JP7541640B1 - 熱延鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

引張強さ(TS)が590MPa以上で、優れた加工性を有する熱延鋼板およびその製造方法を提供する。C、Si、Mn、P、S、Al、N、Nb、任意選択の成分組成を有し、金属組織の面積率で、フェライトが95%以上、Nbを含む炭化物列が湾曲状に存在し、粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板である。また、上記の成分組成を有する鋼素材を、加熱し、又は加熱せずに、粗圧延工程と、開始温度が1000℃超え、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下とする仕上げ圧延工程と、冷却工程と、巻取工程とを含む熱延鋼板の製造方法である。

Description

本発明は、引張強さが590MPa以上で、優れた加工性を有する熱延鋼板およびその製造方法に関する。本発明の熱延鋼板は、自動車用部材の素材に適する。
近年、地球環境保全の観点から、CO排出量の規制を目的として自動車業界全体で自動車の燃費改善が指向されている。自動車の燃費改善には、使用部品の薄肉化による自動車の軽量化が最も有効であるため、近年、自動車部品用素材としての高強度鋼板の使用量が増加しつつある。
一般に、鋼板の高強度化にともない成形性は悪化する傾向にあるため、高強度鋼板の普及をさらに拡大させるには成形性の改善が必須である。特に熱延鋼板は複雑な形状に成形されるサスペンションアーム部品に利用されることが多く、優れた加工性が求められる。
そこで、これらの問題を解決するため、これまでに様々な鋼板の高強度化と加工性向上の技術が提案されている。
例えば、特許文献1では、面積率が95%超えのフェライト相をマトリックスの主相とし、フェライト結晶粒内に平均粒子径が10nm未満のTi炭化物を微細析出させた熱延鋼板が開示されている。そうすることで、引張強さが780MPa以上の加工性に優れた高強度熱延鋼板が得られるとしている。
また、特許文献2では、圧延開始温度を1200℃以上とする粗圧延と圧延終了温度を900℃以上とする仕上げ圧延からなる熱間圧延と、580℃以上で巻き取り処理を行う熱間圧延鋼板の製造方法が開示されている。熱延鋼板は、面積率が95%以上のフェライト相と金属組織中に平均粒子径が20nm以上のTiNと平均粒子径が6nm未満であるTiを含む微細炭化物が分散している。その結果、引張強さ590MPa以上750MPa以下であって、打ち抜き性と伸びフランジ性に優れた高張力熱延鋼板が得られるとしている。
特許文献3では、焼入れ性向上を目的として1.0%以上のMnを添加したうえで、面積率で75.0%以上97.0%未満の上部ベイナイトを主相とし、0.5μm以上の第2相粒子の数密度を150000個/mm以下とする熱延鋼板が開示されている。その結果、引張強さが980MPa以上である高強度熱延鋼板が得られるとしている。
特開2013-95996号公報 特開2013-133525号公報 国際公開第2018/150955号
しかし、上記特許文献に開示された従来技術には、以下のような問題がある。
特許文献1及び特許文献2で提案された技術では、粒子分散強化に寄与する微細な炭化物は直線状に配列する。この場合、高い応力増加率に達することは困難である。
また、特許文献3では、ラス状の形態を持つベイニティックフェライト間にFe系炭化物および、または残留オーステナイトを有する上部ベイナイト組織(ただし、Fe系炭化物および残留オーステナイトを有さない組織を含む)を主相とする。このようなベイナイトやマルテンサイト、残留オーステナイトを積極的に活用する組織鋼では、多量の合金元素が必要となり、材料コストが高くなる。
本発明は、従来技術が抱える上記の問題点に鑑み開発したものであって、引張強さ(TS)が590MPa以上で、優れた加工性を有する熱延鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
発明者らは上記課題を解決するために、熱延鋼板における高強度と加工性を兼備する要件について鋭意検討した。本件で対象とする熱延鋼板の板厚は、1.0mm以上35.0mm以下である。可能な限り合金元素の添加を抑制し、高強度を得るため、加工性に富む組織であるフェライト相に、微細な炭化物が分散することで、金属組織を強化することとした。
この微細炭化物で強化する粒子分散強化機構による金属組織の強化上昇の極限を追究した結果、従来技術の直線状の炭化物列より、湾曲状の炭化物列で強化した方が、応力増加率ならびに粒子分散強化量は高位となることがわかった。この湾曲状の炭化物列は、オーステナイトからフェライトへ変態中、オーステナイトとフェライトとの界面速度が一定以上の場合に初めて発現することを見出した。また、この湾曲状の炭化物列は、特定の鋼成分と熱延条件とを組み合わせることで得られることもわかった。しかし、粒子分散強化量は炭化物の粒子径の微細化により上昇する傾向があるが、透過型電子顕微鏡でナノサイズの炭化物を正確に捉えることは困難であった。
