JP7745853B2 - シクロペンタジエンの製造方法 - Google Patents

シクロペンタジエンの製造方法

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Description

本開示は、シクロペンタジエンの製造方法に関する。
従来、シクロペンタジエンは、エチレンクラッカーの副生成物として得られる。しかし、その供給量には限りがあるため、シクロペンタジエンの目的生産が望まれている。例えば、非特許文献1には、Pt/SiO触媒を用い、n-ペンタン、n-ペンテン等からシクロペンタジエンを製造する方法が記載されている。
V. Sh. Fel’dblyum et al., Doklady Chemistry, 424(2), 27-30 (2009)
しかしながら、非特許文献1に記載された方法では触媒が短時間(例えば15分以内)で劣化することが、当該文献中で報告されている。そのため、非特許文献1に記載された方法では、触媒の活性が維持される最初の数分以内はシクロペンタジエンの高い収率が得られるものの、長時間(15分を超える時間)反応を行った場合には高い収率を得ることができないという問題がある。
そこで、本開示は、長時間反応を行った場合でも高い収率でシクロペンタジエンを製造することができるシクロペンタジエンの製造方法を提供することを目的とする。
本開示の一側面は、炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する原料成分と、脱水素触媒とを接触させて、シクロペンタジエンを得る脱水素工程を含み、上記脱水素触媒が、Al及び第2族金属元素を含む金属酸化物担体と、該担体に担持されたPtを含む担持金属とを有する、シクロペンタジエンの製造方法に関する。
一態様において、上記脱水素触媒中の第14族金属元素の含有量は、上記脱水素触媒全量を基準として1.0質量%以下であってもよい。
一態様において、上記脱水素触媒における、上記Ptに対する第14族金属元素のモル比(第14族金属元素のモル数/Ptのモル数)は、1.0以下であってもよい。
一態様において、上記脱水素触媒中の上記Ptの含有量は、上記脱水素触媒全量を基準として0.1~10質量%であってもよい。
一態様において、上記第2族金属元素がMgを含んでいてもよい。
一態様において、上記脱水素工程を、水素を含む雰囲気下で行ってもよい。
本開示によれば、長時間反応を行った場合でも高い収率でシクロペンタジエンを製造することができるシクロペンタジエンの製造方法が提供される。
実施例1及び比較例1~4で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例2及び比較例5で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例2~8で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例2及び9~12で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例13~17で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例18~22で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。 実施例2及び23~27で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフである。
以下、本開示の好適な実施形態について詳細に説明する。
<シクロペンタジエンの製造方法>
本実施形態に係るシクロペンタジエンの製造方法は、炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する原料成分と、脱水素触媒とを接触させて、シクロペンタジエンを得る脱水素工程を含む。
原料成分は、例えば、炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種を主成分(例えば70質量%以上)とする炭化水素混合物であってよい。原料成分に占める炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種の総量は、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、100質量%であってもよい。原料成分としては、シクロペンタン、シクロペンテン類が特に好ましい。シクロペンタン、シクロペンテン類が多いと、シクロペンタジエンの収率をより向上させることができる。原料成分に占めるシクロペンタン及びシクロペンテンの総量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは20質量%以上であり、50質量%以上であってもよい。
