[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態について図1乃至図17を用いて説明する。
まず、本実施形態による搬送システム1の構成について図1乃至図3を用いて説明する。図1及び図2は、本実施形態による可動子101及び固定子201を含む搬送システム1の構成を示す概略図である。なお、図1及び図2は、それぞれ可動子101及び固定子201の主要部分を抜き出して示したものである。また、図1は可動子101を斜め上方から見た図、図2は可動子101及び固定子201を後述のX方向から見た図である。図3は、搬送システム1におけるコイル202、207、208及びコイル202、207、208に関連する構成を示す概略図である。
図1及び図2に示すように、本実施形態による搬送システム1は、キャリア、台車又はスライダを構成する可動子101と、搬送路を構成する固定子201とを有している。また、搬送システム1は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。なお、図1では、可動子101として3つの可動子101a、101b、101c、固定子201として2つの固定子201a、201bを示している。以後、可動子101、固定子201等の複数存在しうる構成要素について特に区別する必要がない場合には共通の数字のみの符号を用い、必要に応じて数字の符号の後に小文字のアルファベットを付して個々を区別する。また、可動子101のR側の構成要素とL側の構成要素とを区別する場合には、小文字のアルファベットの後にR側を示すR又はL側を示すLを付す。
本実施形態による搬送システム1は、固定子201のコイル207と可動子101の導電板107との間で電磁力を発生させX方向の推力を可動子101に印加する誘導型リニアモータによる搬送システムである。また、本実施形態による搬送システム1は、可動子101を浮上させて非接触で搬送する磁気浮上型の搬送システムである。本実施形態による搬送システム1は、可動子101により搬送されたワーク102に対して加工を施す工程装置をも有する加工システムの一部を構成している。
搬送システム1は、例えば、固定子201により可動子101を搬送することにより、可動子101に保持されたワーク102を、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置に搬送する。工程装置は、特に限定されるものではないが、例えば、ワーク102であるガラス基板上に成膜を行う蒸着装置、スパッタ装置等の成膜装置である。なお、図1では、2台の固定子201に対して3台の可動子101を示しているが、これらに限定されるものではない。搬送システム1においては、1台又は複数台の可動子101が1台又は複数台の固定子201上を搬送されうる。
ここで、以下の説明において用いる座標軸、方向等を定義する。まず、可動子101の搬送方向である水平方向に沿ってX軸をとり、可動子101の搬送方向をX方向とする。
また、X方向と直交する方向である鉛直方向に沿ってZ軸をとり、鉛直方向をZ方向とする。鉛直方向は、重力の方向(mg方向)である。また、X方向及びZ方向に直交する方向に沿ってY軸をとり、X方向及びZ方向に直交する方向をY方向とする。さらに、X軸周りの回転方向をWx方向、Y軸周りの回転方向をWy方向、Z軸周りの回転方向をWz方向とする。また、乗算の記号として”*”を使用する。また、可動子101の中心を原点Ocとし、Y+側をR側、Y-側をL側として記載する。なお、可動子101の搬送方向は必ずしも水平方向である必要はないが、その場合も搬送方向をX方向として同様にY方向及びZ方向を定めることができる。なお、X方向、Y方向及びX方向は、必ずしも互いに直交する方向に限定されるものではなく、互いに交差する方向として定義することもできる。また、搬送方向の変位を位置とし、それ以外の方向の変位を姿勢、位置と姿勢とを合わせて状態と定義する。
また、以下の説明において用いる記号は、次のとおりである。なお、記号は、コイル202、207、208の各場合について重複して用いられる。
Oc:可動子101の原点
Os:リニアスケール104の原点
Oe:固定子201の原点
j:コイルを特定するための指標
(ただし、jは、Nを2以上の整数として1≦j≦Nを満たす整数である。)
N:コイルの設置数
Ij:j番目のコイルに印加される電流量
P:可動子101の位置及び姿勢を含む状態(X,Y,Z,Wx,Wy,Wz)
X(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのX座標
Y(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのY座標
Z(j,P):状態Pの可動子101の中心から見たj番目のコイルのZ座標
T:可動子101に印加する力
Tx:力TのX方向の力成分
Ty:力TのY方向の力成分
Tz:力TのZ方向の力成分
Twx:力TのWx方向のトルク成分
Twy:力TのWy方向のトルク成分
Twz:力TのWz方向のトルク成分
Ex(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くX方向の力
Ey(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くY方向の力
Ez(j,P):j番目のコイルに単位電流を印加した際に状態Pの可動子101に対して働くZ方向の力
Σ:指標jを1からNまで変化させた場合の合計
*:行列、ベクトルの積
M:トルク寄与行列
K:疑電流ベクトル(列ベクトル)
Tq:トルクベクトル(列ベクトル)
Is:コイル電流ベクトル(列ベクトル)
Fs:コイル力ベクトル(列ベクトル)
M(a,b):トルク寄与行列Mのa行b列の要素
Inv():逆行列
Tr():転置行列
Tr(要素1,要素2,…):要素1、要素2、…を要素とする列ベクトル
図1中の矢印で示すように、可動子101は、搬送方向であるX方向に沿って移動可能に構成されている。可動子101は、ヨーク板103と、導電板107とを有している。
また、可動子101は、リニアスケール104と、Yターゲット105と、Zターゲット106とを有している。さらに、可動子101は、それぞれの可動子101を識別するための識別情報が登録された情報媒体であるRFID(Radio Frequency Identification)タグ512を有している。
ヨーク板103は、可動子101の複数箇所に複数取り付けられて設置されている。具体的には、ヨーク板103は、可動子101の上面において、R側及びL側それぞれの端部にX方向に沿って取り付けられて設置されている。また、ヨーク板103は、可動子101のR側及びL側それぞれの側面にX方向に沿って取り付けられて設置されている。各ヨーク板103は、透磁率の大きな物質、例えば鉄で構成された鉄板である。
導電板107は、可動子101の上面において中央部にX方向に沿って取り付けられて設置されている。導電板107は、導電性を有する金属板等の導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、電気抵抗の小さいアルミニウム板等が好適である。
なお、ヨーク板103及び導電板107の設置場所及び設置数は、上記の場合に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
リニアスケール104、Yターゲット105及びZターゲット106は、可動子101において、それぞれ固定子201に設置されたリニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206により読み取り可能な位置に取り付けられて設置されている。
RFIDタグ512は、可動子101において、RFIDリーダー513により読み取り可能な位置に取り付けられて設置されている。RFIDリーダー513は、搬送システム1における可動子101の搬送路の特定の位置に設置されている。RFIDタグ512には、当該RFIDタグ512が取り付けられた可動子101を識別できるように識別情報である個別ID(Identification)が登録されている。なお、可動子101には、RFIDタグ512に代えて可動子101の個別IDを示すQRコード(登録商標)等の情報媒体が設けられていてもよい。この場合、RFIDリーダー513に代えて、情報媒体に応じて当該情報媒体から個別IDを読み取るスキャナ等のリーダーを用いることができる。
固定子201は、コイル202、207、208と、リニアエンコーダ204と、Yセンサ205と、Zセンサ206とを有している。
コイル202は、可動子101の上面に設置されたヨーク板103にZ方向に沿って対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル202は、可動子101の上面におけるR側及びL側それぞれの端部に設置された2つのヨーク板103にZ方向に沿って上方から対向可能なようにX方向に沿って2列に配置されて設置されている。
コイル208は、可動子101の側面に設置されたヨーク板103にY方向に沿って対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル208は、可動子101のR側及びL側それぞれの側面に設置された2つのヨーク板103にY方向に沿って側方から対向可能なようにX方向に沿って2列に配置されて設置されている。
コイル207は、可動子101の上面に設置された導電板107にZ方向に沿って対向可能なように固定子201にX方向に沿って複数取り付けられて設置されている。具体的には、複数のコイル207は、可動子101の上面における中央部に設置された導電板107にZ方向に沿って上方から対向可能なようにX方向に沿って1列に配置されて設置されている。
固定子201は、電流が印加された各コイル202、207、208により、搬送方向に沿って移動可能な可動子101に力を印加する。これにより、可動子101は、位置及び姿勢が制御されつつ搬送方向に沿って搬送される。
