JP7744375B2 - 改質硫化物固体電解質及びその製造方法 - Google Patents

改質硫化物固体電解質及びその製造方法

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Description

本発明は、改質硫化物固体電解質及びその製造方法に関する。
近年におけるパソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等の急速な普及に伴い、その電源として利用される電池の開発が重要視されている。中でもエネルギー密度が高いという観点から、リチウムイオン電池が注目を浴びている。
従来、このような用途に用いられる電池において可燃性の有機溶媒を含む電解液が用いられていたため、短絡時の温度上昇を抑制する安全装置の取付、短絡防止のための構造、材料面での改善が必要となる。これに対して、電解液を固体電解質にかえて、電池を全固体化することで、電池内に可燃性の有機溶媒を用いず、安全装置の簡素化が図れ、製造コスト、生産性に優れることから、電解液を固体電解質層に換えた電池の開発が行われている。
固体電解質層に用いられる固体電解質として、従来から硫化物固体電解質が知られており、硫化物固体電解質には第一にイオン伝導度の向上が望まれている。例えば、イオン伝導度を向上させるため、硫化物系固体電解質の表面を、所定のハロゲン化炭化水素化合物をコーティング材として被覆した複合固体電解質の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
また、表面を被覆する技術として、例えば、リチウムイオン電池を製造する際の負極、正極等に用いられる活物質と硫化物固体電解質の親和性を高めてサイクル特性を向上させるため、当該固体電解質の表面にC=O結合を有する化合物、S=O結合を有する化合物により被膜を形成した固体電解質組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。また、特許文献3には、リチウム元素、リン元素及び硫黄元素を含み、かつカルボン酸とアルコールとのエステル化合物も含有する硫化物固体電解質において、当該エステル化合物が当該伝導性硫化物の表面に結合ないし吸着しており、固体電池のサイクル特性を向上し得ること、また当該硫化物固体電解質が、リチウムイオン伝導性硫化物と有機溶媒とエステル化合物とを含むスラリーを湿式粉砕する工程を有する製造方法により得られることが開示されている。このように、近年リチウムイオン電池の実用化に向けて、単に硫化物固体電解質自体のイオン伝導度を向上させるだけにとどまらず、それ以外の性能の向上に対する要望が多様化している。そして、そのような要望に対応するため、表面を被覆する技術は適用されている。
特開2020-87633号公報 特開2017-147173号公報 国際公開第2020/203231号パンフレット
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、比表面積が大きい硫化物固体電解質であっても、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現し得る、改質硫化物固体電解質及びその製造方法を提供することを目的とする。また本発明は、優れた電池性能を発現する電極合材及びリチウムイオン電池を提供することを目的とする。
本発明に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、
BET比表面積が10m/g以上であり、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物と、有機溶媒と、を混合すること、
前記有機溶媒を除去すること、
を含む、
改質硫化物固体電解質の製造方法、
である。
本発明に係る改質硫化物固体電解質は、
上記改質硫化物固体電解質の製造方法により得られ、
前記有機ハロゲン化物、又は前記有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基を含む化合物を有する、改質硫化物固体電解質、
また、本発明に係る改質硫化物固体電解質は、
上記改質硫化物固体電解質の製造方法により得られ、
前記有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、前記硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成するハロゲン化リチウムを有する、改質硫化物固体電解質、
である。
本発明に係る電極合材は、
上記本発明に係る改質硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む電極合材、
である。
また、本発明に係るリチウムイオン電池は、
上記本発明に係る改質硫化物固体電解質及び上記本発明に係る電極合材の少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池、
である。
本発明によれば、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現し得る、改質硫化物固体電解質の製造方法及び改質硫化物固体電解質を提供することができる。また本発明によれば、優れた電池性能を発現する電極合材及びリチウムイオン電池を提供することができる。
実施例6、8及び比較例1で得られた硫化物固体電解質のX線回折スペクトルである。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」と称することがある。)について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されることはなく、発明の効果を阻害しない範囲において任意に変更して実施し得るものである。
また、本明細書において、「以上」、「以下」、「~」の数値範囲に係る上限及び下限の数値は任意に組合せできる数値であり、また実施例の数値を上限及び下限の数値として用いることもできる。例えば、とある数値範囲について「A~B」及び「C~D」と記載されている場合、「A~D」、「C~B」といった数値範囲も含まれる。
(本発明に至るために本発明者が得た知見)
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記の事項を見出し、本発明を完成するに至った。
特許文献1~3のように、硫化物固体電解質の表面に何らかの化合物を被覆させる技術は従来から存在している。特許文献1~3では、当該技術を用いて、イオン伝導度を向上させる、リチウムイオン電池を製造する際の負極、正極等に用いられる活物質と硫化物固体電解質の親和性を高めてサイクル特性を向上させる、といった電池性能の向上を課題としている。
ところで、リチウムイオン電池(「全固体電池」とも称される。)は、その製造過程において、固体電解質、その他の所定成分及び溶媒を混合したペーストを調製し、当該ペーストを塗工してセパレータ層、電極合材層を形成する。これらの層の性能向上のためには、これらの層を構成する固体電解質の密度を向上させることが必要となり、当該密度の向上には比表面積の大きい固体電解質を用いることが有効である。
このように、固体電解質として比表面積の大きいものを用いたいという要望があるところ、固体電解質の比表面積が大きいと、ペーストの粘度が高くなり、塗工適性が著しく低下するといった製造上の問題が生じる。他方、溶媒を多量に用いてペーストの粘度を低くすることで、ペーストの塗工適性を向上させることも可能であるが、乾燥時間が長くなる、層を構成する固体電解質の密度の低下による、電池性能の低下といった問題が発生する。そのため、ペーストの塗工適性と、高い電池性能を得ることとは、二律背反の関係にある。また、比表面積が10m/g以上と大きい硫化物固体電解質は、ペーストにすると粘度が高くなり、塗工適性の低下が顕著となるだけでなく、ペーストの粘度を低くするには多量の溶媒が必要となるため、乾燥時間の長期化、密度低下による電池性能の低下も顕著となる。
既述の通り、これまでは特許文献1~3のように、イオン伝導度、電池性能の向上を課題とするものは多数研究されてきているが、リチウムイオン電池の実用化が急速に進みつつある状況下、量産化に着目して、ペーストの塗工適性といった製造過程における性能を向上させる手法について何ら検討されていないことに着目した。
本発明者らは、特許文献1、2に開示される硫化物固体電解質の表面に何らかの化合物を被覆させる技術を踏襲しながら、表面に被覆させる化合物に着目し鋭意研究を続けてきたところ、比表面積として10m/g以上と大きいものである硫化物固体電解質であっても、少なくとも硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することにより、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現し得る硫化物固体電解質となり得ることを見出すに至った。硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することで、有機ハロゲン化物、または有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基等が硫化物固体電解質に付着又は反応し、そのことにより比表面積として10m/g以上と大きいものである硫化物固体電解質であってもペーストとして塗工する際の塗工適性に優れるという効果が得られることは、これまで全く認知されていない、驚くべき事象である。
本明細書において、「固体電解質」とは、窒素雰囲気下25℃で固体を維持する電解質を意味する。本実施形態の製造方法により得られる「硫化物固体電解質」は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、リチウム原子に起因するイオン伝導度を有する固体電解質である。
「硫化物固体電解質」には結晶構造を有する結晶性硫化物固体電解質と、非晶性硫化物固体電解質と、の両方が含まれる。本明細書において、結晶性硫化物固体電解質とは、粉末X線回折(XRD)測定においてX線回折パターンに、固体電解質由来のピークが観測される固体電解質であって、これらにおいての固体電解質の原料由来のピークの有無は問わない材料である。すなわち、結晶性硫化物固体電解質は、固体電解質に由来する結晶構造を含み、その一部が該固体電解質に由来する結晶構造であっても、その全部が該固体電解質に由来する結晶構造であってもよい、ものである。そして、結晶性硫化物固体電解質は、上記のようなX線回折パターンを有していれば、その一部に非晶性硫化物固体電解質(「ガラス成分」とも称される。)が含まれていてもよいものである。したがって、結晶性硫化物固体電解質には、非晶性固体電解質(ガラス成分)を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスが含まれる。
また、本明細書において、非晶性硫化物固体電解質(ガラス成分)とは、粉末X線回折(XRD)測定においてX線回折パターンが実質的に材料由来のピーク以外のピークが観測されないハローパターンであるもののことであり、固体電解質の原料由来のピークの有無は問わないものであることを意味する。
上記結晶性及び非晶性の区別は、本実施形態において、硫化物固体電解質、改質硫化物固体電解質のいずれにも適用される。
本実施形態の第一の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、
BET比表面積が10m/g以上であり、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物と、有機溶媒と、を混合すること、
前記有機溶媒を除去すること、
を含む、
改質硫化物固体電解質の製造方法、
である。
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質としては、従来法で得られる、例えば原料として硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム、単体ハロゲン等を原料として用いて得られる、硫化物固体電解質が典型的に挙げられる。本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法は、従来法によるBET比表面積が10m/g以上と比表面積が大きい硫化物固体電解質を用いた製造方法といえる。
従来のBET比表面積が10m/gと比表面積が大きい硫化物固体電解質では、所定の電池性能を発現するために、層中の固体電解質の密度を確保するのに必要な含有量で含有させたペーストは塗布性能が著しく低下し、効率的に正極、負極、電解質層を形成することは極めて困難であった。本実施形態の硫化物固体電解質は、少なくとも硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することで、有機ハロゲン化物、または有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基等が硫化物固体電解質に付着又は反応する事象により、電解質表面が有機溶媒に対して親和性が向上し、吸油量を低減することができている、すなわち「改質」していることから、「改質硫化物固体電解質」と称すべきものとなっていると考えられる。
付着と塗工適性との関係について、比表面積と同様に、吸油量が関係することが知られている。後述する実施例及び比較例によれば、本実施形態の改質硫化物固体電解質では、付着しない硫化物固体電解質に比べて吸油量がより低くなっていることが確認され、同時に塗工適性が向上することが確認されている。
有機ハロゲン化物が、分子間相互作用によるものか、あるいは反応によるものかは不明ではあるが、硫化物固体電解質の表面に付着又は反応することにより、吸油量を低減させることができ、塗工適性が向上し、結果として電池性能が向上するものと考えられる。
本実施形態の第二の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、前記有機ハロゲン化物として、一般式(1)で示される有機ハロゲン化物1、一般式(2)で示される有機ハロゲン化物2、一般式(3)で示される有機ハロゲン化物3及び一般式(4)で示される有機ハロゲン化物4から選ばれる少なくとも一種の化合物を用いる、というものである。一般式(1)~(4)で示される有機ハロゲン化物において、X11、X21、X31及びX41におけるハロゲン原子は、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子となっている。本実施形態の製造方法により得られる改質硫化物固体電解質において、フッ素に起因するピークが確認できないことを考慮すると、上記の「付着又は反応すること」は、ハロゲン原子が塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であるX11、X21、X31及びX41によるもの、あるいはこれら以外の基がフッ素以外のハロゲン原子を有する場合は、当該これら以外の基によるもの、と考えられる。本事象も含め、一般式(1)~(4)で示される有機ハロゲン化物についての詳細な説明は後述とする。
有機ハロゲン化物は、既述のように、硫化物固体電解質の表面に付着することにより、吸油量を低減させて、塗工適性を向上し得るものである。中でも一般式(1)~(4)で示される有機ハロゲン化物1~4は、硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、吸油量を低減させて、塗工適性を向上するという効果が得られやすい。
本実施形態の第三の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一の形態及び第二の形態において、有機ハロゲン化物に含まれるハロゲン原子が、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも一種である、というものである。
