渉性には時間的可干渉性と空間的可干渉性が含まれているが、前者に関しては可干渉距離Lcという形で見積ることが出来る。照明光の波長帯域Δλと中心波長λを使って式(4)のように計算できる。例えば、中心波長λ=546nm、波長帯域Δλ=16nmの場合には、可干渉距離Lc=18μm程度になる。
膜厚tが可干渉距離Lcよりも十分小さい範囲では可干渉性因子Γ~1となり、大きい範囲では可干渉性因子Γ<<1となるので、可干渉性因子Γは、ガウス関数型で変化すると考えるのが一般的である。多重反射の影響でガウス型から歪む可能性があるが、近似とする。補正係数として、βとする。薄膜の屈折率がn1の場合、行路差は2tn1となる。(後で開口数NAの効果の補正によって、tn1はΔLに置き換える。)
可干渉距離以外の要因には焦点深度の影響がある。膜面と基板面の焦点位置のズレは可干渉性を低下させる方向に作用する。焦点位置からのズレと受光強度の関係(I-Z曲線)をガウス関数またはローレンツ関数で近似した場合の半値幅が、膜厚tに対して十分小さくなければ、可干渉性への影響が無視できなくなる。この効果の補正は、補正係数βで吸収できると考える。
この理論値を実測値に対して、補正係数βをパラメータに含めて、カーブフィット法で膜厚解析することができる。代表点の解析で求めた補正係数βの値を使って、画像全体の膜厚分布解析をすることもできる。
<絶対反射率の理論計算>
次に、絶対反射率の理論計算を説明する。図18及び図19は、実施形態1に係る薄膜32が形成された基板31を例示した光学モデルである。図18及び図19に示すように、光学モデルは、測定対象として考える試料30の構造の断面を示している。試料30は、基板31と、基板31の上に設けられた薄膜32を含んでいる。基板31は、例えばシリコン基板Siであり、薄膜32は、例えば、フォトレジスト膜(Photo Resist)PRである。
試料30の構造は、上から、空気air/フォトレジスト膜PR/シリコン基板Siとなり、波長λに対するそれぞれの複素屈折率をN0、N1、N2、屈折率をn0=1、n1、n2、消衰係数をk0=0、k1、k2とする。複素屈折率は式(7)~(9)のように定義する。求めたいフォトレジスト膜PRの膜厚を膜厚tとする。
<1.完全可干渉の場合>
次に、シリコン基板Si上のフォトレジスト膜PRによる薄膜干渉強度について考える。波長λの光が薄膜に対して垂直に入射するものとする(図18では、対物レンズの開口数NAを考えて斜め入射にしている)。入射した光の一部は、空気air/フォトレジスト膜PRの界面0で反射する。また、一部は、透過し、フォトレジスト膜PR/シリコン基板Siの界面1で反射する。界面1からの反射光の一部は、界面0を透過するが、さらに、一部は、界面0で反射され、再び界面1で反射する。一般的に、薄膜では、このような多重反射が起こる。これらの反射光が全て干渉し、合計されたものから、反射率Rが得られる。複素屈折率が既知であるならば、垂直入射の反射率Rは波長λと膜厚tだけで決まる。
界面0(空気air/フォトレジスト膜PRの界面)と界面1(フォトレジスト膜PR/シリコン基板Siの界面)での振幅反射率をそれぞれ、式(10)(11)とする。このとき薄膜を1回透過する光の位相変化と振幅変化をそれぞれ、式(12)(13)のようにδとγとする。
多重反射を考慮した膜構造全体の振幅反射率は式(14)となる。
反射率Rは振幅反射率の絶対値の自乗となるので、式(15)となる。
従って、複素屈折率が既知であれば、垂直入射の反射率は波長λと膜厚tのみから計算することができる。
ここで、対物レンズの開口数NAによる斜入射効果の補正を考える。図20は、実施形態1に係る薄膜が形成された基板における反射光の屈折による光路差を例示した図である。図20に示すように、光軸に対して角度θ0で入射した光は、界面0で式(16)のスネルの法則に従い、界面0でθ1だけ屈折し、界面1で反射し、再び界面0で屈折する反射光E1となる。反射光E1と、界面0で反射した反射光E0との間で、多重反射による干渉が起こる。垂直入射の場合と異なるのは、反射光E0と反射光E1の光路差が式(17)のようになることである。入射角が大きくなるに従い、見掛け上の膜厚tは小さくなる。