なお、コイル202、207、208の設置場所は、上記の場合に限定されるものではなく、適宜変更することができる。また、コイル202、207、208の設置数は、適宜変更することができる。
リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206は、搬送方向に沿って移動する可動子101の位置及び姿勢を検出する検出部として機能する。
リニアエンコーダ204は、可動子101に設置されたリニアスケール104を読み取り可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。リニアエンコーダ204は、リニアスケール104を読み取ることにより可動子101のリニアエンコーダ204に対する相対的な位置を検出する。
Yセンサ205は、可動子101に設置されたYターゲット105との間のY方向の距離を検出可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。Zセンサ206は、可動子101に設置されたZターゲット106との間のZ方向の距離を検出可能なように固定子201に取り付けられて設置されている。
可動子101は、例えば、その上又は下にワーク102が取り付けられ又は保持されて搬送されるようになっている。なお、図2では、ワーク102が可動子101の下に取り付けられた状態を示している。なお、ワーク102を可動子101に取り付け又は保持するための機構は、特に限定されるものではないが、機械的なフック、静電チャック等の一般的な取り付け機構、保持機構等を用いることができる。
なお、図2には、ワーク102に対して加工作業を施す工程装置の例である蒸着装置701のチャンバ内に可動子101及び固定子201が組み込まれている場合を示している。蒸着装置701は、可動子101に取り付けられたワーク102に対して蒸着を行う蒸着源702を有している。蒸着源702は、可動子101の下部に取り付けられたワーク102に対向可能なように蒸着装置701のチャンバ内の下部に設置されている。蒸着源702の設置場所に搬送された可動子101の下部に取り付けられたワーク102である基板には、蒸着源702による蒸着により金属、酸化物等の薄膜が成膜される。このように、可動子101とともにワーク102が搬送され、搬送されたワーク102に対して工程装置により加工が施されて物品が製造される。
また、図1は、固定子201aと固定子201bとの間に、例えばゲートバルブ等の構造物100が存在している場所を含む領域を示している。構造物100が存在する場所は、生産ライン内又は生産ラインの間の複数のステーションの間で、連続して電磁石やコイルを配置することができない場所になっている。
搬送システム1に対しては、これを制御する制御システム3が設けられている。なお、制御システム3は、搬送システム1の一部を構成しうる。制御システム3は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302及びセンサコントローラ304が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302には、複数のコイルユニットコントローラ303が通信可能に接続されている。センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205、複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。各コイルユニットコントローラ303には、コイル202、207、208が接続されている(図3参照)。
統合コントローラ301は、センサコントローラ304から送信されるリニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202、207、208に印加する電流指令値を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値をコイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301から受信した電流指令値を各コイルユニットコントローラ303に送信する。コイルユニットコントローラ303は、コイルコントローラ302から受信した電流指令値に基づき、接続されたコイル202、207、208の電流量を制御する。
また、統合コントローラ301には、RFIDリーダー513が通信可能に接続されている。RFIDリーダー513は、可動子101のRFIDタグ512を読み取ることにより当該可動子101の個別IDを取得する。RFIDリーダー513は、取得した個別IDを統合コントローラ301に送信する。統合コントローラ301は、RFIDリーダー513から送信される可動子101の個別IDを受信して認識し、可動子101を識別することができる。RFIDリーダー513は、固定子201により構成される搬送路において一又は複数の位置に設置されている。
図3に示すように、コイルユニットコントローラ303には、1個又は複数個のコイル202、207、208が接続されている。コイル202、207、208には、各々電流センサ312及び電流コントローラ313が接続されている。電流センサ312は、接続されたコイル202、207、208に流れる電流値を検出する。電流コントローラ313は、接続されたコイル202、207、208に流れる電流量を制御する。
コイルユニットコントローラ303は、コイルコントローラ302から受信した電流指令値に基づき、電流コントローラ313に所望の電流量および電流を流すタイミングを指令する。電流コントローラ313は、電流センサ312により検出された電流値を検出して個々のコイル202、207、208に対して所望の電流量の電流が流れるように電流量を制御する。
次に、本実施形態による搬送システム1を制御する制御システムについてさらに図4を用いて説明する。図4は、本実施形態による搬送システム1を制御する制御システム3を示す概略図である。
図4に示すように、制御システム3は、統合コントローラ301と、コイルコントローラ302と、コイルユニットコントローラ303と、センサコントローラ304とを有している。制御システム3は、可動子101と固定子201とを含む搬送システム1を制御する制御部として機能する。統合コントローラ301には、コイルコントローラ302、センサコントローラ304及びRFIDリーダー513が通信可能に接続されている。
コイルコントローラ302には、複数のコイルユニットコントローラ303が通信可能に接続されている。コイルコントローラ302及びこれに接続された複数のコイルユニットコントローラ303は、コイル202、207、208のそれぞれの列に対応して設けられている。各コイルユニットコントローラ303には、コイル202、207、208が接続されている。コイルユニットコントローラ303は、接続されたコイル202、207、208の電流の大きさを制御することができる。
コイルコントローラ302は、接続された各々のコイルユニットコントローラ303に対して目標となる電流値を指令する。コイルユニットコントローラ303は、接続されたコイル202、207、208の電流量を制御する。
センサコントローラ304には、複数のリニアエンコーダ204、複数のYセンサ205及び複数のZセンサ206が通信可能に接続されている。
複数のリニアエンコーダ204は、可動子101の搬送中もそのうちの1つが1台の可動子101の位置を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のYセンサ205は、そのうちの2つが1台の可動子101のYターゲット105を測定できるような間隔で固定子201に取り付けられている。また、複数のZセンサ206は、その2列のうちの3つが1台の可動子101のZターゲット106を測定できるような間隔でかつ面をなすように固定子201に取り付けられている。
統合コントローラ301は、リニアエンコーダ204、Yセンサ205及びZセンサ206からの出力に基づき、複数のコイル202に印加する電流指令値を決定して、コイルコントローラ302に送信する。コイルコントローラ302は、統合コントローラ301からの電流指令値に基づき、上述のようにコイルユニットコントローラ303に対して電流値および電流を流すタイミングを指令する。これにより、統合コントローラ301は、制御部として機能し、固定子201に沿って可動子101を非接触で搬送するとともに、搬送する可動子101の姿勢を6軸で制御する。
統合コントローラ301は、可動子101に取付けられているRFIDタグ512を読み取ったRFIDリーダー513から受信した可動子101の個別IDにより可動子101を識別することができる。これにより、統合コントローラ301は、それぞれの可動子101に対して個別のパラメータを適用して可動子101の動作を制御することができる。
次に、本実施形態による可動子101の移動機差を補正するための補正値の取得方法について図5A及び図5Bを用いて説明する。図5A及び図5Bは、本実施形態による搬送システム1において可動子101の移動機差を補正するための補正値の取得方法を示す概略図であり、補正値の取得に際して複数の可動子101に共通して用いる共通の測定治具500を示している。図5Aは、-X方向に見た共通の測定治具500を示している。図5Bは、-Z方向に見た共通の測定治具500を示している。
共通の測定治具500は、固定子201と同様のリニアエンコーダ204と、測距手段としてのレーザー変位計502とを有している。リニアエンコーダ204は、共通の測定治具500に設置された可動子101のリニアスケール104を読み取り可能に共通の測定治具500に取り付けられて設置されている。レーザー変位計502は、共通の測定治具500に設置された可動子101のX方向の位置を検出可能に共通の測定治具500に取り付けられて設置されている。共通の測定治具500は、複数の可動子101のそれぞれについて、可動子101の移動機差に関する情報である機差情報を取得するために用いられる。機差情報を取得する可動子101の移動機差は、X方向、Y方向及びZ方向の各方向に関する機差である。