既述のように有機ハロゲン化物としては、後述する一般式(1)~(4)で示される有機ハロゲン化物1~4が好ましく挙げられるが、これらの有機ハロゲン化物が含むハロゲン原子が、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも一種であると、硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、吸油量を低減させて、塗工適性を向上するという効果が得られやすい。
これらの一般式(1)~(4)にも示されるように、一の有機ハロゲン化物は一のハロゲン原子を含むものであってもよいし、複数種のハロゲン原子を含むものであってもよい。また、一のハロゲン原子を含む有機ハロゲン化物を複数種用いることで、複数種のハロゲン原子を硫化物固体電解質に供給してもよいし、複数種のハロゲン原子を含む一の有機ハロゲン化物を用いて供給してもよい。
本実施形態の第四の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第三の形態における有機ハロゲン化物が、一般式(1)において、X11がハロゲン原子であり、X12が炭素数2~24の1価の脂肪族炭化水素基であり、X13及びX14が水素原子である有機ハロゲン化物1である、というものである。
一般式(1)で示される有機ハロゲン化物1の中でも、第四の形態に規定されるものは、さらに硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、塗工適性が向上しやすく、また効率的に優れた電池性能を発現しやすくなる。
本実施形態の第五の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第四の形態における有機ハロゲン化物が、一般式(2)において、X21~X26が各々独立に水素原子、ハロゲン原子又は少なくとも一の水素原子がハロゲン原子で置換された1価のハロゲン化炭化水素基であり、X21~X26の少なくとも一つが前記ハロゲン化炭化水素基である有機ハロゲン化物2である、というものである。
一般式(2)で示される有機ハロゲン化物2の中でも、第五の形態に規定されるものは、さらに硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、塗工適性が向上しやすく、また効率的に優れた電池性能を発現しやすくなる。
本実施形態の第六の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第五の形態における有機ハロゲン化物が、一般式(3)において、X31がハロゲン原子であり、X32が炭素数2以上の1価の脂肪族炭化水素基又は一般式(3a)で示される基である有機ハロゲン化物3である、というものである。
一般式(3)で示される有機ハロゲン化物3の中でも、第六の形態に規定されるものは、さらに硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、塗工適性が向上しやすく、また効率的に優れた電池性能を発現しやすくなる。
本実施形態の第七の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第六の形態における有機ハロゲン化物が、一般式(4)において、X41がハロゲン原子で示される基であり、X42~X44が1価の脂肪族炭化水素基である有機ハロゲン化物4である、というものである。
一般式(4)で示される有機ハロゲン化物4の中でも、第七の形態に規定されるものは、さらに硫化物固体電解質の表面に付着しやすく、塗工適性が向上しやすく、また効率的に優れた電池性能を発現しやすくなる。
本実施形態の第八の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第七の製造方法において用いられる有機溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エステル系溶媒、ニトリル系溶媒及びエーテル系溶媒から選ばれる少なくとも一種の溶媒である、というものである。
有機溶媒として、上記溶媒を用いることにより、硫化物固体電解質の表面への有機ハロゲン化物の付着が促進し、また上記溶媒は除去しやすいため、効率よく改質硫化物固体電解質が得られる。
本実施形態の第九の形態に係る改質硫化物固体電解質の製造方法は、上記第一~第八の製造方法において、有機ハロゲン化物の使用量が、前記硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モル部に対して、前記有機ハロゲン化物を0.05モル部以上3.5モル部以下である、というものである。
有機ハロゲン化物を0.05モル部以上3.5モル部以下で用いることで、有機ハロゲン化物の上記付着が効率的に生じ、吸油量を低減させて、塗工適性を向上させることができる。また、改質硫化物固体電解質自体のイオン伝導度が向上する。
本実施形態の第十の形態に係る改質硫化物固体電解質は、上記いずれか一の製造方法により得られ、
前記有機ハロゲン化物、又は前記有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基を含む化合物を有する、
改質硫化物固体電解質である。
既述のように、本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法において、硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することで、有機ハロゲン化物、または有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基が硫化物固体電解質に付着又は反応するという事象が生じる。すなわち、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法により得られ、当該製造方法において用いられる有機ハロゲン化物、又は有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基が硫化物固体電解質に付着して形成する、当該炭化水素基を含む化合物、を含む化合物を有するものである。
本実施形態の第十一の形態に係る改質硫化物固体電解質は、上記いずれか一の製造方法により得られ、
前記有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、前記硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成するハロゲン化リチウムを有する、
改質硫化物固体電解質である。
上記第十及び十一の形態に係る改質硫化物固体電解質について、既述のように、改質硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質の表面に有機ハロゲン化物が、付着又は反応したものであるが、当該「付着」は分子間相互作用によるものと考えられ、付着であっても反応であってもよい。上記第一~第九のいずれかの形態に係る製造方法により、硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することにより、有機ハロゲン化物に起因する付着又は反応による効果により、硫化物固体電解質の吸油量が低減し、塗工適性が向上している。よって、本実施形態の第十及び十一の形態に係る改質硫化物固体電解質は、上記いずれか一の製造方法により得られることを前提とするもの、すなわち硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物との混合により、有機ハロゲン化物が硫化物固体電解質の表面に付着又は反応することを前提とするものである。
本実施形態の第十一の形態に係る改質硫化物固体電解質は、前記有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、前記硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成するハロゲン化リチウムを有するものである。
後述する実施例でも確認されるように、改質硫化物固体電解質の粉末X線回折(XRD)測定によれば、ハロゲン化リチウムに由来するピークが検出される。他方、改質硫化物固体電解質の形成に用いられる硫化物固体電解質(ハロゲン化リチウムを用いて得られたもの)では、ハロゲン化リチウムに由来するピークが検出されない。したがって、有機ハロゲン化物、又は有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基等が硫化物固体電解質と反応し、その副生成物としてハロゲン化リチウムが検出されたものと予想される。
また、有機ハロゲン化物は、主に水素原子、炭素原子、ハロゲン原子を含む化合物であり、リチウム原子を含まない。これらの事象から、本実施形態に係る改質硫化物固体電解質のXRD測定により確認されるハロゲン化リチウムは、有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、硫化物固体電解質に由来するリチウム原子とにより形成するものであり、改質硫化物固体電解質が有機ハロゲン化物を用いて得られたものであることを示すものである、と考えられる。
本実施形態の第十二の形態に係る改質硫化物固体電解質は、上記第十又は第十一の形態において、BET比表面積が10m/g以上である、というものである。
改質硫化物固体電解質のBET比表面積は、後述するように硫化物固体電解質のBET比表面積と実質的に同じである。本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法で用いられる硫化物固体電解質のBET比表面積は10m/g以上であるため、得られる改質硫化物固体電解質のBET比表面積は自ずと10m/g以上となる。
本実施形態の第十三の形態に係る電極合材は、前記第十~第十二のいずれか一の形態の改質硫化物固体電解質等と、電極活物質と、を含む、
というものである。
また、本実施形態の第十四の形態に係るリチウムイオン電池は、前記第十~第十二のいずれか一の改質硫化物固体電解質等及び前記第十三の形態の電極活物質の少なくとも一方を含む、
というものである。
既述のように、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現し得る、というものである。そのため、本実施形態の改質硫化物固体電解質を含む電極合材も塗工適性に優れるものであることから、効率的にリチウムイオン電池を製造することができ、得られるリチウムイオン電池は優れた電池性能を有するものとなる。
〔改質硫化物固体電解質の製造方法〕
本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法は、BET比表面積が10m/g以上であり、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物と、有機溶媒と、を混合すること、前記有機溶媒を除去すること、を含む、ことを特徴とする改質硫化物固体電解質の製造方法、である。
(硫化物固体電解質)
本実施形態の改質硫化物固体電解質を形成する硫化物固体電解質について説明する。本実施形態で用いられ得る硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、BET比表面積が10m/g以上のものであれば特に制限なく用いることが可能であり、市販品をそのまま用いることもできるし、製造して用いることもできる。
本実施形態において用いられ得る硫化物固体電解質を製造して用いる場合について、その製造方法を説明する。本実施形態において用いられ得る硫化物固体電解質は、例えば、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の少なくとも一の原子を含む化合物から選ばれる二種以上の原料を混合することを含む、製造方法により得られる。
(原料)
原料としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子の少なくとも一つの原子を含む化合物から選ばれる二種以上の化合物を採用し得る。
原料として用い得る化合物は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子、ハロゲン原子の少なくとも一つの原子を含むものであり、より具体的には、硫化リチウム;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;ヨウ化ナトリウム、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム等のハロゲン化ナトリウムなどのハロゲン化アルカリ金属;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;各種フッ化リン(PF、PF)、各種塩化リン(PCl、PCl、PCl)、各種臭化リン(PBr、PBr)、各種ヨウ化リン(PI、P)等のハロゲン化リン;フッ化チオホスホリル(PSF)、塩化チオホスホリル(PSCl)、臭化チオホスホリル(PSBr)、ヨウ化チオホスホリル(PSI)、二塩化フッ化チオホスホリル(PSClF)、二臭化フッ化チオホスホリル(PSBrF)等のハロゲン化チオホスホリル;などの上記四種の原子から選ばれる少なくとも二種の原子からなる原料、フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体、好ましくは臭素(Br)、ヨウ素(I)が代表的に挙げられる。
上記以外の原料として用い得る化合物としては、例えば、上記四種の原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含み、かつ該四種の原子以外の原子を含む化合物、より具体的には、酸化リチウム、水酸化リチウム、炭酸リチウム等のリチウム化合物;硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウム、硫化セシウム等の硫化アルカリ金属;硫化ケイ素、硫化ゲルマニウム、硫化ホウ素、硫化ガリウム、硫化スズ(SnS、SnS)、硫化アルミニウム、硫化亜鉛等の硫化金属;リン酸ナトリウム、リン酸リチウム等のリン酸化合物;ハロゲン化アルミニウム、ハロゲン化ケイ素、ハロゲン化ゲルマニウム、ハロゲン化ヒ素、ハロゲン化セレン、ハロゲン化スズ、ハロゲン化アンチモン、ハロゲン化テルル、ハロゲン化ビスマス等のハロゲン化金属;オキシ塩化リン(POCl)、オキシ臭化リン(POBr)等のオキシハロゲン化リン;などが挙げられる。
本実施形態においては、より容易に高いイオン伝導度を有する硫化物固体電解質を得る観点から、ハロゲン原子の中でも塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子、ヨウ素原子がより好ましい。また、これらの原子は単独で、又は複数種を組み合わせて用いてもよい。すなわち、ハロゲン化リチウムを例にとると、臭化リチウムを単独で用いてもよいし、ヨウ化リチウムを単独で用いてもよいし、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組み合わせて用いてもよい。
また、同様の観点から、原料に用い得る化合物としては、上記の中でも、硫化リチウム;三硫化二リン(P)、五硫化二リン(P)等の硫化リン;フッ素(F)、塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)等のハロゲン単体;フッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウム等のハロゲン化リチウム;が好ましく、硫化リンの中でも五硫化二リンが好ましく、ハロゲン単体の中でも塩素(Cl)、臭素(Br)、ヨウ素(I)が好ましく、ハロゲン化リチウムの中でも塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが好ましい。
原料に用い得る化合物の組合せとしては、例えば、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムの組合せ、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン単体の組合せが好ましく、ハロゲン化リチウムとしては臭化リチウム、ヨウ化リチウム、塩化リチウムが好ましく、ハロゲン単体としては塩素、臭素及びヨウ素が好ましい。