炭素数5の炭化水素のノルマル体としては、n-ペンタン、1-ペンテン、2-ペンテン、1,3-ペンタジエン、1,4-ペンタジエンが挙げられる。原料成分が炭素数5の炭化水素のノルマル体を含む場合、脱水素工程では、それらの環化脱水素反応が行われる。
脱水素反応の条件は特に限定されず、上記炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種をシクロペンタジエンに変換可能な条件であればよい。
脱水素触媒は、担体と当該担体に担持された担持金属とを有するものである。
担体は、Al及び第2族金属元素を含む金属酸化物担体である。第2族金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第2族に属する金属元素を意味する。第2族金属元素は、例えば、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)及びバリウム(Ba)からなら群より選択される少なくとも一種であってよい。担体がAl及び第2族金属元素を含むことで、脱水素工程において、脱水素触媒の劣化を抑制でき、長時間(15分を超える時間)反応を行った場合でも高い収率でシクロペンタジエンを製造することができる。触媒劣化をより抑制し、且つシクロペンタジエンの収率をより向上する観点から、担体は、第2族金属元素としてMgを含むことが好ましい。
担持金属は、Ptを含む。担持金属は、Pt以外の他の金属元素を含んでいてもよく、含んでいなくてもよい。
本態様の脱水素触媒において、Alの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、15質量%以上であってよく、25質量%以上であってよい。また、Alの含有量は、40質量%以下であってよい。Alの含有量が15質量%以上40質量%以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。
本態様の脱水素触媒において、第2族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、10質量%以上であることが好ましく、13質量%以上であることがより好ましい。第2族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、20質量%以下であることが好ましく、18質量%以下であることがより好ましい。第2族金属元素の含有量が10質量%以上20質量%以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。
本態様の脱水素触媒において、Ptの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、0.1質量%以上であることが好ましく、0.5質量%以上であることがより好ましい。Ptの含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、3質量%以下であることが更に好ましい。Ptの含有量が0.1質量%以上であると、触媒量当たりの白金量が多くなり、反応器サイズを小さくできる。また、Ptの含有量が10質量%以下であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。
本態様の脱水素触媒において、第14族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、1.0質量%以下であることが好ましく、0.6質量%以下であることがより好ましく、0.3質量%以下であることが更に好ましい。第14族金属元素の含有量は、脱水素触媒の全質量基準で、0質量%であってもよく、0.01質量%以上であってもよく、0.05質量%以上であってもよい。第14族金属元素の含有量が1.0質量%以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。なお、脱水素触媒における第14族金属元素の含有量が多いと、Ptと第14族金属元素との合金による脱水素反応が生じやすくなり、相対的に環化反応生成物が減り環化されていない脱水素反応生成物が増えるため、シクロペンタジエンの収率が低下しやすい。また、第14族金属元素の含有量が0.01質量%以上であると、副反応を抑制しやすく、コーク由来生成物(メタン、一酸化炭素、二酸化炭素)、分解生成物(炭素数2~4の炭化水素)及び芳香族生成物(ベンゼン、トルエン、キシレン)の生成量を低減できる傾向がある。なお、上記副反応の抑制効果により、脱水素触媒が第14族金属元素を少量含有する場合、第14族金属元素を含有しない場合よりもシクロペンタジエンの収率が向上することもある。第14族金属元素とは、IUPAC(国際純正応用化学連合)の規定に基づく長周期型の元素の周期表における周期表第14族に属する金属元素を意味する。第14族金属元素としては、例えば、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)及び鉛(Pb)が挙げられる。