共通の測定治具500においては、リニアエンコーダ204により可動子101のリニアスケール104を読み取ることにより、共通の測定治具500に設置された可動子101のX方向の位置が検出可能になっている。また、レーザー変位計502による測定により、同じく共通の測定治具500に設置された可動子101のX方向の位置が検出可能になっている。
また、RFIDリーダー513を用いて、共通の測定治具500に設置された可動子101のRFIDタグ512を読み取ることにより、当該可動子101を識別することができる。
共通の測定治具500には、可動子101の浮上状態を模擬するように可動子101が設置される。この場合、ベッセル点501で可動子101を支持してもよいし、突き当て(不図示)を基準にしてもよい。共通の測定治具500において、複数の可動子101に対して再現の良い共通の設置を行うことが重要である。
ここで、可動子101のZターゲット106のうち、進行方向である+X方向に向かって右側である+Y方向側に配置されるZターゲット106をZターゲット106Rとする。また、可動子101のZターゲット106のうち、進行方向である+X方向に向かって左側である-Y方向側に配置されるZターゲット106をZターゲット106Lとする。
移動機差を補正するための補正値の取得する際には、共通の測定治具500に設置された可動子101について、三次元測定機503及びレーザー変位計502による測定を実行する。具体的には、三次元測定機503により、Yターゲット105のY方向の位置、Zターゲット106RのZ方向の位置及びZターゲット106LのZ方向の位置を、X方向に沿って測定する。測定する際には、補正データ量を少なくするために、X方向に例えば1mm刻みの測定を行ってもよい。また、レーザー変位計502により可動子101のX方向の位置を測定する。
同様に、複数の可動子101について、三次元測定機503により、Yターゲット105のY方向の位置、Zターゲット106RのZ方向の位置及びZターゲット106LのZ方向の位置をX方向に沿って測定する。また、同様に、複数の可動子101について、レーザー変位計502により可動子101のX方向の位置を測定する。
図6は、可動子101のYターゲット105、Zターゲット106R及びZターゲット106Lについて上述のように測定したデータの例を示している。
図6中、上段に測定対象のYターゲット105、Zターゲット106R及びZターゲット106Lを示し、下段に測定したデータのグラフを示す。下段に示すグラフにおいて、横軸は測定箇所のX軸の位置を示している。縦軸は、共通の測定治具500に可動子101を設置したときの設計値から測定した値を引いた値を誤差Errとして示している。グラフ中、Err105はYターゲット105についての誤差Errを、Err106RはZターゲット106Rについての誤差Errを、Err106LはZターゲット106Lについての誤差Errを示している。
誤差Errは、各ターゲットのセンサにより読み取られるターゲット面の設計値からのずれである。すなわち、Err105は、Yセンサ205がYターゲット105を読み取るときにおいて、各可動子101に固有の読み取り誤差になる。Err106Rは、Zセンサ206がZターゲット106Rを読み取るときにおいて、各可動子101に固有の読み取り誤差になる。Err106Lは、Zセンサ206がZターゲット106Lを読み取るときにおいて、各可動子101に固有の読み取り誤差になる。
これらのYセンサ205の読み取り誤差及びZセンサ206の読み取り誤差は、各可動子101の浮上時の姿勢の移動機差となる。以降、Yセンサ205の読み取り誤差をCy、Zセンサ206の読み取り誤差をCzと表記する。読み取り誤差Cyは、可動子101のY方向に関する移動機差である。読み取り誤差Czは、可動子101のZ方向に関する移動機差である。読み取り誤差Cy、Czは、可動子101の搬送制御において、可動子101の移動機差を補正するための補正値として使用される。
なお、測定したデータを補正値として使用する際には、複数の測定点から、ラグランジュ補間等の方法を利用して測定点の間のデータを補間することができる。
これらの読み取り誤差Cy、Czは、統合コントローラ301にて、RFIDタグ512に登録されている可動子101の個別IDと関連付けられて、センサの機差情報521(図7参照)として半導体記憶装置、磁気記憶装置等の記憶部に記憶される。なお、読み取り誤差Cy、Czは、統合コントローラ301が参照可能な外部の記憶装置に記憶されてもよい。
一方、可動子101のX方向の位置の移動機差である機差Cxは、レーザー変位計502による測定結果に基づき、次式(X1)により計算することができる。
Cx=(Ref_Lx-Lx)-(Ref_Ex-Ex) …式(X1)
ここで、Ex、Lx、Ref_Lx、Ref_Exは、それぞれ以下を表している。
Ex:共通の測定治具500に取付けられたリニアエンコーダ204の測定値
Lx:レーザー変位計502の測定値
Ref_Lx:レーザー変位計502から可動子101までのX方向の位置の設計値
Ref_Ex:リニアエンコーダ204の取り付け位置の設計値
こうして、可動子101のX方向に関する機差である移動機差Cxが取得される。このX方向の位置の機差Cxは、統合コントローラ301にて、RFIDタグ512に登録されている可動子101の個別IDと関連付けられて、X方向の機差情報520(図7参照)として半導体記憶装置、磁気記憶装置等の記憶部に記憶される。なお、機差Cxは、統合コントローラ301が参照可能な外部の記憶装置に記憶されてもよい。
以下、統合コントローラ301により実行される可動子101の姿勢制御方法について図7を用いて説明する。図7は、本実施形態による搬送システム1における可動子101の姿勢制御方法を示す概略図である。図7は、可動子101の姿勢制御方法の概略について主にそのデータの流れに着目して示している。統合コントローラ301は、以下に説明するように、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行する。これにより、統合コントローラ301は、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。なお、統合コントローラ301に代えて、コイルコントローラ302が統合コントローラ301と同様の処理を実行するように構成することもできる。
まず、可動子位置算出関数401は、複数のリニアエンコーダ204からの測定値、その取り付け位置の情報及び可動子101のX方向の機差情報520から、搬送路を構成する固定子201上にある可動子101の台数及び位置を計算する。このとき、可動子位置算出関数401は、可動子101のRFIDタグ512に登録されている個別IDと関連付けられて記憶されたX方向の機差情報520を使用することにより、可動子101個別の移動機差を補正することができる。
上記の計算により、可動子位置算出関数401は、可動子101に関する情報である可動子情報406の可動子位置情報(X)及び台数情報を更新する。可動子位置情報(X)は、固定子201上の可動子101の搬送方向であるX方向における位置を示している。
可動子情報406は、例えば図7中にPOS-1、POS-2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、可動子位置算出関数401により更新された可動子情報406の可動子位置情報(X)から、各々の可動子101を測定可能なYセンサ205及びZセンサ206を特定する。
次いで、可動子姿勢算出関数402は、各々の可動子101の姿勢に関する情報である姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を算出して可動子情報406を更新する。可動子姿勢算出関数402は、特定されたYセンサ205及びZセンサ206から出力される値並びにYターゲット105、Zターゲット106R及びZターゲット106Lのセンサの機差情報521に基づき、姿勢(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を算出する。このとき、可動子姿勢算出関数402は、可動子101のRFIDタグ512に登録されている個別IDと関連付けられて記憶されたセンサの機差情報521を使用することにより、可動子101個別の移動機差を補正することができる。可動子姿勢算出関数402により更新された可動子情報406は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含んでいる。
次いで、可動子姿勢制御関数403は、可動子位置情報(X)及び姿勢情報(Y,Z,Wx、Wy,Wz)を含む現在の可動子情報406及び姿勢目標値から、各々の可動子101について印加力情報408を算出する。印加力情報408は、各々の可動子101に印加すべき力の大きさに関する情報である。印加力情報408は、印加すべき力Tの力の3軸成分(Tx,Ty,Tz)及びトルクの3軸成分(Twx,Twy,Twz)に関する情報を含んでいる。印加力情報408は、例えば図7中にTRQ-1、TRQ-2、…と示すように固定子201上の可動子101ごとに用意される。
ここで、力の3軸成分であるTx、Ty、Tzは、それぞれ力のX方向成分、Y方向成分及びZ方向成分である。また、トルクの3軸成分であるTwx、Twy、Twzは、それぞれトルクのX軸周り成分、Y軸周り成分及びZ軸周り成分である。本実施形態による搬送システム1は、これら力Tの6軸成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)を制御することにより、可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の搬送を制御する。