そこで、この湾曲状の炭化物列の粒子分散強化量について、先行技術と比較することとした。ナノサイズのNbを含む炭化物を従来以上に多量に分散させることにより、炭化物周りに発生する転位に起因すると考えられる応力増加率の上昇が認められた。この応力増加率の上昇により、厳しい加工性が要求される部材において、高ひずみ域で応力が分散することに有利に働き、良好な加工性が得られることを知見した。
上記知見に基づき開発した本発明に係る熱延鋼板は、以下のように構成される。
[1]質量%で、C:0.020%以上0.070%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.6%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下、Al:0.005%以上0.080%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.10%以上0.28%以下、
V:0%以上0.01%以下、Mo:0%以上0.01%以下、Ti:0%以上0.01%以下、Hf:0%以上0.01%以下、W:0%以上0.01%以下、Zr:0%以上0.01%以下、
任意選択的に、さらに、下記のA群及びB群のうちから一方又は両方の成分を含有し、
A群;B:0.0002%以上0.0050%以下、
B群;Sb、REM、Mg、Ca、Sn、Ni、Cu、Co、As、Cr、Ta、Pb、Cs、Te、Bi及びSeのいずれか1種以上を合計で1%以下、
残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、金属組織の面積率で、フェライトが95%以上、湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10-3nm-1以上、粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板である。
[2]上記の[1]において、前記熱延鋼板の表面にめっき層を有する熱延鋼板である。
上記知見に基づき開発した本発明に係る熱延鋼板の製造方法は、以下のように構成される。
[3]上記の[1]に記載の成分組成を有する鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、又は鋳造後加熱せずに、粗圧延してシートバーとする粗圧延工程と、該シートバーを圧延の開始温度が1000℃超え、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下で仕上げ圧延して熱延鋼板とする仕上げ圧延工程と、該熱延鋼板を600℃以上700℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度40℃/s以上で冷却する冷却工程と、冷却された前記熱延鋼板を巻取温度が600℃以上700℃以下で巻き取る巻取工程と、を含む熱延鋼板の製造方法である。
[4]上記の[3]において、前記粗圧延工程または前記仕上げ圧延工程の前に上記の[1]に記載の成分組成を有する、厚さが35mm以上200mm以下の鋼素材を鋳造する鋳造工程を含み、前記粗圧延工程を適用し、または、適用せずにシートバーとする熱延鋼板の製造方法である。
[5]上記の[1]に記載の成分組成を有する鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとする粗圧延工程と、粗圧延された前記シートバーと先行するシートバーとを1010℃以上で接合する接合工程と、接合されたシートバーを圧延の開始温度が1000℃超え、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下となる仕上げ圧延して熱延鋼板とする仕上げ圧延工程と、該熱延鋼板を600℃以上700℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度40℃/s以上で冷却する冷却工程と、冷却された前記熱延鋼板を巻取温度が600℃以上700℃以下で巻き取る巻取工程と、を含む熱延鋼板の製造方法である。
[6]上記の[3]から[5]のいずれかにおいて、さらに、前記熱延鋼板を、焼鈍温度が720℃以下で焼鈍する熱延板焼鈍工程と、焼鈍された前記熱延鋼板にめっき処理を施すめっき工程と、を含む熱延鋼板の製造方法である。
[7]上記の[6]において、さらに、めっきされた前記熱延鋼板に400℃以上500℃以下の合金化処理を施す合金化工程を含む熱延鋼板の製造方法である。
本発明によれば、引張強さ(TS)が590MPa以上の高強度と、優れた加工性を備える熱延鋼板を製造することが可能となる。本発明に係る熱延鋼板を自動車部品に適用すれば、自動車部品のさらなる軽量化が実現される。
実施形態に係る熱延鋼板における金属組織と析出物の一例写真である。
以下、本実施形態に係る熱延鋼板について説明する。
<熱延鋼板の化学成分>