本態様の脱水素触媒において、Ptに対する第14族金属元素のモル比(第14族金属元素のモル数/Ptのモル数)は、1.0以下であることが好ましく、0.7以下であることがより好ましく、0.5以下であることが更に好ましい。Ptに対する第14族金属元素のモル比は、0であってもよく、0.05以上であってもよく、0.1以上であってもよい。Ptに対する第14族金属元素のモル比が1.0以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。なお、Ptに対する第14族金属元素のモル比が大きいと、Ptと第14族金属元素との合金による脱水素反応が生じやすくなり、相対的に環化反応生成物が減り環化されていない脱水素反応生成物が増えるため、シクロペンタジエンの収率が低下しやすい。また、Ptに対する第14族金属元素のモル比が0.05以上であると、副反応を抑制しやすく、コーク由来生成物(メタン、一酸化炭素、二酸化炭素)、分解生成物(炭素数2~4の炭化水素)及び芳香族生成物(ベンゼン、トルエン、キシレン)の生成量を低減できる傾向がある。なお、上記副反応の抑制効果により、Ptに対する第14族金属元素のモル比が小さい場合、当該モル比が0である場合よりもシクロペンタジエンの収率が向上することもある。
本態様の脱水素触媒において、Alに対する第2族金属元素のモル比(第2族金属元素のモル数/Alのモル数)は、副反応を抑制し、反応効率が一層向上する観点から、0.30以上であることが好ましく、0.40以上であることがより好ましい。Alに対する第2族金属元素のモル比は、脱水素触媒中のPtの分散性を高くする観点から、0.60以下であることが好ましく、0.55以下であることがより好ましい。また、Alに対する第2族金属元素のモル比を上記範囲内とすることで、触媒劣化の抑制効果とシクロペンタジエンの収率向上効果とをバランス良く向上させることができる。
脱水素触媒におけるAl、第2族金属元素、第14族金属元素及びPtの含有量は、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(ICP-AES)により、下記の測定条件で測定できる。なお、脱水素触媒は、アルカリ融解後希塩酸により水溶液化して測定に用いる。
・装置:日立ハイテクサイエンス製 SPS-3000型
・高周波出力:1.2kw
・プラズマガス流量:18L/min
・補助ガス流量:0.4L/min
・ネブライザーガス流量:0.4L/min
本態様の脱水素触媒の比表面積は、後述する担体の比表面積と同じであってよい。
脱水素触媒を構成する担体は、例えば、アルミナ(Al)と第2族金属の酸化物とを含む担体であってよく、Alと第2族金属との複合酸化物であってもよい。金属酸化物担体は、Alと第2族金属元素との複合酸化物と、アルミナ及び第2族金属元素の酸化物からなる群より選択される少なくとも一種とを含む担体であってもよい。Alと第2族金属との複合酸化物は、例えば、MgAlであってよい。
担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で、20質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。また、担体におけるAlの含有量は、担体の全質量基準で、70質量%以下であってよく、60質量%以下であってもよい。Alの含有量が20質量%以上70質量%以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。
担体における第2族金属元素の含有量は、担体の全質量基準で、10質量%以上であってよく、15質量%以上であってもよい。また、担体における第2族金属元素の含有量は、担体の全質量基準で、30質量%以下であってよく、20質量%以下であってもよい。第2族金属元素の含有量が10質量%以上30質量%以下であることで、シクロペンタジエンの収率がより向上する傾向がある。
担体におけるAlと第2族金属元素との複合酸化物の含有量は、担体の全質量基準で60質量%以上であってよく、80質量%以上であってもよい。担体におけるAlと第2族金属元素との複合酸化物の含有量は、担体の全質量基準で100質量%以下であってよく、90質量%以下であってもよい。
担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量基準で10質量%以上であってよく、30質量%以上であってもよい。担体におけるアルミナの含有量は、担体の全質量基準で90質量%以下であってよく、80質量%以下であってもよい。