次いで、コイル電流算出関数404は、印加力情報408及び可動子情報406に基づき、各コイル202、207、208に印加する電流指令値409を決定する。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401、可動子姿勢算出関数402、可動子姿勢制御関数403及びコイル電流算出関数404を用いた処理を実行することにより、電流指令値409を決定する。統合コントローラ301は、決定した電流指令値409をコイルコントローラ302に送信する。
可動子101の位置及び姿勢の制御についてさらに図8を用いて詳細に説明する。図8は可動子101の位置及び姿勢を制御するための制御ブロックの一例を示す概略図である。
図8において、Pは、可動子101の位置及び姿勢(位置姿勢又は状態ともいう)であり、(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)を成分とする。refは、(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)の目標値である。errは、目標値refと位置及び姿勢Pとの間の偏差である。
可動子姿勢制御関数403は、偏差errの大きさ、偏差errの変化、偏差errの積算値等に基づき、目標値refを実現するために可動子101に印加すべき力Tを算出する。
コイル電流算出関数404は、印加すべき力T並びに位置及び姿勢Pに基づき、可動子101に力Tを印加するためにコイル202、207、208に印加すべきコイル電流Iを算出する。こうして算出されたコイル電流Iがコイル202、207、208に印加されることにより、力Tが可動子101に作用して位置及び姿勢Pが目標値refに変化する。
このように制御ブロックを構成することにより、可動子101の位置及び姿勢Pを所望の目標値refに制御することが可能になる。
ここで、可動子位置算出関数401による処理について図9A及び図9Bを用いて説明する。図9A及び図9Bは、可動子位置算出関数による処理を説明する概略図である。
図9Aにおいて、基準点Oeは、リニアエンコーダ204が取り付けられている固定子201の位置基準である。また、基準点Osは、可動子101に取り付けられているリニアスケール104の位置基準である。図9Aでは、可動子101として2台の可動子101a、101bが搬送され、リニアエンコーダ204として3つのリニアエンコーダ204a、204b、204cが配置されている場合を示している。なお、リニアスケール104は、各可動子101a、101bの同じ位置にX方向に沿って取り付けられている。
例えば、図9Aに示す可動子101bのリニアスケール104には、1つのリニアエンコーダ204cが対向している。リニアエンコーダ204cは、可動子101bのリニアスケール104を読み取って距離Pcを出力する。また、リニアエンコーダ204cの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はScである。したがって、可動子101bの位置Pos(101b)は次式(1)により算出することができる。
Pos(101b)=Sc-Pc …式(1)
例えば、図9Aに示す可動子101aのリニアスケール104には、2つのリニアエンコーダ204a、204bが対向している。リニアエンコーダ204aは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Paを出力する。また、リニアエンコーダ204aの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSaである。したがって、リニアエンコーダ204aの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)は、次式(2)で算出することができる。
Pos(101a)=Sa-Pa …式(2)
また、リニアエンコーダ204bは、可動子101aのリニアスケール104を読み取って距離Pbを出力する。また、リニアエンコーダ204bの基準点Oeを原点とするX軸上の位置はSbである。したがって、リニアエンコーダ204bの出力に基づく可動子101aのX軸上の位置Pos(101a)′は、次式(3)により算出することができる。
Pos(101a)′=Sb-Pb …式(3)
ここで、各々のリニアエンコーダ204a、204bの位置は予め正確に測定されているため、2つの値Pos(101a)、Pos(101a)′の差は十分に小さい。このように2つのリニアエンコーダ204の出力に基づく可動子101のX軸上の位置の差が十分小さい場合は、それら2つのリニアエンコーダ204は、同一の可動子101のリニアスケール104を観測していると判定することができる。
なお、複数のリニアエンコーダ204が同一の可動子101と対向する場合は、複数のリニアエンコーダ204の出力に基づく位置の平均値を算出する等して、観測された可動子101の位置を一意に決定することができる。
また、可動子101は、Z軸周りに回転量Wzで回転しうる。この回転量Wzの変位による可動子101の位置の補正が必要な場合について図9Bで説明する。図9Bは、可動子101bのY方向の側面における一方の側面にリニアスケール104が取り付けられている場合について説明している。Osはリニアスケール104の原点、Ocは可動子101bの原点である。可動子101bの中心Ocからリニアスケール104までの距離をDとすれば、可動子101bの位置Pos(101b)は、次式(1b)を用いて計算することにより、より正確な可動子101bの位置を得ることができる。
Pos(101b)=Sc-Pc-Wz*D …式(1b)
また、可動子101bのX方向の位置の移動機差である機差Cx(101b)を考慮すると、可動子101bの位置Pos(101b)は、次式(1c)を用いて計算することにより、より正確な可動子101bの位置を得ることができる。
Pos(101b)=Sc-Pc-Wz*D+Cx(101b) …式(1c)
可動子位置算出関数401は、上述のようにしてリニアエンコーダ204の出力に基づき、可動子位置情報として可動子101のX方向における位置Xを算出して決定する。位置Xを算出するに際して、可動子位置算出関数401は、可動子101のX方向の位置の機差Cxを考慮することにより、可動子101個別の移動機差を補正することができる。
次に、可動子姿勢算出関数402による処理について図10、図11A及び図11Bを用いて説明する。
図10では、可動子101として可動子101cが搬送され、Yセンサ205としてYセンサ205a、205bが配置されている場合を示している。図10に示す可動子101cのYターゲット105には、2つのYセンサ205a、205bが対向している。2つのYセンサ205a、205bが出力する相対距離の値をそれぞれYa、Ybとし、Yセンサ205a、205b間の間隔がLyの場合、可動子101cのZ軸周りの回転量Wzは、次式(4)により算出される。
Wz=(Ya-Yb)/Ly …式(4)
ここで、Yセンサ205a、205bの読み取り誤差Cyをそれぞれ読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)とする。すると、Yセンサ205a、205bの出力の値Ya、Ybは、それぞれ読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)を考慮して補正することができる。それぞれ読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)を考慮した補正後のYセンサ205a、205bの出力の値Ya′、Yb′は、それぞれ次式(4a)及び(4b)で表される。
Ya′=Ya+Cy(205a、101c) …式(4a)
Yb′=Yb+Cy(205b、101c) …式(4b)
また、Yセンサ205a、205bの読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)を考慮した補正後の可動子101cのZ軸周りの回転量Wz′は、次式(4c)により算出される。
Wz′=(Ya′-Yb′)/Ly …式(4c)
なお、可動子101の位置によっては3つ以上のYセンサ205が対向する場合もありうる。その場合、最小二乗法等を使ってYターゲット105の傾き、すなわちZ軸周りの回転量Wz′を算出することができる。
また、図11A及び図11Bでは、可動子101として可動子101dが搬送され、Zセンサ206としてZセンサ206a、206b、206cが配置されている場合を示している。図11A及び図11Bに示す可動子101dのZターゲット106には、3つのZセンサ206a、206b、206cが対向している。ここで、3つのZセンサ206a、206b、206cが出力する相対距離の値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、X方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206b間の距離をLz1とする。また、Y方向のセンサ間距離、すなわちZセンサ206a、206c間の距離をLz2とする。すると、Y軸周りの回転量Wy及びX軸周りの回転量Wxは、それぞれ次式(5a)及び(5b)により算出することができる。
Wy=(Zb-Za)/Lz1 …式(5a)
Wx=(Zc-Za)/Lz2 …式(5b)
ここで、Zセンサ206a、206b、206cの読み取り誤差CzをそれぞれCz(206a、101d)、Cz(206b、101d)、Cz(206c、101d)とする。すると、Zセンサ206a、206b、206cの出力の値Za、Zb、Zcは、それぞれ読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206b、101d)、Cz(206c、101d)を考慮して補正することができる。読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206b、101d)、Cz(206c、101d)を考慮した補正後のZセンサ206a、206b、206cの出力の値Za′、Zb′、Zc′は、それぞれ次式(5c)、(5d)及び(5e)で表される。