熱延鋼板の成分組成は、質量%で、C:0.020%以上0.070%以下、Si:1.5%以下、Mn:1.6%以下、P:0.05%以下、S:0.010%以下、Al:0.005%以上0.080%以下、N:0.0060%以下、Nb:0.10%以上0.28%以下、V:0%以上0.01%以下、Mo:0%以上0.01%以下、Ti:0%以上0.01%以下、Hf:0%以上0.01%以下、W:0%以上0.01%以下、Zr:0%以上0.01%以下を含有する。以下で各成分を説明する。以下の説明において、成分の含有量を表す「%」は「質量%」を意味する。
C:0.020%以上0.070%以下
Cは、Nbと結合することで鋼板の高強度化に寄与する。引張強さが590MPa以上の鋼板を得るため、C含有量は0.020%以上とする。一方、Cは、オーステナイトからフェライト変態中に、オーステナイトとフェライトの界面に堆積し、界面移動速度が低下する。この界面移動速度の低下により、金属組織において湾曲状の炭化物列が得られない。そのため、C含有量は0.070%以下とする。好ましくは0.025%以上0.065%以下である。
Si:1.5%以下
Siは、オーステナイトからフェライトへ変態する駆動力を上昇させて、オーステナイトとフェライト界面速度を増加させ、湾曲状の炭化物列を得られやすくする。このような効果を発現させるには、Si含有量は0.18%以上とすることが好ましい。一方、Siが1.5%を上回ると、オーステナイトからフェライトへ変態する駆動力が過度に高まり、熱延後の冷却過程の高温でオーステナイトからフェライトの変態が開始し、炭化物が粗大化するため、180MPa以上の粒子分散強化量が得られない。そのため、Si含有量は、1.5%以下とする。好ましくは、Si含有量は0.26%以上1.1%以下である。
Mn:1.6%以下
Mnは、オーステナイトからフェライトへ変態する駆動力を低下させ、オーステナイトとフェライトの界面移動速度を低下させる。したがって、Mn含有量は、1.6%以下とする。好ましくは、Mnの含有量は、1.5%以下である。製造上、0.05%は不可避的に混入するが、0.00%であっても本発明の効果は損なわれない。
なお、湾曲状の炭化物列を得るために、オーステナイトからフェライトへ変態する駆動力を制御するには、以下の(1)式を満たすことが好ましい。
2.8[%Si]-12([%C]-12/93[%Nb])-[%Mn]≧0
・・・(1)
ここで、[%M](M=C,Si,Mn,Nb)は、質量%の各元素の含有量である。
P:0.05%以下
Pは、粒界に偏析することで加工性を低下させる有害元素であるため、極力低減することが好ましい。本実施形態では、P含有量は0.05%まで許容できる。好ましくは、P含有量は0.04%以下であるが、より厳しい加工条件下で使用するには、0.02%以下とすることがより好ましい。一方、製造上、0.002%のPが不可避的に混入する場合がある。
S:0.010%以下
Sは、鋼中で粗大な硫化物を形成し、これが熱間圧延時に伸展し楔状の介在物となることで、伸び加工性に悪影響をもたらす。そのため、Sも有害元素であるため低減することが好ましく、0.010%まで許容できる。好ましくは、S含有量は0.003%以下であるが、より厳しい加工条件下で使用するには、0.001%以下とすることがより好ましい。製造上、0.0001%のSが不可避的に混入する場合がある。
Al:0.005%以上0.080%以下
Alを製鋼の段階で脱酸剤として添加する場合、Al含有量は0.005%以上である。Alは酸化物を形成することで加工性が低下する。そこで、Al含有量は、0.080%以下とする。好ましくは、Al含有量は、0.010%以上0.070%以下である。
N:0.0060%以下
Nは、Nbと結合し粗大なNおよびNbを含む析出物を形成することで、強度および加工性を低下させる有害元素である。そのため、N含有量は出来る限り低減することが好ましく、0.0060%まで許容できる。好ましくは、N含有量は0.0050%以下である。製造上、0.0005%のNが不可避的に混入する場合がある。
Nb:0.10%以上0.28%以下
590MPa以上の引張強さを得るため、Nb含有量は0.10%以上である。一方、Nb含有量が0.28%を上回ると、熱間圧延前の加熱工程で粗大なNbを含む炭化物を溶解することができなくなり、高強度化への効果が飽和するだけでなく、加工性に悪影響をもたらす。そのため、Nb含有量は0.10%以上0.28%以下とする。好ましくは、Nb含有量は0.12%以上0.25%以下である。
特に、NbはTiやVよりも強度変動が少ない特徴がある。本実施形態に係る熱延鋼板では、コイル面内における粒子分散強化量のばらつきは30MPa以下に抑制することが可能である。
Nbを含む炭化物として利用されないCは、オーステナイトとフェライトの界面に堆積することでオーステナイトとフェライトの界面移動速度を低下させる。このような悪影響を抑制するには、次の(2)式を満たすことが好ましい。
([%C]/12)/([%Nb]/93)<1.7・・・(2)
ここで、[%M](M=C,Nb)は、質量%のC、Nbの含有量である。
V:0%以上0.01%以下、Mo:0%以上0.01%以下、Ti:0%以上0.01%以下、Hf:0%以上0.01%以下、W:0%以上0.01%以下、Zr:0%以上0.01%以下