担体における第2族金属元素の酸化物の含有量は、担体の全質量基準で15質量%以上であってよく、25質量%以上であってもよい。担体における第2族金属元素の酸化物の含有量は、担体の全質量基準で50質量%以下であってよく、35質量%以下であってもよい。
担体は、Al及び第2族金属元素以外に他の金属元素を含んでいてもよい。他の金属元素は、例えば、Si、Zr、Ti、Ce、Li、Na、K、Zn、Fe、In、Se、Sb、Ni及びGaからなる群より選択される少なくとも一種であってよい。他の金属元素は酸化物として存在していてもよいし、Al及び第2族金属元素からなる群より選択される少なくとも一種との複合酸化物として存在していてもよい。
担体の酸性度は、副反応が抑制されるという観点から中性付近であることが好ましい。ここで、担体の酸性度に対する基準は、一般的に水に担体を分散させた状態におけるpHで区別する。すなわち、本明細書中、担体の酸性度は、担体1質量%を懸濁させた懸濁液のpHで表すことができる。担体の酸性度は、好ましくはpH5.0~9.0であってよく、より好ましくはpH6.0~8.0であってよい。
担体の比表面積は、例えば50m/g以上であってよく、80m/g以上であることが好ましい。これにより、担持されるPtの分散性が上昇しやすいという効果が奏される。また、担体の比表面積は、例えば300m/g以下であってよく、250m/g以下であることが好ましい。このような比表面積を有する担体は、担体が高温となる焼成時に潰れてしまい易いマイクロ孔を持たない傾向がある。そのため、担持されるPtの分散性が上昇しやすい傾向がある。なお、担体の比表面積は、窒素吸着法を用いたBET比表面積計で測定される。
担体の調製方法は特に制限されず、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法、含浸法、固相合成法等であってよい。
担体の調製方法の例として、含浸法の一態様を以下に示す。まず、第一の金属元素(例えば第2族金属元素)の前駆体が溶媒に溶解した溶液に、第二の金属元素(例えばAl)を含む担体前駆体を加え、溶液を撹拌する。その後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体を乾燥させる。乾燥後の固体を焼成することで、第一の金属元素及び第二の金属元素を含む担体が得られる。この態様において、担体に含まれる目的の金属元素の含有量は、目的の金属元素を含む溶液における当該金属元素の濃度、当該溶液の使用量等によって調整することができる。
金属前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機酸塩又はこれらの水和物であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩等であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩等であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体、アンミン錯体等であってよい。
金属前駆体を溶解する溶媒としては、例えば、塩酸、硝酸、アンモニア水、エタノール、クロロホルム、アセトン等が挙げられる。
第二の金属元素を含む担体前駆体としては、例えば、アルミナ(例えばγ-アルミナ)等が挙げられる。担体前駆体は、例えば、ゾルゲル法、共沈法、水熱合成法等によって調製できる。担体前駆体として、市販のアルミナを用いてもよい。
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、金属前駆体を分解可能な温度であればよく、例えば200~1000℃であってよく、400~800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100~200℃であってもよい。
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0~60℃、撹拌時間10分~24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100~250℃、乾燥時間3時間~24時間とすることができる。
本態様の脱水素触媒には、Ptを含む担持金属が担持されている。担持金属は、酸化物として担体に担持されていてよく、単体の金属として担体に担持されていてもよい。
担体には、Pt以外の他の金属元素が担持されていてもよい。他の金属元素としては、上述した第14族金属元素、及び、上記担体が含みうる他の金属元素の例と同様の金属元素が挙げられる。他の金属元素は、単体の金属として担体に担持されていてもよいし、酸化物として担持されていてもよいし、Ptとの複合酸化物として担持されていてもよい。