Za′=Za+Cz(206a、101d) …式(5c)
Zb′=Zb+Cz(206b、101d) …式(5d)
Zc′=Zc+Cz(206c、101d) …式(5e)
また、Zセンサ206a、206bの読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206b、101d)を考慮した補正後の可動子101dのY軸周りの回転量Wy′は、次式(5f)により算出することができる。
Wy′=(Zb′-Za′)/Lz1 …式(5f)
また、Zセンサ206a、206cの読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206c、101d)を考慮した補正後の可動子101dのX軸周りの回転量Wx′は、次式(5g)により算出することができる。
Wx′=(Zc′-Za′)/Lz2 …式(5g)
可動子姿勢算出関数402は、上述のようにしてYセンサ205の読み取り誤差Cy及びZセンサ206の読み取り誤差Czを考慮した補正を行って、可動子101の姿勢情報として各軸周りの回転量Wx′、Wy′,Wz′を算出することができる。
また、可動子姿勢算出関数402は、次のようにして可動子101の姿勢情報として可動子101のY方向の位置Y及びZ方向の位置Zを算出することができる。
まず、可動子101のY方向の位置Yの算出について図10を用いて説明する。図10において、可動子101cがかかる2つのYセンサ205をそれぞれYセンサ205a、205bとする。また、Yセンサ205a、205bの測定値をそれぞれYa、Ybとする。また、Yセンサ205aの位置とYセンサ205bの位置との中点をOe′とする。
さらに、式(1)~(3)で得られた可動子101cの位置をOs′とし、Oe′からOs′までの距離をdX′とする。このとき、可動子101cのY方向の位置Yは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Y=(Ya+Yb)/2-Wz*dX′ …式(6)
可動子101cのY方向の位置Yは、Yセンサ205a、205bの読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)を考慮して補正することができる。読み取り誤差Cy(205a、101c)、Cy(205b、101c)を考慮して補正した可動子101cのY方向の位置Y′は、次式(6a)により近似的に計算して算出することができる。
Y′=(Ya′+Yb′)/2-Wz′*dX′ …式(6a)
次に、可動子101のZ方向の位置Zの算出について図11A及び図11Bを用いて説明する。可動子101dがかかる3つのZセンサ206をそれぞれZセンサ206a、206b、206cとする。また、Zセンサ206a、206b、206cの測定値をそれぞれZa、Zb、Zcとする。また、Zセンサ206aのX座標とZセンサ206cのX座標とは同一である。また、リニアエンコーダ204は、Zセンサ206aとZセンサ206cとの中間の位置にあるものとする。また、Zセンサ206a及びZセンサ206cの位置XをOe″とする。さらに、Oe″から可動子101dの中心Os″までの距離をdX″とする。このとき、可動子101dのZ方向の位置Zは、次式により近似的に計算して算出することができる。
Z=(Za+Zb)/2+Wy*dX″ …式(7)
可動子101dのZ方向の位置Zは、Zセンサ206a、206b、206cの読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206b、101d)、Cz(206c、101d)を考慮して補正することができる。読み取り誤差Cz(206a、101d)、Cz(206b、101d)、Cz(206c、101d)を考慮して補正した可動子101dのZ方向の位置Z′は、次式(7a)により近似的に計算して算出することができる。
Z′=(Za′+Zb′)/2+Wy′*dX″ …式(7a)
なお、位置Y及び位置ZともにそれぞれWz、Wyの回転量が大きい場合には、さらに近似の精度を高めて算出することができる。
こうして、統合コントローラ301は、可動子位置算出関数401及び可動子姿勢算出関数402を用いた処理を実行することにより、可動子101の位置及び姿勢を取得する取得部として機能する。可動子101の位置及び姿勢を取得する際、統合コントローラ301は、可動子101のX方向の位置の機差Cx、並びにYセンサ205の読み取り誤差Cy及びZセンサ206の読み取り誤差Czを考慮して可動子101の位置及び姿勢を補正することができる。
次に、可動子101に所望の力Tを印加するためのコイル202、207、208に印加する電流値の決定方法について説明する。可動子101に印加する力Tは、上述のように、力の3軸成分であるTx、Ty、Tz及びトルクの3軸成分であるTwx、Twy、Twzを有するものである。コイル電流算出関数404を用いた処理を実行する統合コントローラ301は、以下に説明する電流値の決定方法に従ってコイル202、207、208に印加する電流値を決定することができる。
なお、コイル202、207、208が印加する力及びトルクのうち、1つの力又はトルクが他の力又はトルクに与える影響を十分無視できる場合がある。コイル202、207、208が印加する力及びトルクは、具体的には、コイル207が印加するX方向の力、コイル208が印加するY方向の力及びWz方向のトルク、並びにコイル202が印加するZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクである。コイル208が印加するY方向の力及びWz方向のトルクは、水平方向において作用するものである。コイル202が印加するZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクは、浮上方向において作用するものである。影響を十分無視できる場合、コイル207についてはX方向の力だけを、コイル208についてはY方向の力及びWz方向のトルクだけを、コイル202についてはZ方向の力、Wx方向のトルク及びWy方向のトルクだけを考慮して電流値を計算すればよい。以下、影響を十分に無視できる場合について説明する。
まず、Z方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyを可動子101に印加するために各コイル202に印加する電流について図12乃至図14Bを用いて説明する。
図12は、可動子101上に取り付けられたヨーク板103に働く力と可動子101に働く力成分Tz及びトルク成分Twx、Twyとの関係を示す概略図である。
図12において、Fzjは、j番目のコイルがヨーク板103に印加する力である。ただし、コイル202の設置数Nを2以上の整数として、jは1≦j≦Nを満たす整数である。各力Fzjが印加するトルクは、トルク成分Twx、Twyに寄与する。各力Fzjが印加するトルクは、その力Fzj及びその作用点と可動子101の中心Ocとの距離に応じて決定される。
図13は、Z方向の推力定数プロファイル601を模式的に示すグラフである。推力定数プロファイル601は、ヨーク板103に対向する浮上用のコイル202に単位電流を印加した際にヨーク板103に働く吸引力を模式的に示している。その吸引力の大きさは、X方向の移動に対して連続的に変化する。
ここで、コイル202の構成の例について図14A及び図14Bを用いて説明する。図14A及び図14Bは、コイル202を示す概略図である。図14Aはコイル202をZ方向から見た図、図14Bはコイル202をX方向から見た図である。
図14A及び図14Bに示すように、コイル202は、巻き線210とコア211とを有している。巻き線210には、電流コントローラ313により電流が印加される。巻き線210に電流が印加されると、磁束の経路である磁路212が形成される。こうして形成された磁路212中の磁束により、コイル202とヨーク板103の間に吸引力が働く。
コイル202に印加する電流とコイル202と、ヨーク板103との間に働く力の大きさとの関係について図14A乃至図15を用いてさらに詳しく説明する。図15は、コイル202に印加する電流と、コイル202とヨーク板103との間に働く吸引力の大きさとの関係を模式的に示すグラフである。図15に示すグラフにおいて、横軸はコイル202に印加する電流量I、縦軸はコイル202とヨーク板103との間に働く吸引力の大きさFzを示している。図15に示すグラフには、電流量Iに対する吸引力の大きさFzを示す吸引力プロファイル604が示されている。
コイル202とヨーク板103との間のZ方向の間隔が一定の場合、吸引力Fzは、電流量Iの二乗に概ね比例する。ここで、図15に示すグラフ中、F0は、可動子101に働く重力mgを補償するために必要な各コイルに平均的に働く力の大きさである。
ここで、次のように数値及び記号を設定する。
1個のコイル202のコア211の底面積:S=0.01[m2]
1個のコイル202が補償する可動子101の質量の一部:F0=100[N](約10[kg])
真空の透磁率:μ0=4π×10-7
空気ギャップ:gap[m]
コイル巻き数:n[回]
コイル電流:I[A]
コア211とヨーク板103との間の磁束密度:B[T]
コア211及びヨーク板103の透磁率が真空の透磁率に対して十分大きいとすると、Fz及びBは、それぞれ次式(8a)及び(8b)により近似的に計算することができる。
Fz=S*B2/(2*μ0) …式(8a)
B=n*I*μ0/(2*gap) …式(8b)
ここで、巻き数Nが500[回]、コイル電流I0が1.0[A]のとき、空気ギャップgapは、式(8a)及び(8b)により0.006266[m]と計算することができる。
ここで、吸引力プロファイル604において、Fz=F0となるI=I0の点をQとする。この点Qの周りについて説明する。