V、Mo、Ti、Hf、W、及びZrはCと結合して炭化物を形成する元素であるが、Nbと複合添加することにより、オーステナイトからフェライトへ変態する時、Cの活用が不安定となり、所望の湾曲状の炭化物列が得られなくなるリスクが高まる。このため、V:0%以上0.01%以下、Mo:0%以上0.01%以下、:0%以上0.01%以下、Hf:0%以上0.01%以下、W:0%以上0.01%以下、Zr:0%以上0.01%とする。
以上が実施形態に係る熱延鋼板の成分組成の基本構成であるが、任意選択的に、さらに、以下のA群及びB群のうちから一方又は両方の成分を含有することができる。
A群;B:0.0002%以上0.0050%以下
B群;Sb、REM、Mg、Ca、Sn、Ni、Cu、Co、As、Cr、Ta、Pb、Cs、Te、Bi及びSeのいずれか1種以上を合計で1%以下
B:0.0002%以上0.0050%以下
Bは焼入性を向上させるために有効な元素であり、熱延後の冷却過程でオーステナイトからフェライトの変態を抑制し、安定的に湾曲状の炭化物列の形成を促す効果がある。B含有量は、0.0002%以上とすることで、安定的に所望の組織を得ることに寄与する。一方、B含有量は、0.0050%を超えると、鋼の焼入性に対する効果が飽和するため、0.0050%以下とする。好ましくは、B含有量は0.0002%以上0.0050%以下とする。より好ましくは、B含有量は0.0004%以上0.0030%以下である。
Sb、REM、Mg、Ca、Sn、Ni、Cu、Co、As、Cr、Ta、Pb、Cs、Te、Bi及びSeのいずれか1種以上を合計で1%以下
いずれか1種以上を合計で1%以下の範囲の含有であれば、本実施形態に係る熱延鋼板の特性への影響は少ないことから、許容できる。一方、好ましくは、各々の元素の含有量は、0.03%以下に制限する。
本実施形態に係る熱延鋼板の化学組成は、上記の元素を含有し、残部はFe及び不可避的不純物である。
<熱延鋼板の金属組織と特性>
次に、熱延鋼板の金属組織および特性について説明する。
本実施形態の熱延鋼板の金属組織および機械特性は、フェライトの面積率が95%以上、湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10-3nm-1以上、粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板である。
以下の説明において、金属組織を表す「%」は「面積率」を意味する。
フェライトの面積率が95%以上
フェライトは、ベイナイトやマルテンサイト、焼き戻しマルテンサイトと比べて加工性に富む鋼組織である。ベイナイトやマルテンサイト、焼き戻しマルテンサイト、残留オーステナイト等のフェライト以外の組織が5%を超えると、粒子分散強化量が180MPa以上、1000MPa以上の応力増加率が得られなくなる。このような観点から、フェライトは95%以上とする。好ましくは、フェライトは97%以上である。
湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10-3nm-1以上
湾曲状の炭化物列の存在が本実施形態に係る熱延鋼板の大きな特徴の一つであり、この湾曲状に存在する炭化物により、高い応力増加率が得られる。湾曲状に存在するNbを含む炭化物は、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて(001)α入射で観察した場合に、フェライト粒内で観察できる。電子線の入射方向によっては、必ずしも炭化物として観察されない場合があるので、湾曲状の炭化物列の確認は、(001)α入射のフェライト粒で行う。
代表的な湾曲状に存在する炭化物の組織写真を図1に示す。図1は(001)α入射で撮影した明視野像である。粒状の黒いコントラストが湾曲状の炭化物列である。炭化物の曲率測定には、10列以上の炭化物列を撮影し、その中から曲率が大きい炭化物列の上位3割に対し、最も炭化物列の曲率が大きい位置に対して曲率を測定する。この測定値の平均値を本発明で定める炭化物列の曲率とした。
一方で、粒子分散強化量は、炭化物の粒子径に依存するが、図1からわかる通り、非常に微細であるため、正確に炭化物の粒子径を求めることが非常に困難である。そこで、本実施形態に係る熱延鋼板の技術的特徴を、炭化物の粒子径ではなく、Tiを含む炭化物によって得られる粒子分散強化量で規定することとした。
粒子分散強化量が180MPa以上
引張強さが590MPa以上を得るには、少なくとも粒子分散強化量は180MPa以上が必要である。安定的に引張強さが590MPaを満たすには、粒子分散強化量は200MPa以上であることが好ましい。粒子分散強化量は次の(3)式から求めることができる。
[粒子分散強化量(MPa)]=
[降伏強さ]-32[%Mn]-83[%Si]-17.4d-0.5-54 ・・・(3)
ここで、dはフェライト粒径(単位:mm)、[%M](M=Mn,Si)は、質量%で、MnとSiの含有量である。なお、フェライト面積率が95%を下回る組織に対しては、(3)式は適用されず、本発明で求める範囲から除外される。