本実施形態でリチウム原子を含む化合物として硫化リチウムが用いられる場合、硫化リチウムは粒子であることが好ましい。
硫化リチウム粒子の平均粒径(D50)は、10μm以上2000μm以下であることが好ましく、30μm以上1500μm以下であることがより好ましく、50μm以上1000μm以下であることがさらに好ましい。本明細書において、平均粒径(D50)は、粒子径分布積算曲線を描いた時に粒子径の最も小さい粒子から順次積算して全体の50%に達するところの粒子径であり、体積分布は、例えば、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置を用いて測定することができる平均粒径のことである。また、上記の原料として例示したもののうち固体の原料については、上記硫化リチウム粒子と同じ程度の平均粒径を有するものが好ましい、すなわち上記硫化リチウム粒子の平均粒径と同じ範囲内にあるものが好ましい。
原料として、硫化リチウム、五硫化二リン及びハロゲン化リチウムを用いる場合、硫化リチウム及び五硫化二リンの合計に対する硫化リチウムの割合は、より高い化学的安定性を得る観点、またPS分率を向上させて高いイオン伝導度を得る観点から、好ましくは60mol%以上、より好ましくは65mol%以上、更に好ましくは68mol%以上であり、上限として好ましくは80mol%以下、より好ましくは78mol%以下、更に好ましくは76mol%以下である。
硫化リチウム、五硫化二リン、ハロゲン化リチウム、必要に応じて用いられる他の原料を用いる場合の、これらの合計に対する硫化リチウム及び五硫化二リンの含有量は、好ましくは60mol%以上、より好ましくは65mol%以上、更に好ましくは70mol%以上であり、上限として好ましくは100mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下である。
また、ハロゲン化リチウムとして、臭化リチウムとヨウ化リチウムとを組合せて用いる場合、PS分率を向上させて、また高いイオン伝導度を得る観点から、臭化リチウム及びヨウ化リチウムの合計に対する臭化リチウムの割合は、好ましくは1mol%以上、より好ましくは20mol%以上、更に好ましくは40mol%以上、より更に好ましくは50mol%以上であり、上限として好ましくは99mol%以下、より好ましくは90mol%以下、更に好ましくは80mol%以下、より更に好ましくは70mol%以下である。
原料としてハロゲン単体を用いる場合であって、硫化リチウム、五硫化二リンを用いる場合、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムを除いた硫化リチウム及び五硫化二リンの合計モル数に対する、ハロゲン単体のモル数と同モル数の硫化リチウムとを除いた硫化リチウムのモル数の割合は、60~90%の範囲内であることが好ましく、65~85%の範囲内であることがより好ましく、68~82%の範囲内であることが更に好ましく、72~78%の範囲内であることが更により好ましく、73~77%の範囲内であることが特に好ましい。これらの割合であれば、より高いイオン伝導度が得られるからである。また、これと同様の観点から、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とを用いる場合、硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体との合計量に対するハロゲン単体の含有量は、1~50mol%が好ましく、2~40mol%がより好ましく、3~25mol%が更に好ましく、3~15mol%が更により好ましい。
硫化リチウムと五硫化二リンとハロゲン単体とハロゲン化リチウムとを用いる場合には、これらの合計量に対するハロゲン単体の含有量(αmol%)、及びハロゲン化リチウムの含有量(βmol%)は、下記式(1)を満たすことが好ましく、下記式(2)を満たすことがより好ましく、下記式(3)を満たすことが更に好ましく、下記式(4)を満たすことが更により好ましい。
2≦2α+β≦100…(1)
4≦2α+β≦80 …(2)
6≦2α+β≦50 …(3)
6≦2α+β≦30 …(4)
(混合)
リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の少なくとも一つの原子を含む化合物から選ばれる二種以上の原料を混合は、例えば当該原料を混合機を用いて行うことができる。また、撹拌機、粉砕機等を用いて行うこともできる。
撹拌機を用いても原料の混合は起こり得るし、粉砕機を用いると原料の粉砕が生じることとなるが、同時に混合も生じるからである。すなわち、本実施形態で用いられる硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子の少なくとも一つの原子を含む化合物から選ばれる二種以上の原料を、撹拌、混合、粉砕、又はこれらのいずれかを組合せた処理により行うことができる、ともいえる。
撹拌機、混合機としては、例えば反応槽内に撹拌翼を備えて撹拌(撹拌による混合、撹拌混合とも称し得る。)ができる機械撹拌式混合機が挙げられる。機械撹拌式混合機としては、高速撹拌型混合機、双腕型混合機等が挙げられる。また、高速撹拌型混合機としては、垂直軸回転型混合機、水平軸回転型混合機等が挙げられ、どちらのタイプの混合機を用いてもよい。
機械撹拌式混合機において用いられる撹拌翼の形状としては、ブレード型、アーム型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型、リボン型、多段ブレード型、二連アーム型、ショベル型、二軸羽型、フラット羽根型、C型羽根型等が挙げられ、より効率的に原料の反応を促進させる観点から、ショベル型、フラット羽根型、C型羽根型、アンカー型、パドル型、フルゾーン型等が好ましく、アンカー型、パドル型、フルゾーン型がより好ましい。
機械撹拌式混合機を用いる場合、撹拌翼の回転数は、反応槽内の流体の容量、温度、撹拌翼の形状等に応じて適宜調整すればよく特に制限はないが、通常5rpm以上400rpm以下程度とすればよく、より効率的に原料の反応を促進させる観点から、10rpm以上300rpm以下が好ましく、15rpm以上250rpm以下がより好ましく、20rpm以上200rpm以下が更に好ましい。
混合機を用いて混合する際の温度条件としては、特に制限はなく、例えば通常-30~120℃、好ましくは-10~100℃、より好ましくは0~80℃、更に好ましくは10~60℃である。また混合時間は、通常0.1~500時間、原料の分散状態をより均一とし、反応を促進させる観点から、好ましくは1~450時間、より好ましくは10~425時間、更に好ましくは20~400時間、より更に好ましくは40~375時間である。
粉砕機を用いて、粉砕を伴う混合を行う方法は、従来より固相法(メカニカルミリング法)として採用されてきた方法である。粉砕機としては、例えば、粉砕媒体を用いた媒体式粉砕機を用いることができる。
媒体式粉砕機は、容器駆動式粉砕機、媒体撹拌式粉砕機に大別される。容器駆動式粉砕機としては、撹拌槽、粉砕槽、あるいはこれらを組合せたボールミル、ビーズミル等が挙げられる。また、媒体撹拌式粉砕機としては、カッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機;タワーミルなどの塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の撹拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機;一軸又は多軸混練機などの各種粉砕機が挙げられる。中でも、得られる硫化物の粒径の調整のしやすさ等を考慮すると、容器駆動式粉砕機として例示したボールミル、ビーズミルが好ましく、中でも遊星型のものが好ましい。
これらの粉砕機は、所望の規模等に応じて適宜選択することができ、比較的小規模であれば、ボールミル、ビーズミル等の容器駆動式粉砕機を用いることができ、また大規模、又は量産化の場合には、他の形式の粉砕機を用いてもよい。
また、後述するように、混合の際に溶媒等の液体を伴う液状態、又はスラリー状態である場合は、湿式粉砕に対応できる湿式粉砕機であることが好ましい。
湿式粉砕機としては、湿式ビーズミル、湿式ボールミル、湿式振動ミル等が代表的に挙げられ、粉砕操作の条件を自由に調整でき、より小さい粒径のものに対応しやすい点で、ビーズを粉砕メディアとして用いる湿式ビーズミルが好ましい。また、乾式ビーズミル、乾式ボールミル、乾式振動ミル等の乾式媒体式粉砕機、ジェットミル等の乾式非媒体粉砕機等の乾式粉砕機を用いることもできる。
また、混合の対象物が液状態、スラリー状態である場合、必要に応じて循環させる循環運転が可能である、流通式の粉砕機を用いることもできる。具体的には、スラリーを粉砕する粉砕機(粉砕混合機)と、温度保持槽(反応容器)との間で循環させるような形態の粉砕機が挙げられる。
上記ボールミル、ビーズミルで用いられるビーズ、ボールのサイズは、所望の粒径、処理量等に応じて適宜選択すればよく、例えばビーズの直径として、通常0.05mmφ以上、好ましくは0.1mmφ以上、より好ましくは0.3mmφ以上、上限として通常5.0mmφ以下、好ましくは3.0mmφ以下、より好ましくは2.0mmφ以下である。またボールの直径として、通常2.0mmφ以上、好ましくは2.5mmφ以上、より好ましくは3.0mmφ以上、上限として通常20.0mmφ以下、好ましくは15.0mmφ以下、より好ましくは10.0mmφ以下である。
また、材質としては、例えば、ステンレス、クローム鋼、タングステンカーバイド等の金属;ジルコニア、窒化ケイ素等のセラミックス;メノウ等の鉱物が挙げられる。
また、ボールミル、ビーズミルを用いる場合、回転数としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常10rpm以上、好ましくは20rpm以上、より好ましくは50rpm以上であり、上限としては通常1,000rpm以下、好ましくは900rpm以下、より好ましくは800rpm以下、更に好ましくは700rpm以下である。
また、この場合の粉砕時間としては、その処理する規模に応じてかわるため一概にはいえないが、通常0.5時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、更に好ましくは10時間以上であり、上限としては通常100時間以下、好ましくは72時間以下、より好ましくは48時間以下、更に好ましくは36時間以下である。
使用する媒体(ビーズ、ボール)のサイズ、材質、またロータの回転数、及び時間等を選定することにより、混合、撹拌、粉砕、これらのいずれかを組合せた処理を行うことができ、得られる硫化物の粒径等の調整を行うことができる。
(溶媒)
上記の混合にあたり、上記の原料に、溶媒を加えて混合することができる。溶媒としては、広く有機溶媒と称される各種溶媒等を用いることができる。
溶媒としては、固体電解質の製造において従来より用いられてきた溶媒を広く採用することが可能であり、例えば、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒等の炭化水素溶媒が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ペンタン、2-エチルヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン等が挙げられ、脂環族炭化水素としては、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等が挙げられ、芳香族炭化水素溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、tert-ブチルベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ニトロベンゼン等が挙げられる。
また、上記炭化水素溶媒の他、炭素原子、水素原子以外の原子、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、ハロゲン原子等のヘテロ原子を含む溶媒も挙げられる。このような溶媒は原料として用いられるリチウム原子、リン原子、硫黄原子及びハロゲン原子を含む化合物等と錯体を形成しやすいという性状を有しており(以下、このような溶媒を「錯化剤」とも称する。)、ハロゲン原子を硫化物固体電解質の構造内にとどめやすくさせるという性状を有するため、より高いイオン伝導度が得られる点で有用である。このような錯化剤としては、ヘテロ原子として酸素原子を含む、例えばエーテル溶媒、エステル溶媒の他、アルコール溶媒、アルデヒド溶媒、ケトン溶媒も好ましく挙げられる。
エーテル溶媒としては、例えばジメチルエーテル、ジエチルエーテル、tert-ブチルメチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレンオキサイドグリコールジメチルエーテル(トリグリム)、またジエチレングリコール、トリエチレングリコール等の脂肪族エーテル;エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、ジメトキシテトラヒドロフラン、シクロペンチルメチルエーテル、ジオキサン等の脂環式エーテル;フラン、ベンゾフラン、ベンゾピラン等の複素環式エーテル;メチルフェニルエーテル(アニソール)、エチルフェニルエーテル、ジベンジルエーテル、ジフェニルエーテル等の芳香族エーテルが好ましく挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば蟻酸メチル、蟻酸エチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸イソプロピル;プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、シュウ酸ジメチル、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、コハク酸ジメチル、コハク酸ジエチル等の脂肪族エステル;シクロヘキサンカルボン酸メチル、シクロヘキサンカルボン酸エチル、シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル等の脂環式エステル;ピリジンカルボン酸メチル、ピリミジンカルボン酸メチル、アセトラクトン、プロピオラクトン、ブチロラクトン、バレロラクトン等の複素環式エステル;安息香酸メチル、安息香酸エチル、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、トリメチルトリメリテート、トリエチルトリメリテート等の芳香族エステルが好ましく挙げられる。
また、エタノール、ブタノール等のアルコール溶媒;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ジメチルホルムアミド等のアルデヒド溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン溶媒等が好ましく挙げられる。
ヘテロ原子として窒素原子を含む溶媒としては、アミノ基、アミド基、ニトロ基、ニトリル基等の窒素原子を含む基を有する溶媒が挙げられる。
例えば、アミノ基を有する溶媒としては、エチレンジアミン、ジアミノプロパン、ジメチルエチレンジアミン、ジエチルエチレンジアミン、ジメチルジアミノプロパン、テトラメチルジアミノメタン、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、テトラメチルジアミノプロパン(TMPDA)等の脂肪族アミン;シクロプロパンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環式アミン;イソホロンジアミン、ピペラジン、ジピペリジルプロパン、ジメチルピペラジン等の複素環式アミン;フェニルジアミン、トリレンジアミン、ナフタレンジアミン、メチルフェニレンジアミン、ジメチルナフタレンジアミン、ジメチルフェニレンジアミン、テトラメチルフェニレンジアミン、テトラメチルナフタレンジアミン等の芳香族アミンが好ましく挙げられる。