仮に、gapが0.006266[m]から0.25mmだけ大きい方向に変化した場合、拡大するgapを補償するため、コイル202にはより大きな起磁力を発生させる必要がある。gapを0.006516[m]として式(8a)及び(8b)を同じFzを発生するようにして計算すれば、コイル電流Iは、1.0399[A]と計算される。この程度の電流値であるから、可動子101の搬送中におけるコイル電流の電流値の変動は、基準となるコイル電流I0に比べて十分小さい。
したがって、点Qの周りでは、電流I0に対して追加で印加する電流dIと、電流dIの印加によりZ軸方向に追加して発生する力の大きさdFとの間には、次式(8c)で示される関係が成り立つ。なお、原点Oの周りでは、式(8c)で示される関係は成立しない。
dF ∝ dI …式(8c)
ここでdFとdIの比を次式(8d)により定義する。
dF/dI=Ez …式(8d)
図13に示す推力定数プロファイル601において、Ez(j,P)が示されている。
Ez(j,P)は、式(8d)に示す比になっている。すなわち、Ez(j,P)は、可動子101が位置姿勢Pにあるときにj番目のコイル202に平均的に印加している電流I0に対して追加で電流dIを印加した際における、電流dIに対するZ軸方向に追加して発生する力の大きさdFの比である。
jをコイル202を特定する指標として上記表記方法に従って図12を参照して説明する。以下、簡単のため、Z方向の追加の力dFzjを単にFzjと表記し、追加の電流dIjをIjと表記する。
j番目のコイル202が発生するZ方向の追加の力Fzjは、Ijをj番目のコイル202に印加する追加の電流とすれば、次式(9a)により表される。
Fzj=Ez(j,P)*Ij …式(9a)
さらにX(j,P)をj番目のコイル202の可動子101の中心Ocから見たX方向の相対位置、Y(j,P)をj番目のコイル202の可動子101の中心Ocから見たY方向の相対位置とする。すると、Z方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyは、それぞれ次式(9b)、(9c)及び(9d)により表される。
Tz=Σ(Ez(j,P)*Ij) …式(9b)
Twx=Σ(-Ez(j,P)*Y(j,P)*Ij) …式(9c)
Twy=Σ(Ez(j,P)*X(j,P)*Ij) …式(9d)
上式(9b)、(9c)及び(9d)を満足する電流Ijを各コイル202に印加すれば、所望の力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)を得ることができる。
ここで、トルク寄与行列Mを定義する。トルク寄与行列Mは、可動子101が位置姿勢Pにある場合に1~j番目のコイル202の各々に対して単位電流を印加した場合の各力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)への寄与の大きさを示す行列である。このように、トルク寄与行列Mを用いて、各コイル202に印加される単位電流による力成分及びトルク成分(Tz、Twx、Twy)の各成分に対する寄与に関する情報を用いて、各コイル202に印加される電流値を決定する。
トルク寄与行列Mでは、その1行目をZ方向、2行目をWx方向、3行目をWy方向に対応させる。すると、トルク寄与行列Mの1行j列、2行j列及び3行j列の各要素M(1,j)、M(2,j)及びM(3,j)は、それぞれ次式(10a)、(10b)及び(10c)により表される。トルク寄与行列Mは、3行N列の行列である。なお、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。
M(1,j)=Ez(j,P) …式(10a)
M(2,j)=-Ez(j,P)*Y(j,P) …式(10b)
M(3,j)=Ez(j,P)*X(j,P) …式(10c)
一方、コイル電流ベクトルIsとして、1~N番目のコイル202に印加する電流量I1~INを要素とする列ベクトルを導入する。コイル電流ベクトルIsは、次式(10d)により表されるN行1列の列ベクトルである。
Is=Tr(I1,I2,…,Ij,…,IN) …式(10d)
ここでトルクベクトルTqを次式(11)により定義する。
Tq=Tr(Tz,Twx,Twy) …式(11)
すると、式(9b)~(9d)、(10a)~(10d)及び(11)から次式(12)が得られる。
Tq=M*Is …式(12)
ここで、疑電流ベクトルKを導入する。疑電流ベクトルKは、3行1列の列ベクトルであり、Tr(M)をトルク寄与行列Mの転置行列とすれば、次式(13)を満足するベクトルである。
Tr(M)*K=Is …式(13)
コイル電流ベクトルIsを式(13)により表されるものとすることで、Tz、Twx、Twyへの寄与の大きいコイル202により多くの電流値を印加することができるため、効率的に電流を印加することができる。
式(12)は、式(13)を用いて次式(14)に変形することができる。
Tq=M*Tr(M)*K …式(14)
式(14)において、M*Tr(M)は、3行N列の行列とN行3列の行列との積であるから3行3列の正方行列である。また、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。したがって、M*Tr(M)は、逆行列を常に得ることができる。そのため、式(14)は、次式(15)に変形することができる。
K=Inv(M*Tr(M))*Tq …式(15)
式(13)及び(15)から、最終的には次式(16)で表されるコイル電流ベクトルIsを得る。こうして、コイル電流ベクトルIsを一意に求めることができる。
Tr(M)*Inv(M*Tr(M))*Tq=Is …式(16)
以上のようにしてコイル電流ベクトルIsを計算することにより、各コイル202に印加する電流を決定することができる。これにより、可動子101に対してZ方向の力成分Tz、Wx方向のトルク成分Twx及びWy方向のトルク成分Twyを独立して印加することができるので、Z方向、Wx方向及びWy方向において可動子101の姿勢を安定させることができる。
次に、Y方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzを可動子101に印加するためにコイル208に印加する電流について図16及び図17を用いて説明する。力成分Ty及びトルク成分Twzは、それぞれ水平方向において作用するものである。図16は可動子101をZ方向に沿って上から下に見た概略図である。図17は、Y方向の吸引力プロファイル605を模式的に示すグラフである。図17に示すグラフにおいて、横軸はコイル208に印加する電流、縦軸は可動子101に働く力を示している。
なお、簡単のため、図16には、固定子201に設置されたコイル208として、4個のコイル208aR、208bR、208aL、208bLが可動子101に対向している場合を示している。また、コイル208aLとコイル208aRとは、一対となって1個のコイル208aとして動作する。また、コイル208bLとコイル208bRとは、一対となって1個のコイル208bとして動作する。このように、j番目の対のコイル208jRとコイル208jLとは、一対となって1個のコイル208jとして動作するものとする。
図17において、吸引力プロファイル605は、j番目の1対のコイル208jに印加する電流の大きさIL、IRと可動子101に働く力Fyの大きさとの関係を示している。コイル208とヨーク板103の間には、反発力は働かず吸引力のみが働く。このため、可動子101に対してY+方向に力を印加する場合には、吸引力プロファイル605の範囲605aにおいて、R側のコイル208jRに電流を印加する。また、可動子101に対してY-方向に力を印加する場合には、吸引力プロファイル605の範囲605bにおいて、L側のコイル208jLに電流を印加する。
例えば、Y+方向の力Faを印加する場合には、R側のコイル208jRに電流Iaを印加することができる。また、例えば、Y-方向の力Fbを印加する場合には、L側のコイル208jLに電流Ibを印加することができる。
jを一対のコイル208を特定する指標とする。また、X(j,P)をj番目の一対のコイル208の可動子101の中心Ocから見たX方向の相対位置とする。また、j番目の一対のコイル208が印加するY方向の力をFyjとする。すると、水平方向のY方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzは、それぞれ次式(17a)及び(17b)により表される。
Ty=ΣFyj …式(17a)
Twz=Σ(-Fyj*X(j,P)) …式(17b)
ここで、1~N番目のコイル208が印加するY方向の力Fy1、Fy2、…、FyNを要素とするY方向力ベクトルFysを次式(17c)により定義する。
Fys=Tr(Fy1,Fy2,…,Fyj,…,FyN) …式(17c)
さらに、トルクベクトルTqを次式(17d)により定義する。
Tq=Tr(Ty,Twz) …式(17d)
トルク寄与行列Mでは、1行目をY方向、2行目をWz方向に対応させる。すると、トルク寄与行列Mの1行j列及び2行j列の各要素M(1,j)及びM(2,j)は、それぞれ次式(17e)及び(17f)により表される。
M(1,j)=1 …式(17e)
M(2,j)=X(j,P) …式(17f)
コイル208に印加する電流を算出するため、まず、次式(17g)を満足するY方向力ベクトルFysを決定する。
Tq=M*Fys …式(17g)
Tqは2行1列のベクトル、Mは2行N列の行列であるから、式(17g)を満足するY方向力ベクトルFysの要素の組み合わせは無数にあるが、以下の方法に従って一意に計算することができる。
ここで、2行1列の疑電流ベクトルKを導入する。疑電流ベクトルKは、Tr(M)をトルク寄与行列Mの転置行列とすれば、次式(17h)を満足するベクトルである。
Tr(M)*K=Fys …式(17h)
式(17g)は、式(17h)を用いて次式(17i)に変形することができる。
Tq=M*Tr(M)*K …式(17i)