入射光には、対物レンズの開口数NAによる角度θNAから0度までの様々な光が含まれているため、厳密には反射光の干渉を全ての角度で計算する必要がある。しかし、振幅反射率と光路差の角度依存性を全て扱うのは計算負荷が大きいので、垂直入射の振幅反射率と平均光路差を使って近似する。入射光は無偏光なので、反射率の角度依存より、光路差の角度依存が支配的だと考える。
開口数NAと屈折角の関係は式(18)のようになるため、平均光路差は式(17)を-θmax~+θmaxの範囲で、角度分布の平均を式(19)のように求めればよい。よって、式(17)を式(19)に置き換えて、式(15)を計算すれば、任意の開口数NAに対する反射率を簡便に計算することができる。
ここまで説明した単層の薄膜32の計算は、多層膜の場合でも基板31側から合成フレネル係数の合成則を使って計算することにより実行することができる。
<2.完全非可干渉の場合>
次に、シリコン基板Si上のフォトレジスト膜PRによる薄膜干渉のない場合の反射率Ricについて検討する。図21は、実施形態1に係る薄膜32内の干渉のない多重反射を例示した図である。完全可干渉の場合と同様に、薄膜32内では多重反射が起こるが、界面0及び界面1の反射光は互いに干渉しないため、これらの反射光を単純合計されたものから、反射率Ricが得られる。
界面0の反射率をR0、界面1の反射率をR1、薄膜32の内部透過率をTiとする。それぞれの界面の反射率はフレネル係数から、式(20)及び式(21)となる。内部透過率Tiは、ランベルトの法則から吸収係数αと消衰係数k1の関係を使い、式(22)のようになる。基板31によるm回反射の反射率をRmとすると、mを0から∞まで足し合わせたものが反射率Ricとなり、式(23)のように書くことができる。
内部透過率Tiに対する開口数NAの影響を補正する。角θ1の場合の内部透過率Tiは、式(22)中の膜厚tを角度平均<t>に置き換えればよい。入射角は0~θmaxとすると、式(24)となり、角度平均<t>は、式(25)のように書くことができる。ここで改めて、内部透過率Tiを式(26)のようにする。
以上の計算は、多層膜の場合でも基板31側から界面反射率を合成計算することで実行できる。
<3.部分可干渉の場合>
完全可干渉の反射率Rch、完全非可干渉の反射率Ric、可干渉性因子Γを使うことで、それらの中間状態(部分可干渉性)の反射率Rを式(27)として計算することができる。
式(30)の可干渉性因子Γは、式(19)の開口数NAの補正を使って、式(5)の膜厚tn1をΔLに置き換えた。多層膜の場合は、各層のΔLの合計を、最終的なΔLとして使う。
図22及び図23は、実施形態1に係る波長と反射率との関係を例示したグラフであり、横軸は波長を示し、縦軸は絶対反射率を示す。図22に示すように、開口数NA=0.3の場合について、膜厚t=1000nmの条件で、波長400~700nmにおける反射率Rの補正係数β依存性を計算した。補正係数β=0の場合はΓ=1、補正係数β=1の場合はΓ<0.8、補正係数β=2の場合はΓ<0.65、補正係数β=10の場合はΓ<0.1であり、Γが小さくなると干渉成分が減衰する。さらに、Γは波長依存性があるので、波長が短い側から干渉成分が減衰している。図23に示すように、開口数NA=0.3の場合について、膜厚t=2000nmの場合をみると、膜厚が厚い程、干渉成分が減衰している。
ここで、照明光の波長として、436nm、486nm、514nm、546nm、578nm、633nmの6つの波長を選択する。反射率は、キャプチャーした画像の輝度値Isampleから求める。各波長の反射率Rの測定値を式(27)に対して、最小自乗法で膜厚tと、補正係数βをパラメータとしてフィッティングさせることで、膜厚tを求めることができる。