アセトニトリル、アクリロニトリル等のニトリル溶媒;ジメチルホルムアミド、ニトロベンゼン等の窒素原子を含む溶媒も好ましく挙げられる。
ヘテロ原子としてハロゲン原子を含む溶媒として、ジクロロメタン、クロロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、クロロベンゼン、クロロトルエン、ブロモベンゼン等が好ましく挙げられる。
また、硫黄原子を含む溶媒としては、ジメチルスルホキシド、二硫化炭素等が好ましく挙げられる。
溶媒を用いる場合、溶媒の使用量は、原料の合計量1kgに対して、好ましくは100mL以上、より好ましくは200mL以上、更に好ましくは250mL以上、より更に好ましくは300mL以上であり、上限として好ましくは3000mL以下、より好ましくは2500mL以下、更に好ましくは2000mL以下、より更に好ましくは1550mL以下である。溶媒の使用量が上記範囲内であると、効率よく原料を反応させることができる。
(乾燥)
溶媒を用いて混合を行った場合は、混合を行った後、混合により得られた流体(通常、スラリー)を乾燥することを含んでもよい。溶媒として錯化剤を用いた場合は、錯化剤を含む錯体から当該錯化剤を除去することにより、錯化剤と溶媒とを併用した場合は、錯化剤を含む錯体から当該錯化剤を除去し、かつ溶媒を除去することにより、また錯化剤以外の溶媒を用いた場合は当該溶媒を除去することにより、硫化物固体電解質が得られる。得られた硫化物固体電解質は、リチウム原子に起因するイオン伝導度を発現するものである。
乾燥は、混合により得られた流体を、溶媒の種類に応じた温度で行うことができる。例えば、錯化剤の沸点以上の温度で行うことができる。
また、通常5~100℃、好ましくは10~85℃、より好ましくは15~70℃、より更に好ましくは室温(23℃)程度(例えば室温±5℃程度)で真空ポンプ等を用いて減圧乾燥(真空乾燥)して、錯化剤及び必要に応じて用いられる溶媒を揮発させて行うことができる。
乾燥は、流体をガラスフィルター等を用いたろ過、デカンテーションによる固液分離、また遠心分離機等を用いた固液分離により行ってもよい。錯化剤以外の溶媒を用いた場合には、固液分離によって硫化物固体電解質が得られる。また、溶媒として錯化剤を用いた場合には、固液分離を行った後、上記の温度条件による乾燥を行い、錯体内に取り込まれた錯化剤を除去すればよい。
固液分離は、具体的には、流体を容器に移し、硫化物(あるいは錯化剤を含む場合は錯体(硫化物固体電解質の前駆体とも称し得るものである。)が沈殿した後に、上澄みとなる錯化剤、溶媒を除去するデカンテーション、また例えばポアサイズが10~200μm程度、好ましくは20~150μmのガラスフィルターを用いたろ過が容易である。
乾燥は、混合を行った後、後述する水素処理することの前に行ってもよいし、水素処理することを行った後に行ってもよい。
上記混合を行って得られる硫化物固体電解質、また溶媒を用いた場合は上記乾燥により溶媒を除去して得られる硫化物固体電解質は、リチウム原子に起因するイオン伝導度を発現するものである。
上記混合を行って得られる硫化物固体電解質は、例えば結晶化する程度に粉砕機を用いて粉砕による混合を行わない限り、基本的には非晶性の硫化物固体電解質(ガラス成分)となる。
上記混合を行って得られる硫化物固体電解質は、非晶性の硫化物固体電解質(ガラス成分)であってもよいし、結晶性の硫化物固体電解質であってもよく、所望に応じて適宜選択することができる。結晶性の硫化物固体電解質を製造する場合、上記混合により得られる非晶性の硫化物固体電解質を加熱することで、結晶性の硫化物固体電解質とすることができる。
硫化物固体電解質としては、結晶性の硫化物固体電解質の粉末の粒径を調整するために、例えば後述する粉砕等の処理を施した結果、その表面に非晶性の成分(ガラス成分)が形成した結晶性の硫化物固体電解質も含まれ得る。よって、非晶性成分を含む硫化物固体電解質には、非晶性の硫化物固体電解質、また結晶性の硫化物固体電解質であって、その表面に非晶性の成分が形成した硫化物固体電解質も含まれる。
(加熱)
結晶性の硫化物固体電解質を製造する場合、さらに加熱することを含んでもよい。上記混合することにより非晶性の硫化物固体電解質(ガラス成分)が得られた場合は、加熱することにより結晶性の硫化物固体電解質が得られ、また結晶性の硫化物固体電解質が得られた場合は、より結晶化度を向上させた結晶性の硫化物固体電解質が得られる。
また、混合を行う際に溶媒として錯化剤を用いた場合は、錯化剤を含む錯体が形成しているが、上記の乾燥を行わずに加熱することによっても、錯体より錯化剤を除去し、硫化物固体電解質が得られ、加熱の条件によって、非晶性のものとすることもできるし、結晶性のものとすることもできる。
加熱温度は、例えば、非晶性の硫化物固体電解質を得る場合、該非晶性の硫化物固体電解質を加熱して得られる結晶性の硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、具体的には、該非晶性の硫化物固体電解質を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以下、より好ましくは10℃以下、更に好ましくは20℃以下の範囲とすればよく、下限としては特に制限はないが、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度-40℃以上程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に非晶性の硫化物固体電解質が得られる。非晶性の硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性の硫化物固体電解質の構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、135℃以下が好ましく、130℃以下がより好ましく、125℃以下が更に好ましく、下限としては特に制限はないが、好ましくは90℃以上、より好ましくは100℃以上、更に好ましくは105℃以上である。
また、非晶性の硫化物固体電解質を加熱して結晶性の硫化物固体電解質を得る場合、結晶性の硫化物固体電解質の構造に応じて加熱温度を決定すればよく、非晶性の硫化物固体電解質を得るための上記加熱温度よりも高いことが好ましく、具体的には、該非晶性の硫化物固体電解質を、示差熱分析装置(DTA装置)を用いて、10℃/分の昇温条件で示差熱分析(DTA)を行い、最も低温側で観測される発熱ピークのピークトップの温度を起点に、好ましくは5℃以上、より好ましくは10℃以上、更に好ましくは20℃以上の範囲とすればよく、上限としては特に制限はないが、40℃以下程度とすればよい。このような温度範囲とすることで、より効率的かつ確実に結晶性の硫化物固体電解質が得られる。結晶性の硫化物固体電解質を得るための加熱温度としては、得られる結晶性の硫化物固体電解質の組成、構造に応じてかわるため一概に規定することはできないが、通常、130℃以上が好ましく、135℃以上がより好ましく、140℃以上が更に好ましく、上限としては特に制限はないが、好ましくは600℃以下、より好ましくは550℃以下、更に好ましくは500℃以下である。
加熱時間は、所望の非晶性の硫化物固体電解質、結晶性の硫化物固体電解質が得られる時間であれば特に制限されるものではないが、例えば、1分間以上が好ましく、10分以上がより好ましく、30分以上が更に好ましく、1時間以上がより更に好ましい。また、加熱時間の上限は特に制限されるものではないが、24時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましく、5時間以下が更に好ましく、3時間以下がより更に好ましい。
また、加熱は、不活性ガス雰囲気(例えば、窒素雰囲気、アルゴン雰囲気)、または減圧雰囲気(特に真空中)で行なうことが好ましい。一定濃度、例えば後述する水素処理における水素の濃度の水素を含む不活性ガス雰囲気でもよい。結晶性の硫化物固体電解質の劣化(例えば、酸化)を防止できるからである。
加熱の方法は、特に制限されるものではないが、例えば、ホットプレート、真空加熱装置、アルゴンガス雰囲気炉、焼成炉を用いる方法等を挙げることができる。また、工業的には、加熱手段と送り機構を有する横型乾燥機、横型振動流動乾燥機等を用いることもでき、加熱する処理量に応じて選択すればよい。
上記の方法により得られる硫化物固体電解質は、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む、非晶性(ガラス成分)、結晶性の硫化物固体電解質であり、本実施形態製造方法において、好適に硫化物固体電解質として用いられる。
(BET比表面積)
本実施形態の製造方法で用いられる硫化物固体電解質のBET比表面積は10m/g以上のものである。本実施形態の改質硫化物固体電解質は、このように比表面積が大きいものであるにもかかわらず、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現するという効果を奏するものであり、硫化物固体電解質のBET比表面積は高ければ高いほど、当該効果の優位性をより示すことが可能となる。このような観点から、BET比表面積は12m/g以上のものが好ましく、15m/g以上のものがより好ましく、20m/g以上のものが更に好ましい。同様の観点から上限としては特に制限はないが、現実的には100m/g以下、好ましくは75m/g以下、より好ましくは50m/g以下である。
本明細書において、BET比表面積は、JIS Z 8830:2013(ガス吸着による粉体(固体)の比表面積測定方法)に準拠し、吸着質としてクリプトンを用いて測定される比表面積である。
(非晶性硫化物固体電解質)
上記の方法により得られる非晶性硫化物固体電解質としては、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含み、代表的なものとしては、例えば、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の、硫化リチウム、硫化リン及びハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質;さらに酸素原子、珪素原子等の他の原子を含む、例えば、LiS-P-LiO-LiI、LiS-SiS-P-LiI等の固体電解質が好ましく挙げられる。より高いイオン伝導度を得る観点から、LiS-P-LiI、LiS-P-LiCl、LiS-P-LiBr、LiS-P-LiI-LiBr等の硫化リチウムと硫化リンとハロゲン化リチウムとから構成される固体電解質が好ましく挙げられる。
非晶性硫化物固体電解質を構成する原子の種類は、例えば、ICP発光分光分析装置により確認することができる。
非晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の非晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
(結晶性硫化物固体電解質)
上記の方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、非晶性固体電解質を結晶化温度以上に加熱して得られる、いわゆるガラスセラミックスであってもよく、その結晶構造としては、LiPS結晶構造、Li結晶構造、LiPS結晶構造、Li11結晶構造、2θ=20.2°近傍及び23.6°近傍にピークを有する結晶構造(例えば、特開2013-16423号公報)等が挙げられる。
また、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造(Kannoら、Journal of The Electrochemical Society,148(7)A742-746(2001)参照)、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造(Solid State Ionics,177(2006),2721-2725参照))等も挙げられる。本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質の結晶構造は、より高いイオン伝導度が得られる点で、上記の中でもチオリシコンリージョンII型結晶構造であることが好ましい。ここで、「チオリシコンリージョンII型結晶構造」は、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造のいずれかであることを示す。また、本実施形態の製造方法で得られる結晶性硫化物固体電解質は、上記チオリシコンリージョンII型結晶構造を有するものであってもよいし、主結晶として有するものであってもよいが、より高いイオン伝導度を得る観点から、主結晶として有するものであることが好ましい。本明細書において、「主結晶として有する」とは、結晶構造のうち対象となる結晶構造の割合が80%以上であることを意味し、90%以上であることが好ましく、95%以上であることがより好ましい。また、本実施形態の製造方法により得られる結晶性硫化物固体電解質は、より高いイオン伝導度を得る観点から、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。
CuKα線を用いたX線回折測定において、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.5°、18.3°、26.1°、27.3°、30.0°付近に現れ、Li結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=16.9°、27.1°、32.5°付近に現れ、LiPS結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=15.3°、25.2°、29.6°、31.0°付近に現れ、Li11結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=17.8°、18.5°、19.7°、21.8°、23.7°、25.9°、29.6°、30.0°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.1°、23.9°、29.5°付近に現れ、Li4-xGe1-x系チオリシコンリージョンII(thio-LISICON Region II)型と類似の結晶構造の回折ピークは、例えば2θ=20.2、23.6°付近に現れる。なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
上記したとおり、本実施形態においてチオリシコンリージョンII型結晶構造が得られる場合には、結晶性LiPS(β-LiPS)を含まないものであることが好ましい。上記の製法により得られる硫化物固体電解質は、結晶性LiPSに見られる2θ=17.5°、26.1°の回折ピークを有しないか、有している場合であってもチオリシコンリージョンII型結晶構造の回折ピークに比べて極めて小さいピークが検出される程度である。
上記のLiPSの構造骨格を有し、Pの一部をSiで置換してなる組成式Li7-x1-ySi及びLi7+x1-ySi(xは-0.6~0.6、yは0.1~0.6)で示される結晶構造は、立方晶又は斜方晶、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。上記の組成式Li7-x-2yPS6-x-yCl(0.8≦x≦1.7、0<y≦-0.25x+0.5)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。また、上記の組成式Li7-xPS6-xHa(HaはClもしくはBr、xが好ましくは0.2~1.8)で示される結晶構造は、好ましくは立方晶で、CuKα線を用いたX線回折測定において、主に2θ=15.5°、18.0°、25.0°、30.0°、31.4°、45.3°、47.0°、及び52.0°の位置に現れるピークを有する。これらのLiPSの構造骨格を基本的に有する結晶構造は、アルジロダイト型結晶構造とも称される。
なお、これらのピーク位置については、±0.5°の範囲内で前後していてもよい。