M*Tr(M)は、2行N列の行列とN行2列の行列との積であるから2行2列の正方行列である。また、トルク寄与行列Mの各行は、互いに線形独立である。したがって、M*Tr(M)は、逆行列を常に得ることができる。そのため、式(17i)は、次式(17j)に変形することができる。
K=Inv(M*Tr(M))*Tq …式(17j)
式(17h)及び(17j)から、最終的に次式(17k)で表されるY方向力ベクトルFysを得る。これにより、Y方向力ベクトルFysを一意に計算することができる。
Tr(M)*Inv(M*Tr(M))*Tq=Fys …式(17k)
Y方向力ベクトルFysが得られた後は、予め計算又は測定されている吸引力プロファイル605から逆算して各コイル208に印加する電流を算出することができる。
以上のようにして、各コイル208に印加する電流を決定することができる。これにより、可動子101に対してY方向の力成分Ty及びWz方向のトルク成分Twzを独立して印加することができるので、Y方向及びWz方向において可動子101の姿勢を安定させることができる。例えば、コイル208に対しては、Wz方向のトルクが常に0となるように電流を印加することができる。
このように、本実施形態では、可動子101のZ方向に関する移動機差及びY方向に関する移動機差を補正して、複数のコイル202、208に印加する電流を制御する。これにより、目標の姿勢(Y,Z,Wx、Wy,Wz)になるように可動子101の動作を制御する。したがって、複数の可動子101のそれぞれの姿勢をより高い精度で制御することができる。例えば、可動子101のZ方向に関する移動機差を補正して、複数のコイル202に印加する電流値を制御することにより、Z方向において目標の位置になるように可動子101の動作を制御する。これにより、可動子101の浮上中の姿勢を制御する。したがって、複数の可動子101のそれぞれの浮上時の位置をより高い精度で制御することができる。
次に、搬送方向であるX方向の推力を可動子101に印加するコイル207の制御方法について説明する。本実施形態による搬送システム1は、誘導型リニアモータによる搬送システムである。コイル207は、可動子101の導電板107との間で電磁力を発生させてX方向の推力、すなわちX方向の力成分Txを可動子101に印加する。導電板107としては、特に限定されるものではないが、電気抵抗が比較的小さい例えばアルミニウム製の板が用いられている。
各コイル207は、電流が印加されることにより搬送方向であるX方向に移動磁界を発生させてコイル207と導電板107との間に電磁力を発生させる。これにより、各コイル207は、可動子101に搬送方向であるX方向の推力として力成分Txを発生させる。可動子101の速度が不足する場合は、各コイル207に印加する電流を増加したり、移動磁界が移動する速度が大きくなるように各コイル207に印加する電流のタイミングを変更したりすることができる。
本実施形態では、可動子101のX方向に関する移動機差を補正して、複数のコイル207に印加する電流値及び/又はタイミングを制御することにより、目標の搬送速度になるように可動子101の動作を制御する。したがって、複数の可動子101のそれぞれの搬送速度をより高い精度で制御することができる。
上述のようにして、統合コントローラ301は、各コイル202、207、208に印加する電流の電流指令値を決定して制御する。これにより、統合コントローラ301は、固定子201により搬送される可動子101の姿勢を6軸で制御しつつ、可動子101の非接触での固定子201上の搬送を制御する。なお、制御装置としての統合コントローラ301の機能の全部又は一部は、コイルコントローラ302その他の制御装置により代替されうる。
なお、本実施形態では、コイル207もコイル202、コイル208と同様に電流が制御される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、より簡単に、誘導モーターコントローラを統合コントローラ301に接続して、誘導モーターコントローラにより一定の移動磁界が発生するように各コイル207の電流を制御するように構成することもできる。
以上のとおり、本実施形態によれば、可動子101に対して6軸の力成分及びトルク成分(Tx,Ty,Tz,Twx,Twy,Twz)を独立して印加することができる。このため、本実施形態によれば、Y方向、Z方向、Wx方向、Wy方向及びWz方向において可動子101の姿勢を安定させつつX方向に安定して可動子101を非接触状態で搬送することができる。
さらに、本実施形態によれば、可動子101のX方向の位置の機差Cx、並びにYセンサ205の読み取り誤差Cy及びZセンサ206の読み取り誤差Czを考慮して可動子101の位置及び姿勢を制御することができる。これにより、複数の可動子101毎に存在しうる機差の影響を低減又は回避することができる。したがって、本実施形態によれば、磁気浮上型の搬送システム1において、複数の可動子101をより高い精度で搬送することができる。
なお、上記では可動子101のX方向に関する移動機差、Y方向に関する移動機差及びZ方向に関する移動機差を補正する場合について説明したが、これらのうちのいずれか1つ又は2つを補正することもできる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態について図18A乃至図19を用いて説明する。なお、上記第1実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。なお、本実施形態による移動機差の補正は、第1実施形態による移動機差の補正と組み合わせて実行することができる。
本実施形態では、可動子101の移動機差を補正するための補正値の取得に際して、可動子101のX方向の位置の機差をリニアスケール104全域で取得する。以下、可動子101のX方向の位置の機差をリニアスケール104全域で取得する方法について図18A及び図18Bを用いて説明する。図18A及び図18Bは、可動子101のX方向の位置の機差をリニアスケール104全域で取得する方法を示す概略図であり、補正値の取得に際して複数の可動子101に共通して用いる共通の測定治具510を示している。図18Aは、-X方向に見た共通の測定治具510を示している。図18Bは、-Z方向に見た共通の測定治具510を示している。
共通の測定治具510は、固定子201と同様のリニアエンコーダ204と、測距手段としてのレーザー干渉計504とを有している。リニアエンコーダ204は、共通の測定治具510においてX方向に摺動される可動子101のリニアスケール104を読み取り可能に共通の測定治具510に取り付けられて設置されている。レーザー干渉計504は、共通の測定治具510においてX方向に摺動される可動子101のX方向の位置を検出可能に共通の測定治具500に取り付けられて設置されている。
共通の測定治具510は、複数のZ軸用ローラー505を有している。複数のZ軸用ローラー505は、X方向に沿って2列以上の複数列に配置されている。Z軸用ローラー505は、例えばボールローラーである。複数列のZ軸用ローラー505の上には、可動子101が載せられて置かれる。Z軸用ローラー505は、置かれた可動子101をX方向に摺動させることが可能となっている。なお、共通の測定治具510には、可動子101をX方向に摺動させる際のY方向の規制としてY軸用ローラー(不図示)が設置されていてもよい。
共通の測定治具510においては、リニアエンコーダ204により可動子101のリニアスケール104を読み取ることにより、共通の測定治具510においてX方向に摺動する可動子101のX方向の位置が検出可能になっている。また、レーザー干渉計504による測定により、同じく共通の測定治具500においてX方向に摺動する可動子101のX方向の位置が検出可能になっている。
図19は、複数のZ軸用ローラー505の上において、可動子101を摺動させてX方向に動かしたときのレーザー干渉計504の測定値とリニアエンコーダ204の測定値との差分をErrとして示すグラフである。なお、レーザー干渉計504により測定する際には、補正データ量を少なくするために、例えばX方向に1mm刻みの測定を行ってもよい。また、測定したデータを補正値として使用する際には、複数の測定点から、ラグランジュ補間等の方法を利用して測定点の間のデータを補間することができる。
可動子101のX方向の位置の移動機差である機差Cx′は、次式(X1)′により計算することができる。
Cx′=(Ref_Lx′-Lx′)-(Ref_Ex′-Ex′) …式(X1)′
ここで、Ex′、Lx′、Ref_Lx′、Ref_Ex′は、それぞれ以下を表している。
Ex′:共通の測定治具510に取付けられたリニアエンコーダ204の測定値
Lx′:レーザー干渉計504の測定値
Ref_Lx′:レーザー干渉計504から可動子101までのX方向の位置の設計値
Ref_Ex′:リニアエンコーダ204の取り付け位置の設計値
機差Cx′は、Z軸用ローラー505により可動子101を摺動させてX方向に動かしたときの測定結果に基づきリニアスケール104全域で取得することができる。なお、機差Cx′は、必ずしもリニアスケール104全域で取得する必要はなく、リニアスケール104の一部の区間で取得してもよい。
X方向の位置の機差Cx′は、統合コントローラ301にて、RFIDタグ512に登録されている可動子101の個別IDと関連付けられて、X方向の機差情報520として記憶される。可動子101のX方向における位置Xの算出に際して、当該可動子101の個別IDに関連付けられた機差Cx′が考慮される。
可動子位置算出関数401において、可動子101bのX方向の位置の機差Cx′である機差Cx(101b)′を考慮すると、式(1c)の代わりに次式(1c)′により可動子101bの位置Pos(101b)′を計算することができる。なお、機差Cx(101b)′は、リニアスケール104全域で取得された値のうち、リニアエンコーダ204cにより読み取られたリニアスケール104の位置に対応する値を用いることができる。
Pos(101b)′=Sc-Pc-Wz*D+Cx(101b)′ …式(1c)′