反射率Rを測定する場合は、測定に使用している光学系の特性や光源の特性を補正するために、反射率Rが既知である基準試料の反射率測定を行う。例えば、シリコン(Si)を基準とする場合(石英ガラス等でも構わない)は、各波長でシリコン(Si)の反射画像をキャプチャーする(カラーバランス、ゲインコントロール等は一定にする)。このシリコン(Si)の輝度値ISiに対する相対値として、試料の反射率Rを計算し、さらに、シリコン(Si)の既知の反射率の波長依存性のデータRSiで補正を行う。従って、試料の反射率は式(32)のように求められる。I0は照明光のシャッターを閉じた場合に受光される暗輝度値である。
共焦点顕微鏡のゲイン調整を固定した状態で、基準のシリコン(Si)と試料30について、同一の視野の画像を、波長を変えて取得した。画像上で指定したエリアに関する輝度値の平均値あるいは各画素の輝度値に対してIsample、ISiとして使い、式(32)から絶対反射率を求める。
図24は、実施形態1に係る波長と反射率との関係を例示したグラフであり、横軸は波長を示し、縦軸は絶対反射率を示す。図21には、式(32)から求めた測定反射率と、式(27)から求めた計算反射率とをプロットしたものを示した。補正係数βを、0及び0.5として計算したものである。測定値の反射率Rmesと計算値の反射率Rcalの残差Σを式(33)により求める。
図25は、実施形態に係る薄膜の膜厚と残差との関係を例示したグラフであり、横軸は、薄膜の膜厚を示し、縦軸は残差を示す。
残差Σが最小になる場合の膜厚tを、この試料の測定点の膜厚とすることができる。したがって、ここでは、補正係数β=0の場合(完全可干渉)は、膜厚t=44nmと判定され、補正係数β=0.5の場合(部分可干渉)は、膜厚t=1580nmと判定されている。可干渉性因子Γを導入した解析結果は、白色干渉の測定結果と合致している。6つの波長の測定でも、可干渉性因子Γを解析に導入することで、1μm以上の膜厚tを、高精度で測定することができる。
同様の方法で、画像の各画素に対して膜厚tを求めることができるので、膜厚分布を表示することができる。従って、膜厚分布を、容易にヒストグラム解析することができる。薄膜上に、ゴミや異物が存在することにより測定値の異常点が発生しても、周囲の正常値で補間処理(ノイズリダクション)することも容易である。表示方法として、図26に示すように、鳥瞰図にすることもできる。
[反射率計算の補足]
試料30における薄膜32が多層膜の場合において、多層膜中に、幾つかの厚さゼロの層が存在する場合の反射率計算の取り扱いについて補足する。完全可干渉の場合は、各界面のフレネル係数の合成式は厚さ0の場合でもそのまま適用できるので、問題は生じない。しかし、完全非可干渉の場合には、層の厚さが0のときは、式(20)、式(21)及び式(23)をそのまま適用できないため、以下に説明する特別な計算法則を導入する必要がある。
図27は、実施形態1に係る完全非可干渉の場合の膜厚がゼロの反射率計算の取り扱いを例示した図である。図27に示すように、N層膜の中の連続する(m-1)層、m層、(m+1)層の3つの層の重なりを考える。m層に着目すると、光学定数はnm、km及び膜厚tmである。(m-1)層とm層との界面を(m-1、m)界面とし、m層と(m+1)層との界面を(m、m+1)界面とする。界面のフレネル係数をそれぞれ、rm-1、m及びrm、m+1とし、式(10)及び式(11)と同様に表現できる。この関係を、(m-1)層と(m+1)層についても考えことができる。