均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上
厳しい成形条件において、応力集中部の加工硬化による応力分散の状態が、成形可否において、重要な因子となる。本実施形態の熱延鋼板は、湾曲状の炭化物列を分散させることで高い加工硬化を持つ。湾曲状の炭化物列は、直線状の炭化物列よりも微細かつ多量に分散するために、マトリックスの変形の際、マトリックスと炭化物との非整合に起因する転位が、炭化物の周りで多量に発生することが加工硬化の原因と推定される。そこで、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率を1000MPa以上とする。
この応力増加率は、真ひずみ、真応力との関係において、均一伸びの80%における真ひずみの真応力の微分値として計算される。試験機の応答性等に起因して微分値が安定しないケースがある。このため本実施形態では、応力増加率は均一伸びの80%における真ひずみを中央として隣接する20点の平均値を求めることとした。なお、成形時にネッキングなどの不具合を生じさせないためには、均一伸びが高い方が望ましく、本実施形態の熱延鋼板で得られるTSとU-Elとの積は5900MPa・%である。このU-Elは公称ひずみで計算した。
本実施形態に係る熱延鋼板は、表面にめっき層を有することが好ましい。めっき層が形成されても、熱延鋼板の機能は損なわれない。めっき層の組成は、Zn、Si、Al、Ni、Mgから1種または2種以上を選択することが好ましい。
なお、本実施形態におけるめっき鋼板は、溶融亜鉛めっき処理を施したもの(GI)、溶融亜鉛めっき処理後にさらに合金化処理を施したもの(GA)、電気亜鉛めっき処理を施したもの(EG)のいずれも対象とする。
<熱延鋼板の製造方法>
次に、本実施形態に係る熱延鋼板の製造方法の第一形態を説明する。
一般に、熱延鋼板の製造は、鋳造後、1000℃以下まで温度低下したスラブ(鋼素材)を加熱炉に装入して、短時間で加熱した後に熱間圧延ラインで所定の厚みまで減厚してコイルに巻き取る。あるいは、鋳造後、一旦常温まで冷えてしまったスラブ(鋼素材)を加熱炉内にて長時間加熱した後に熱間圧延ラインで所定の厚みまで減厚してコイルに巻き取る。また、鋳造されたスラブ(鋼素材)を、加熱炉内にて加熱することなく熱間圧延ラインに直送し、所定の厚みまで減厚してコイルに巻き取る製造方法がある。
本実施形態に係る熱延鋼板の製造方法は、鋳造後、鋼素材を加熱するプロセスだけでなく、鋳造後、鋼素材を加熱することなく熱間圧延ラインに直送するプロセスにも適用できる。
<第一形態の鋼素材>
本実施形態の鋼素材製造のための溶製方法は、特に限定せず、転炉、電気炉等、公知の溶製方法を採用することができる。また、真空脱ガス炉にて2次精錬を行ってもよい。そのようにして上記成分組成に調整した溶鋼を、その後、生産性や品質を考慮して、連続鋳造法によりスラブ(鋼素材)とすることが好ましい。また、造塊-分塊圧延法、その他公知の鋳造方法でスラブとしてもよい。
<第一形態の粗圧延工程>
本実施形態では、鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、又は鋳造後加熱せずに、鋼素材を粗圧延し、シートバーとする。
<第一形態の仕上げ圧延工程>
次いで、仕上げ圧延の開始温度が1000℃以上、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下で仕上げ圧延する熱間圧延を施し、熱延鋼板とする。
<第一形態の冷却工程>
次いで、熱間圧延された熱延鋼板を冷却停止温度600℃以上700℃以下まで平均冷却速度40℃/s以上で冷却する。
<第一形態の巻取工程>
その後、冷却された熱延鋼板を巻取温度が600℃以上700℃以下で巻き取るものである。
鋼素材の加熱:1200℃以上に加熱、又は加熱せず
スラブ(鋼素材)中に析出したNbを含む粗大な炭化物を、熱間圧延前の加熱工程で溶解することで、熱間圧延後にNbを含む微細な炭化物が析出する。そこで、180MPa以上の粒子分散強化量を得るには、加熱温度は1200℃以上である。好ましくは、加熱温度は1220℃以上であり、Nb含有量が0.13%以上の場合には1240℃以上にスラブ(鋼素材)を加熱することがより好ましい。上限は特に設けないが、加熱炉の熱損傷を避けるため、1300℃が製造上の制約である。
鋳造後、1200℃以上に保持した鋼素材を熱間圧延ラインに直送する場合は、鋳造後の鋼素材を加熱しない。
仕上げ圧延開始温度:1000℃以上、
本実施形態に係る熱延鋼板は、オーステナイトからフェライトへ変態する駆動力が高められた鋼成分であることから、常法の熱間圧延条件では、熱間圧延後の冷却過程の高温域でオーステナイトからフェライトへ変態が開始し、湾曲状の炭化物列が得られない。高温域で炭化物が析出すると、その炭化物が粗大化し、所望の粒子分散強化量が得られないだけでなく、直線状の炭化物が生成するため、所望の応力増加率も得られない。