結晶性硫化物固体電解質の形状としては、特に制限はないが、例えば、粒子状を挙げることができる。粒子状の結晶性硫化物固体電解質の平均粒径(D50)は、例えば、0.01μm~500μm、0.1~200μmの範囲内を例示できる。
(有機ハロゲン化物)
有機ハロゲン化物としては、ハロゲン原子を含む有機化合物であれば特に制限はなく、より効率的に有機ハロゲン化物、有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基等を硫化物固体電解質の表面に付着又は反応させて、吸油量を低減させて、塗工適性を向上させる観点から、以下一般式(1)~(4)で示される各々有機ハロゲン化物1~4が好ましく挙げられる。
(有機ハロゲン化物1)
有機ハロゲン化物1は、下記一般式(1)で示される化合物である。
一般式(1)において、X11はハロゲン原子であり、X12~X14は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環族炭化水素基であり、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。また、X11におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X12~X14におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
11のハロゲン原子は、上記のように塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、好ましくは臭素原子、ヨウ素原子であり、より好ましくはヨウ素原子である。また、X12~X14のハロゲン原子は、上記のようにフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、塩素、臭素、ヨウ素がより好ましい。X11~X14の複数がハロゲン原子の場合、複数のハロゲン原子は同じでも異なっていてもよい。
既述のように、有機ハロゲン化物1を用いる場合、硫化物固体電解質との付着又は反応は、主にX11に起因するものと考えられ、またX12~X14におけるハロゲン原子がフッ素原子以外である場合は、X12~X14に起因する場合もあると考えられる。また、X12~X14に起因する場合があることは、後述する炭化水素基がハロゲン原子により置換されている場合も同様である。また、X11が後述する脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基等の炭化水素基である場合は、上記付着はX11の炭化水素基に起因するものであると考えられる。また、X12~X14が炭化水素基である場合は、X12~X14に起因する場合もあると考えられる。
12~X14の1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく挙げられ、アルキル基が好ましい。脂肪族炭化水素基の炭素数は、アルキル基の場合は好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは3以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。またアルケニル基の場合は、2以上、好ましくは3以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下である。
12~X14の脂肪族炭化水素基は、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基等により置換されていてもよい。ハロゲン原子により置換されている場合、X12~X14におけるハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であると規定されるように、ハロゲン原子としては上記X12~X14のハロゲン原子と同じものを例示することができる。また、X12~X14の複数が脂肪族炭化水素基の場合、複数の脂肪族炭化水素基は同じでも異なっていてもよい。
12~X14の1価の脂環族炭化水素基としては、シクロアルキル基、シクロアルケニル基が好ましく挙げられ、シクロアルキル基が好ましい。脂環族炭化水素基の炭素数は、3以上、好ましくは4以上であり、上限として好ましくは12以下、より好ましくは8以下、更に好ましくは6以下である。
12~X14の脂環族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基、上記1価の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)等により一部が置換されていてもよい。ハロゲン原子により置換されている場合、X12~X14におけるハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であると規定されるように、X12~X14の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X12~X14のハロゲン原子として例示したものと同じものが好ましく例示される。また、X12~X14の複数が脂環族炭化水素基の場合、複数の脂環族炭化水素基は同じでも異なっていてもよい。
一般式(1)で示される有機ハロゲン化物1としては、中でもX11がハロゲン原子であり、X12が炭素数2~24の1価の脂肪族炭化水素基であり、X13及びX14が水素原子である化合物が好ましい。ここで、既述のようにハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、またアルキル基の炭素数としては2以上が好ましく、3以上がより好ましく、上限としては16以下が好ましく、12以下がより好ましい。
(有機ハロゲン化物2)
有機ハロゲン化物2は、下記一般式(2)で示される化合物である。
一般式(2)において、X21~X26は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環族炭化水素基であり、X21~X26の1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、X21~X26の少なくとも1つはハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基である。また、X21におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X22~X26におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
21のハロゲン原子は、上記X11のハロゲン原子として説明したものが好ましく例示され、X22~X26のハロゲン原子は、上記X12~X14のハロゲン原子として説明したものと同じものが好ましく例示される。X22~X26のハロゲン原子については、フッ素原子がより好ましい。X21~X26の複数がハロゲン原子である場合、複数のハロゲン原子は同じでも異なっていてもよい。
既述のように、有機ハロゲン化物2を用いる場合、硫化物固体電解質との付着又は反応は、主にX21に起因するものと考えられ、またX22~X26におけるハロゲン原子がフッ素原子以外である場合は、X22~X26に起因する場合もあると考えられる。また、X22~X26に起因する場合があることは、後述する炭化水素基がハロゲン原子により置換されている場合も同様である。また、X21が後述する脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基等の炭化水素基である場合は、上記付着はX21の炭化水素基に起因するものであると考えられる。また、X22~X26が炭化水素基である場合は、X22~X26に起因する場合もあると考えられる。
21~X26の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基としては、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基と同じものが好ましく例示され、脂肪族炭化水素基が好ましい。
1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の場合、炭素数は好ましくは1以上、上限として好ましくは24以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは2以下であり、アルケニル基の場合、炭素数は好ましくは2以上であり、上限はアルキル基と同じである。また、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基と同様に、直鎖状、分岐状のいずれであってもよく、X22~X26の複数が脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基の場合、複数の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基は同じでも異なっていてもよい。
21~X26の1価の脂肪族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基等により置換されていてもよい。脂環族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基、上記の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)等により置換されていてもよい。ハロゲン原子により置換されている場合、X21におけるハロゲン原子が塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X22~X26におけるハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であると規定されるように、X21の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X21のハロゲン原子として例示したものと同じものが好ましく例示され、X22~X26の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X22~X26のハロゲン原子として例示したものと同じものが好ましく例示される。
一般式(2)で示される有機ハロゲン化物2としては、中でもX21~X26がハロゲン原子又は少なくとも一の水素原子がハロゲン原子で置換された1価のハロゲン化炭化水素基であり、X21~X26の少なくとも一つがハロゲン化炭化水素基である化合物が好ましい。既述のようにハロゲン原子としては塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基が好ましく、またアルキル基の炭素数としては1以上が好ましく、上限として16以下が好ましく、8以下がより好ましく、4以下が更に好ましく、2以下がより更に好ましい。
21~X26のうち1つがハロゲン化炭化水素基である場合、他の少なくとも一つはハロゲン原子又は水素原子であることが好ましく、ハロゲン原子又は水素原子はより好ましくは2つ以上、更に好ましくは3つ以上、より更に好ましくは4つ以上、特に好ましくは5つ、すなわちX21~X26の一つがハロゲン化炭化水素基である場合、残りは全てハロゲン原子であること、又は残りは全て水素原子であることが特に好ましい。
21~X26のうち2つ以上がハロゲン化炭化水素基である場合、少なくとも1つはハロゲン原子を2つ以上有するものが好ましく、3つ有するものがより好ましく、他の少なくとも1つはハロゲン原子を1つ有するものが好ましい。また、その他については水素原子又はハロゲン原子であり、水素原子が好ましく、その他の全てが水素原子であることがより好ましい。このような化合物は、入手しやすい点でも有利である。
(有機ハロゲン化物3)
有機ハロゲン化物3は、下記一般式(3)で示される化合物である。
一般式(3)において、X31及びX32は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基又は一般式(3a)で示される基であり、一般式(3a)において、R31は単結合又は2価の脂肪族炭化水素基であり、R32は水素原子、ハロゲン原子又は1価の脂肪族炭化水素基である。1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、X31及びX32の少なくとも1つはハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基である。また、X31におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X32におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
31のハロゲン原子は、上記X11のハロゲン原子として説明したものが好ましく例示さられ、X32のハロゲン原子は、上記X12~X14のハロゲン原子として説明したものと同じものが好ましく例示される。X32のハロゲン原子については、フッ素原子、塩素原子、臭素原子がより好ましく、塩素原子が更に好ましい。X31及びX32がハロゲン原子である場合、複数のハロゲン原子は同じでも異なっていてもよい。
既述のように、有機ハロゲン化物3を用いる場合、硫化物固体電解質との付着又は反応は、主にX31に起因するものと考えられ、またX32におけるハロゲン原子がフッ素原子以外である場合は、X32に起因する場合もあると考えられる。また、X32に起因する場合があることは、後述する炭化水素基がハロゲン原子により置換されている場合も同様である。また、X31が後述する脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基等の炭化水素基である場合は、上記付着はX31の炭化水素基に起因するものであると考えられる。また、X32が炭化水素基である場合は、X32に起因する場合もあると考えられる。
31及びX32の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基としては、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基と同じものが好ましく例示され、脂肪族炭化水素基が好ましい。
1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の場合、炭素数は好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下であり、より更に好ましくは10以下である。アルケニル基の場合、好ましくは2以上、より好ましくは4以上であり、上限はアルキル基と同じである。また、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基と同様に、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。また、X31及びX32が脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基の場合、複数の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基は同じでも異なっていてもよく、複数の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基の少なくとも一は、その水素原子がハロゲン原子で置換された基である。
31及びX32の1価の脂肪族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基等により置換されていてもよい。脂環族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基、上記の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)等により置換されていてもよい。ハロゲン原子により置換されている場合、X31におけるハロゲン原子が塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X32におけるハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であると規定されるように、X31の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X31のハロゲン原子として例示したものと同じものが例示され、X32の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X32のハロゲン原子として例示したものと同じものが好ましく例示される。