(m+2)層までの合成反射率R’m+2、m+3まで計算できている状況で、(m+1)層の膜厚tm+1>0の場合、(m+1、m+2)界面の合成反射率R’m+1、m+2は、式(23)と同様にして計算できる。ここで、m層の膜厚tm=0の場合は、上下の界面のフレネル係数、rm-1、m及びrm、m+1を、式(34)及び式(35)のような特別な規則で置き換え処理を行う。この改訂されたフレネル係数を使い、それぞれの界面の反射率を、式(36)及び式(37)と再定義する。この時の内部透過率Tiは、それぞれ式(38)及び式(39)とおける。
(m、m+1)界面の合成反射率R’m。m+1は、合成規則より式(40)となる。
さらに、上のm層の合成反射率R’m-1、mも、合成規則より式(41)となる。
式(41)をよく観ると、まさにm層が存在しない場合の反射率の式になっている。このようなフレネル係数の変換則を適用することで、多層膜中に膜厚が0の層が存在する場合でも、完全非可干渉の反射率を計算することができる。N層膜中にJ個の膜厚0層が分布して存在する場合も同様に計算することができる。
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の光学定数決定装置100は、未知の薄膜32の光学定数を求めることができる。よって、未知の薄膜32の材質を推測することができる。また、光学定数決定装置100は、光学定数を求める際に、決定係数を算出し、決定係数に基づいて、光学定数を決定する。よって、光学定数及び材質の精度を向上させることができる。
また、光学定数決定装置100は、薄膜32の膜厚を算出し、薄膜32の積層数も求めることができる。膜厚及び積層数も、決定係数に基づいて決定するので精度を向上させることができる。
光学定数、材質、膜厚及び積層数等を決定する際には、決定係数を大きい順に並べたリストに基づいて決定する。例えば、リストの上位のものに決定する。よって、容易に決定することができる。なお、解析結果として得られたリストの上位の材質が他の情報から棄却できる場合は、次点の第2候補を、光学定数、材質、膜厚及び積層数等に容易に選択することができる。
複数の解析領域において決定した各光学定数、各膜厚及び各積層数を試料30上にマッピングして表示することができる。よって、薄膜32の情報を視覚的に容易に把握することができる。
バンドパスフィルタBPFによって照明光が複数の波長帯域の波長を含むように波長を選択する。また、光検出器19は、複数の波長帯域の波長を検出する撮像素子を含んでいる。よって、1回の撮像で複数の波長の光による複数の共焦合成画像を取得することができる。これにより、膜厚の測定時間を短縮することができる。
また、本実施形態の光学定数決定装置100は、共焦点光学系101を備えている。よって、通常の光学顕微鏡よりも高解像の画像が得られる。これにより、膜厚分布の空間分解能を向上させることができる。また、基板31が透明フィルムのような薄い場合でも、裏面反射を除去できる。このため、単純な光学モデルを使って解析でき、実測と理論とを容易に整合させることができる。試料30の表面に焦点深度を超える起伏がある場合でも、全焦点画像を作成することができ、試料30の全表面の反射率を測定することができる。バンドパスフィルタBPFを使用した場合に、波長による焦点位置のズレが生じても、焦点スキャンによる全焦点像を合成することで、ズレを抑制することができる。
本実施形態では、波長と反射率との関係が薄膜32の膜厚毎にそれぞれ示されている計算データにおける反射率は、非干渉成分の項を含んでいる。よって、可干渉性が減少するような1μm以上の膜厚の薄膜にたいしても高精度で膜厚を解析することができる。これにより、1μm以上の膜厚の薄膜32における膜厚分布を高解像度で解析することができる。
また、計算データにおける反射率の非干渉成分Ricの項は、基板31側の界面による所定の回数までの各反射における反射率の総和を含んでいる。これにより、薄膜32内での多重反射を反映させることができるので、1μm以上の膜厚の薄膜32にたいしても高精度で膜厚を解析することができる。