そこで、熱間圧延温度を高め、オーステナイトの未再結晶域における圧延を極力避けるため、仕上げ圧延開始温度は1000℃以上である。好ましくは、仕上げ圧延開始温度は1010℃以上である。鋼の性質上、特に上限は設けないが、熱間圧延ラインに加熱装置がない限りはスラブ加熱温度が実質的な上限温度であり、1200℃以下になることが多い。
1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上
仕上げ圧延において、オーステナイトが再結晶する高温域で圧下率を高めることで、仕上げ圧延終了時のオーステナイトの加工度が下げられ、その結果、フェライトの核生成が抑制され、熱間圧延後の冷却過程において、高温域でのオーステナイトからフェライトの変態を回避できる。このため、1パス目と2パス目の圧下率はそれぞれ35%以上である。好ましくは、1パス目と2パス目の圧下率はそれぞれ38%以上である。
1パス目および2パス目の圧下率はそれぞれ以下の(4)式および(5)式で算出することができる。
1パス目の圧下率=(t-t)/t・・・(4)
2パス目の圧下率=(t-t)/t・・・(5)
ここで、t、t、およびtは、それぞれ、仕上げ圧延前の板厚、1パス後の板厚、及び2パス後の板厚である。
3パス目から圧延完了までの総圧下率:85%以下
仕上げ圧延完了まで、オーステナイトの加工度を制御し、フェライト核生成サイトの密度を低下させる必要がある。このため、3パス目から圧延完了までの総圧下率は85%以下とする。好ましくは、3パス目から圧延完了までの総圧下率は80%以下である。3パス目から圧延完了までの総圧下率は次の(6)式で算出することができる。
3パス目から圧延完了までの総圧下率=(t-t)/t・・・(6)
ここで、tは仕上げ圧延完了後の板厚である。
仕上げ圧延後の冷却停止温度600℃以上700℃以下まで平均冷却速度40℃/s以上
仕上げ圧延後は、フェライトの生成を抑制するため、熱延鋼板を急冷する必要がある。冷却停止温度が700℃を超えると冷却過程でフェライトが生成するため、仕上げ圧延温度から700℃まで、平均冷却速度40℃/s以上で熱延鋼板を冷却する。
一方、冷却停止温度が600℃未満となると、Nbを含む炭化物の析出量が不足し、180MPa以上の粒子分散強化量が得られない。このため、冷却停止温度は600℃以上である。
したがって、冷却停止温度の範囲を600℃以上700℃以下とする。好ましくは、冷却停止温度の範囲は、610℃以上690℃以下である。
ここで、平均冷却速度は、熱延後、放冷以外の強制冷却で{(冷却開始温度)-(冷却完了温度)}/(放冷以外の強制冷却時間)で計算すれば良い。強制冷却の手段として、例えば水冷が挙げられる。
巻取温度:600℃以上700℃以下
冷却停止温度と同一の理由で巻取温度を600℃以上700℃以下とする。好ましくは610℃以上690℃以下である。この温度域で巻き取りをすれば、ベイナイト、マルテンサイト、及び残留オーステナイトの生成を極力抑制することができる。
次に、本実施形態に係る熱延鋼板の製造方法の第二形態を説明する。本実施形態では第一形態との違いを説明する。
<第二形態の鋳造工程>
本実施形態に係る熱延鋼板は薄スラブ連鋳法でも製造することが可能である。薄スラブ連鋳法で製造する場合には、厚さ35mm以上200mm以下の鋼素材を鋳造する。
<第二形態の粗圧延工程>
鋳造された前記鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、又は鋳造後加熱せずに、必要に応じて粗圧延して、シートバーとする。
仕上げ圧延工程以降は第一形態と同様である。
ここでは、薄スラブ連鋳法で特有のスラブ(鋼素材)厚さについて説明する。
スラブ(鋼素材)厚さ:厚さ35mm以上200mm以下
薄スラブ連鋳法では連続鋳造法とは異なり、熱間圧延前のスラブが薄いことから、熱間圧延におけるオーステナイトの加工度が低い。スラブ厚さが35mmを下回ると、所望の1パス目から5パス目までの合計圧下率が得られない。一方、スラブ厚さが200mmを上回ると、鋳造速度が遅くなり、連続鋳造法に比べて薄スラブ連鋳法における生産性の優位性が失われる。以上の観点から、薄スラブ連鋳法におけるスラブ厚さは35mm以上200mm以下とする。
次に、本実施形態に係る熱延鋼板の製造方法の第三形態を説明する。本実施形態では第一形態や第二形態との違いを説明する。第三形態は、熱間連続圧延技術を適用することができる。
<第三形態の接合工程>
第一形態または第二形態で得たシートバーを仕上げ圧延前に先行するシートバーと1010℃以上で接合する。1010℃を下回ると1000℃以上の仕上げ圧延完了温度で圧延することが困難となる。好ましい接合時のシートバーの加熱温度は、1070℃以上である。仕上げ圧延工程以降は第一形態と同様である。
本実施形態に係る熱延鋼板の製造方法では、焼鈍温度が720℃以下の連続焼鈍ラインで焼鈍する焼鈍工程と、連続めっきラインでめっきするめっき工程と、を適用することができる。さらに、めっき処理した熱延鋼板を400℃以上500℃以下に加熱し合金化処理を施す合金化工程を有していてもよい。この焼鈍処理、又はこのめっき処理しても本実施形態に係る熱延鋼板の材質に影響をおよぼさない。そのため、熱延鋼板表面に、さらにめっき処理を施し、鋼板表面にめっき層を有することが可能である。