一般式(3a)におけるR31の2価の脂肪族炭化水素基としては、上記X31及びX32の1価の脂肪族炭化水素基から水素原子を一つ除去したものが挙げられる。よって、2価の脂肪族炭化水素基としては、アルキレン基、アルケニレン基が好ましく、アルキレン基がより好ましい。
2価の脂肪族炭化水素基の炭素数は、好ましくは1以上であり、上限として好ましくは8以下、より好ましくは6以下、更に好ましくは4以下である。
一般式(3a)における、R32の1価の脂肪族炭化水素基としては、上記X31及びX32の1価の脂肪族炭化水素基と同じものを好ましく例示することができる。
脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、脂肪族炭化水素基は直鎖状でも分岐状でもよいが、分岐状であることが好ましい。また、脂肪族炭化水素基がアルキル基の場合、炭素数は好ましくは1以上、より好ましくは2以上、更に好ましくは4以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは16以下、更に好ましくは12以下であり、より更に好ましくは10以下である。
31、R32の炭化水素基は、X31及びX32の炭化水素基と同様に、ハロゲン原子により置換されたものでもよく、その場合のハロゲン原子は一般式(3a)がX31及びX32のいずれであるかにより決定される。X31が一般式(3a)である場合は、ハロゲン原子はX31のハロゲン原子に対応する、すなわち塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択され、X32が一般式(3a)である場合は、ハロゲン原子はX32のハロゲン原子に対応する、すなわちフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される。
一般式(3)で示される有機ハロゲン化物3としては、中でもX31がハロゲン原子であり、X32が炭素数2以上の1価の脂肪族炭化水素基又は一般式(3a)で示される基である化合物が好ましい。ここで、X31のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。X32の1価の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、炭素数は4以上がより好ましく、上限としては好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
また、一般式(3a)の中でも、R31としては、単結合、2価の脂肪族炭化水素基が好ましく、単結合がより好ましい。また、R32としては1価の脂肪族炭化水素基が好ましく、アルキル基、アルケニル基がより好ましく、アルキル基が更に好ましい。
(有機ハロゲン化物4)
有機ハロゲン化物4は、下記一般式(4)で示される化合物である。
一般式(4)において、X41~X44は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環族炭化水素基であり、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子を置換されていてもよく、X41~X44の少なくとも1つはハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基である。また、X41におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X42~X44におけるハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
41のハロゲン原子は、上記X11のハロゲン原子として説明したものが好ましく例示さられ、X42~X44のハロゲン原子は、上記X12~X14のハロゲン原子として説明したものと同じものが好ましく例示される。X41のハロゲン原子については、好ましくは塩素原子、臭素原子であり、より好ましくは塩素原子であり、X42~X44の好ましいハロゲン原子も同様である。X41~X44の複数がハロゲン原子である場合、複数のハロゲン原子は同じでも異なっていてもよい。
既述のように、有機ハロゲン化物4を用いる場合、硫化物固体電解質との付着又は反応は、主にX41に起因するものと考えられ、またX42~X44におけるハロゲン原子がフッ素原子以外である場合は、X42~X44に起因する場合もあると考えられる。また、X42~X44に起因する場合があることは、後述する炭化水素基がハロゲン原子により置換されている場合も同様である。また、X41が後述する脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基等の炭化水素基である場合は、上記付着はX41の炭化水素基に起因するものであると考えられる。また、X42~X44が炭化水素基である場合は、X42~X44に起因する場合もあると考えられる。
41~X44の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基としては、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基と同じものが好ましく例示され、脂肪族炭化水素基が好ましい。
1価の脂肪族炭化水素基としては、アルキル基、アルケニル基が好ましく、アルキル基がより好ましい。アルキル基の場合、炭素数は好ましくは1以上であり、上限として好ましくは24以下、より好ましくは12以下、更に好ましくは8以下、より更に好ましくは4以下、特に好ましくは2以下であり、アルケニル基の場合、炭素数は好ましくは2以上であり、上限はアルキル基と同じである。また、上記X12~X14の1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基と同様に、直鎖状、分岐状のいずれであってもよい。また、X41~X44が脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基の場合、複数の脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基は同じでも異なっていてもよい。
41~X44の1価の脂肪族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基等により置換されていてもよい。脂環族炭化水素基は、その水素原子がハロゲン原子により置換されていてもよく、また水酸基、上記の脂肪族炭化水素基(例えば、アルキル基、アルケニル基)等により置換されていてもよい。ハロゲン原子により置換されている場合、X41におけるハロゲン原子が塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X42~X44におけるハロゲン原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であると規定されるように、X41の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X41のハロゲン原子として例示したものと同じものが例示され、X42~X44の炭化水素を置換するハロゲン原子としては上記X42~X44のハロゲン原子として例示したものと同じものが好ましく例示される。
一般式(4)で示される有機ハロゲン化物4としては、中でもX41がハロゲン原子であり、X42~X44が1価の脂肪族炭化水素基である化合物が好ましい。ここで、ハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。X42~X44の1価の脂肪族炭化水素基としてはアルキル基が好ましく、炭素数は1以上が好ましく、上限としては好ましくは8以下、より好ましくは4以下、更に好ましくは2以下である。
(有機ハロゲン化物の使用量)
本実施形態の製造方法における有機ハロゲン化物の使用量は、既述のように、硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モル部に対して、0.05モル部以上3.5モル部以下であることが好ましい。より効率的に吸油量を低減させて、塗工適性を向上させる観点から、有機ハロゲン化物2の使用量は、硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モル部に対して、より好ましくは0.1モル部以上、更に好ましくは0.75モル部以上、より更に好ましくは1.0モル部以上、特に好ましくは1.5モル部以上であり、上限としてより好ましくは3.3モル部以下、更に好ましくは3.0モル部以下、より更に好ましくは2.5モル部以下である。
また、これと同様の観点から、有機ハロゲン化物1、3及び4を用いる場合は、硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モル部に対して、より好ましくは0.1モル部以上、更に好ましくは0.5モル部以上、より更に好ましくは0.75モル部以上であり、上限としてより好ましくは3.0モル部以下、更に好ましくは2.5モル部以下、より更に好ましくは2.0モル部以下、特に好ましくは1.5モル部以下である。
(有機溶媒)
本実施形態の製造方法において用いる有機溶媒としては、例えば、上記硫化物固体電解質を製造する方法において用いられ得るものとして説明した溶媒が好ましく挙げられる。
硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物との混合を促進し、有機ハロゲン化物、有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基等を硫化物固体電解質の表面に付着又は反応させやすくする観点から、上記の溶媒の中でも、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、また錯化剤として例示したエーテル溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒が好ましく、芳香族炭化水素溶媒がより好ましい。芳香族炭化水素溶媒としては、トルエンが特に好ましい。
有機溶媒は、これらの中から単独で、又は複数種を組合わせて用いることができる。
(混合すること)
本実施形態の製造方法において、硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物と、有機溶媒と、を混合する方法については、上記硫化物固体電解質を製造する方法における「混合」と同様の方法により行うことができる。
(除去すること)
有機溶媒を除去することについては、上記硫化物固体電解質を製造する方法における「乾燥」と同様の方法により行うことができる。
また、本実施形態の製造方法においては、上記硫化物固体電解質を製造する方法における「加熱」することを行ってもよい。
〔改質硫化物固体電解質〕
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、上記本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法により得られ、有機ハロゲン化物、又は有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基を含む化合物を有する、というものである。
また、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、上記本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法により得られ、有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成するハロゲン化リチウムを有する、というものである。
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、上記本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法により得られるものであり、既述のように硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを混合することで、有機ハロゲン化物、または有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基が硫化物固体電解質に付着する等により、比表面積として10m/g以上と大きいものである硫化物固体電解質であってもペーストとして塗工する際の塗工適性に優れるというものである。すなわち、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、有機ハロゲン化物、又は有機ハロゲン化物に由来する炭化水素基が硫化物固体電解質に付着し形成した、当該炭化水素基を含む化合物を有する、というものである。
また、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、硫化物固体電解質の表面に有機ハロゲン化物が付着したものであり、有機ハロゲン化物の付着により吸油量が低減することで、優れた塗工適性を有するものとなる。有機ハロゲン化物の付着がどのような態様によるものかは不明であるが、当該付着により、有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、が結合してハロゲン化リチウムを形成する。本実施形態の改質硫化物固体電解質がハロゲン化リチウムを有することは、上記本実施形態の製造方法により、有機ハロゲン化物が硫化物固体電解質の表面に付着し、当該付着により吸油量が低減し、優れた塗工適性を有するもの、すなわち硫化物固体電解質が改質した、改質硫化物固体電解質であることを意味する。
(ハロゲン化リチウム)
本実施形態の改質硫化物固体電解質が有するハロゲン化リチウムは、有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子と、硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成されるものである。本実施形態の改質硫化物固体電解質は、また既述のように、硫化物固体電解質の表面に有機ハロゲン化物が付着したものであることから、ハロゲン化リチウムは、硫化物固体電解質の表面に有機ハロゲン化物が付着した際に生じる副生成物であるともいえる。
有機ハロゲン化物に由来するハロゲン原子は、既述のように塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるため、ハロゲン化リチウムとしては、塩化リチウム、臭化リチウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。
本実施形態の改質硫化物固体電解質が、硫化物固体電解質の表面に有機ハロゲン化物が付着し、それによりハロゲン化リチウムが副生することは、改質硫化物固体電解質の粉末X線回折(XRD)測定により確認することができる。
硫化物固体電解質のみをXRD測定した場合、既述のように非晶性の硫化物固体電解質、結晶性の硫化物固体電解質は原料由来のピークの有無は問わない材料ではあるものの、非晶性の硫化物固体電解質であれば主にハローピークが観測され、結晶性の硫化物系固体電解質であれば主に固体電解質由来のピークが観測される。しかし、本実施形態の改質硫化物固体電解質をXRD測定すると、明らかに硫化物固体電解質のみを測定したときとは異なり、明確なハロゲン化リチウムに応じたピークが確認される。