担体に担持されるPtの量は、担体100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは0.5質量部以上である。また、担体に担持されるPtの量は、担体100質量部に対して、5質量部以下であってよく、3質量部以下であってもよい。このようなPt量であると、触媒上で形成されるPt粒子が脱水素反応に好適なサイズとなり、単位白金重量あたりの白金表面積が大きくなるため、より効率的な反応系が実現できる。また、このようなPt量であると触媒コストを抑制しながら、高い活性をより長期間にわたり維持できる。
担体に金属を担持する方法は特に限定されず、例えば、含浸法、沈着法、共沈法、混練法、イオン交換法、ポアフィリング法が挙げられる。
担体に金属を担持する方法の一態様を以下に示す。まず、目的の金属(担持金属)の前駆体が溶媒(例えばアルコール、水など)に溶解した溶液に、担体を加え、溶液を撹拌する。その後、減圧下で溶媒を除去し、得られた固体を乾燥させる。乾燥後の固体を焼成することで、目的の金属を担体に担持させることができる。
上記の担持方法において、担体金属の前駆体は、例えば、金属元素を含む塩又は錯体であってよい。金属元素を含む塩は、例えば、無機塩、有機酸塩又はこれらの水和物であってよい。無機塩は、例えば、硫酸塩、硝酸塩、塩化物、リン酸塩、炭酸塩等であってよい。有機塩は、例えば、酢酸塩、しゅう酸塩等であってよい。金属元素を含む錯体は、例えば、アルコキシド錯体、アンミン錯体等であってよい。
撹拌時の条件としては、例えば撹拌温度0~60℃、撹拌時間10分~24時間とすることができる。また、乾燥時の条件としては、例えば乾燥温度100~250℃、乾燥時間3時間~24時間とすることができる。
焼成は、例えば、空気雰囲気下又は酸素雰囲気下で行うことができる。焼成は一段階で行ってもよく、二段階以上の多段階で行ってもよい。焼成温度は、担体金属の前駆体を分解可能な温度であればよく、例えば200~1000℃であってよく、400~800℃であってもよい。なお、多段階の焼成を行う場合、少なくともその一段階が上記焼成温度であればよい。他の段階での焼成温度は、例えば上記と同じ範囲であってよく、100~200℃であってもよい。
本態様の脱水素触媒におけるPtの分散度は、10%以上であってよく、好ましくは15%以上であってよい。このようなPt分散度を有する脱水素触媒によれば、副反応が一層抑制され、高い活性がより長期間にわたり維持される傾向がある。なお、Ptの分散度は、吸着種としてCOを用いた金属分散度測定法により、下記の装置及び測定条件で測定される。
・装置:株式会社大倉理研製金属分散度測定装置R-6011
・ガス流速:30mL/分(ヘリウム、水素)
・試料量:約0.1g(小数点以下4桁目まで精秤した)
・前処理:水素気流下で400℃まで1時間かけて昇温し、400℃で60分間還元処理を行う。その後、ガスを水素からヘリウムに切り替えて400℃で30分間パージした後、ヘリウム気流下で室温まで冷却する。室温で検出器が安定するまで待った後、COパルスを行う。
・測定条件:常圧ヘリウムガス流通下、室温(27℃)で一酸化炭素を0.0929cmずつパルス注入し、吸着量を測定する。吸着回数は、吸着が飽和するまで行う(最低3回、最大15回)。測定された吸着量から、分散度を求める。
脱水素触媒は、上記以外の脱水素触媒を併用してもよい。例えば、上記以外の脱水素触媒の好適な一例として、上記態様における担持金属としてCrを用いた触媒が挙げられる。
脱水素触媒は押出成形法、打錠成型法等の方法で成形されていてよい。
脱水素触媒は、成形工程における成形性を向上させる観点から、触媒の物性や触媒性能を損なわない範囲において、成形助剤を含有してよい。成型助剤は、例えば、増粘剤、界面活性剤、保水剤、可塑剤、バインダー原料等からなる群より選択される少なくとも一種であってよい。脱水素触媒を成形する成形工程は、成形助剤の反応性を考慮して脱水素触媒の製造工程の適切な段階で行ってよい。
成形された脱水素触媒の形状は、特に限定されるものではなく、触媒を使用する形態により適宜選択することができる。例えば、脱水素触媒の形状は、ペレット状、顆粒状、ハニカム状、スポンジ状等の形状であってよい。
脱水素触媒は、前処理として還元処理が行われたものを用いてもよい。還元処理は、例えば、還元性ガスの雰囲気下、40~600℃で脱水素触媒を保持することで行うことができる。保持時間は、例えば0.05~24時間であってよい。還元性ガスは、例えば、水素、一酸化炭素等であってよい。
還元処理を行った脱水素触媒を用いることにより、脱水素反応の初期の誘導期を短くすることができる。反応初期の誘導期とは、触媒に含まれる活性金属がほとんど還元されておらず、触媒の活性が低い状態をいう。