機差Cx′を考慮した式(1c)′を用いて計算することにより、より正確な可動子101bの位置を得ることができる。
このように、本実施形態では、可動子位置算出関数401において可動子101のX方向における位置Xを算出する際に、リニアスケール104全域で取得された可動子101のX方向の位置の機差Cx′を考慮する。機差Cx′は、可動子101のRFIDタグ512に登録されている個別IDと関連付けられている。これにより、可動子101個別の移動機差を補正することができる。したがって、本実施形態では、可動子101がどの位置に移動していても、より正確な現在位置を取得することができる。
統合コントローラ301は、上述のようにして取得される可動子101の位置に基づき、可動子101の搬送速度について定速維持、減速又は加速を行って制御することができる。
本実施形態では、可動子101がどの位置に移動していても、より正確な現在位置を取得することができるので、可動子101を目標搬送速度で搬送させる場合に可動子101をより正確に目標搬送速度に追従させることができる。そのため、可動子101の目標搬送速度に対しての速度むらである速度リップルを小さく抑えることができる。したがって、本実施形態によれば、磁気浮上型の搬送システム1において、複数の可動子101をより高い精度で搬送することができる。
[第3実施形態]
本発明の第3実施形態について図5A、図5B及び図20を用いて説明する。なお、上記第1及び第2実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態では、可動子101の固有振動数の機差情報を用いて可動子101の位置及び姿勢を制御する方法について説明する。
なお、本実施形態による移動機差の補正は、第1又は第2実施形態による移動機差の補正と組み合わせて実行することができる。
まず、各可動子101の固有振動数を測定する。固有振動数の測定では、前述の図5A及び図5Bに示すように、固有振動数を測定すべき可動子101を、そのベッセル点501で支持する。このように可動子101を支持した状態で、可動子101に加速度センサ(不図示)を取り付けて例えばハンマリングを用いたインパクト加振を行い、そのときの加速度センサの測定結果から可動子101の固有振動数を測定する。
次いで、測定された可動子101の固有振動数から、固有振動除去フィルタの係数を決定する。固有振動除去フィルタとしては、例えば、ノッチフィルタのような阻止帯域が狭いバンドストップフィルタを使用することができる。
この固有振動数の機差は、統合コントローラ301にて、RFIDタグ512に登録されている可動子101の個別IDと関連付けられて、固有振動数の機差情報522(図20参照)として記憶装置に記憶される。なお、固有振動数の機差は、統合コントローラ301が参照可能な外部の記憶装置に記憶されてもよい。
上述のようにして測定された固有振動数の機差情報を用いた動作補正についてさらに図20で詳細に説明する。図20は、固有振動数の機差情報を用いて動作補正する場合の可動子101の位置及び姿勢を制御するための制御ブロックの一例を示す概略図である。
図20において、Pは(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)を成分とする可動子101の位置及び姿勢、refは(X,Y,Z,Wx、Wy,Wz)の目標値、errは目標値refと位置及び姿勢Pとの間の偏差である。
可動子姿勢制御関数403は、図8に示す場合と同様、偏差errの大きさ、偏差errの変化、偏差errの積算値等に基づき、目標値refを実現するために可動子101に印加すべき力Tを算出する。本実施形態において、統合コントローラ301は、フィルタ関数514を用いた処理を実行する。フィルタ関数514は、力Tに固有振動除去フィルタをかけて、フィルタ後の力T′を算出する。固有振動除去フィルタをかける際、統合コントローラ301は、可動子101のRFIDタグ512に登録された個別IDと関連付けられて記憶された固有振動数の機差情報522から、フィルタ関数514による固有振動除去フィルタのフィルタ係数を決定する。
コイル電流算出関数404は、フィルタ後の力T′並びに位置及び姿勢Pに基づき、可動子101にフィルタ後の力T′を印加するためにコイル202、207、208に印加すべきコイル電流Iを算出する。こうして算出されたコイル電流Iがコイル202、207、208に印加されることにより、フィルタ後の力T′が可動子101に作用して位置及び姿勢Pが目標値refに変化する。
このように制御ブロックを構成することにより、可動子101の固有振動数の機差情報を用いて、可動子101の位置及び姿勢Pを所望の目標値refに制御することが可能になる。
このように、本実施形態では、フィルタ関数514において、可動子101に印加すべき力Tに固有振動除去フィルタをかけてフィルタ後の力T′を算出する。固有振動除去フィルタのフィルタ係数は、可動子101のRFIDタグ512に登録されている個別IDと関連付けられて記憶された固有振動数の機差情報から決定される。これにより、可動子101個別の位置及び姿勢を制御することができる。したがって、本実施形態によれば、複数の可動子101を高い精度で搬送することができる。
[第4実施形態]
本発明の第4実施形態について図21A及び図21Bを用いて説明する。なお、上記第1乃至第3実施形態と同様の構成要素については同一の符号を付し説明を省略し又は簡略にする。
本実施形態では、可動子101の重さを測定する場合について図21A及び図21Bを用いて説明する。図21A及び図12Bは、可動子101の重さを測定する方法を示す概略図である。図21Aは、-X方向に見た共通の測定治具500を示している。図21Bは、-Z方向に見た共通の測定治具500を示している。
可動子101の重さを測定する場合、第1実施形態と同様に、共通の測定治具500において、可動子101のベッセル点501で可動子101を支持する。本実施形態では、共通の測定治具500の可動子101を支持する支持部に、可動子101の重さを測定する重さセンサ511が設置されている。
複数の可動子101のそれぞれについて、共通の測定治具500に可動子101を設置して、重さセンサ511により重さを測定することができる。重さセンサ511としては、可動子101の重さを測定できるものであれば特に限定されるものではないが、ロードセル等を利用することができる。
複数の可動子101を製作すると、部品の製作誤差や組立誤差により、複数の可動子101について重さのばらつきが発生しうる。複数の可動子101を高い精度で搬送する観点からは、重さのばらつきが小さいこと又はないことが好ましい。
可動子101の重さのばらつきを補正するためには、まず、上述のようにして重さセンサ511で複数の可動子101のそれぞれの重さを測定する。次いで、重さの測定結果に基づき、例えば、複数の可動子101の一部又は全部に重りを設置する、構成部品を変更する等の方法により、複数の可動子101の重さが同じになるように可動子101の重さを調整する。これにより、複数の可動子101の重さのばらつきを小さく又はなくして補正することができる。こうして重さのばらつきを補正することにより、複数の可動子101を高い精度で搬送することができる。
また、複数の可動子101の重さにばらつきがある場合であっても、上述した第1乃至第3実施形態のように可動子101の機差を補正することにより、複数の可動子101を高い精度で搬送することができる。
[変形実施形態]
本発明は、上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、X方向、Y方向、Z方向、Wx方向、Wy方向及びWz方向において可動子101の位置及び姿勢する場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。X方向、Y方向、Z方向、Wx方向、Wy方向及びWz方向の少なくともいずれかの方向において変位を取得して位置及び姿勢を制御すればよい。
また、上記実施形態では、可動子101を浮上させる浮上力として、コイル202によりヨーク板103が受ける電磁力を利用する場合を例に説明したが、これに限定されるものでなない。例えば、可動子101の質量又は可動子101上に置かれるワーク102の質量が大きく鉛直方向へ印加すべき浮上力が大きい場合には、別途、空気等の流体による静圧を浮上用に使って浮上力を補助してもよい。また、搬送システム1は、浮上力として電磁力に代えて流体による静圧等を利用して可動子101を浮上させる浮上型の搬送システムとして構成することもできる。
また、上記実施形態では、複数のコイル202、207、208が所定の列数で配置されている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。可動子101に配置されたヨーク板103、導電板107に応じて、各コイルを所定の列数で配置することができる。
また、上記実施形態では、可動子101にヨーク板103及び導電板107が設けられている場合を例に説明したが、これに限定されるものではない。可動子101は、ヨーク板103及び導電板107に代えて、複数の永久磁石を含む磁石群を有していてもよい。
磁石群は、例えば、X方向に沿って配置された複数の永久磁石を含むものとすることができる。
また、本発明による搬送システムは、電子機器等の物品を製造する製造システムにおいて、物品となるワークに対して各作業工程を実施する工作機械等の各工程装置の作業領域にワークを可動子とともに搬送する搬送システムとして利用することができる。作業工程を実施する工程装置は、ワークに対して部品の組み付けを実施する装置、塗装を実施する装置等、あらゆる装置であってよい。また、製造される物品も特定のものに限定されるものではなく、あらゆる部品であってよい。
このように、本発明による搬送システムを用いてワークを作業領域に搬送し、作業領域に搬送されたワークに対して作業工程を実施して物品を製造することができる。また、本発明による搬送システムの搬送対象は、ワーク以外のものであっても構わない。例えば、ワーク以外の物品、人、動物といった生体でも構わない。