また、前述のように、めっき処理やめっき浴の組成は、本実施形態に係る熱延鋼板の材質に影響をおよぼさないため、めっき処理としては、溶融亜鉛めっき処理、合金化溶融亜鉛めっき処理、電気亜鉛めっき処理のいずれも適用可能である。めっき浴の組成は、Zn、Al、Mg、SiおよびNiの1種または2種以上を含むことができる。すなわち、めっき処理において熱延鋼板の表面に形成されるめっき層の組成は、Zn、Si、Al、Ni、Mgの1種または2種以上を含むことが可能である。
本発明の実施形態を実施例によりさらに説明する。なお、本発明は、以下に実施例で示す製造条件及び製品性能に限定されるものではない。実施形態が本発明の範囲内では、所望の性能を達成し得るものである。
<連続鋳造法による第一形態>
表1-1~1-2に示す成分組成を有する厚さ250mmの鋼素材を、表2に示す粗圧延、仕上げ圧延の条件で熱間圧延し、次いで伸長率0.1~0.5%の調質圧延、酸洗を施した後、評価に供する鋼板を製造した。
<薄スラブ連鋳法による第二形態>
表1-1に示す成分組成を有する鋼を表3に示す条件で薄スラブを熱間圧延し、伸長率0.1~0.5%の調質圧延、酸洗を施した後、評価に供する鋼板を製造した。
<熱間連続圧延法による第三形態>
表1-1に示す成分組成を有する鋼を表4に示す条件でシートバー接合し、その接合されたシートバーを熱間圧延し、伸長率0.1~0.5%の調質圧延、酸洗を施した後、評価に供する鋼板を製造した。
<熱延鋼板にめっき層を付与する製造方法>
表2の条件で製造した熱延コイル(No2,3)を酸洗し、次いで、表5に示す条件により、連続溶融めっきライン(CGL)で、熱延鋼板をZnめっき処理した。これにより、連続溶融めっき鋼板(GI)、及び合金化溶融めっき鋼板(GA)を製造した。
Figure 0007541640000001
Figure 0007541640000002
Figure 0007541640000003
Figure 0007541640000004
Figure 0007541640000005
Figure 0007541640000006
表2から表5に示す条件で得られた熱延鋼板を、金属組織、引張特性、曲げ加工性、靭性の観点から以下の方法で評価した。その結果を表6―1~6-2に示す。
(i)金属組織の面積率
熱延鋼板から、圧延方向に平行な断面が観察面となるように、試験片を切り出し、板厚中心部を1%ナイタールで腐食し、組織を現出させ、走査電子顕微鏡(SEM)で2000倍に拡大して加速電圧15kVで、板厚1/4t部を10視野分撮影した。
フェライトは粒内に腐食痕が認められず、SEM写真では灰色のコントラストの結晶粒として観察される。フェライトの面積率は、画像解析ソフト(Photoshop elementsおよびImage J)を用いて求めた。
フェライト粒径は、上記SEM写真上に縦および横方向に、実際の長さで35μmの線を各10本引き、切断法により求めた。
(ii)炭化物の観察
熱延鋼板の板厚1/4に相当する場所から観察用薄膜を採取し、TEMを使用して、電子線の入射方向を(001)α入射に調整し、フェライト粒20個以上に対し、湾曲状炭化物の有無を確認した。10列以上の炭化物列に対し、炭化物列の曲率が上位3割の炭化物列の曲率を測定し、その曲率の平均値を求めた。なお、炭化物列が直線状で曲率が測定できないものに対しては、表6-1~6-2に“測定不能”を記し、炭化物列が観察できなかった水準には“析出なし”と記した。
(iii)引張試験
表2から表5に示す条件で得られた熱延鋼板から、圧延方向に対して垂直方向にJIS5号の引張試験片を作製し、JIS Z 2241(2011)の規定に準拠した引張試験を5回行い、平均の降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、均一伸び(U-El)、及び応力増加率(dσ/dε)を求めた。降伏点が認められた試験片は下降伏点を、認められなかった試験片は0.2%耐力を降伏強さとし、応力増加率は上記に記載した方法で求めた。表6-1~6-2において、引張強さが590MPa以上、かつ応力増加率が1000MPa以上を発明例とした。
(iv)曲げ試験
自動車鋼板のプレス工程では、繰り返しの曲げ工程が付与されることが多い。これを模擬するため、表2から表5に示す条件で得られた熱延鋼板から、端面を研削加工した幅35mm、長さ100mmの試験片を採取した。JIS Z 2248に記載のVブロック法にて、R/tが1.5~2.5の曲げ加工を行った後、V形状のポンチの方向を1回目と同一とした条件でR/tが0.5以下の曲げ試験を行う、繰り返し曲げ試験を計5回行った。表6-1~6-2において、2回目の曲げ試験でR/tが0.5以下であった試験片を本発明で求める曲げ特性として「〇」を、R/tが0.5以下の条件で1回以上、試験片表面に割れが認められた試験片は、本発明で求める曲げ特性ではないとして「×」を記した。