脱水素工程は、例えば、脱水素触媒を充填した反応器を用い、上記原料成分を流通させることにより実施してよい。反応器としては、固体触媒による気相反応に用いられる種々の反応器を用いることができる。反応器としては、例えば、固定床型反応器、ラジアルフロー型反応器、管型反応器等が挙げられる。
脱水素反応の反応形式は、例えば、固定床式、移動床式又は流動床式であってよい。これらのうち、設備コストの観点からは固定床式が好ましい。
脱水素反応の反応温度、すなわち反応器内の温度は、反応効率の観点から300~800℃であってよく、400~700℃であってよく、500~650℃であってよい。反応温度が300℃以上であれば、シクロペンタジエンの生成量が一層多くなる傾向がある。反応温度が800℃以下であれば、コーキング速度が大きくなりすぎないため、脱水素触媒の高い活性がより長期にわたって維持される傾向がある。
反応圧力、すなわち反応器内の気圧は0.01~1.1MPa-Aであってよく、0.05~0.9MPa-Aであってよく、0.05~0.5MPa-Aであってよい。反応圧力が上記範囲にあれば脱水素反応が進行し易くなり、一層優れた反応効率が得られる傾向がある。
脱水素工程を、上記原料成分を連続的に供給する連続式の反応形式で行う場合、重量空間速度(以下、「WHSV」という。)は、例えば0.1h-1以上であってよく、0.5h-1以上であってもよい。また、WHSVは、20h-1以下であってよく、10h-1以下であってもよい。ここで、WHSVとは、脱水素触媒の質量Wに対する原料ガスの供給速度(供給質量/時間)Fの比(F/W)である。WHSVが0.1h-1以上であると、反応器サイズをより小さくできる。WHSVが20h-1以下であると、シクロペンタジエンの収率をより高くすることができる。なお、原料ガス及び触媒の使用量は、反応条件、触媒の活性等に応じて更に好ましい範囲を適宜選定してよく、WHSVは上記範囲に限定されるものではない。
脱水素工程は、水素を含む雰囲気下で行うことが好ましい。これにより、脱水素触媒の劣化をより抑制でき、より高い収率で効率良くシクロペンタジエンを製造することができる。
脱水素工程を、水素を含む雰囲気下で行う場合、雰囲気中の水素濃度は、5~95モル%であることが好ましく、20~85モル%であることがより好ましい。水素濃度を上記範囲内とすることで、脱水素触媒の劣化を抑制する効果をより向上でき、且つ、シクロペンタジエンの収率をより向上できる。
脱水素反応により、シクロペンタジエンを含有する反応混合物が得られる。本実施形態では、蒸留等の方法によって反応混合物からシクロペンタジエンを分離してよい。
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。
以下、実施例によって本開示を更に詳細に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、各実施例及び各比較例の条件及び結果は表1~表6に示す。また、各実施例及び各比較例で得られた反応生成物に含まれる主要な成分の収率を示すグラフを図1~図7に示す。図1~図7中、シクロペンタジエンの収率のみ数値を記載した。また、各図の凡例は以下を示す。
C1:メタン
C2-C4:炭素数2~4の炭化水素
i-C5:i-ペンタン
i-C5=:i-ペンテン
n-C5=:n-ペンテン
n-C5==:n-ペンタジエン
cyC5:シクロペンタン
cyC5=:シクロペンテン
CPD:シクロペンタジエン
aromatics:芳香族化合物
(実施例1)
<触媒A-1の調製>
担体前駆体として、粒径0.5~1mmに分級されたγ-アルミナ6.0g(ネオビードGB-13、水澤化学工業(株)製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)を用意した。担体前駆体と、15.1gのMg(NO・6HOを45mLの水に溶解させた溶液とを混合した。得られた混合液を、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、0.015MPaで30分間撹拌した後、40℃、常圧で更に30分間撹拌した。その後、混合液を撹拌しながら減圧下で水を除去した。得られた固体を130℃のオーブン中で一晩乾燥させた。次に、乾燥後の固体を、空気流通下、550℃で3時間、800℃で3時間の2段階で焼成し、MgAlを含む担体A-1を得た。
10.0gの担体A-1に対し、ジニトロジアンミン白金(II)の硝酸溶液(田中貴金属工業製、[Pt(NH(NO]/HNO)を用いて、白金担持量が約1質量%になるよう白金を含浸担持し、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。これにより、MgAlにPtが担持された触媒A-1を得た。得られた触媒A-1をICP法で分析したところ、触媒全量を基準としたPtの担持量は1質量%であった。
<シクロペンタジエンの製造>