例えば、ハロゲン化リチウムが塩化リチウムである場合、塩化リチウムに由来するピークは、2θ=29.5~30.5°、34.3~35.3°、49.5~50.5°及び59.0~60.0°において観測される。ハロゲン化リチウムが臭化リチウムである場合、臭化リチウムに由来するピークは、2θ=27.5~28.5°、32.3~33.3°、46.0~47.5°、54.8~56.2°、56.9~58.9°において観測される。また、ハロゲン化リチウムがヨウ化リチウムである場合、ヨウ化リチウムに由来するピークは、25.1~26.3°、29.2~30.2°、42.0~43.0°、49.7~51.0°、52.0~53.4°において観測される。
また、後述する実施例においても示されるように、硫化物固体電解質と有機ハロゲン化物とを有機溶媒中で混合して得られた改質硫化物固体電解質について、これをトルエン等の溶媒に加えてスラリー状として静置した後、その上澄み液をガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)により分析すると、有機ハロゲン化物は検出されず、他方、沈降した粉末について溶媒を乾燥し除去した後、重メタノールに溶解し、H-NMR測定を行うと、有機ハロゲン化物に由来する基(アルキル基等)のケミカルシフトが検出される。
この事象より、改質硫化物固体電解質において、有機ハロゲン化物は、硫化物固体電解質の表面に、有機ハロゲン化物として脱着するような形態、例えば有機ハロゲン化物がそのままの形で、また有機ハロゲン化物が有する炭化水素基等が硫化物固体電解質に強く付着していることが分かる。そして、そのような付着によって油量が低減し、塗工適性が優れたものとなるものと考えられる。
硫化物固体電解質の表面に付着する有機ハロゲン化物は、当該硫化物固体電解質の表面の一部に付着していればよく、またその表面の全面にわたり、被覆するように付着していてもよい。
(改質硫化物固体電解質の性状)
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、有機ハロゲン化物がその表面に付着しても、またハロゲン化リチウムが副生しても、硫化物固体電解質のBET比表面積には大きな影響を及ぼすことはなく、本実施形態で用いられる硫化物固体電解質のBET比表面積と、改質硫化物固体電解質のBET比表面積とは、実質的に同じである。よって、本実施形態の改質硫化物固体電解質のBET比表面積は10m/g以上であり、大きい比表面積を有するものである。硫化物固体電解質のBET比表面積は高ければ高いほど、当該効果の優位性をより示すことが可能となる観点から、BET比表面積は12m/g以上のものが好ましく、15m/g以上のものがより好ましく、20m/g以上のものが更に好ましい。同様の観点から上限としては特に制限はないが、現実的には100m/g以下、好ましくは75m/g以下、より好ましくは50m/g以下である。
本実施形態の改質硫化物固体電解質の吸油量は、BET比表面積は上記のように大きいものとなるが、表面に付着する有機ハロゲン化物の効果により、通常0.9mL/g未満と小さいものとなり、更に0.85mL/g以下、0.80mL/g未満となる。本実施形態の改質硫化物固体電解質は、BET比表面積は大きいにもかかわらず、吸油量が小さいことから、ペーストとした際にペーストの粘度の上昇を抑制することが可能となり、塗工する際の塗工適性に優れたものとなり、またペーストの粘度の上昇を抑制するために溶媒等を用いる必要がないため、優れた電池性能が得られやすくなる。
本明細書において、吸油量は、改質硫化物固体電解質1gを試料とし、乳鉢等において酪酸ブチルを1滴添加してはスパチュラで撹拌する操作を行い、試料がペースト状になるまで当該操作を繰り返し、添加した酪酸ブチルの合計量を吸油量(mL/g)とした。ここで、「ペースト状」は、JIS K5101-13-1:2004(顔料試験方法-第13部:吸油量-第1節:精製あまに油法)の「7.2 測定」に規定される「割れたり,ぼろぼろになったりせず広げることができ,かつ,測定板に軽く付着する程度のもの」の状態を意味する。
また、本実施形態の改質硫化物固体電解質のイオン伝導度は、通常0.5mS/cm以上であり、更に、1.0mS/cm以上、1.5mS/cm以上、2.0mS/cm以上、2.5mS/cm以上であり、極めて高いイオン伝導度を有するものとなり、電池性能に優れたリチウム電池が得られる。
(用途)
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、塗工適性に優れ、溶媒等を用いなくても電池の製造に供することができることから、効率的に優れた電池性能を発現し得るものである。また、イオン伝導度が高く、優れた電池性能を有しているため、電池に好適に用いられる。
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、正極層に用いてもよく、負極層に用いてもよく、電解質層に用いてもよい。なお、各層は、公知の方法により製造することができる。
また、上記電池は、正極層、電解質層及び負極層の他に集電体を使用することが好ましく、集電体は公知のものを用いることができる。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
〔電極合材〕
本実施形態の電極合材は、上記の本実施形態の改質硫化物固体電解質と、電極活物質と、を含む電極合材である。
(電極活物質)
電極活物質としては、電極合材が正極、負極のいずれに用いられるかに応じて、各々正極活物質、負極活物質が採用される。
正極活物質としては、負極活物質との関係で、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な正極活物質としては、酸化物系正極活物質、硫化物系正極活物質等が挙げられる。
酸化物系正極活物質としてはLMO(マンガン酸リチウム)、LCO(コバルト酸リチウム)、NMC(ニッケルマンガンコバルト酸リチウム)、NCA(ニッケルコバルトアルミ酸リチウム)、LNCO(ニッケルコバルト酸リチウム)、オリビン型化合物(LiMeNPO、Me=Fe、Co、Ni、Mn)等のリチウム含有遷移金属複合酸化物が好ましく挙げられる。
硫化物系正極活物質としては、硫化チタン(TiS)、硫化モリブデン(MoS)、硫化鉄(FeS、FeS)、硫化銅(CuS)、硫化ニッケル(Ni)等が挙げられる。
また、上記正極活物質の他、セレン化ニオブ(NbSe)等も使用可能である。
正極活物質は、一種単独で、又は複数種を組み合わせて用いることが可能である。
負極活物質としては、イオン伝導度を発現させる原子として採用される原子、好ましくはリチウム原子と合金を形成し得る金属、その酸化物、当該金属とリチウム原子との合金等の、好ましくはリチウム原子に起因するリチウムイオンの移動を伴う電池化学反応を促進させ得るものであれば特に制限なく用いることができる。このようなリチウムイオンの挿入脱離が可能な負極活物質としては、電池分野において負極活物質として公知のものを制限なく採用することができる。
このような負極活物質としては、例えば、金属リチウム、金属インジウム、金属アルミ、金属ケイ素、金属スズ等の金属リチウム又は金属リチウムと合金を形成し得る金属、これら金属の酸化物、またこれら金属と金属リチウムとの合金等が挙げられる。
本実施形態で用いられる電極活物質は、その表面がコーティングされた、被覆層を有するものであってもよい。
被覆層を形成する材料としては、硫化物固体電解質においてイオン伝導度を発現する原子、好ましくはリチウム原子の窒化物、酸化物、又はこれらの複合物等のイオン伝導体が挙げられる。具体的には、窒化リチウム(LiN)、LiGeOを主構造とする、例えばLi4-2xZnGeO等のリシコン型結晶構造を有する伝導体、LiPO型の骨格構造を有する例えばLi4-xGe1-x等のチオリシコン型結晶構造を有する伝導体、La2/3-xLi3xTiO等のペロブスカイト型結晶構造を有する伝導体、LiTi(PO等のNASICON型結晶構造を有する伝導体等が挙げられる。
また、LiTi3-y(0<y<3)、LiTi12(LTO)等のチタン酸リチウム、LiNbO、LiTaO等の周期表の第5族に属する金属の金属酸リチウム、またLiO-B-P系、LiO-B-ZnO系、LiO-Al-SiO-P-TiO系等の酸化物系の伝導体等が挙げられる。
被覆層を有する電極活物質は、例えば電極活物質の表面に、被覆層を形成する材料を構成する各種原子を含む溶液を付着させ、付着後の電極活物質を好ましくは200℃以上400℃以下で焼成することにより得られる。
ここで、各種原子を含む溶液としては、例えばリチウムエトキシド、チタンイソプロポキシド、ニオブイソプロポキシド、タンタルイソプロポキシド等の各種金属のアルコキシドを含む溶液を用いればよい。この場合、溶媒としては、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒等を用いればよい。
また、上記の付着は、浸漬、スプレーコーティング等により行えばよい。
焼成温度としては、製造効率及び電池性能の向上の観点から、上記200℃以上400℃以下が好ましく、より好ましくは250℃以上390℃以下であり、焼成時間としては、通常1分~10時間程度であり、好ましくは10分~4時間である。
被覆層の被覆率としては、電極活物質の表面積を基準として好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは100%、すなわち全面が被覆されていることが好ましい。また、被覆層の厚さは、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上であり、上限として好ましくは30nm以下、より好ましくは25nm以下である。
被覆層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察により、被覆層の厚さを測定することができ、被覆率は、被覆層の厚さと、元素分析値、BET比表面積と、から算出することができる。
(その他の成分)
本実施形態の電極合材は、上記の改質硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を含んでもよい。すなわち、本実施形態の電極合材の製造方法は、上記の改質硫化物固体電解質、電極活物質の他、例えば導電材、結着剤等のその他成分を用いてもよい。導電剤、結着剤等のその他成分は、上記の改質硫化物固体電解質と、電極活物質と、を混合することにおいて、これらの改質硫化物固体電解質及び電極活物質に、さらに加えて混合して用いればよい。
導電材としては、電子伝導性の向上により電池性能を向上させる観点から、人造黒鉛、黒鉛炭素繊維、樹脂焼成炭素、熱分解気相成長炭素、コークス、メソカーボンマイクロビーズ、フルフリルアルコール樹脂焼成炭素、ポリアセン、ピッチ系炭素繊維、気相成長炭素繊維、天然黒鉛、難黒鉛化性炭素等の炭素系材料が挙げられる。
結着剤を用いることで、正極、負極を作製した場合の強度が向上する。
結着剤としては、結着性、柔軟性等の機能を付与し得るものであれば特に制限はなく、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素系ポリマー、ブチレンゴム、スチレン-ブタジエンゴム等の熱可塑性エラストマー、アクリル樹脂、アクリルポリオール樹脂、ポロビニルアセタール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、シリコーン樹脂等の各種樹脂が例示される。
電極合材における、電極活物質と改質硫化物固体電解質との配合比(質量比)としては、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは99.5:0.5~40:60、より好ましくは99:1~50:50、更に好ましくは98:2~60:40である。
導電材を含有する場合、電極合材中の導電材の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは0.5質量%以上、より好ましくは1質量%以上、更に好ましくは1.5質量%以上であり、上限として好ましくは10質量%以下、好ましくは8質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
また、結着剤を含有する場合、電極合材中の結着剤の含有量は特に制限はないが、電池性能を向上させ、かつ製造効率を考慮すると、好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上、更に好ましくは5質量%以上であり、上限として好ましくは20質量%以下、好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。
〔リチウムイオン電池〕
本実施形態のリチウムイオン電池は、上記の本実施形態の改質硫化物固体電解質及び上記の電極合材から選ばれる少なくとも一方を含む、リチウムイオン電池である。
本実施形態のリチウムイオン電池は、上記の本実施形態の改質硫化物固体電解質、これを含む電極合材のいずれかを含むものであれば、その構成については特に制限はなく、汎用されるリチウムイオン電池の構成を有するものであればよい。
本実施形態のリチウムイオン電池としては、例えば正極層、負極層、電解質層、また集電体を備えたものであることが好ましい。正極層及び負極層としては本実施形態の電極合材が用いられるものであることが好ましく、また電解質層としては本実施形態の改質硫化物固体電解質が用いられるものであることが好ましい。
また、集電体は公知のものを用いればよい。例えば、Au、Pt、Al、Ti、又は、Cu等のように、上記の固体電解質と反応するものをAu等で被覆した層が使用できる。
次に実施例により、本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら制限されるものではない。
製造例1:硫化物固体電解質1の作製
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下、硫化リチウム0.59g、五硫化二リン0.95g、臭化リチウム0.19g、ヨウ化リチウム0.28gを導入した。撹拌子を回転させた後、錯化剤のテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)20mLを加え、12時間撹拌を継続し、得られた錯体含有物を真空下で乾燥(室温:23℃)して粉末の錯体を得た。次いで、錯体の粉末を真空下で120℃で加熱を2時間行い、非晶性硫化物固体電解質を得た。更に、非晶性硫化物固体電解質を真空下で140℃で加熱を2時間行い、結晶性硫化物固体電解質1を得た(結晶性硫化物固体電解質を得るための加熱温度(本例では140℃)を「結晶化温度」と称することがある。)。
得られた非晶性硫化物固体電解質、結晶性硫化物固体電解質のBET比表面積を測定したところ、いずれも40m/gであった。
製造例2:硫化物固体電解質2の作製
撹拌翼付き反応槽(容量:500mL)に、窒素雰囲気下で製造例1で得られた硫化物固体電解質の粉末30.0g、トルエン470gを投入した。撹拌翼を回転させた後、循環運転可能な微小ビーズ対応ビーズミル(「UAM-015(型番)」、株式会社広島メタル&マシナリー製)を用いて所定条件(ビーズ材質:ジルコニア、ビーズ直径:0.1mmφ、ビーズ使用量:391g、ポンプ流量150mL/min、周速8m/s、ミルジャケット温度20℃)で30分間の粉砕処理行った。得られたスラリーを真空下で乾燥(室温:23℃)して非晶性固体電解質の白色粉末を得た。この白色粉末を160℃で2時間結晶化を行うことで、結晶性硫化物固体電解質2を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質2のBET比表面積を測定したところ、10m/gであった。
製造例3:硫化物固体電解質3の作製
撹拌翼付き反応槽(容量:500mL)に、窒素雰囲気下で製造例1で得られた硫化物固体電解質の粉末30.0g、トルエン470gを投入した。撹拌翼を回転させた後、循環運転可能な微小ビーズ対応ビーズミル(「UAM-015(型番)」、株式会社広島メタル&マシナリー製)を用いて所定条件(ビーズ材質:ジルコニア、ビーズ直径:0.05mmφ、ビーズ使用量:391g、ポンプ流量150mL/min、周速8m/s、ミルジャケット温度20℃)で30分間の第一粉砕処理行った。次いで、周速を12.5m/sに変更し10分間の第二粉砕処理を行った。得られたスラリーを真空下で乾燥(室温:23℃)して非晶性固体電解質の白色粉末を得た。この白色粉末を160℃で2時間結晶化を行うことで、結晶性硫化物固体電解質3を得た。得られた結晶性硫化物固体電解質3のBET比表面積を測定したところ、8m/gであった。