計算データにおける反射率は、干渉成分Rifの項と、干渉成分の項の割合を示す可干渉因子Γとの積を含んでいる。これにより、反射率が非干渉成分Ricと干渉成分Rifとを含む部分可干渉の場合でも、薄膜の膜厚を高精度で解析することができる。
さらに、計算データにおける反射率は、対物レンズの開口数NAによる補正を含んでいる。これにより、高開口数の対物レンズを使用する場合でも、薄膜の膜厚を高精度で解析することができる。また、膜厚分布を高解像度で解析することができる。
光学定数決定装置100は、薄膜32が多層膜の場合でも、積層された各複数の薄膜32の膜厚毎にそれぞれ示されている反射率を合成して、計算データにおける反射率としている。よって、多層膜からなる薄膜32の膜厚を高精度で解析することができる。また、多層膜における膜厚分布を高解像度で解析することができる。多層膜におけるいくつかの膜厚が0の場合でも光学モデルの構成を変えずに、フレネル係数の変換則を適用することで、高精度で膜厚を解析することができる。
このように、光学定数決定装置100は、観察画像の各画素に対して、分光スペクトルを得ることができる。そして、分光スペクトルを絶対反射率に換算し、可干渉性因子を考慮した膜厚をパラメータとするフィッティングを行っている。これにより、0~1μmの膜厚だけでなく、1μm以上の膜厚まで精度よく求めることができる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。また、実施形態1における各構成は、適宜、組み合わせてもよい。
また、本実施形態の光学定数決定方法をコンピュータに実行させる下記の光学定数決定プログラムも実施形態の技術思想に含まれる。
基板と、基板上に設けられた薄膜と、を含む試料の前記薄膜の光学定数を決定する光学定数決定プログラムであって、
共焦点光学系を介して前記試料を照明した照明光が前記試料で反射した反射光を、前記共焦点光学系を介して検出し、前記反射光に含まれた複数の波長の光による前記試料の各画像を取得する焦点合成画像取得ステップと、
前記薄膜の材質の候補として選択された既知の前記光学定数を有する複数の候補材質を入力される候補材質選択ステップと、
各画像に基づいて、各波長に対する各反射率の測定データを取得する膜厚解析ステップと、
各候補材質について前記波長と前記反射率との関係が膜厚毎にそれぞれ示されている計算データを参照して、前記測定データから前記膜厚を近似して算出する際の決定係数を算出する決定係数算出ステップと、
算出された前記決定係数に基づいて、複数の前記候補材質の前記光学定数の中から前記薄膜の前記光学定数を決定する光学定数決定ステップと、
をコンピュータに実行させる光学定数決定プログラム。
また、上述した光学定数決定プログラムは、コンピュータに読み込まれた場合に、実施形態で説明された1又はそれ以上の機能をコンピュータに行わせるための命令群(又はソフトウェアコード)を含む。プログラムは、非一時的なコンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体に格納されてもよい。限定ではなく例として、コンピュータ可読媒体又は実体のある記憶媒体は、random-access memory(RAM)、read-only memory(ROM)、フラッシュメモリ、solid-state drive(SSD)又はその他のメモリ技術、CD-ROM、digital versatile disc(DVD)、Blu-ray(登録商標)ディスク又はその他の光ディスクストレージ、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスクストレージ又はその他の磁気ストレージデバイスを含む。プログラムは、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体上で送信されてもよい。限定ではなく例として、一時的なコンピュータ可読媒体又は通信媒体は、電気的、光学的、音響的、またはその他の形式の伝搬信号を含む。