n-ペンタン(富士フイルム和光純薬株式会社製、特級)を、固定床流通式反応装置を用い、500℃、常圧、水素含有雰囲気下(n-ペンタン:He:H=1:9:3(モル比)、水素濃度23.1モル%)、WHSV=1.1h-1の条件で反応させた。触媒は触媒A-1を用いた。反応開始から90分後の反応生成物を、FID検出器を備えたガスクロマトグラフにより分析し、シクロペンタジエン(CPD)の収率を求めた。また、反応生成物に含まれる主要な成分の収率をグラフに示した。
(比較例1)
<触媒B-1の調製>
粒径0.5~1mmに分級されたγ-アルミナ6.0g(ネオビードGB-13、水澤化学工業(株)製、1質量%の濃度で水に懸濁させた懸濁液のpH:7.9)を用意した。これを乾燥させ、Alを含む担体B-1を得た。この担体B-1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、AlにPtが担持された触媒B-1(Ptの担持量:1質量%)を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒B-1を用いたこと以外は実施例1と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(比較例2)
<触媒B-2の調製>
担体B-2として、富士シリシア化学株式会社製のCARiACT Q-15を用意した。この担体B-2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、SiOにPtが担持された触媒B-2(Ptの担持量:1質量%)を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒B-2を用いたこと以外は実施例1と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(比較例3)
<触媒B-3の調製>
担体B-3として、触媒学会参照触媒JRC-CEO-3を用意した。この担体B-3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、CeOにPtが担持された触媒B-3(Ptの担持量:1質量%)を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒B-3を用いたこと以外は実施例1と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(比較例4)
<触媒B-4の調製>
担体B-4として、東ソー株式会社製のHSZ-890HOAを用意した。この担体B-4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、H-ZSM-5にPtが担持された触媒B-4(Ptの担持量:1質量%)を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒B-4を用いたこと以外は実施例1と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(実施例2)
シクロペンタジエンの製造時の反応温度を550℃としたこと以外は実施例1と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(比較例5)
<触媒B-5の調製>
80mlのイオン交換水に2.38gの硝酸亜鉛六水和物(関東化学株式会社製、鹿特級)、6.0gの硝酸アルミニウム九水和物(関東化学株式会社、鹿特級)、4.8gの尿素(富士フイルム和光純薬株式会社、特級)を加えたものを、オートクレーブ中で160℃、48時間処理した。さらに、ろ過、洗浄した後、600℃で4時間焼成し、ZnAlを含む担体B-5を得た。
この担体B-5を用いたこと以外は実施例1と同様にして、ZnAlにPtが担持された触媒B-5(Ptの担持量:1質量%)を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒B-5を用いたこと以外は実施例2と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(実施例3~8)
<触媒A-2~A-7の調製>
Ptの担持量を0.1質量%(A-2)、0.3質量%(A-3)、0.5質量%(A-4)、2.0質量%(A-5)、3.0質量%(A-6)、又は、5.0質量%(A-7)に変更したこと以外は実施例1と同様にして、MgAlにPtが担持された触媒A-2~A-7を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒A-2~A-7を用いたこと以外は実施例2と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(実施例9~12)