本発明例はいずれも、引張強さ(TS)が590MPa以上であり、高い粒子分散強化量および応力増加率が得られた。一方、本発明の範囲を外れる比較例は、引張強さが590MPaに達していないか、本発明で求める粒子分散強化量もしくは応力増加率が得られなかった。
Figure 0007541640000007
Figure 0007541640000008

Claims (7)

  1. 質量%で、
    C:0.020%以上0.070%以下、
    Si:1.5%以下、
    Mn:1.6%以下、
    P :0.05%以下、
    S :0.010%以下、
    Al:0.005%以上0.080%以下、
    N:0.0060%以下、
    Nb:0.10%以上0.28%以下
    V:0%以上0.01%以下、
    Mo:0%以上0.01%以下、
    Ti:0%以上0.01%以下、
    Hf:0%以上0.01%以下、
    W:0%以上0.01%以下、
    Zr:0%以上0.01%以下を含有し、
    任意選択的に、さらに、下記のA群及びB群のうちから一方又は両方の成分を含有し、

    A群;
    B:0.0002%以上0.0050%以下、
    B群;
    Sb、REM、Mg、Ca、Sn、Ni、Cu、Co、As、Cr、Ta、Pb、Cs、Te、Bi及びSeのいずれか1種以上を合計で1%以下、
    残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成を有し、
    金属組織の面積率で、フェライトが95%以上、
    湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10-3nm-1以上、
    粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板。
  2. 前記熱延鋼板の表面にめっき層を有することを特徴とする請求項1に記載の熱延鋼板。
  3. 請求項1に記載の成分組成を有する鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、又は鋳造後加熱せずに、粗圧延してシートバーとする粗圧延工程と、
    該シートバーを圧延の開始温度が1000℃超え、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下で仕上げ圧延して熱延鋼板とする仕上げ圧延工程と、
    該熱延鋼板を600℃以上700℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度40℃/s以上で冷却する冷却工程と、
    冷却された前記熱延鋼板を巻取温度が600℃以上700℃以下で巻き取る巻取工程と、
    を含むことを特徴とする、金属組織の面積率で、フェライトが95%以上、湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10 -3 nm -1 以上、粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板の製造方法。
  4. 前記粗圧延工程、又は前記仕上げ圧延工程の前に、請求項1に記載の成分組成を有する、厚さが35mm以上200mm以下の鋼素材を鋳造する鋳造工程を含み、
    前記粗圧延工程を適用し、または、適用せずにシートバーとすることを特徴とする請求項3に記載の熱延鋼板の製造方法。
  5. 請求項1に記載の成分組成を有する鋼素材を、加熱温度が1200℃以上に加熱し、粗圧延してシートバーとする粗圧延工程と、
    粗圧延された前記シートバーと先行するシートバーとを1010℃以上で接合する接合工程と、
    接合されたシートバーを圧延の開始温度が1000℃超え、1パス目と2パス目の圧下率がそれぞれ35%以上、3パス目から圧延完了までの総圧下率が85%以下となる仕上げ圧延して熱延鋼板とする仕上げ圧延工程と、
    該熱延鋼板を600℃以上700℃以下の冷却停止温度まで平均冷却速度40℃/s以上で冷却する冷却工程と、
    冷却された前記熱延鋼板を巻取温度が600℃以上700℃以下で巻き取る巻取工程と、
    を含むことを特徴とする、金属組織の面積率で、フェライトが95%以上、湾曲状に存在するNbを含む炭化物列の曲率が1.8×10 -3 nm -1 以上、粒子分散強化量が180MPa以上、均一伸びの80%のひずみにおける応力増加率が1000MPa以上を有する、引張強さが590MPa以上の熱延鋼板の製造方法。
  6. さらに、前記熱延鋼板を、焼鈍温度が720℃以下で焼鈍する熱延板焼鈍工程と、
    焼鈍された前記熱延鋼板にめっき処理を施すめっき工程と、
    を含むことを特徴とする請求項3から5のいずれか1項に記載の熱延鋼板の製造方法。
  7. さらに、めっきされた前記熱延鋼板に400℃以上500℃以下の合金化処理を施す合金化工程を含むことを特徴とする請求項6に記載の熱延鋼板の製造方法。
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