実施例1
撹拌子入りシュレンク(容量:100mL)に、窒素雰囲気下、製造例1で得られた結晶性硫化物固体電解質1を3g秤量して加え、トルエン30mLを加えて撹拌し、スラリー状の流体とした。当該スラリー状の流体に、更に有機ハロゲン化物としてヨウ化ブチルを、当該結晶性硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モルに対して1モルの割合となるような量で加え(具体的には、0.58mL)、10分撹拌した後、真空乾燥によりトルエンを留去し、改質硫化物固体電解質を得た。
得られた改質硫化物固体電解質について、下記の方法に基づき、吸油量、イオン伝導度を測定した。また下記の方法に基づき、吸油量の減少率を算出した。測定結果及び算出結果について、第1表に示す。
実施例2~19
実施例1において、結晶性硫化物固体電解質の種類、有機ハロゲン化物の種類及び使用量を、第1表に示されるものとした以外は、実施例1と同様にして、改質硫化物固体電解質を作製した。
得られた改質硫化物固体電解質について、下記の方法に基づき、吸油量、イオン伝導度を測定した。また下記の方法に基づき、吸油量の減少率を算出した。測定結果及び算出結果について、第1表に示す。また、実施例6及び8の改質硫化物固体電解質について、下記の粉末X線回折(XRD)測定の方法に従い、測定を行った。その結果を図1に示す。
比較例1~3
上記製造例1~3で得られた各々硫化物固体電解質1~3について、下記の方法に基づき、吸油量、イオン伝導度を測定した。また下記の方法に基づき、吸油量を測定し、吸油量の減少率を算出した。測定結果及び算出結果について、第1表に示す。硫化物固体電解質1及び2の吸油量は、各々0.98(mL/g)及び0.93mL/gであった。
また、比較例1の硫化物固体電解質1について、下記の粉末X線回折(XRD)測定の方法に従い、測定を行った。その結果を図1に示す。
(吸油量の測定)
実施例及び比較例で得られた固体電解質1gを試料とし、メノウ乳鉢において、スポイトを用いて酪酸ブチルを1滴添加してはスパチュラで撹拌する操作を行い、試料がペースト状になるまで当該操作を繰り返し、添加した酪酸ブチルの合計量を吸油量(mL/g)とした。測定した吸油量について、以下の基準で評価とした。
A.0.8mL/g未満
B.0.8mL/g以上0.9mL/g未満
C.0.9mL/g以上
(吸油量の減少率)
上記(吸油量の測定)と同様にして、製造例1~3で得られた硫化物固体電解質1~3の吸油量を測定した。硫化物固体電解質1~3の吸油量Aと、上記(吸油量の測定)による実施例及び比較例で得られた硫化物固体電解質の吸油量Bと、を用いて、以下の式により算出される数値を吸油量の減少率とした。ここで、吸油量Aは、実施例及び比較例で用いられた硫化物固体電解質1~3のいずれかの吸油量を用いることとする。例えば、実施例1の吸油量の減少率は、硫化物固体電解質1の吸油量を吸油量Aとして、実施例1の改質硫化物固体電解質の吸油量を吸油量Bとして、減少率を計算する。
吸油量の減少率=(吸油量A-吸油量B)/吸油量A×100(%)
(イオン伝導度の測定)
本実施例において、イオン伝導度の測定は、以下のようにして行った。
硫化物固体電解質から、直径10mm(断面積S:0.785cm)、高さ(L)0.1~0.3cmの円形ペレットを成形して試料とした。その試料の上下から電極端子を取り、25℃において交流インピーダンス法により測定し(周波数範囲:1MHz~100Hz、振幅:10mV)、Cole-Coleプロットを得た。高周波側領域に観測される円弧の右端付近で、-Z’’(Ω)が最小となる点での実数部Z’(Ω)を電解質のバルク抵抗R(Ω)とし、以下式に従い、イオン伝導度σ(S/cm)を計算した。
R=ρ(L/S)
σ=1/ρ
測定したイオン伝導度について、以下の基準で評価した。
A.2.5mS/cm以上
B.0.5mS/cm以上2.5mS/cm未満
C.0.5mS/cm未満
実施例より、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、吸油量の評価がA又はB評価であるため、比表面積が10m/g以上と大きいにもかかわらず、吸油量が小さく、塗工適性に優れたものとなることが確認された。また、イオン伝導度もA又はB評価で高いものであることも確認された。
一方、有機ハロゲン化物と混合せず、その表面に有機ハロゲン化物等が付着していない比較例1~3の硫化物固体電解質は、各々製造例1~3で作製した硫化物固体電解質1~3であり、従来の硫化物固体電解質そのものである。比較例1及び2の比表面積が10m/g以上の硫化物固体電解質1及び2は、吸油量の点でC評価となり、塗工適性に劣るものであることが確認された。また、比較例3の硫化物固体電解質3については、吸油量、イオン伝導度の評価のいずれもA評価であり、改質の必要性が乏しいものであることが確認された。すなわち、本実施形態の改質硫化物固体電解質の製造方法は、比表面積が10m/g以上と大きいものについて、吸油量を低減させて、塗工適性を向上させる効果を発現し得るため、好適であることが確認された。
また、実施例6及び8の改質硫化物固体電解質、比較例1の硫化物固体電解質1について粉末X線回折(XRD)測定を行った結果が図1に示されている。図1によれば、実施例6及び8の改質硫化物固体電解質はハロゲン化リチウムとして臭化リチウムのピークが検出されているが(図1中の矢印部分を参照)、比較例1の硫化物固体電解質1には、臭化リチウムのピークが検出されていないことが分かる。この結果から、改質硫化物固体電解質は、有機ハロゲン化物(ベンジルブロミド)に由来する臭素原子と、硫化物固体電解質に由来するリチウム原子と、により形成する臭化リチウムを有しており、また改質硫化物固体電解質が有機ハロゲン化物により改質されたものである、と考えられる。
実施例21
上記実施例で得られた改質硫化物固体電解質について、有機ハロゲン化物がその表面に付着しているか否かを確認するため、以下検証した。
まず、実施例11の有機ハロゲン化物(ペンタフルオロベンジルブロミド)を1モル部用いて得られた改質硫化物固体電解質について、トルエンを加えてスラリー状にした後(スラリー濃度:12質量%)、12時間静置した。硫化物固体電解質が沈降することで生じた上澄み液を採取し、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)により分析した。本分析における定量は、仕込液(ペンタフルオロベンジルブロミドの1モル部トルエン溶液)も上記上澄み液と同様にして分析し、当該仕込液中のペンタフルオロベンジルブロミドのピーク面積を1とした場合の上記上澄み液中の残存した有機ハロゲン化物のピーク面積と比較した(上澄み液のピーク面積が1に近いほど、有機ハロゲン化物が硫化物固体電解質から遊離して、トルエンに溶けだしたことを意味する。)。当該分析によると、上澄み液からは有機ハロゲン化物は検出されなかったことから、有機ハロゲン化物を1モル部用いた場合は全て硫化物固体電解質に付着したと考えられる。
(ガスクロマトグラフィー質量分析法 諸条件)
ガスクロマトグラフ:7890B(Agient社製)
分析カラム:HP-1ms(Agilent社製)
GCオーブン昇温条件:初期温度 50℃
50℃~300℃ 10℃/分で昇温
300℃で5分保持
サンプル注入量:1μL
また、上記沈降した硫化物固体電解質に対し、トルエンを加えて撹拌した後、12時間静置し上澄みを除去する工程を3回繰り返すことで、沈降した硫化物固体電解質を洗浄した。洗浄後、トルエンを乾燥して得られた硫化物固体電解質について、重メタノールに溶解させて、下記方法によりH-NMR測定を行ったところ、有機ハロゲン化物に由来する基(アルキル基等)のケミカルシフトが検出された。
H-NMR測定)
核磁気共鳴装置(NMR装置):AVANCE III HD(BEUKER社製)
観測核:
共鳴周波数:500MHz
プローブ:5mmφ TCIクライオプローブ
測定温度:25℃
積算回数:16回
実施例22
実施例11の有機ハロゲン化物(ペンタフルオロベンジルブロミド)を3モル部用いて得られた改質硫化物固体電解質について、実施例21と同様にして上澄み液、沈降した固体電解質について測定したところ、実施例21と同様に、上澄み液から有機ハロゲン化物は検出されなかった。沈降した硫化物固体電解質については、トルエンで洗浄した後、H-NMR測定を行ったところ、有機ハロゲン化物に由来する基(アルキル基等)のケミカルシフトが検出された。
(粉末X線回折(XRD)測定)
本明細書において、粉末X線回折(XRD)測定は以下のようにして実施した。
実施例6、8及び比較例1の硫化物固体電解質の粉末を、直径20mm、深さ0.2mmの溝に充填し、ガラスで均して試料とした。この試料を、XRD用カプトンフィルムで密閉し、空気に触れさせずに、以下の条件で測定した。
測定装置:M03xhf(型番、(株)マックサイエンス製)
管電圧:40kV
管電流:40mA
X線波長:Cu-Kα線(1.5418Å)
光学系:集中法
スリット構成:発散スリット0.5°、散乱スリット0.5°、受光スリット0.3mm、モノクロメータ使用
検出器:半導体検出器
測定範囲:2θ=10-60deg
ステップ幅、スキャンスピード:0.05deg、10秒/step
本実施形態の改質硫化物固体電解質は、比表面積が大きい硫化物固体電解質であっても、ペーストとして塗工する際の塗工適性に優れ、かつ効率的に優れた電池性能を発現し得るものである。また、本実施形態の改質硫化物固体電解質は、高いイオン伝導度を有していることから、電池に、とりわけ、パソコン、ビデオカメラ、及び携帯電話等の情報関連機器や通信機器等に用いられる電池に好適に用いられる。

Claims (9)

  1. BET比表面積が10m/g以上であり、リチウム原子、硫黄原子、リン原子及びハロゲン原子を含む硫化物固体電解質と、有機ハロゲン化物と、有機溶媒と、を混合すること、
    前記有機溶媒を除去すること、
    を含み、
    前記有機ハロゲン化物が、下記一般式(1)で示される有機ハロゲン化物1、一般式(2)で示される有機ハロゲン化物2、一般式(3)で示される有機ハロゲン化物3及び一般式(4)で示される有機ハロゲン化物4から選ばれる少なくとも一種の化合物である、
    改質硫化物固体電解質の製造方法。

    (一般式(1)において、X 11 はハロゲン原子であり、X 12 ~X 14 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環族炭化水素基であり、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよい。また、X 11 におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X 12 ~X 14 におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
    一般式(2)において、X 21 ~X 26 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基又は1価の脂環族炭化水素基であり、X 21 ~X 26 の1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、X 21 ~X 26 の少なくとも1つはハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基である。また、X 21 におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X 22 ~X 26 におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
    一般式(3)において、X 31 及びX 32 は、各々独立に水素原子、ハロゲン原子、1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基又は一般式(3a)で示される基であり、一般式(3a)において、R 31 は単結合又は2価の脂肪族炭化水素基であり、R 32 は水素原子、ハロゲン原子又は1価の脂肪族炭化水素基である。1価の脂肪族炭化水素基、1価の脂環族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子で置換されていてもよく、X 31 及びX 32 の少なくとも1つはハロゲン原子又はハロゲン原子を含む基である。また、X 31 におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子であり、X 32 におけるハロゲン原子はフッ素、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。
    一般式(4)において、X 41 がハロゲン原子で示される基であり、X 42 ~X 44 が1価の脂肪族炭化水素基である化合物であり、1価の脂肪族炭化水素基の水素原子はハロゲン原子を置換されていてもよい。また、X 41 におけるハロゲン原子は塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選択される原子である。)
  2. 前記有機ハロゲン化物に含まれるハロゲン原子が、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子から選ばれる少なくとも一種である、請求項に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  3. 前記有機ハロゲン化物1が、前記一般式(1)において、X11がハロゲン原子であり、X12が炭素数2~24の1価の脂肪族炭化水素基であり、X13及びX14が水素原子である化合物である、請求項1又は2に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  4. 前記有機ハロゲン化物2が、前記一般式(2)において、X21~X26が各々独立に水素原子、ハロゲン原子又は少なくとも一の水素原子がハロゲン原子で置換された1価のハロゲン化炭化水素基であり、X21~X26の少なくとも一つが前記ハロゲン化炭化水素基である化合物である、請求項のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  5. 前記有機ハロゲン化物3が、前記一般式(3)において、X31がハロゲン原子であり、X32が炭素数2以上の1価の脂肪族炭化水素基又は一般式(3a)で示される基である化合物である、請求項のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  6. 前記有機溶媒が、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒及びニトリル溶媒から選ばれる少なくとも一種の溶媒である、請求項1~のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  7. 前記硫化物固体電解質に含まれる硫黄原子100モル部に対して、前記有機ハロゲン化物を0.05モル部以上3.5モル部以下で用いる、請求項1~のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質の製造方法。
  8. 請求項1~7のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質と、電極活物質と、を混合することを含む電極合材の製造方法
  9. 請求項1~7のいずれか1項に記載の改質硫化物固体電解質及び請求項8に記載の電極合材の少なくとも一方を用いる、リチウムイオン電池の製造方法
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