シクロペンタジエンの製造時において、雰囲気中のn-ペンタン:He:Hのモル比を、1:11:1(水素濃度7.7モル%、実施例9)、1:7:5(水素濃度38.5モル%、実施例10)、1:5:7(水素濃度53.8モル%、実施例11)、又は、1:4:8(水素濃度61.5モル%、実施例12)に変更したこと以外は実施例2と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
(実施例13~17)
実施例9、実施例2、実施例10、実施例11、又は、実施例12と同様にしてシクロペンタジエンを製造し、反応開始から390分後の反応生成物を分析してシクロペンタジエンの収率を求めた。
(実施例18~22)
シクロペンタジエンの製造時に、原料成分をn-ペンタン(実施例18)、シクロペンタン(実施例19)、シクロペンテン(実施例20)、1-ペンテン(実施例21)、又は、2-ペンテン(実施例22)とし、実施例1と同様にしてシクロペンタジエンを製造し、反応開始から160分後の反応生成物を分析してシクロペンタジエンの収率を求めた。
(実施例23~27)
<触媒A-8~A-12の調製>
10.0gの触媒A-1に対し、スズ酸ナトリウム水溶液(昭和化工社製、NaSnO)を用いて、白金に対するスズ担持量(Sn/Ptモル比)が0.1(A-8)、0.2(A-9)、0.5(A-10)、0.7(A-11)、又は、1.0(A-12)になるようにスズを含浸担持させ、130℃で一晩乾燥させ、550℃で3時間焼成を行った。更に、これらを純水で洗浄し、洗浄液の導電率が80μS/cm以下となるまで洗浄を繰り返した後、130℃で一晩乾燥させた。これにより、MgAlにPt及びSnが担持された触媒A-8~A-12を得た。
<シクロペンタジエンの製造>
触媒A-8~A-12を用いたこと以外は実施例2と同様にして、シクロペンタジエンを製造し、収率を求めた。
表1~表6に示した結果から明らかなように、実施例の製造方法によれば、長時間(90分以上)反応を行った場合、比較例の製造方法よりも高い収率でシクロペンタジエンを製造できることが確認された。また、上記結果から、実施例の製造方法によれば、反応の最初の数分で触媒が失活することがなく、触媒の劣化を抑制できることが確認された。

Claims (8)

  1. 炭素数5の炭化水素のノルマル体、シクロペンタン及びシクロペンテンからなる群より選択される少なくとも一種を含有する原料成分と、脱水素触媒とを接触させて、シクロペンタジエンを得る脱水素工程を含み、
    前記脱水素触媒が、Al及び第2族金属元素を含む金属酸化物担体と、該担体に担持されたPtを含む担持金属とを有し、
    前記第2族金属元素がMgを含み、
    前記金属酸化物担体が、前記Alと前記第2族金属元素との複合酸化物として、前記Alと前記Mgとの複合酸化物であるMgAl を含む、シクロペンタジエンの製造方法。
  2. 前記脱水素触媒中の第14族金属元素の含有量が、前記脱水素触媒全量を基準として1.0質量%以下である、請求項1に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  3. 前記脱水素触媒において、前記Ptに対する第14族金属元素のモル比(第14族金属元素のモル数/Ptのモル数)が、1.0以下である、請求項1又は2に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  4. 前記脱水素触媒中の前記Ptの含有量が、前記脱水素触媒全量を基準として0.1~10質量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  5. 前記脱水素工程を、水素を含む雰囲気下で行う、請求項1~のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  6. 前記脱水素触媒における前記Alに対する前記第2族金属元素のモル比(第2族金属元素のモル数/Alのモル数)が、0.30以上0.60以下である、請求項1~5のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  7. 前記金属酸化物担体における前記Alの含有量が、前記金属酸化物担体の全質量基準で20質量%以上である、請求項1~6のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
  8. 前記金属酸化物担体における前記Alと前記第2族金属元素との複合酸化物の含有量が、前記金属酸化物担体の全質量基準で60質量%以上である、請求項1~7のいずれか一項に記載のシクロペンタジエンの製造方法。
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